2020.07.07.08.04
杖 (Walking Stick) はないが傘 (Umbrella) はある。
帽子 (Hat) の中には麦藁帽子 (Straw Hat) もあって、靴 (Shoes) の中にはゴム長靴 (Rubber Boots) もある。
鞄 (Bag) をいくつか、取り扱っているのは、無論である。
そして、そんな品揃えの服飾品 (Clothing) のなかに、サスペンダー (Suspenders) が1品並んでいる。
と、綴ったのはどこぞのアパレル・ショップ (Apparel Shop) でも洋品店 (Men's Shop) でもなくて、ムック (Mook) 『男の定番事典 [服飾品] (Standard Number)』 [1987年 編集:婦人画報社書籍編集部] の事である。そこで取り上げて掲載している品々をざっくり眺めた、その結果なのだ。
そのムック (Mook) は、男性用服飾品 (Clothing For Men) の品々を、1品毎、見開き2頁のなかで紹介してある。左頁ではその1品の白黒写真を掲載すると共に、その写真で、素材名 (Material) と柄名 (Pattern)、そしてディティール (Detail) ないし備考 (Remark) を日英2言語で図示している。右頁ではその1品の紹介、主に、その品の起源とその品を"定番 (Standard Number)"足らしめている製造元 (Manufacturer) の逸話 (Anecdote) や蘊蓄 (Stock Of Knowledge) が綴られている。
しかも"事典 (An Encyclopedia)"であるから、50音順 ( The Order Of The Japanese Syllabary) にそれらの品々は掲載されてある。
ざっくりとその1品についての知識を得、とある場所 [それは酒場 (Bar) なのか閨房 (Bed Room) なのか、いずれにしろそんな知識が積極的には必要とはされていない場所である] で披露するには至極便利な"事典 (An Encyclopedia)"ではある。
そして、そこに掲載されている文章から得られる情報に感心すると同時に、その情報の伝達様式ないし表現の手法に鼻白む時がある。論旨の進め方が、定石どおりで古典的なモノに思えるからだ。
とは謂え、その古典的な定石が、あまりにも守旧であるが故に、時にはぼくに、爆笑を誘発させる時がないでもない。
例えば、冒頭に綴った麦藁帽子 (Straw Hat) やゴム長靴 (Rubber Boots) の存在である。それを、さも1級の"定番 (Standard Number)"商品として祀りあげてしまう点が、視点をずらしてみると、とても可笑しいのである。
きっと、これは、この"事典 (An Encyclopedia)"の編集方針が、ヴァンジャケット (Van Jacket inc.) を通じて知ったアイビールック (Ivy League) への憧憬と謂うところにあるからこそ、起こっている事象であろう。いや、さもなければ、ヴァンジャケット (Van Jacket inc.) 経由アイビールック (Ivy League) で身を固めた編集者の趣味嗜好が色濃く反映したモノなのだろう。無論、ムック (Mook) の母体である雑誌『メンズクラブ (Men's Club Magazine)』 [1954年創刊] の編集方針が反映している事は当然であろう。
それ故に、モーニングコート (Morning Dress) は紹介されていても、絹高帽 (Top Hat) は一顧だにされていないのであろう [だから杖 (Walking Stick) もないのも当然ではなかろうか]。
ちなみに、上の段落での文章末尾が総て推測を意図する助動詞 (Auxiliary Verb) が充てられてあるのは、この"事典 (An Encyclopedia)"には、前書き (Preface) も後書き (Postscript) も一切、ないからなのである。
あるのは、凡例 (Explanatory Notes) の様な面持ちで冒頭にある『本書の使い方』と謂う写真頁と、追記 (Postscript) の様に綴られてある、掲載出来なかった謎の1品である『京大型開襟シャツ (Open‐necked Shirt By Kyoto University)』に関する追想なのである。
と、本題に入るまえの枕 (Makura : Prelude) がやたらとながくなってしまった [そして、恐らく本題の方が短い]。
