2020.05.17.08.40
『夢よ叫べ (Shout My Dream)』 by 遠藤賢司 (Kenji Endo)

たちうちできないのは、はなっからわかっている。だからといって、追従することもできない。なぜならば、そんなことを一切、彼は求めていないのだから。

遠藤賢司 (Kenji Endo) の存在を知ったのは、アルバム『東京ワッショイ (Tokyo Wasshoi)
その作品を当時、入手する事はなかったが、ある日、エヌエイチケイ・エフエム放送 (NHK-FM) で彼のライブ放送があった。火曜日、森永博志 (Morinaga Hiroshi)の『サウンド・ストリート (Sound Street)』 [1978~1981年放送担当] だったのか、それとも、夏休みの特番だったのか。記憶はいつも曖昧だ。但し、その放送を録音する事は怠っていなかったので、暇さえあれば、よく聴いていた。
そのカセット・テープ (Cassette Tape) はまだある筈だ。だけれどもそれを再生する機械がない。否、それ以前にどこにあるのかも皆目見当がつかない。
その時の記憶を許にすれば、そこでの遠藤賢司 (Kenji Endo) は凄まじく格闘していた様に思う。何に? と、問われれば、時代と答える事も出来れば、異文化と答える事も出来る。
これまで築いてきた自身の手法、自身の感性、音楽上の技術や知識とその運用、そういったモノを彼は問われ、それになんらかの解答をしようと奮闘しているのだ。
そんな理解をしていた。
だが、特にそれは彼自身の問題ではない。その時代、経歴や実績のある音楽家は誰しもがぶちあたる問題で、それへの解答次第で、彼ないし彼女の今後が定まる。しかも、それは日本国内に活動基盤のあるモノだけではなく、世界中、名のある海外アーティスト達の誰もが抱えていた問題でもある。
紋切型の口上を述べればそれは、パンク (Punk)〜ニュー・ウェイヴ (New Wave) と謂う新たな潮流に対し、どう対応していくのか、音楽制作に於ける技術の進歩にどう対応していくのか、と謂う問題である。
勿論、それらを一切無視してしまう事も彼等は出来る。それもひとつの制作者・創作者のなしうる活動のひとつだ。と、同時に、それらに一切便乗してしまう事も出来る。それもひとつの手立てである。
そして、遠藤賢司 (Kenji Endo) と謂うアーティストは、その最も困難な道を選んでしまった様に、ぼくには思えた。

その後、アルバム『東京ワッショイ (Tokyo Wasshoi)
そして、2作品を聴いてこう思った。
敢えて勘違いしたところから、はじめているんだなぁ、と。


つまり、サディスティック・ミカ・バンド (Sadistic Mika Band) のアルバム『黒船 (Black Ship)
そして、もしかしたら、遠藤賢司 (Kenji Endo) にとっては、この2作品は他流試合なのかもしれない、とも。

ぢゃあ、彼の主戦場、彼の為の土俵はどこにあり、そこで彼はなにをしているのであろうと興味は抱きつつも、なかなか食指が動かないのであった。
何故ならば、と問えば、例えばシングル『史上最長寿のロックンローラー
その頃から、彼の活動には興味を感じつつも、敬して遠ざくを是としていた。つまり、闘う前から敗北を認めていたのである。彼の活動を伝える音楽誌での報道を読むにつけ、それだけでお腹一杯、もう喰べられません、であったのだ。
にも関わらずに、本作は入手してしまった。
それはジャケット写真に騙された結果である。
そこにあるのは、次への予感であり、その為の余力である。
そこにあるのは遠藤賢司 (Kenji Endo) のレイドバック (Laid-back) した姿なのであろう。
そんな解釈をして、購入して痛い眼にあったのが、ぼくなのである。
一切、手はぬいていない。全力疾走、火事場の糞力 (Hysterical Strength) 以上のモノが発揮されてある。
ぼくは圧倒されるばかりだ。そして、その結果、彼に心酔できればよいモノの、そんなに彼は甘くはないのだった。
冒頭の1曲目『俺は勝つ (I'll Win)』の様な激しい楽曲は、その勢いに加担する事も出来る。
しかし、それとは一転して、外部へではなく内部へと向かった曲に太刀打ち出来ないのだ。否、勿論、1曲目『俺は勝つ (I'll Win)』も外部どころか内部へと鋭い切先は認められる。ここで謂うのは相対的なモノだ。
一言で謂えば、7曲目『ボイジャー君 (Voyager-kun)』の様な曲は、ぼくはどうして良いのか解らなくなってしまうのだ。なかへなかへと侵犯してくるその曲に、おのれをどう曝していけば良いのだろう。その曲を創り唄う遠藤賢司 (Kenji Endo) さながらに、自身をそこに置き、その場になすがままにされる程に、無垢である事はぼくには出来ないのである。

