2009.01.20.22.51
タッコングとは、『帰ってきたウルトラマン』の第1話「怪獣総進撃」及び第2話「タッコング大逆襲」
に登場した怪獣の名前である。
その名前から想像出来る様に、蛸(Octopus)をモチーフとした怪獣であるにも関わらず、我々の抱く蛸(Octopus)のイメージから遥かに離れた造形となっている。
蛸(Octopus)と聴いて我々が抱くイメージとは、恐らく、次の様なものだろう。
大きな頭部に八本の長い触手をもった軟体動物(Mollusca)。
それは、学術的な見地からすれば、頭足類(Cephalopod)というネーミングが浮かぶだろうし、葛飾北斎(Katsushika Hokusai)の手にかかれば、女人に吸いつき絡みつくその様を擬態化させた『蛸と海女(The Dream Of The Fisherman's Wife)』になるだろうし、田河水泡(Suiho Tagawa)の手にかかれば、船長の装いをした蛸の八ちゃんになるのである[って、戦前の漫画を例えに引くのも、なんだかなぁ~、ではあるのだけれども]。
そして、タッコング以前に登場した蛸(Octopus)の怪獣も、その生物学的特徴に非常に忠実なのである。
先ず、海外作品から紹介すると、レイ・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen)によるダイナメーション(DynaMation)による『水爆と深海の怪物
(It Came From Beneath The Sea)』では、予算の都合上[泪]、六本の触手をもった怪物が縦横無尽に暴れ回った。その後にもチェコ(Ceska Republika)の映像作家カレル・ゼマン(Karel Zeman)による映画『悪魔の発明
(Vynalez Zkazy)』や、後にTV番組『原子力潜水艦シービュー号(Voyage To The Bottom Of The Sea)』にスピン・アウトした映画『地球の危機
(Voyage To The Bottom Of The Sea)』や、映画『ジョーズ
(JAWS)』のヒットに当て込んだ海洋パニック映画『テンタクルズ
(Tentacoli)』等、蛸(Octopus)の怪獣が登場した映像作品は、枚挙に暇がない。
西洋人にとっては蛸(Octopus)は悪魔の魚(Devilfish)なので、悪役として登場させるには、申し分のないキャラクターなのだろう。
その一方で、本邦の円谷英二(Eiji Tsuburaya)もまた、過去何度も蛸(Octopus)の怪獣を登場させているが、そのいずれも、カリカチュア(Caricature)させたりデフォルメ(Deformation)させたりはせずに、活きた蛸(Octopus)をそのまま起用している。『キングコング対ゴジラ
(King Kong Vs. Godzilla)』や『フランケンシュタイン 対 地底怪獣
(Frankenstein Conquers The World)』や『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ
(War Of The Gargantuas)』等である。
そしてその円谷英二(Eiji Tsuburaya)の伝統はそのままTV作品にも受け継がれて1966年の『ウルトラQ』 第23話「南海の怒り」
での大ダコ スダールの登場となるのである。
にも関わらずに、大ダコ スダールが登場してから5年後の1971年。
『ウルトラQ』~『ウルトラマン』~『ウルトラセブン』といった第1期ウルトラシリーズが終了してから3年後の1971年。
第2期ウルトラシリーズの嚆矢とも言うべき『帰ってきたウルトラマン』に登場した蛸(Octopus)の怪獣タッコングの異様な肢体は、それまでの蛸(Octopus)の怪獣という文脈を悉く裏切るものだったのである。
先ず球形状の胴体に、短く図太い四肢が生えている。そして、その球状の胴体の中央部に貼付く様に、一対の眼、一対の鼻孔、ひとつの口顎が並んでいる。そして、彼が蛸(Octopus)の怪獣であるその証左は、胴体全体に均一に貼付いている吸盤(Suction Cup)なのである。
つまり、本来ならば、大きな頭部から突出した八本の触手に備わるべき吸盤(Suction Cup)が、その触手を喪失した代わりに、頭部=胴体を覆ってしまったのである。
タッコングを初めて目撃した数十年前の僕は、彼の姿態をそれほど異様なものとは想わなかった。と、いうのも、彼がオイル(Petroleum)を主食としているという情報があったからだ。つまり、僕は、生物の蛸(Octopus)としての要素よりも、オイル(Petroleum)を喰う=蓄えるアナロジー(Analogy)として、石油タンク(Oil Tank)のメタファー(Metaphor)と認識していた様だ。蛸(Octopus)が石油タンク(Oil Tank)化したのではなくて、蛸(Octopus)化した石油タンク(Oil Tank)として。

