2020.03.24.08.47
宇宙空間を飛行する方ではない。
拙稿の表題として掲げたのは、装身具 (Accessory) の方である。
つまり、ロケット (Rocket) ではなくて、ロケット (Locket) である。
このふたつが似通った名称なのは、前者の形態が後者のそれに似ているから、それに因んだモノと、ずっと思っていた。さもなければ、秘密裏に研究開発しているその名称、暗号名 (Code Name) をそこに拠ったモノなのだろうとも。戦車 (Armoured Fighting Vehicle) が水槽 (Tank) と呼び習わされているのと、同じ様な理由に基づいているのだろう、と。
でも、それは恐らくあやまりだ。英文表記をみれば、立ち所に解る。綴りが違う。エル (L) とアール (R) の違いなのだ。日本語 (Japanese Language) ネイティヴのモノには判別しづらいだろうが、他言語を習得しているモノからみれば、このふたつは、あからさまに違う。完全なる別物なのである。
そのロケット (Locket) [蛇足ながら念押しすれば、装身具 (Accessory) の方であり、なおかつ、エル (L) の方である] と謂うモノの存在を、ぼくは幼少時に読んだあるマンガ作品で知ったのだ。
否、知ったと謂う表現は必ずしも適切ではないかもしれない。寧ろ、こう謂った方が良いのであろう。既にその存在は知ってはいたが、その存在を強く印象付けてくれる、あるマンガ作品があったのである、と。
そんな大事な作品でありながら、ぼくは題名も作者名も憶えていない。インターネット上でも、それらしき作品も作家も登場しない。
解っている事は、1970年代前半の、ある少女マンガ雑誌 (Shojo Manga Magazine) に掲載された読み切りのマンガなのだろう、と謂う事だけなのだ。
但し、直前の文章の中で、もっともらしい顔をして顕れている客観的な情報、すなわち、1970年代前半や、少女マンガ雑誌 (Shojo Manga Magazine) と謂う語句もどこまで信憑性があるかと謂うと、実はその文章を綴ったぼく自身に自信はない。
記憶の中にあるその光景から、類推しているのに過ぎない。
少なくとも、当時のぼくが日常的に買ったり読んだりしていた少年マンガ雑誌 (Shonen Manga Magazine) ではない事だけは確かな様だ。
ぼくの記憶のなかにあるその雑誌は、伯父 (Uncle) が運転するくるまのなかで読んだモノであり、その伯父夫妻 (Uncle And His Wife) は、その長女 (The First‐born Daughter) の娘 (Daughter) と同居していた [その娘 (Daughter) からみれば当時は父母 (Father And Mother) とは別居していた事になる]。ぼくからみて6歳年下の従姪 (Cousin's Daughter) が読んでいた雑誌の様なのである。
さて、これから先はその作品で描かれている物語のあらましを綴る。
そして、恐らく、その過程のなかで、ネタバレ (Spoiler) に類することがらに関しても言及してしまうだろう。
作品名も作家名も解らない、もしかしたら、ここで物語について綴る結果、その解らないモノについて、どこかのだれかが何某かの解答をもたらしてくれるかもしれない。そんな期待を込めての行為なのである。
その作品の、未読の方々には、その点を踏まえてネタバレ (Spoiler) 云々に関しては、容赦を願いたい次第なのである。
物語の冒頭、嵐のなかを航行する客船から、あるモノが投棄される。包帯でぐるぐる巻きに梱包された紡錘形 (Spindle Shape)、非常にちいさなモノだ。
そこから場面は変わる。
ある海岸、そこに棲むひとりの少年が人魚 (Mermaid) と出逢う。ふたりは密会を重ね、そして、ふたりは恋に陥る。
少年の行動を怪しんだ大人達が少年を追跡し、彼と人魚 (Mermaid) との逢瀬に遭遇する。
彼等から、少年が人魚 (Mermaid) を護ろうとした結果、追跡者のうちのあるモノが放った水中銃 (Spear Gun) にふたりはともは撃ち抜かれ、絶命する。
