this night wounds time, 『ザ・ラウンジ・リザーズ(THE LOUNGE LIZARDS)』 by ザ・ラウンジ・リザーズ(THE LOUNGE LIZARDS)
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2009.01.18.15.10

『ザ・ラウンジ・リザーズ(THE LOUNGE LIZARDS)』 by ザ・ラウンジ・リザーズ(THE LOUNGE LIZARDS)

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モノクロの写真から漂う、アンニュイとも疲弊感ともとれる気怠い表情を観せる男達の中にあって、眼光鋭い視線をこちらに向けている男が居る。サックスを手にした、異様に縦に長い顔(上掲の拙イラストだと横長だけれども)をした、その男の名はジョン・ルーリー(John Lurie)という。本作品を産み出したバンド、ザ・ラウンジ・リザーズ(The Lounge Lizards)のリーダーである。

その異様に縦に長い顔が一般に知られる様になったのは、ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督作品の映画『パリ、テキサス(Paris, Texas)』の事と想う。妻[演:ナスターシャ・キンスキー(Nastassja Kinski)]の行方を追う主人公[演:ハリー・ディーン・スタントン(Harry Dean Stanton)]の行手を阻む、いかにも如何わしいポン引きのお兄ちゃんの役で登場する。
そして、その如何わしいポン引きのお兄ちゃんジゴロ擬きヒモの様な輩を総称して、ラウンジ・リザード(Lounge Lizard)というのである。まぁ、つまりは、ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督の駄洒落みたいな起用の仕方ではあるのだけれども、このホンのチョイ役であるにも関わらずに、その異様に長い顔は随分と映画の中で、印象深い趣がある。

その一方で、ジョン・ルーリー(John Lurie)は、ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)の処女作『パーマネント・バケーション(Permanent Vacation)』以来、彼の初期作品の映画音楽を手がけている。その延長線上で、映画『ダウン・バイ・ロー(Down By Law)』では、トム・ウェイツ(Tom Waits)、ロベルト・ベニーニ(Roberto Benigni)と共に主役の駄目男三人組の内の一人を演じてしまう。勿論、それは映画『パリ、テキサス(Paris, Texas)』での好評を受けてのものでもあるのだが。
話を戻して、それらの映画における映画音楽作家としての彼の役割を観てみると、ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)の持つロック的資質を際立たせる役割を演じている様に想える。
映画の主要モチーフになったり、主題曲的な役割を演じる楽曲が、当時のジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)作品には必ず観られた。それは、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)だったり、スクリーミン・ジェイ・ホーキンス(Screamin' Jay Hawkins)だったり、トム・ウェイツ(Tom Waits)だったりするから、一般的なロックの文脈とは異なったものだけれども。それらの映画の主題となる楽曲の背後に廻り、蠢く様な呟く様な囁く様な、そんな風に絶えず鳴り響いている音楽が、スクリーンを彩っている。
その、蠢く様な呟く様な囁く様な音楽が、ジョン・ルーリー(John Lurie)の作品なのである。

さて、ここで本作品の登場となる。
時系列を整理すると、『パーマネント・バケーション(Permanent Vacation)』が1980年。ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)の次作であり彼の出世作となった『ストレンジャー・ザン・パラダイス(Stranger Than Paradise)』[ジョン・ルーリー(John Lurie)はここでは主演と音楽を担当している]、『パリ、テキサス(Paris, Texas)』が1984年。
そして、本作品が1980年制作の翌1981年発表作品である。

