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2021.02.21.08.07

『クリスタル・ナハト (KRISTALL NACHT)』 by パンタ (PANTA)

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パンタ・アンド・ハル (Panta And Hal) [19771981年活動] の時代は単純に格好いいな、そう思っていた。しかし、そう思いながらもその時代、その作品を購入する事はなかった。
パンタ (Panta) の作品をリアル・タイムで入手したのは実は、本作が初めてなのである。

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パンタ・アンド・ハル (Panta And Hal) 名義の諸作を購入しなかったのは、単純に経済的な事由である。まだ、学生だった。それらを入手したのはCD化されて再発されてからの事である。
[左から『マラッカ (Maracca)』 [1979年発表]、1980X (1980X) [1980年発表] そしてライヴ・アルバム『トーキョー・ナイト・ライト (Tko Night Light)』 [1980年発表]]

本作のブックレットには次の様なことばで始まる無署名のライナー・ノーツが掲載されている。

「クリスタル・ナハト -水晶の夜 - とは、1938年11月8日、ナチス党員による、ベルリン西部のユダヤ人商店街破壊事件が起きた夜のことをいう。暴行の凄惨さと裏腹に、ウィンドーのガラスの破片が飛び散り、水晶の様ように美しく輝いた。そして、この夜を皮切りに、600万人ものユダヤ人虐殺がはじまったのだ<後略>」

その冒頭を受けて、そんな意図をもった作品はパンタ・アンド・ハル (Panta And Hal) 時代には既に発想され、その間の約10年間、パンタ (Panta) のなかで練られ始め、発表の期が熟すのを待っていた、そんな文章がこの後に綴られてある。

そして、そんな創作者の制作に向かうまでの過程は、本作発表時には、本作を紹介する媒体のどこでも触れられていた事なのである。
つまり、裏からみれば、この過程こそが、商品としての本作の最大のセールス・ポイントであるのだろう。

と、謂う様な穿った視点をもつと、無署名のそのライナー・ノーツには違和感を抱く。そこにあるべきはパンタ (Panta) 自身の言葉であるべきではないか。
また、仮に、パンタ (Panta) 自身が作品自ら、楽曲自らが語るモノで自身のメッセージを代弁せしめていると自負しているのであるのならば、無署名のそのライナー・ノーツそのものが不要のモノである。
そこに綴られてある言説は、発売元が発するプレス・リリースや、他者が綴る解説や紹介に相応しいモノであって、作品の内部に掲載されているべきモノとは、ぼくには思えないのだ。

と、作品のある一部、些事に向けて不平不満を綴ってしまうのは、実はぼくが本作をいつまでたっても理解出来ていないからなのだろう。

ひとつには何故、と謂うモノがある。ひとつには何故いま、と謂うモノがある。そしてさらにひとつには、どこの誰に向けてと謂うモノがある。

かつてあった [と敢えて綴る] 歴史の一齣をとりあげて、それを題材にいま、ひとつの創作物として発信する。それは、創作者にとっては、そうせざるを得ない必須必定の行為であるのは、ぼくには解る。
しかし、それを受け止める土壌がぼくにはない。いや、仮にあったとしても一体、どの立場にぼくは立つべきなのか。これから起こるかもしれない、いや、現にいま起こっている、第2第3の水晶の夜 (Kristallnacht) の当事者達 [被害者達にも加害者達] にも傍観者達にもそして全く赤の他人にもぼく [達] はなり得る [もしかしたら謀らずも既にそうなってしまっている] 存在なのだ。

歌詞には主題となったその事件の、キーワードと看做せる語句が幾つも散りばめられてある。それらをひとつひとつ拾っていくだけで、水晶の夜 (Kristallnacht) [その語句はヨーゼフ・ゲッベルス (Joseph Goebbels) の発言から命名されたと謂う] に対するパンタ (Panta) の想いと謂うモノは理解出来るのだろう。
しかし、それをぼく達自身のモノとして引き受ける事が出来るのだろうか、と謂う気はする。
そして、そんなパンタ (Panta) の想いとは隔絶したかたちで、普遍的なテーマ、現在のぼく達に内在する問題として受け止める事が出来るのだろうか、と謂う気もする。