人魚 (Mermaid) を検死 (Autopsy) した際に、彼女の首筋に鰓 (Gill) がある事と、その頸にひとつのロケット (Locket) が飾られていると知る。
そのロケット (Locket) とは、少年の母が、船中で流産 (Miscarriage) してしまった胎児 (Foetus) を水葬 (Water Burial) にする際、産まれざる娘の遺骸と共に葬ったモノなのである。
人魚 (Mermaid) こそ、その時の胎児 (Foetus) が生き延びて長じた姿であり、死んでしまった息子は実の姉との恋愛に耽っていた。
そのロケット (Locket) のかつての持ち主である、少年の母親を含め、だれもがそう信じざるを得なかった。
と、記憶の片隅をあら捜しして、そのなかにあるその物語を綴ってみたのだが、憶えている事は、物語の後半、クライマックスからその回収部である、物語の終局までである。この作品が少女マンガ (Shojyo Manga) である事を前提に考えてみれば、物語はきっとその前半、少年と人魚 (Mermaid) との出逢い、そして恋に陥るその過程にこそ、重きを置いて読むべきであるのだろうが、肝心のその部分がモノの見事に記憶から欠落しているのである。

"Mermain" by Anna Bezklubaya
その代わりに強く印象付けられているのが、この作品の主題が、姉弟による近親恋愛 (Consanguinamory) である事 [また視点を変えれば動物性愛 (Zoophilia) にもなり得る事] や、ヒトと謂う生命の発生の仕組み (Human Embryonic Development) や、それを可能とする海 (Ocean) の神秘、つまり、地球上 (Terra) にある総ての生命の誕生の場としての存在感ばかりなのである。
悲恋モノ (Story Of Tragic Love) と解すべきをあたかも恐怖譚 (Horror Story) と解している様なモノで、ぼくの中にはマンガ『半魚人 (Hangyojin : Gill-man)』 [楳図かずお (Kazuo Umezu) 1965年 週刊少年マガジン連載] と同列にある。
その作品での胎児 (Foetus) が人魚 (Mermaid) へと成長する過程 [と謂ってもそれがありありと描かれている訳ではない、ぼくの心中にそれが再生されているのだ] は、そのままマンガ『半魚人 (Hangyojin : Gill-man)』における、半魚人 (Gill-man) への人体改造に相違ないのだ。
我ながらしょうがないなぁと苦笑してしまう。
さて、ここで話題を表題として掲げた主題へととって返せば、この作品でのロケット (Locket) の果たす役割と謂うのは、謎の解明そのものなのである。
裏を返せば、秘密を秘匿しておく装置としての、それだ。
そして、ロケット (Locket) が物語のなかで果たしうる装置としての存在は、殆どの物語のなかで共通している様に思われる。
そう謂う意味では、典型的な起用例、さもなければ、単なる常套句 (Cliche) でしかない。
そこに秘密がある。それをみせる / みるとはすなわち、他者との秘密の共有である。
だから、恋する少女はそれをせまるが為に、恋愛の対象者にそれを啓示する。
ロケット (Locket) が常に少女の胸許にあるのも、そのためなのである。
次回は「と」。
附記:
勿論、幾つかの物語に於いては、ロケット (Locket) はそれとは異なる装置として機能する。例えば、記憶のよすがとなる装置、そしてその記憶を、単なる事実の蓄積から、多分に情緒的なモノ、すなわち、おもいでへと変換足らしめる装置として、だ。
上で紹介した物語のなかの於いても、そのロケット (Locket) は、もしかしたらそんな装置として機能していたのかもしれない。何故ならば、大海に人魚 (Mermaid) はたったのひとり、だったからである。自身の頸にあるそれを彼女はどんな想いでみていたのであろうか。そう考えてみれば、充分だろう。
そしてもしかしたら、ぼくの記憶から欠落した場所で、彼女とそのロケット (Locket) との物語は、充分すぎる程に語られていたのかもしれない。
