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2021.02.23.09.03

りっがー

地味である。
影が薄いとも謂える。
その怪獣 (Kaiju) は、ぼくにとってはそんな印象ばかりである。

まず第一に、側面から観た印象と正面から観た印象が俄然、違う。
側面から観た威風堂々ぶりに対して、正面から観たその姿は、とても危うい存在に観えてしまう。頭部の印象の強さばかりが目立って、それを維持する脚部が非常に弱々しく観えてしまうのだ [そんな印象の大半は、撮影アングルに起因するのは当然だとしても]。
だが、それは四足獣 (The Quadrupe) をモチーフにした怪獣 (Kaiju) の殆どがそうである。例えば、映画『キングコング対ゴジラ(King Kong Vs. Godzilla)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1962年制作] に登場する怪獣王ゴジラ (Godzilla, The King Of The Monsters) でさえ、そうなのだ。側面から受ける獰猛な爬虫類然 (As The Reptiles) とした風貌は何故か、正面では維持されていない。まるで、踏んづけられてつぶれた出来損ないのおにぎり (Rice Ball) の様に、ぼくには観えてしまうのだ。
それ故に、その点を論って、その怪獣 (Kaiju) の印象の悪さの理由と謂う訳にはいかない。

その怪獣 (Kaiju)、メカニズム怪獣リッガー (Rigger, The Mechanism Monster) は、特撮TV番組『ウルトラセブン (Ultraseven)』 [19671968TBS系列放映] の第32話『散歩する惑星 (The Wandering Planet)』 [脚本:山田正弘上原正三 監督:野長瀬三摩地 特殊技術:高野宏一] に登場する。同話にはカプセル怪獣アギラ (Agira, The Capsule Monster) も登場する。彼が初登場する逸話なのである。それ故に、メカニズム怪獣リッガー (Rigger, The Mechanism Monster) はカプセル怪獣アギラ (Agira, The Capsule Monster) のかませ犬 (Underdog) めいた印象を引き受けざるを得ないのかもしれない。

だが、その特撮TV番組に登場するカプセル怪獣 (The Capsule Monster) は、 新登場のカプセル怪獣アギラ (Agira, The Capsule Monster) も含めて、作劇上は、彼等こそかませ犬 (Underdog) と謂う役割に任ずべきモノである筈だ。
なんらかの都合で、モロボシ・ダン (Dan Moroboshi) [演森次晃嗣 (Kohji Moritsugu)] はウルトラセブン (Ultraseven) へと変身する事が叶わない。そんな際の、窮余の策として投下されるのが、カプセル怪獣アギラ (Agira, The Capsule Monster) を始めとするカプセル怪獣 (The Capsule Monster) [カプセル怪獣アギラ (Agira, The Capsule Monster) の他に、カプセル怪獣ウインダム (Windom, The Capsule Monster) とカプセル怪獣ミクラス (Miclas, The Capsule Monster) がいる] だ。そして、カプセル怪獣 (The Capsule Monster) は、侵略者が放った怪獣 (Kaiju) と敵対し、格闘する事になるが、彼等の眼前にたつ怪獣 (Kaiju) 等は、彼等の能力をおおきく上回るモノなのである。結果、彼等はいともたやすく敗北を喫する事になり、ウルトラセブン (Ultraseven) の登場を促すかたちとなる。
つまり、ウルトラセブン (Ultraseven) の登場を遅延させる事によって、モロボシ・ダン (Dan Moroboshi) =ウルトラセブン (Ultraseven) の行手を阻む侵略者の手腕、策略の巧妙さを明確させると同時に、彼が打倒すべきちからの巨大さをより明確にさせるのだ。

だから、特撮TV番組『ウルトラセブン (Ultraseven)』本来のドラマツルギー (Dramaturgy) に依拠すれば、カプセル怪獣アギラ (Agira, The Capsule Monster) の登場を促すと同時に彼を打破せしめたメカニズム怪獣リッガー (Rigger, The Mechanism Monster) を、ぼく達は巨大なちからをもった怪獣 (Kaiju) であると認識していなければならない。
しかし、この場合は、何故かそうはならない。

では、何故、その様な事態が出来したのか。
ぼくはこんな事を考えている。

メカニズム怪獣リッガー (Rigger, The Mechanism Monster) が登場した第32話『散歩する惑星 (The Wandering Planet)』に、そこで語られている物語の独自性があまりにも希薄であるからではないか、と。
つまり、その物語を綾なす幾つもの結構が既に、どこかで語られてしまったモノであるかの様な印象があるのだ。

