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2020.01.07.09.17

けむーるじんにさいかいするとき

特撮TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』  [1966TBS系列放映] の第19話『2020年の挑戦 (Challenge From The Year 2020)』 [脚本:金城哲夫千束北男 監督:飯島敏宏 特技監督:有川貞昌] に登場するケムール人 (Kemur Man) は、その番組の後番組である特撮TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』  [19661967TBS系列放映] の第33話『禁じられた言葉 (The Forbidden Words)』 [脚本:金城哲夫 監督:鈴木俊継 特技監督:高野宏一] にて、再登場する。

第33話『禁じられた言葉 (The Forbidden Words)』と謂う物語の主軸となる宇宙人 (Alien) / 侵略者 (Invader) はメフィラス星人 (Alien Mefilas) である。彼の走狗、尖兵、配下の様な佇まいでもって、ケムール人 (Kemur Man) は、東京 (Tokyo) に巨大な姿を顕す。しかし、それはほんの一瞬限りの事であって、彼の登場はメフィラス星人 (Alien Mefilas) による幻影なのかもしれない。
しかもその際に登場するのは、彼だけではない。その特撮TV番組に既に登場した、バルタン星人 (Alien Baltan) [第2話『侵略者を撃て (Shoot The Invader)』 [脚本:千束北男 監督:飯島敏宏 特技監督:的場徹] にて初登場]、ザラブ星人 (Alien Zarab) [第18話『遊星から来た兄弟 (Brother From Another Planet)』 [脚本:南川竜金城哲夫 監督:野長瀬三摩地 特技監督:高野宏一] にて初登場] と共に顕れるのだ。そして、彼等の消失後、科学特捜隊員 (SSSP : Science Special Search-Party) のひとり、行方不明となっていたフジアキコ (Akiko Fuji) [演:桜井浩子 (Hiroko Sakurai)] 隊員が巨大な姿を顕す。
そして、その物語で、最も直接的でかつ具体的な破壊行為はその際の巨大なフジアキコ (Akiko Fuji) 隊員によるモノだけである。

ところで、何故、他番組に登場したケムール人 (Kemur Man) がそこに登場したのであろうか。その番組にはもうひとり、ダダ (Dada) [第28話『人間標本5・6 (Human Specimens 5 And 6)』 [脚本:山田正弘 監督:野長瀬三摩地 特技監督:高野宏一] にて初登場] と謂う宇宙人 (Alien) / 侵略者 (Invader) が登場するのだ。何故、彼ではなかったのか。

その解釈のひとつとして、ふたつの特撮TV番組に於ける世界観の継承が謀られたとするモノがある。
確かに、特撮TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』 のオープニングには前番組と同様の『ウルトラQ (Ultra Q)』の文字が躍る。
そして、出演者もそこで演じる役こそ違え、共通した人物達が登場する。第19話『2020年の挑戦 (Challenge From The Year 2020)』 に出演した桜井浩子 (Hiroko Sakurai) [江戸川由利子 (Yuriko Edogawa) 役]、小林昭二 (Akiji Kobayashi) [天野二等空佐 (Lieutenant Colonel Amano) 役]そして古谷敏 (Satoshi Furuya) [ケムール人 (Kemur Man) 役] である。彼等は後番組のレギュラー陣として毎回、登場するのだ。後番組でのその役名を順に綴ればフジアキコ (Akiko Fuji)、ムラマツ・トシオ・キャップ (captain Toshio Muramatsu) そしてウルトラマン (Ultraman) となる。