この認識は、今考えても、決して間違ってはいないと想う。想うのだけれども、毎年末、年越しの買い出しにスーパーに往く度に、頭を悩ませる事がある。
これまでタッコングを生物としての蛸(Octopus)の視点で観ていたのは、誤りではないのか、と。
つまり、店頭に並んだ茹蛸(Japanese Boiled Octopus)の、触手を丸め込んだ球状になったその姿を観るにつけ、この形状を抽象化すれば、タッコングそのものになる筈なのである、と。
尚、このタッコングの造形を担当したのが、安丸信行。『キングコングの逆襲
(King Kong Escapes)』に登場した原始怪獣 ゴロザウルス(Gorosaurus)の造形を担当した人物と言えば、解るヒトは解るだろう。
次回は「ぐ」。
その名前から想像出来る様に、蛸(Octopus)をモチーフとした怪獣であるにも関わらず、我々の抱く蛸(Octopus)のイメージから遥かに離れた造形となっている。
蛸(Octopus)と聴いて我々が抱くイメージとは、恐らく、次の様なものだろう。
大きな頭部に八本の長い触手をもった軟体動物(Mollusca)。
それは、学術的な見地からすれば、頭足類(Cephalopod)というネーミングが浮かぶだろうし、葛飾北斎(Katsushika Hokusai)の手にかかれば、女人に吸いつき絡みつくその様を擬態化させた『蛸と海女(The Dream Of The Fisherman's Wife)』になるだろうし、田河水泡(Suiho Tagawa)の手にかかれば、船長の装いをした蛸の八ちゃんになるのである[って、戦前の漫画を例えに引くのも、なんだかなぁ~、ではあるのだけれども]。
そして、タッコング以前に登場した蛸(Octopus)の怪獣も、その生物学的特徴に非常に忠実なのである。
先ず、海外作品から紹介すると、レイ・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen)によるダイナメーション(DynaMation)による『水爆と深海の怪物
西洋人にとっては蛸(Octopus)は悪魔の魚(Devilfish)なので、悪役として登場させるには、申し分のないキャラクターなのだろう。
その一方で、本邦の円谷英二(Eiji Tsuburaya)もまた、過去何度も蛸(Octopus)の怪獣を登場させているが、そのいずれも、カリカチュア(Caricature)させたりデフォルメ(Deformation)させたりはせずに、活きた蛸(Octopus)をそのまま起用している。『キングコング対ゴジラ
そしてその円谷英二(Eiji Tsuburaya)の伝統はそのままTV作品にも受け継がれて1966年の『ウルトラQ』 第23話「南海の怒り」
にも関わらずに、大ダコ スダールが登場してから5年後の1971年。
『ウルトラQ』~『ウルトラマン』~『ウルトラセブン』といった第1期ウルトラシリーズが終了してから3年後の1971年。
第2期ウルトラシリーズの嚆矢とも言うべき『帰ってきたウルトラマン』に登場した蛸(Octopus)の怪獣タッコングの異様な肢体は、それまでの蛸(Octopus)の怪獣という文脈を悉く裏切るものだったのである。
先ず球形状の胴体に、短く図太い四肢が生えている。そして、その球状の胴体の中央部に貼付く様に、一対の眼、一対の鼻孔、ひとつの口顎が並んでいる。そして、彼が蛸(Octopus)の怪獣であるその証左は、胴体全体に均一に貼付いている吸盤(Suction Cup)なのである。
つまり、本来ならば、大きな頭部から突出した八本の触手に備わるべき吸盤(Suction Cup)が、その触手を喪失した代わりに、頭部=胴体を覆ってしまったのである。
タッコングを初めて目撃した数十年前の僕は、彼の姿態をそれほど異様なものとは想わなかった。と、いうのも、彼がオイル(Petroleum)を主食としているという情報があったからだ。つまり、僕は、生物の蛸(Octopus)としての要素よりも、オイル(Petroleum)を喰う=蓄えるアナロジー(Analogy)として、石油タンク(Oil Tank)のメタファー(Metaphor)と認識していた様だ。蛸(Octopus)が石油タンク(Oil Tank)化したのではなくて、蛸(Octopus)化した石油タンク(Oil Tank)として。

この認識は、今考えても、決して間違ってはいないと想う。想うのだけれども、毎年末、年越しの買い出しにスーパーに往く度に、頭を悩ませる事がある。
これまでタッコングを生物としての蛸(Octopus)の視点で観ていたのは、誤りではないのか、と。
つまり、店頭に並んだ茹蛸(Japanese Boiled Octopus)の、触手を丸め込んだ球状になったその姿を観るにつけ、この形状を抽象化すれば、タッコングそのものになる筈なのである、と。
尚、このタッコングの造形を担当したのが、安丸信行。『キングコングの逆襲
次回は「ぐ」。
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