2020.06.21.08.33
"THE REALITY OF MY SURROUNDINGS" by FISHBONE

荊棘の道 (Thorny Path)。彼等を想い出す度にそう思う。
彼等がこれから向かうであろう方向も、彼等がこれまで歩んできた方向も、荊棘 (Thorny) が繁茂している。だから、誰も彼もが、彼等のあとを追う事も出来ない。そこへ辿り着く為には、彼等とおなじ苦難が待ち構えている。
そんな事をふと思ってしまう。
だが、その時はまだ彼等の音楽は鳴り響いていない。
聴けば、身をその音楽に曝せば、そんな事は忘れる事は出来るだろう。だが、完全に払拭させる事も出来ない。
そんな取り越し苦労にも似た想いを抱き抱えたまま、彼等の音楽を聴くのだ。と、謂うのも、一聴、彼等の音楽には、そんな内心を裏付ける様なモノを一切、振り切ってしまえる様にも思えるからなのである。
眼前にあるモノを総て平らげる。そして、それを総ておのれの糧とする。
彼等の音楽とは本来、そうあるべきだ。
にも関わらずに、食餌となったモノがいつしか、おのれの束縛となってしまう。
だから、また喰う。新たに眼前に出揃った、未体験のモノを。そうして、その束縛から解放されようとする。
自由にふるまおうと試みれば試みるほど、そこに否応もなく存在する不自由を知ってしまう。
飛翔 (Flight) を試みた結果、思い知らされるのは、それを許さない重力 (Gravity) の存在だ。だが、それと同時に重力 (Gravity) があればこそ、飛翔 (Flight) に挑もうとするのだ。
彼等の、音楽上の方法論とはその様なモノである。
選ばない。選べない。総て喰う。そして、それを振り切ってしまおうとする。鼬ごっこ (Cat And Mouse) の様な、堂々巡りをしながらも、常に新天地を求めている様なのだ [もしくはその逆なのかもしれない]。
第3作である本作『リアリティ・オブ・マイ・サラウンディング (The Reality Of My Surroundings)
育ち盛りの子供が無邪気に貪り喰い、それをそのまま自身の滋養 (Nourishment) とし、おもうが儘に振る舞っている。
だが、なんだか、ここにきて、そうであるばかりもいられなくなった。そんな風に想えてしまうのである。
成長期 (Growth Period) を脱し充実期 (Period Of Influx) ともなれば、滋養 (Nourishment) の筈が無様な贅肉 (Superfluous Flesh) となってしまうかもしれない。しかもその時代は、思春期 (Puberty) でもある。考える事はいくらでもある。考えねばならない事はいくらでもでてくる。
そんな時代に発表されたのが、本作であるかの様に想える。
おのれの中にある直感だけを信じ、その瞬発力だけを信じて行動すれば、良い時代は既に終わったのだ。
頭をつかえ。智慧を巡らせ。内心はそう忠告しているのだ。
それがそのまま本作となって結実した、とぼくは思う。
しかし、それが果たして彼等になにをもたらしたのかと謂う疑問、その解答をぼくは得る事が未だに出来ていない。
だから、こうして、ずっとたわいもない比喩ばかりを弄んでいる。
考える事は幾らでもある。
ネイキッド・シティ (Naked City) ではない。
彼等に先行して登場したバッド・ブレインズ (Bad Brains) とは違う。
ブラック・ロック (Black Rock Coalition) をうちたてて共闘したリヴィング・カラー (Living Colour) とはすれちがっただけなのかもしれない。
実は、鏡像の様な関係 (Like A Reflection) であるレッド・ホット・チリ・ペッパーズ (Red Hot Chili Peppers) は、とうにそこから脱却して異なる地平へと向かったかの様にも思える。
リップ・リグ・アンド・パニック (Rip Rig + Panic) の様にもっと自由奔放であろうとすれば、とっくに空中分解してしまった筈だ。
もしかしたら、ファンカデリック (Funkadelic)〜パーラメント (Parliament) を目指すべきなのかもしれないが、出自は全く違うだろう。
では、パブリック・エナミー (Public Enemy) なのか ...。
と、様々なバンドとの共通解を捜し出そうとしても、気づくのは相違点ばかりなのだ。
そして、その理由を、それぞれのバンドを牽引する指導者の、度量ではないだろうかと考えたくもなってしまうのだ [それで良しとして良いモノだろうか]。
本作の冒頭曲『ファイト・ザ・ユース (Fight The Youth)』と最終曲『サンレス・サタデイ (Sunless Saturday)』、このふたつの楽曲の様な作品だけで本作が構成されていたら、きっと、今の彼等はもっと違う場所にいたんだろうな、と本作を聴き終える度に、いつも思う。
だけれども、それではフィッシュボーン (Fishbone) と謂うバンドにはならないのだ。
雑然と、とっちらかってしまって収拾不能、無秩序で崩壊寸前の瀬戸際にある様な、その様こそをぼく達は堪能したいのだ。それこそが彼等の魅力なのだから。
ああ、不器用なんだな。
その一句だけで終わってしまっても良いところを、ずっと忸怩たる想いに拘ざるを得ない。
そうさせてしまうのが、ぼくにとっての、このバンドなのである。
次作『モンキーの惑星 (Give A Monkey A Brain… And He'll Swear He's The Center Of The Universe)
ものづくし (click in the world!) 212. :"THE REALITY OF MY SURROUNDINGS" by FISHBONE

THE REALITY OF MY SURROUNDINGS
1. FIGHT THE YOUTH
- K. JONES - J. N. FISHER - P. FISHER -
MIXED BY MICHAEL BRAUER
2. IF I WERE A ... I'D
- A. MOORE - C. DOWD -
RECORDED LIVE BY RON ST. GERMAIN
MIXED BY THOM PANUNZIO
3. SO MANY MILLIONS
- J. N. FISHER - A. MOORE -
MIXED BY MICHAEL BRAUER
4. ASSWHIPPIN'
- W. KIBBY - A. MOORE - K. JONES - J. N. FISHER - P. FISHER - C. DOWD - J. BIGHAM -
MIXED BY THOM PANUNZIO
5. HOUSEWORK
- W. KIBBY - A. MOORE - K. JONES - J. N. FISHER - P. FISHER -