例えば、ウルトラ警備隊員 (The Members Of Ultra Guard) が添乗したウルトラホーク1号 (Ultra Hawk No. 1) ごと、地球に落下した小惑星 (Asteroid) ディン (Din)に拉致される物語として第32話を看做せば既に、ウルトラ警備隊員 (The Members Of Ultra Guard) が音波怪人ベル星人 (Alien Bell, The Wave Phantom) が支配する異世界に拉致され、そこからの脱出を謀る物語として、第18話『空間X脱出 (Escape Dimension X)』 [脚本:金城哲夫 監督:円谷一 特殊技術:大木淳] で同様の物語がそこで語られてあるのだ。しかも、このふたつの物語に先行するかたちで、特撮TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』 [1966TBS系列放映] の第27話『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』 [脚本:山浦弘靖金城哲夫 原案:熊谷健 監督:梶田興治 特技監督:川上景司] と謂うモノも存在しているのだ。

しかも、そんな指摘はいくらでも可能だ。

第32話を、侵略者による通信及び交通の妨害行為の物語として眺めてみれば、第24話『北へ還れ! (Return To The North!)』 [脚本:市川森一 監督:満田かずほ 特殊技術:高野宏一] と謂う逸話が先行してある。
また第32話を、異星人による地球破壊工作の物語として眺めてみれば、第6話『ダーク・ゾーン (Dark Zone)』 [脚本:若槻文三 監督:満田かずほ 特殊技術:有川貞昌] と謂う逸話が先行してある。
さらに、地球を壊滅的な危機に陥らせる事が可能な巨大なちからを、ナニモノかの遠隔操作で果たし得る物語と看做せるのであるのならば、特撮TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』の、第13話『ガラダマ (Garadama)』 [脚本:金城哲夫 監督:円谷一 特技監督:的場徹] とその続編である第16話『ガラモンの逆襲 (Garamon Strikes Back)』 [脚本:金城哲夫 監督:野長瀬三摩地 特技監督:的場徹] での、隕石怪獣ガラモン (Garamon, The Meteorite Monster) とそれを遠隔操作する電子頭脳 (Meteorite) と謂う存在を思い出すべきなのであろう。

そして、ウルトラセブン (Ultraseven) の必殺技、アイスラッガー (Eye Slugger) で切断された怪獣 (Kaiju) 頭部が、彼等の死闘の際に、新たなる役割を任じられていると解してみれば、これまた猛毒怪獣ガブラ (Gabura, The Deadly Poisonous Monster) が登場する第23話『明日を捜せ (Search For Tomorrow)』 [脚本:南川竜上原正三 監督:野長瀬三摩地 特殊技術:的場徹] と謂う逸話がその存在を主張している。
尤も、アイスラッガー (Eye Slugger) に於いては、その必殺技が初登場した第3話『湖のひみつ (The Secret Of The Lake)』 [脚本:金城哲夫 監督:野長瀬三摩地 特殊技術:高野宏一] で宇宙怪獣エレキング (Eleking, The Space Monster) の肢体を幾つにも分断せしめて以来、その威力はウルトラセブン (Ultraseven) の特技の中でも一際そのおおきさつよさを主張してきたのだから、それすらをも凌駕する、敵対する側の能力の存在を主張せしめる必要性が作劇上、あったのかもしれない。もしもそう考える事が可能であるのならば、猛毒怪獣ガブラ (Gabura, The Deadly Poisonous Monster) の頭部とメカニズム怪獣リッガー (Rigger, The Mechanism Monster) の頭部は同種の任を負わされていたと看做すべきなのかもしれない。

と、謂う様な、重箱の隅をつつく行為に勤しんでいると、いつしか、第32話独自の設定もしくはその魅力を見喪ってしまう。
その一方で、第32話の先行作品の殆どが、その重複している要素や設定を除去したところで、逸話独自の魅力や特色を損なう事は殆どない。重複部とは異なる部分に、そこで語られるべき物語の本質が備わっていて丁寧に叙述されていたり、さもなければ、その重複部にある問題点を深く抉っている場合があるからだ。
つまり、第32話は限りなく表層的な素材ばかりが横溢している様に観えてしまうのだ。
それ故に、そんな徒労にも似た作業に勤しんで、見喪って彷徨って辿り着いた結論が、その逸話はカプセル怪獣アギラ (Agira, The Capsule Monster) 初登場の物語であるとなってしまうのである。