この"事典 (An Encyclopedia)"にある、サスペンダー (Suspenders) はトラファルガー (Trafalgar) の製品である。
そして、その製品と製造元 (Manufacturer) の紹介に入る前に、伏線 (Advance Hint) として次の様な1文がある。
「サスペンダーは、本来、ガーターと同様、下着の一部と考えられ、一目にさらすものではないとされた」
上の1文を受けて、サスペンダー (Suspenders) の構造の蘊蓄 (Stock Of Knowledge) へと、その文章は駒を進めていくのだ。つまり、下着 (Underwear) の一部だからこそ、こういう構造をもっているのだ、と。
その流れを受けて、紹介されるトラファルガー (Trafalgar) のサスペンダー (Suspenders) は、その経歴と製品内容の叙述を経て、こう語られてしまうのである。
「これなら、人前に出しても恥ずかしくない、というより、積極的に見せたくなる逸品である」
だが、ぼくが注目したいのは、引用した文章の流れとはすこし離れたところにある。
例えば、ネット上で、サスペンダー (Suspenders) を検索すると、女性のあられもない画像が混じっている事だ。英国英語 (British English) では、サスペンダー (Suspenders) はガーター (Garter) をも指す場合があるからである。
そして、それ故に、サスペンダー (Suspenders) が常時複数として綴られている理由もそこにあるからではないだろうか。
ちなみに、所謂サスペンダー (Suspenders) を指す英国英語 (British English) は、ブレイシーズ (Braces) と謂うのだが、こちらで検索すると、満面のえみをたたえたある種の女性達ばかりが登場してしまう。その単語には歯列矯正器 (Braces) と謂う意味もあるからだ。
そんな言語に右顧左眄 (Vacillate) してようやくに遭遇したのが下の画像である。
被写体である彼、ゲーリー・クーパー (Gary Cooper) の真一文字に閉じられた口腔のなかを、鈍色に輝くある器具が支配していたら、拙稿の挿入画としては、上出来なのだが。

"Gary Cooper, 1931" photo by Eugene Robert Richee
次回は「り」。
帽子 (Hat) の中には麦藁帽子 (Straw Hat) もあって、靴 (Shoes) の中にはゴム長靴 (Rubber Boots) もある。
鞄 (Bag) をいくつか、取り扱っているのは、無論である。
そして、そんな品揃えの服飾品 (Clothing) のなかに、サスペンダー (Suspenders) が1品並んでいる。
と、綴ったのはどこぞのアパレル・ショップ (Apparel Shop) でも洋品店 (Men's Shop) でもなくて、ムック (Mook) 『男の定番事典 [服飾品] (Standard Number)』 [1987年 編集:婦人画報社書籍編集部] の事である。そこで取り上げて掲載している品々をざっくり眺めた、その結果なのだ。
そのムック (Mook) は、男性用服飾品 (Clothing For Men) の品々を、1品毎、見開き2頁のなかで紹介してある。左頁ではその1品の白黒写真を掲載すると共に、その写真で、素材名 (Material) と柄名 (Pattern)、そしてディティール (Detail) ないし備考 (Remark) を日英2言語で図示している。右頁ではその1品の紹介、主に、その品の起源とその品を"定番 (Standard Number)"足らしめている製造元 (Manufacturer) の逸話 (Anecdote) や蘊蓄 (Stock Of Knowledge) が綴られている。
しかも"事典 (An Encyclopedia)"であるから、50音順 ( The Order Of The Japanese Syllabary) にそれらの品々は掲載されてある。
ざっくりとその1品についての知識を得、とある場所 [それは酒場 (Bar) なのか閨房 (Bed Room) なのか、いずれにしろそんな知識が積極的には必要とはされていない場所である] で披露するには至極便利な"事典 (An Encyclopedia)"ではある。
そして、そこに掲載されている文章から得られる情報に感心すると同時に、その情報の伝達様式ないし表現の手法に鼻白む時がある。論旨の進め方が、定石どおりで古典的なモノに思えるからだ。
とは謂え、その古典的な定石が、あまりにも守旧であるが故に、時にはぼくに、爆笑を誘発させる時がないでもない。
