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2020.03.17.08.45

えごころ

とうさんはなぜ、おとうとばかりをほめるのさ。ぼくだって賞状もらっことだってあるんだよ。

と当時、小学校 (Primary School) だったぼくは父親を難詰したのだった。

今の小学校教育 (Education At Primary School) での実際は知らないが、ぼく達の時代はこうだった。

図画工作 (Arts And Crafts) の授業で、水彩 (Watercolor Painting) や木版 (Wood Engraving) を習う。画題は学年によって違う。教室内の光景や同級生の場合もあれば、その為にわざわざ、課外授業として写生 (Drawing From Nature) に出向く事もある。
それが完成した際には、クラス全員の作品が教室内後方に張り巡らされる。授業内容は、学年共通でしかも同時期に行われるのだから、他のクラスも同様の光景となる。

そして、その中からそれぞれ数点が選ばれて、それらの作品の掲示場所は教室から廊下へと移動する。その画題に於ける、その学年の優秀作品と謂う訳だ。
いつ、どこで、誰が、どんな権限をもって、その選択や取捨を行ったのかは解らない。各担任 (A Home Room Teacher) の判断なのか、それとも、学年主任 (Head Teacher Of A Grade) もしくは教頭 (Vice‐principal)、校長 (Principal) のたぐいなのか。ただ、いずれにしても、廊下に貼り出された諸作品を観るぼく達は、納得がいったりいかなかったりする。ぼく達とは、すこし観点が違う様だ。

そんな掲示期間が終われば、個々の作品はそれぞれの画家の手元に返される。しかし、その例外として、返却されないモノがある。
(City) もしくは (Prefecture)、それとも、それぞれいずれかの教育委員会 (Board Of Education) なのだろうか、そちらの方にわたっているのである。
つまり、返却されない作品は、それらが主催する展覧会もしく品評会での審査に参加するのである。
これも、いつ、どこで、誰が、どんな権限をもって、判断しているのかは、ぼく達が預かり知らぬところではある。
しかし、忘れた頃に、1枚の賞状が、画家の手元へと届けられるのである。

拙稿冒頭の1文にある"賞状"とは、この事なのである。

なんだか知らないが、毎年の様に、ぼくの作品は、賞をもらった。
だから、この事に関しては父親から、なんらかの言葉があって然るべきなのだ。
しかし、そんな発言をぼくは父親から聴いた憶えはない。

何故ならば、ぼくの3歳下の弟は、ぼくにも増して、賞をもらうのである。
しかも、小学校 (Primary School) の授業とは離れても、彼の描くモノはぼくよりも巧い。それは悔しいけど認めなければならない。
きっと、世間一般で謂う"絵がうまい (Good At Painting)"と謂うのは、弟の方なのだ。ぼくは多分、図画工作 (Arts And Crafts) と謂う授業の枠の中でだけ、通じるモノなのだ。そんな認識は、当時のぼくにだってある。
だけど、賞状をもらうと謂う点に於いては、ぼくと弟は同一次元にある筈なのだ。
にも関わらずに、父親が褒めるのは、ぼくではなくて弟の方なのだ。
それが悔しかったのである。
納得がいかなかったのである。

父親のぼくへの回答はこうだった。

「おまえはできるモノが他にもあるだろう。でも、あいつにはあれだけしかない」

ぼくは二の句が告げなかった。
彼の発言には一理がある。
と、謂うのは、学校の成績はぼくの方がよかったからだ。ろくに勉強もしていない筈なのに、テストの成績だけは良い。
一方の弟も決して出来ない方ではなかったが、まぁ並だった。
それを指しての彼の発言だったのである。

でも、だからと謂って、テストの結果を彼に提示しても、褒められたと謂う記憶はない。
「もっとがんばれ。ちがうのはこことここだけじゃないか。しかも計算間違いとか部首の勘違いとか、初歩的なモノばかりだ。落ち着いてやれば満点だ」
彼から引き出せたのはそんな発言しかないのだった。

次回は「」。

images
附記:
上掲画像は『バルタザールとピエール・クロソウスキー (Balthazar And Pierre Klossowski, Paris, circa 1913)』。表題にある通り、1913年頃の撮影である。
成長した後に、多方面での芸術活動で知られる事になるピエール・クロソウスキー (Pierre Klossowski) の弟は、バルタザール・ミシェル・クロソウスキー・ド・ローラ (Balthasar Michel Klossowski de Rola)、後の画家バルテュス (Balthus) である。
撮影年から類推すれば、ピエール・クロソウスキー (Pierre Klossowski) [画面左] が8歳、バルタザール・ミシェル・クロソウスキー・ド・ローラ (Balthasar Michel Klossowski de Rola) [同右] が5歳である。
そして、慌てて付け加えておけば、ピエール・クロソウスキー (Pierre Klossowski) には画家としての側面も勿論、ある。
上掲画像を掲載した理由は、芸術家兄弟の幼時を撮影したモノである、その1点である。
ぼく達、兄弟が成長して画業もしくは文筆業にその才を発揮する事はない [少なくともぼくに関する限りはここのブログをみわたせば解るとおりのていたらくだ]。
それ以前に、彼等の様な美貌はふたりとも持ち合わせてもいない。
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