つまり、ぼくは、この作品からは隔靴掻痒の感ばかりを得てしまっているのである。

幾つかの曲は単純に格好いい。
作品が抱えているテーマ、作品に提示さえようとする主題を一旦、忘れてしまった上で楽曲に身を投じてしまう方が、ぼくにとっては心地よい。そんな聴き方は、ある種のヒトビトにとっては肯じられない聴き方であろう。
だが、ぼくはこんな事を思う。
そんなテーマや主題が時が経つと共に忘れさられ、風化されたその後の方が、実はこれらの楽曲の真価が発揮されるときではないだろうか、と。
それを聴いてふと憶い出す。もしくは、ふと疑問を抱く。果たして、ここに込められたモノはなんなのだろうか、と。
そして、それはもしかすると、かつてあった問題、既に解決されてしまった疑義であるのかもしれない。にも関わらずに、それらの楽曲は依然、音楽としての魅力を放っている。そうであるのならば、恐らく誰にとっても悦ばしい事であるのだろう。
だがしかし、それはもしかすると、いまだに解決出来ていない問題、看過する事の出来ない疑義であるのかもしれない。そして、恐らくそんな可能性の方がたかいだろう。
つまり、もしかすると、本作はいまこそ聴くべきモノなのかもしれない。さもなければ、いずれ、いつの時にか、であろう。

なにかを鼓舞するメロディ、なにかを想起させるメロディがそこにある。しかし、そこに載せられる歌詞が非常に居心地が悪い。妙なひっかかり、ささくれだっている様に思えるのだ。一言で断罪してしまえば、歌詞は常に字余りで、過剰な語句の響きをメロディは受け止めかねているとも思える。もしかしたら、その歌詞自身が求めているメロディは別にあるのではないだろうか。そんな気さえしてくる。
否、もしかすると、それは作詞作曲者であるパンタ (Panta) 自身が意図したモノなのかもしれない。メロディと歌詞の不一致感が、逆に、その両者を際立たさているとも思えるからだ。

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水晶の夜 (Kristallnacht) を題材とした音楽作品は本作の他に幾つか発表されてきている様だ。ぼくはそのうちの1作品、ジョン・ゾーン (John Zorn) のアルバム『クリスタルナハト [水晶の夜] (Kristallnacht)』 [1993年発表] を入手している。現在では、彼が主宰するツァディク・レコード (Tzadik Records) から、ジョン・ゾーン (John Zorn) の自身の作品を紹介するアーカイヴァル・シリーズ (Archival Series) から再発されている [と、謂うよりもぼくからみれば、同レーベル内のラディカル・ジューイッシュ・カルチャー・シリーズ (Radical Jewish Culture) の発動の契機がこの作品である様に思えてもいる]。CDブックレットにはリン・ヘルマン (Lynne Tillman) [日本盤訳文ママ] 、エドモン・ヤベス (Edmond Jabes) [同ママ] そしてリチャード・フォアマン (Richard Foreman) の文章が引用されている。

ものづくし (click in the world!) 220. :『クリスタル・ナハト (KRISTALL NACHT)』 by パンタ (PANTA)


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クリスタル・ナハト (KRISTALL NACHT)
』 by パンタ (PANTA)

1. 終宴 THE END
2. ダーダーヤーヤー ДД-JaJa
3. BLOCK25 AUSHWITZ
4. ナハト ムジーク NACHT MUSIK
5. プラハからの手紙 EIN BRIEF VON PLAG (Original Version)
6. 聖樹 GERNIKAKO APBOLA
7. メールド・グラス MER DE GLACE
8. 4759
9. 夜と霧の中で BEI NAGHT UNT NEBEL
10. オリオン頌歌 第2章 ORION

All songs Words & Music by PANTA
All Songs Arranged by TSUTOMU NAKAYAMA

Vocal : PANTA
Keyboards & Programming & Guitar Solo 9 : TSUTOMU NAKAYAMA
Guitar : TAKUMI KIKUCHI
Bass : HIROMITCHI
Drums : YOSHIHARU NISHIYAMA
All Songs Arranged by TSUTOMU NAKAYAMA

Produced & Directed by SEIICHIRO ISHIHARA
Co-Produced & Managed by YASUNORI ISHII (5LDS)
Engineer : EIJI "Q" MAKINO
Assistant Engineer : MASARU OKAZAWA (AVACO)
         MAKOTO KONDO (VICTOR)
         AKIO KOBAYASHI ZERO)
         MASANORI CHINZEI (MAGNET)
         KAZUYA YAMASHITA (VICTOR)

Cover Designer : HAKUBUN ARAI
        MIZUKO EGASHIRA
Photographer : HIRO ITO
Art Co-ordinator : TAKASHI FURUI

Recorded at VICTOR STUDIO, AVACO STUDIO, ZERO STUDIO & MAGNET STUDIO (25. DEC. 1986 - 29, MAY. 1987)

Special Thanks to KORG (DS-8, EX-800), PEARL INN

発売元:ビクター音楽産業株式会社
MANUFACTERED BY VICTOR MUSICAL INDUSTRIES, INC. Tokyo Japan 1987

猶、上掲のオリジナル作品画像は、本作発表時のエル・ピー・レコード (Long PLay Records) 仕様のモノである。同時発売のコンパクト・ディスクは同じ写真のカラー作品を基としたモノである。
この直下に掲載しておく。
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