比喩として妥当かどうかは解らない。
が、ぼくが憶い出すのは映画『まあだだよ
映画の、最も見所となるのは、子弟達が集って開催される恩師の誕生祝賀会『摩阿陀会 (Madakai)』の情景である。何十人、何百人も集ったかと思われる子弟達、つまり大の大人達が、まるで小学生の様に会場内を練り歩く。そこで発揮される熱量と運動量にはただただ圧倒されるばかりだ。映画はそれだけを描いていればいい、とぼくは思う。
しかし、映画のなかで最も丁寧に語られているのは、それとは対極にあるかの様な、内田百間 (Hyakken Uchida) と彼の愛猫との逸話なのである。ここでの描写を、単純にぼくはみたくないと思う。
何故、その逸話を回避しようとするのかは、論理的に説明づけるのは簡単だ。映画監督自身が実感している自身の死と、それへの想いが表出しているからだ。
だけれども、その部分が遠藤賢司 (Kenji Endo) の楽曲『ボイジャー君 (Voyager-kun)』に感じるぼくの想いの比喩ではない。その曲を忌避したくなるぼく自身の弱さと同じモノを、その映画『まあだだよ
端的に綴れば、こうなる。楽曲『ボイジャー君 (Voyager-kun)』を回避したくなるぼく自身をぼくは嫌っている。それと同様に、映画『まあだだよ
つまりぼくは、自身の未熟な点をあからさまに糾弾されているのだ。
だから未だに、遠藤賢司 (Kenji Endo) には敬して遠ざくを是とせざるを得ない。
いや、もしかするとそれよりも酷い。
彼の気配を知るや否や、逃げて隠れてしまいたいのだ。
ものづくし (click in the world!) 211. :『夢よ叫べ (Shout My Dream)』 by 遠藤賢司 (Kenji Endo)

『夢よ叫べ (Shout My Dream)
「永久不滅のロックンローラー」遠藤賢司の16年振りのオリジナル・アルバムが聴ける君たちは幸福だ!
96年を締めくくり、97年を明るく照らす入魂の一枚。あぁ生きてて良かった!
<参加音楽家>細野晴臣、鈴木茂、梅津和時、石塚俊明、湯川トーベン他
このアルバムの全ての作詞、作曲は遠藤賢司である。
1. 俺は勝つ [2:48]
遠藤賢司:歌、生ギター、ハーモニカ
鈴木茂:エレキギター
2. 裸の大宇宙 -今は亡き岡本太郎氏に捧ぐ- [6:09]
遠藤賢司:歌、マイク付生ギター、ハーモニカ、コーラス
湯川トーベン:エレキベース、コーラス
石塚俊明:ドラム、コーラス
- 以上遠藤賢司バンド -
3. おでこにキッス [4:52]
遠藤賢司;歌、生ギター、ハーモニカ
細野晴臣:エレキベース
片桐麻美;コーラス
細野晴臣 for daisy world discs
4. 君の夢はどんな夢 [3:55]
遠藤賢司:歌、生ギター
5. 荒野の狼 [7:57]
遠藤賢司:歌、生ギターとマイク付生ギター、ハーモニカ
湯川トーベン:エレキベース
石塚俊明:ドラム
向山テツ:導入部のシンバル補助
6. 風車(かざぐるま) - 器楽演奏のみ -[2:24]
遠藤賢司:生ピアノ
7. ボイジャー君 [9:33]
遠藤賢司:歌、生ギター、ハーモニカ
8. 頑張れ日本(日本サッカーの応援歌) - ブラスバンド編 - [2:01]
遠藤賢司:歌、大太鼓、シンバル
梅津和時;クラリネット、アルト・サックス
細川玄:チューバ、トロンボーン、アルトホルン
多田葉子:アルトサックス
梅津和時:ブラスアレンジ
かけ声”ニッポンガンバローズ”:腹淋磯崎、太田フンコロガシ吉彦、川岸才門、斉藤図書之介、野田百貫、渡邊愛妻
9. 嘘の数だけ命を燃やせ [2:52]
遠藤賢司:歌、エレキギター
湯川トーベン:エレキベース
湊雅史:ドラム
10. 夢よ叫べ [5:22]
遠藤賢司:歌、生ギター
篠崎正嗣ストリングス
ストリングスアレンジ:星勝
総分数秒47:58
出資者ならびに後援者・大倉博
企画請負人ならびに制作見届け人・渡邊文武
企画発起人ならびに現場監督・関端ひかる
企画発起人ならびに現場進行主任・磯崎誠二
音楽監督・遠藤賢司
録音ならびに音混ぜならびに音質調整主任技師・野沢陽介
副主任技師・小林真司
録音期間 1996年8月12日~10月7日(内29日間)
録音場所 東京FMレコーディングスタジオ
曲間時間ならびに音標準最終調整技師・中里正男主任、吉玉シバ助手(オンキョーハウス)
ジャケット図案意匠・えんけん&おっせっせっ
ジャケットならびに歌詞小冊子図案制作実行・小田島等(ふろっぴぃでぃすこ)
ジャケット写真・瀬戸山玄
歌詞小冊子画・小田島等(表紙と裏表紙)、森脇道夫(P14)、エンケン(P16)
ジャケット撮影協力・藤田巴絵こと胡徳さん
猫のみ~こちゃん17才
大塚西信寺境内浦佐々木&湯浅邸
こんな僕の我儘に最後までつきあってくれた録音現場ならびに各制作部門の皆さん
・・・そして何より今日も僕の音楽を聞いてくれるあなたに・・・どうもありがとう・・・
言音一致の純音楽家・遠藤賢司・吉日
(P) 1996
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