FC2ブログ

2020.06.30.08.46

うみぼうず

水木しげる (Shigeru Mizuki) の描くそれが怖かった。

images
その妖怪 (Yokai) の名称に潜む坊主 (Bhikkhu) と謂う語句とはまったく違うモノがそこにはあった。
荒海に翻弄される船舶をさらに脅かす存在として、それらは波頭に姿を顕す。それは巨大で漆黒の闇である。禿頭の頭部 (Bald Head) を思わせるそこには、体躯の闇とは真逆の、白濁した光を放つモノが一対、輝いている。眼球 (Eyeball) だろうか。しかし、それを裏付けるモノは一切なく、表情や感情と謂うモノを、解読する術はない。否、それ以前にそれが生物や否や、それさえも不明なのだ。
しかし、彼等の登場によって、船舶の積荷と乗員の生命はまさに、風前の灯火 (Candle Flickering In The Wind) なのである [上掲画像はこちらから]。

と、その作品に顕れているモノをそのまま素直に書き綴ってみれば、ぼくが怖い理由はすぐに解る。
ひとつは巨大である事、ひとつは無表情である事、それに尽きる。
そして、その結果、海坊主 (Umi Bozu) の真意がなにひとつ想像もつかないが故に、怖ろしいのだ。

もしかしたら、これは妖怪 (Yokai) を描いたモノではなくて、自然の暴威を描写したのかもしれない。
もしかしたら、海坊主 (Umi Bozu) には意思も思考もなにもないのかもしれない。
もしかしたら、仮に海坊主 (Umi Bozu) に意思や思考があったとしても、その行為、船舶を覆したり破壊したり、その乗員の生命を脅かそうという認識は一切ないのかもしれない。まるで赤児同然の無垢な行為のその結果なのかもしれない。

と、そんな事ばかりが脳裏に浮かんで、それがそのまま、ぼくに恐怖をもよおさせるのだ [と、謂う事はつまり、ぼくの生命や財産を脅かそうと謂う様な意思は、ぼくにとっては怖るるに足らないと謂う事になってしまう]。

ところで、水木しげる (Shigeru Mizuki) は一体、どこからこの様な描写を見いだしたのであろうか。

本作品は恐らく、歌川国芳 (Utagawa Kuniyoshi ) 描く『東海道五十三対 桑名 (Kuwana, From The Series The Tōkaidō in Fifty-Three Pairs)』 [18431847年制作] から着想を得たモノだろうと謂うのは、すぐに解る。その作品には、荒海に浮上する漆黒の巨体が描かれてあるからだ。形骸的には、そこに登場する海坊主 (Umi Bozu) は、水木しげる (Shigeru Mizuki) 描くそれと全く同じである。しかし、『東海道五十三対 桑名 (Kuwana, From The Series The Tōkaidō in Fifty-Three Pairs)』 にある海坊主 (Umi Bozu) をみても、上に綴った様な恐怖は一切にないのだ。

ちなみに、『東海道五十三対 桑名 (Kuwana, From The Series The Tōkaidō in Fifty-Three Pairs)』と謂う作品は、桑名屋徳蔵 (Kuwana-ya Tokuzo) を主人公とする歌舞伎狂言 (Kabuki Kyogen) 『桑名屋徳蔵入船物語 (Kuwanaya Tokuzo Irifune Monogatari)』 [並木正三 (Namiki Shozo) 作 1770年初演] を題材としたモノで、その主人公の名前をそのまま東海道筋 (Tokaido) にある宿場、桑名宿 (Kuwana-juku) になぞらえたモノであって、桑名宿 (Kuwana-juku) に海坊主 (Umi Bozu) の伝説がある訳ではないらしい。

次回は「」。

附記:
水木しげる 妖怪大画報 (Shigeru Mizuki Special Illustrated Magazine)』 [1997年刊行] には、『海の大妖怪 海ぼうずの襲撃 (Attacked by Umibozu, The Sea Monster)』 [1966週刊少年マガジン掲載] と謂う作品が掲載されてあるが、上にある海坊主 (Umi Bozu) とはまた違う。そこに登場する妖怪 (Yokai) には、悪意もあれば敵意もあり、邪悪な表情に満ちている。
そしてそれが為に、上に綴った恐怖は一切、浮上する気配もないのであった。
関連記事

theme : ふと感じること - genre :

i know it and take it | comments : 0 | trackbacks : 0 | pagetop

<<previous entry | <home> | next entry>>

comments for this entry

only can see the webmaster :

tackbacks for this entry

trackback url

https://tai4oyo.blog.fc2.com/tb.php/3069-11f316da

for fc2 blog users

trackback url for fc2 blog users is here