MIXED BY THOM PANUNZIO
6. DEATHMARCH
- A. MOORE - C. DOWD -
MIXED BY THOM PANUNZIO
7. BEHAVIOR CONTROL TECHNICIAN
- J. N. FISHER - P. FISHER -
MIXED BY MICHAEL BRAUER
8. IF I WERE A ... I'D
- A. MOORE - C. DOWD -
RECORDED LIVE BY RON ST. GERMAIN
MIXED BY THOM PANUNZIO
9. PRESSURE
- A. MOORE - K. JONES -
MIXED BY NIKO "FUCKIN'" BOLAS
10. JUNKIES PRAYER
- A. MOORE - C. DOWD - K. JONES - J. N. FISHER - B. WEST
MIXED BY THOM PANUNZIO
11. PRAY TO THE JUNKIEMAKER
- A. MOORE - C. DOWD -
MIXED BY MICHAEL BRAUER
12. EVERYDAY SUNSHINE*
- C. DOWD -
MIXED BY MICHAEL BRAUER
13. IF I WERE A ... I'D
- A. MOORE - C. DOWD -
RECORDED LIVE BY RON ST. GERMAIN
MIXED BY THOM PANUNZIO
14. NAZ-TEE MAY'EN
- J. N. FISHER - P. FISHER - A. MOORE - K. JONES -
MIXED BY BYRON WEST
15. BABYHEAD
- W. KIBBY -
MIXED BY BYRON WEST
16. IF I WERE A ... I'D
- A. MOORE - C. DOWD -
RECORDED LIVE BY RON ST. GERMAIN
MIXED BY THOM PANUNZIO
17. THOSE DAYS ARE GONE
- C. DOWD - J. N. FISHER -
TRACKED BY CLARK GERMAIN AT CAPITOL
MIXED BY NIKO "FUCKIN'" BOLAS AT A&M STUDIOS, LARRABEE, QUAD N. Y.
18. SUNLESS SATURDAY*
- K. JONES -
MIXED BY MICHAEL BRAUER
ALL SONGS (C) Copyright 1991 by MUSIC CORPORATION OF AMERICA. INC. and BOUILLABAISSE MUSIC. Rights Administered by MCA MUSIC PUBLISHING, A DIVISION OF MCA INC., New York. ALL RIGHTS RESERVED. USED BY PERMISSION
PRODUCED BY FISHBONE・* PRODUCED BY FISHBONE AND DAVID KAHNE・ASSOCIATE PRODUCER : DAVID KAHNE・TRACKED BY LARRY DUHART AT OCEAN WAY・OVERDUBBED AT OCEAN WAY, STUDIO 55, SUMA AND CAPITOL STUDIOS・ADDITIONAL ENGINEERING BY JOEL STONER AND CLARK GERMAIN・ASSISTANT ENGINEERING BY DAN BOSWORTH, MARK GUILBEAULT, STEVE HOLROYD, CLIF NORRELL, RAIL ROGUT, ERIC RUDD (OCEAN WAY), RICHARD ENGSTROM, KEN FELTON (STUDIO 55), KYLE BEFF (SUMA), RANDY WINE (A&M), SYLVIA MASSY (LARRABEE), CHRIS THEIS (QUAD N. Y.)・MASTERED BY WALLY TRAUGOTT AT CAPITOL STUDIOS・TRUMPET : THE FABULOUS & WORLD FAMOUS FERNANDO PULLUM・KEYBOARD PROGRAMMING : SAM MIMS・EXTRA-LARGE MOST FABULOUS PERCUSSIONIST EXTRAORDINAIRE : T-BONE・BACKGROUND VOCALS : VICKY CALHOUN, KRISTEN VIGARD, AKLIA CHIN, JAMES GREY, GREG BELL, NATALIE JACKSON, BYRON WEST, LARRY FISHBURNE, NADJA & KYVA HAYNES, WENDELL HOLMES, GAZ MAYALL, SUSAN ROGERS, SULTANA MUHAMMAD, KATHERINE CEDERQUIST, CLIP PAYNE, JEFF CONNERS, SUSAN STVAL・KRISTEN VIGARD APPEARS COURTESY OF PRIVATE MUSIC・MANAGEMENT : ELLIOT ROBERTS, FRANK GIRONDA, LOOKOUT MANAGEMENT・ART DIRECTION AND DESIGN : STACY DRUMMOND・PHOTOGRAPHY : MAX AGUILERA-HELLWEG・HANDWRITING KENDALL
FISHBONE IS : ANGELO MOORE, CHRIS DOWD, WALTER A KIBBY II, JOHN NORWOOD FISHER, KENDALL JONES, FISH, JOHN BIGHAM.
(C) 1991 SONY MUSIC ENTERTAINMENT INC. / (P) 1991 SONY MUSIC ENTERTAINMENT INC. / MANUFACTURED BY COLUMBIA RECORDS
WARNING : ALL RIGHTS RESERVED. UNAUTHORIZED DUPLICATION IS A VIOLATION OF APPLICABLE LAWS.
COLUMBIA AAD
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