拙稿の表題として掲げたのは、装身具 (Accessory) の方である。
つまり、ロケット (Rocket) ではなくて、ロケット (Locket) である。
このふたつが似通った名称なのは、前者の形態が後者のそれに似ているから、それに因んだモノと、ずっと思っていた。さもなければ、秘密裏に研究開発しているその名称、暗号名 (Code Name) をそこに拠ったモノなのだろうとも。戦車 (Armoured Fighting Vehicle) が水槽 (Tank) と呼び習わされているのと、同じ様な理由に基づいているのだろう、と。
でも、それは恐らくあやまりだ。英文表記をみれば、立ち所に解る。綴りが違う。エル (L) とアール (R) の違いなのだ。日本語 (Japanese Language) ネイティヴのモノには判別しづらいだろうが、他言語を習得しているモノからみれば、このふたつは、あからさまに違う。完全なる別物なのである。
そのロケット (Locket) [蛇足ながら念押しすれば、装身具 (Accessory) の方であり、なおかつ、エル (L) の方である] と謂うモノの存在を、ぼくは幼少時に読んだあるマンガ作品で知ったのだ。
否、知ったと謂う表現は必ずしも適切ではないかもしれない。寧ろ、こう謂った方が良いのであろう。既にその存在は知ってはいたが、その存在を強く印象付けてくれる、あるマンガ作品があったのである、と。
そんな大事な作品でありながら、ぼくは題名も作者名も憶えていない。インターネット上でも、それらしき作品も作家も登場しない。
解っている事は、1970年代前半の、ある少女マンガ雑誌 (Shojo Manga Magazine) に掲載された読み切りのマンガなのだろう、と謂う事だけなのだ。
但し、直前の文章の中で、もっともらしい顔をして顕れている客観的な情報、すなわち、1970年代前半や、少女マンガ雑誌 (Shojo Manga Magazine) と謂う語句もどこまで信憑性があるかと謂うと、実はその文章を綴ったぼく自身に自信はない。
記憶の中にあるその光景から、類推しているのに過ぎない。
少なくとも、当時のぼくが日常的に買ったり読んだりしていた少年マンガ雑誌 (Shonen Manga Magazine) ではない事だけは確かな様だ。
ぼくの記憶のなかにあるその雑誌は、伯父 (Uncle) が運転するくるまのなかで読んだモノであり、その伯父夫妻 (Uncle And His Wife) は、その長女 (The First‐born Daughter) の娘 (Daughter) と同居していた [その娘 (Daughter) からみれば当時は父母 (Father And Mother) とは別居していた事になる]。ぼくからみて6歳年下の従姪 (Cousin's Daughter) が読んでいた雑誌の様なのである。
さて、これから先はその作品で描かれている物語のあらましを綴る。
そして、恐らく、その過程のなかで、ネタバレ (Spoiler) に類することがらに関しても言及してしまうだろう。
作品名も作家名も解らない、もしかしたら、ここで物語について綴る結果、その解らないモノについて、どこかのだれかが何某かの解答をもたらしてくれるかもしれない。そんな期待を込めての行為なのである。
その作品の、未読の方々には、その点を踏まえてネタバレ (Spoiler) 云々に関しては、容赦を願いたい次第なのである。
物語の冒頭、嵐のなかを航行する客船から、あるモノが投棄される。包帯でぐるぐる巻きに梱包された紡錘形 (Spindle Shape)、非常にちいさなモノだ。
そこから場面は変わる。
ある海岸、そこに棲むひとりの少年が人魚 (Mermaid) と出逢う。ふたりは密会を重ね、そして、ふたりは恋に陥る。
少年の行動を怪しんだ大人達が少年を追跡し、彼と人魚 (Mermaid) との逢瀬に遭遇する。
彼等から、少年が人魚 (Mermaid) を護ろうとした結果、追跡者のうちのあるモノが放った水中銃 (Spear Gun) にふたりはともは撃ち抜かれ、絶命する。
人魚 (Mermaid) を検死 (Autopsy) した際に、彼女の首筋に鰓 (Gill) がある事と、その頸にひとつのロケット (Locket) が飾られていると知る。