果たして、それで良いのであろうか?

images
「この回は、小惑星とウルトラホーク内のシーンがほとんどで、先ほどの三人 [筆者註:アマギ隊員 (Amagi) [演:古谷敏 (Bin Furuya)]、フルハシ・シゲル (Shigeru Furuhashi) [演:石井伊吉 (Iyoshi Ishii)] そしてモロボシ・ダン (Dan Moroboshi)] 以外はあまり出番がありませんでした。セット中心の撮影で、ロケもなかったかと思います。女の出る幕はないという感じの作品で、私もほとんど出ていないんじゃないでしょうか」 [『セブンセブンセブン:アンヌ再び… (Seven Seven Seven : Anne Again)』 [ひし美 ゆり子 (Yuriko Hishimi) 著 2001年刊行] より引用]
友里アンヌ (Anne Yuri) 隊員 [演:ひし美 ゆり子 (Yuriko Hishimi)] がコメントを遺しているので、敢えて、彼女が中心に映っている画像をこちらから引用してみた。

次回は「」。

附記 1. :
メカニズム怪獣リッガー (Rigger, The Mechanism Monster) と謂うそもそもの名称からぼくはいつも、ミシン・メーカー (Sewing Machine Maker) のリッカー (Riccar) を連想してしまう。
そこから発売されている編み機 (Knitting Machine) の、重要な器具のひとつ、Kキャリッジ (Carriage) そのハンドル部 (Handle) としてメカニズム怪獣リッガー (Rigger, The Mechanism Monster) が装備されており、彼がその機械を左右へと往復する事によって、素敵な編み物が生成されていく、そんな妄想を抱いてしまうのだ。
尤も、編み機 (Knitting Machine) の器具としてそこにあるべきは、四足獣 (The Quadrupe) めいた身体を得た怪獣ならばなんでも相応しいであろうし、また、それ以上に、身体下部が人工的な車輌である恐竜戦車 (Dinosaur Tank, The Tank Monster) [特撮TV番組『ウルトラセブン (Ultraseven)』第28話『700キロを突っ走れ! (The 700 Kilometer Run!)』 [脚本:上原正三 監督:満田かずほ 特殊技術::高野宏一] に登場] ならば、尚の事相応しそうなのである。
その特撮TV番組で友里アンヌ (Anne Yuri) を演じたひし美 ゆり子 (Yuriko Hishimi) の主著『セブンセブンセブン:アンヌ再び… (Seven Seven Seven : Anne Again)』に於いて、カプセル怪獣アギラ (Agira, The Capsule Monster) の名称は円谷粲 (Akira Tsuburaya) をもじったモノと謂う指摘が登場するが、その顰みに倣って、リッカー (Riccar) 転じてメカニズム怪獣リッガー (Rigger, The Mechanism Monster) である、と謂う様な指摘がどこかの誰かによってなされていないかなぁと、妄想の屋上奥を重ねている次第である。
いや、なぜ、ここで円谷粲 (Akira Tsuburaya) とリッカー (Riccar) が死闘を演じなければならないのか、は全然解らないんだけどねぇ。

附記 2. :
曖昧な記憶で申し訳ないが、ムック『怪獣ウルトラ図鑑 (Kaiju Ultra Picture Book)』 [大伴昌司 (Shoji Otomo)、円谷プロダクション (Tsuburaya Productions Co., Ltd.) 著 1968秋田書店 (Akita Shoten) 刊行] に於いて、第32話の舞台となった、小惑星 (Asteroid) ディン (Din)の"大図解"が掲載されてあったと思う。地球に飛来したその小惑星 (Asteroid) が、あたかも洋上に浮かぶ要塞の様な風貌をもって航行しているヴィジュアルが見開き2頁で掲載されてあったかと思う [恐らく、初出は、大伴昌司 (Shoji Otomo) が大図解 (Peerfect Illustrated) の連載を放っていた少年マガジン (Weekly Shounen Magazine) でのグラビア頁である]。
だとすると、番組放映時には、第23話は特撮TV番組『ウルトラセブン (Ultraseven)』全49話の中でも重要な放映回として位置付けられていたと謂う可能性はある。
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