例えば、冒頭に綴った麦藁帽子 (Straw Hat) やゴム長靴 (Rubber Boots) の存在である。それを、さも1級の"定番 (Standard Number)"商品として祀りあげてしまう点が、視点をずらしてみると、とても可笑しいのである。
きっと、これは、この"事典 (An Encyclopedia)"の編集方針が、ヴァンジャケット (Van Jacket inc.) を通じて知ったアイビールック (Ivy League) への憧憬と謂うところにあるからこそ、起こっている事象であろう。いや、さもなければ、ヴァンジャケット (Van Jacket inc.) 経由アイビールック (Ivy League) で身を固めた編集者の趣味嗜好が色濃く反映したモノなのだろう。無論、ムック (Mook) の母体である雑誌『メンズクラブ (Men's Club Magazine)』 [1954年創刊] の編集方針が反映している事は当然であろう。
それ故に、モーニングコート (Morning Dress) は紹介されていても、絹高帽 (Top Hat) は一顧だにされていないのであろう [だから杖 (Walking Stick) もないのも当然ではなかろうか]。
ちなみに、上の段落での文章末尾が総て推測を意図する助動詞 (Auxiliary Verb) が充てられてあるのは、この"事典 (An Encyclopedia)"には、前書き (Preface) も後書き (Postscript) も一切、ないからなのである。
あるのは、凡例 (Explanatory Notes) の様な面持ちで冒頭にある『本書の使い方』と謂う写真頁と、追記 (Postscript) の様に綴られてある、掲載出来なかった謎の1品である『京大型開襟シャツ (Open‐necked Shirt By Kyoto University)』に関する追想なのである。
と、本題に入るまえの枕 (Makura : Prelude) がやたらとながくなってしまった [そして、恐らく本題の方が短い]。
この"事典 (An Encyclopedia)"にある、サスペンダー (Suspenders) はトラファルガー (Trafalgar) の製品である。
そして、その製品と製造元 (Manufacturer) の紹介に入る前に、伏線 (Advance Hint) として次の様な1文がある。
「サスペンダーは、本来、ガーターと同様、下着の一部と考えられ、一目にさらすものではないとされた」
上の1文を受けて、サスペンダー (Suspenders) の構造の蘊蓄 (Stock Of Knowledge) へと、その文章は駒を進めていくのだ。つまり、下着 (Underwear) の一部だからこそ、こういう構造をもっているのだ、と。
その流れを受けて、紹介されるトラファルガー (Trafalgar) のサスペンダー (Suspenders) は、その経歴と製品内容の叙述を経て、こう語られてしまうのである。
「これなら、人前に出しても恥ずかしくない、というより、積極的に見せたくなる逸品である」
だが、ぼくが注目したいのは、引用した文章の流れとはすこし離れたところにある。
例えば、ネット上で、サスペンダー (Suspenders) を検索すると、女性のあられもない画像が混じっている事だ。英国英語 (British English) では、サスペンダー (Suspenders) はガーター (Garter) をも指す場合があるからである。
そして、それ故に、サスペンダー (Suspenders) が常時複数として綴られている理由もそこにあるからではないだろうか。
ちなみに、所謂サスペンダー (Suspenders) を指す英国英語 (British English) は、ブレイシーズ (Braces) と謂うのだが、こちらで検索すると、満面のえみをたたえたある種の女性達ばかりが登場してしまう。その単語には歯列矯正器 (Braces) と謂う意味もあるからだ。
そんな言語に右顧左眄 (Vacillate) してようやくに遭遇したのが下の画像である。
被写体である彼、ゲーリー・クーパー (Gary Cooper) の真一文字に閉じられた口腔のなかを、鈍色に輝くある器具が支配していたら、拙稿の挿入画としては、上出来なのだが。

"Gary Cooper, 1931" photo by Eugene Robert Richee
次回は「り」。
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