そのロケット (Locket) とは、少年の母が、船中で流産 (Miscarriage) してしまった胎児 (Foetus) を水葬 (Water Burial) にする際、産まれざる娘の遺骸と共に葬ったモノなのである。
人魚 (Mermaid) こそ、その時の胎児 (Foetus) が生き延びて長じた姿であり、死んでしまった息子は実の姉との恋愛に耽っていた。
そのロケット (Locket) のかつての持ち主である、少年の母親を含め、だれもがそう信じざるを得なかった。
と、記憶の片隅をあら捜しして、そのなかにあるその物語を綴ってみたのだが、憶えている事は、物語の後半、クライマックスからその回収部である、物語の終局までである。この作品が少女マンガ (Shojyo Manga) である事を前提に考えてみれば、物語はきっとその前半、少年と人魚 (Mermaid) との出逢い、そして恋に陥るその過程にこそ、重きを置いて読むべきであるのだろうが、肝心のその部分がモノの見事に記憶から欠落しているのである。

"Mermain" by Anna Bezklubaya
その代わりに強く印象付けられているのが、この作品の主題が、姉弟による近親恋愛 (Consanguinamory) である事 [また視点を変えれば動物性愛 (Zoophilia) にもなり得る事] や、ヒトと謂う生命の発生の仕組み (Human Embryonic Development) や、それを可能とする海 (Ocean) の神秘、つまり、地球上 (Terra) にある総ての生命の誕生の場としての存在感ばかりなのである。
悲恋モノ (Story Of Tragic Love) と解すべきをあたかも恐怖譚 (Horror Story) と解している様なモノで、ぼくの中にはマンガ『半魚人 (Hangyojin : Gill-man)』 [楳図かずお (Kazuo Umezu) 1965年 週刊少年マガジン連載] と同列にある。
その作品での胎児 (Foetus) が人魚 (Mermaid) へと成長する過程 [と謂ってもそれがありありと描かれている訳ではない、ぼくの心中にそれが再生されているのだ] は、そのままマンガ『半魚人 (Hangyojin : Gill-man)』における、半魚人 (Gill-man) への人体改造に相違ないのだ。
我ながらしょうがないなぁと苦笑してしまう。
さて、ここで話題を表題として掲げた主題へととって返せば、この作品でのロケット (Locket) の果たす役割と謂うのは、謎の解明そのものなのである。
裏を返せば、秘密を秘匿しておく装置としての、それだ。
そして、ロケット (Locket) が物語のなかで果たしうる装置としての存在は、殆どの物語のなかで共通している様に思われる。
そう謂う意味では、典型的な起用例、さもなければ、単なる常套句 (Cliche) でしかない。
そこに秘密がある。それをみせる / みるとはすなわち、他者との秘密の共有である。
だから、恋する少女はそれをせまるが為に、恋愛の対象者にそれを啓示する。
ロケット (Locket) が常に少女の胸許にあるのも、そのためなのである。
次回は「と」。
附記:
勿論、幾つかの物語に於いては、ロケット (Locket) はそれとは異なる装置として機能する。例えば、記憶のよすがとなる装置、そしてその記憶を、単なる事実の蓄積から、多分に情緒的なモノ、すなわち、おもいでへと変換足らしめる装置として、だ。
上で紹介した物語のなかの於いても、そのロケット (Locket) は、もしかしたらそんな装置として機能していたのかもしれない。何故ならば、大海に人魚 (Mermaid) はたったのひとり、だったからである。自身の頸にあるそれを彼女はどんな想いでみていたのであろうか。そう考えてみれば、充分だろう。
そしてもしかしたら、ぼくの記憶から欠落した場所で、彼女とそのロケット (Locket) との物語は、充分すぎる程に語られていたのかもしれない。
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