だが、それにも関わらず、ケムール人 (Kemur Man) が再登場したのは、それとは逆、継承ではなくて脱却さもなければ決別である様に、ぼくには思えてならない。

ケムール人 (Kemur Man) が登場した第19話『2020年の挑戦 (Challenge From The Year 2020)』 は、宇宙人 (Alien) / 侵略者 (Invader) による地球侵略を主題としながらも、その全編に漂う気配は怪奇譚のそれだ。
物語冒頭に幾度となく描かれる蒸発事件の描写、そしてそれを追う万城目淳 (Jun Manjome) [演:佐原健二 (Kenji Sahara)] の消失、群発する事件の張本人は、彼を追跡する警察車輌を嘲笑うかの様に夜の街を疾走し、江戸川由利子 (Yuriko Edogawa) の前に姿を顕した万城目淳 (Jun Manjome) は、再会を喜ぶ彼女の面前で融解してケムール人 (Kemur Man) の素顔を顕す。しかも事件解決後、またひとり消失してしまう。事件はケムール人 (Kemur Man) の討伐だけでは解決していないのである。
その描写や表現は、サイエンス・フィクション (Science Fiction) ではなくてホラー (Horror) なのだ。逆の視点をもってすれば、その物語に於けるサイエンス・フィクション (Science Fiction) の要素は、事件の謎を追う戸川一平 (Ippei Togawa) [演:西條康彦 (Yasuhiko Saijo)] の姿と、ケムール人 (Kemur Man) 打倒の方法だけなのである。

そして、この様な物語の語り口は、第19話だけでなく、その特撮TV番組の幾つもの物語にあるモノなのである。怪奇と科学、ホラー (Horror) とサイエンス・フィクション (Science Fiction) 、そのふたつが不可分一体のモノとして描かれるのが、TV特撮番組『ウルトラQ (Ultra Q)』の特色のひとつなのである。

そして、その後番組の第33話『禁じられた言葉 (The Forbidden Words)』は、不可分一体だったそのふたつを分離しようと試みた、その試金石の様にぼくには思えるのだ。

第33話『禁じられた言葉 (The Forbidden Words)』にケムール人 (Kemur Man) と同様に登場する、バルタン星人 (Alien Baltan) の物語である第2話『侵略者を撃て (Shoot The Invader)』 とザラブ星人 (Alien Zarab) の物語である第18話『遊星から来た兄弟 (Brother From Another Planet)』とは、ケムール人 (Kemur Man) のそれと共通するモノがある。
宇宙人 (Alien) / 侵略者 (Invader) が、策略を試みる際は常に怪奇性を帯びている。地球人には理解し難い思考と地球人には持ち得ない技術をもって行うのだから、そこに謎が常住するのは、当然だ。そして、その際の彼等は何故か、等身大、地球人 (Earthling) と同じ背丈でもって行動する。ところが、それが発覚もしくは破綻するや否や、すなわち、謎の正体が解明し怪奇性が霧散すると同時に、彼等は巨大化し、自身の肉体でもって破壊行為に転じる。
ところが、その物語の主軸を担うメフィラス星人 (Alien Mefilas) は、巨大化した姿を顕したものの、彼等とは全く異なる行動、発言を彼の眼前にいるウルトラマン (Ultraman)に向かって発するのだ。
その発言をもってすれば、バルタン星人 (Alien Baltan) とザラブ星人 (Alien Zarab) とケムール人 (Kemur Man) が巨大な姿を顕したモノの、なにもせずに消失してしまった理由も納得出来る。
と、同時に、彼等の消失と同時に出現した、巨大化したフジアキコ (Akiko Fuji) 隊員だけがビルを破壊するのは、それまで描かれてきた宇宙人 (Alien) / 侵略者 (Invader) の物語の、パロディ (Parody) として、であるのかもしれない。地球人 (Earthling) が築いた文明を破壊するのも地球人 (Earthling) である、と謂う様な。少なくともメフィラス星人 (Alien Mefilas) の主張をそう理解したとしてもなんら不思議ではない。

そうして、これまでの宇宙人 (Alien) / 侵略者 (Invader) とは全く異なる思考と行動をもってしたメフィラス星人 (Alien Mefilas) の存在があるが故に、彼の登場した特撮TV番組の後番組である特撮TV番組『ウルトラセブン (Ultra Seven)』  [19671968TBS系列放映] には、多種多様な宇宙人 (Alien) / 侵略者 (Invader) の登場を可能としたのである。

あらためて、ケムール人 (Kemur Man) が地球侵略に来た目的をみてみよう。
高度に発展した彼等の文明は、彼等の長寿を約束した。しかし、その結果、肉体は衰弱するばかりである。彼等は地球人 (Earthling) と謂う若い生命体を発見し、その肉体を己がモノにせしめんと試みる。
ここだけに着目すれば、特撮TV番組『ウルトラセブン (Ultra Seven)』の第11話『魔の山へ飛べ (Fly To The Mountain Of Evil)』 [脚本:金城哲夫 監督:満田かずほ 特殊技術:的場徹] のワイルド星人 (Alien Wild) と目的は全く同じなのである。