作品発表当時、本作品での奇妙に捩じくれたジャズ感覚を、フェイク・ジャズ(Fake Jazz)=紛い物のジャズと呼んでいた様だけれども、今の僕の耳で聴くと非常に端正に響いているから不思議。「ハーレム・ノクターン(Harlem Nocturne)」やセロニアス・モンク(Thelonious Monk)の二作品[「ウェル・ユー・ニドゥント(Well You Needn't)」と「エピストロフィー(Epistrophy)」]も、作品発表当時は、斬新な解釈としてかなり話題になった記憶がするのだけれども、この作品発表以降に登場した様々な解釈に聴き慣れた耳から言わせてもらえば、ストレートな解釈である。
と、はいうものの、例えば作品発表当時は非常に物議を醸し賛否両論で喧々囂々としていたオーネット・コールマン(Ornette Coleman)の音楽が、今や、ジャズのメイン・ストリームに位置している、というのとは、訳が違う。そおゆう意味では、「ハーレム・ノクターン(Harlem Nocturne)」の作者アール・ヘイゲン(Earle Hagen)も、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)のメイン・ストリームでの位置づけを問われれば、怪しいものもあるのだけれどもね。
あくまでも、本作品は、ジャズという一般的な認識からは、一歩もしくは二歩、踏み外している。その踏み外しを大きくさらに外部へと踏み外させていないのは、もしかしたら、収録楽曲の演奏時間が3~4分というコンパクトさの故かもしれないし、プロデューサーのテオ・マセロ(Teo Macero)の匠かもしれない[マイルス・デイヴィス(Miles Davis)のプロデューサーであった彼の"仕事"とはなんなのか、実はとっても気になるのですが]。
多分、本作品をリアル・タイムで聴いた人々の多くは、不協和音の様に、ギリギリと鳴り響くアート・リンゼイ(Arto Lindsay)のギターに吃驚した結果によるのかもしれない。そして、もしかしたらアントン・フィアー(Anton Fier)の非ジャズ・イディオムのドラミングに違和感を感じてしまったのかもしれない。本作品だけの参加で脱退してしまったふたりの後の歩みは、このバンド以上の音楽的な評価となって現れているのだから、彼らの演奏を受け入れられる素地を、聴く方も鍛えられているのかもしれない。

ものづくし(click in the world!)76.:
『ザ・ラウンジ・リザーズ(THE LOUNGE LIZARDS)』
by ザ・ラウンジ・リザーズ(THE LOUNGE LIZARDS)


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ザ・ラウンジ・リザーズ(THE LOUNGE LIZARDS)』 BY ザ・ラウンジ・リザーズ(THE LOUNGE LIZARDS)

1.インシデント・オン・サウス・ストリート
 INCIDENT ON SOUTH STREET (J. LURIE)...(3:21)
2.ハーレム・ノクターン
 HARLEM NOCTURNE(EARLE HAGEN)...(2:04)
3.ドウ・ザ・ロング・シング
 DO THE WRONG THING (J. LURIE / S. PICCOLO)...(2:39)
4. オ・コントレール・アルト
 AU CONTRAIRE ARTO(J. LURIE)...(3:22)
5.ウェル・ユー・二ドゥント
 WELL YOU NEEDN'T (THELONIUS MONK)...(1:53)
6.バラッド
 BALLAD (J. LURIE)...(3:22)
7.ワングリング
 WANGLING (J. LURIE)...(2:58)
8.コンクゥエスト・オブ・ラー
 CONQUEST OF RAR (J. LURIE / E. LURIE / A. FIER)...(3:12)
9.ディメンテッド
 DEMENTED (J. LURIE)...(2:01)
10.アイ・リメンバー・コニー・アイランド
 I REMEMBER CONEY ISLAND(J. LURIE)...(3:27)
11.ファッティ・ウォークス
 FATTY WALKS (J. LURIE)...(2:51)
12.エピストロフィー
 EPISTROPHY (THELONIUS MONK / KENNETH CLARKE)...(4:12)
13.ユー・ホーント・ミー
 YOU HAUNT ME (J. LURIE)...(3:40)

JOHN LURIE : SAXPHONE
EVAN LURIE : KEYBOARDS
STEVE PICCOLO : BASS
ARTO LINDSAY : GUITAR
ANTON FIER : DRUMS

PRODUCED BY TEO MACERO
RECORDED AT CBS RECORDING STUDIOS IN NEW YORK ON 21-22, 28-29 1980
ENGINEERED BY FRANK LAICO AND TED BROSMAN
MIXED BY DON PULUSE AT CBS RECORDING STUDIOD IN NEW YORK ON AUGUST 6, 14-15 1980
ANTON FIER APPEARS COURTESY OF STIFF RECORDS AND USES SONOR DRUMS AND PAISTE CYMBALS
SPECIAL THANKS TO LEISA AURALIA STROUD, BOB PARTNOY, CHARLIE BEESLEY, TOM WRIGHT, DANIEL SACHS, BOB CROZIER AND P.A.S.S.

FRONT COVER PHOTO BY FRAN PELZMAN, SLEEVE DESIGN BY PETER SAVILLE

(P) 1981 EG RECORDS LTD.
(C) 1981 EG RECORDS LTD.

COPYRIGHT IN THIS SOUND RECORDING IS OWNED BY EG RECORDS LTD.

僕の持っている日本盤CDには、大鷹俊一の解説が掲載されています。
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