そしてその一方で、ケムール人 (Kemur Man) の物語である第19話『2020年の挑戦 (Challenge From The Year 2020)』にみられる怪奇現象を科学的な方法論でもって解決しようとする試みは、特撮TV番組『ウルトラセブン (Ultra Seven)』の後番組である特撮TV番組『怪奇大作戦 (Operation : Mystery)』 [19681969TBS系列放映] の主調、即ちその作品で活躍する科学捜査研究所 (SRI : Science Research Institute) の行動となって描かれていくのである。

このふたつの特撮TV番組の岐路に立ちそれぞれへの進むべき道を指し示しているのが、33話『禁じられた言葉 (The Forbidden Words)』に再登場をしたケムール人 (Kemur Man) なのである。

次回は「」。

附記 1.:
特撮TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』に登場する宇宙人 (Alien) / 侵略者 (Invader) は、ケムール人 (Kemur Man) の他には第16話『ガラモンの逆襲 (Garamon Strikes Back)』 [脚本:金城哲夫 監督:野長瀬三摩地 特技監督:的場徹] でのセミ人間 (Cicada Human) がいる。しかし、彼が後番組の第33話『禁じられた言葉 (The Forbidden Words)』に、バルタン星人 (Alien Baltan) と並んで登場する事は出来ない。何故ならば、造形上、セミ人間 (Cicada Human) の容姿を発展せしめたモノがバルタン星人 (Alien Baltan) であるからだ。
そして、第21話『宇宙指令M774 (Space Directive M774)』 [脚本:上原正三 監督:満田かずほ 特技監督:的場徹] での宇宙人 (Alien) / 侵略者 (Invader) であるキール星人 (Alien Keel) は、その物語には具体的な身体を伴っては登場しないのである。

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附記 2.:
第19話『2020年の挑戦 (Challenge From The Year 2020)』の表題であるそれは、その物語の中では、ケムール人 (Kemur Man) との交信記録として出版された神田博士 (Dr. Kanda) の著作名でもある [上掲画像は、その著作の表紙に起用された写真 [演;田辺和佳子 (Wakako Tanabe)] である。実際の書物はその直下に著作名がおおきく印字されている]。しかし、この2020年とは具体的になにを指しているのかが、ぼくには解らない。一般には、ケムール人 (Kemur Man) の主星であるケムール星 (Planet Kemur) が2020年であると理解されている。その物語が放映された年、1966年の物語だとして、54年と謂う歳月をその星は地球よりも先をいっていると謂う解釈になる。この54年と謂う数字は、いまのぼくには"遥か"と解釈するよりも"僅か"と理解する方が合理的な様にも思えてしまう [それだけ、ぼくが老いたと謂う事だ]。
さらに謂えば、地球人の暦法である西暦 (Common Era) をそのまま他の惑星に住う知的生命体の暦法に当て嵌めても良いモノなのだろうか。
もしかしたら、その惑星に向かうのに、2020年かかる。例えば、その距離が2020光年と謂う解釈も出来ない訳ではない [現実の、地球から2020光年向こうにはケプラー9星系 (Kepler-9) がある]。と、なると、特撮TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』の第19話『悪魔はふたたび (Demons Rise Again)』 脚本:山田正弘南川竜 監督:野長瀬三摩地 特技監督:高野宏一] に於ける [35000万年前ではなくて] 300005000年前と謂う様な、制作側の無知ないし誤解から、なのだろうか。
ちなみに、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) の楽曲『2000光年のかなたに (2000 Light Years from Home)』が発表されたのはその番組のその放送回が放映された翌年 [[アルバム『サタニック・マジェスティーズ (Their Satanic Majesties Request)』 [1967年発表] 収録] である。
とまれ、今年は2020年。
いまから54年前へと時間を遡る人物が登場しないとは限らない、2020年ははじまったばかりなのだから。無論、その人物がケムール人 (Kemur Man) の様な容姿ではないとしても。
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