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2019.12.15.08.32

"NAKED CITY" by JOHN ZORN

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本作品に遭遇するその前に体験したジョン・ゾーン (John Zorn) の作品は、アルバム『スパイ・ヴァーサス・スパイ (Spy Vs Spy : The Music Of Ornette Coleman)』 [1989年発表] である。

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マーク・ベイヤー (Mark Beyer) のイラストで梱包された、オーネット・コールマン (Ornette Coleman) のカヴァー集である。
ジョン・ゾーン (John Zorn) ともうひとりのサックス奏者ティム・バーン (Tim Berne)、ふたりのドラマーのジョーイ・バロン (Joey Baron) とマイケル・バッチャー (Michael Vatcher)、そしてひとりのベーシストであるマーク・ドレッサー (Mark Dresser)、この5人の演奏が、破格に格好よかったのだ。硬く、鋭く、そして金属的で、なおかつ速い。
オーネット・コールマン (Ornette Coleman) とエリック・ドルフィー (Eric Dolphy) のダブル・カルテット (Double Quartet) の演奏を収めた彼のアルバム『フリー・ジャズ (Free Jazz : A Collective Improvisation)』 [1961年発表] で試みられた方法論をコンパクトに、そして、明瞭なかたちで呈示した様に、ぼくには思えた。
オーネット・コールマン (Ornette Coleman) が提唱するハーモロディクス (Harmolodics) とは、こういう事なのだろうか [そんな想いを実はルー・リード (Lou Reed) のアルバム『ニューヨーク (New York)』 [1989年発表] の録音手法が補填してしまうのだ]。
少なくとも、オーネット・コールマン (Ornette Coleman) と謂う奏者 / 作曲家の作品群への入門書にも思える。否、それ以上に、トリビュート (Tribute) もしくはリスペクト (Respect) と謂う主張の、最も美しい成果ですらある。

そんな感慨の下で遭遇したのが、本作なのである。

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自殺したのか他殺されたのかは解らないが、その作品を飾るのはひとつの屍体である。俯せに倒れたその男性を黒く濡らしているのは、彼自身の血であろう。その元凶であろう拳銃は彼からすこし離れたそこに転がっている。
そんな写真で表装されたCDを掌にとり、ひっくり返すと、そこには馴染みのある筆致で描かれた、血塗れの包帯男が苦悶の表情を浮かべ、恐らくそこで死んでいる。口許には蟹が這っているのは何の謂いだろう。丸尾末広 (Suehiro Maruo) が描いているのだ。
そのイラストの下にあるのが、本作の参加メンバー名である。ジョン・ゾーン (John Zorn), ビル・フリゼール (Bill Frisell ), ウェイン・ホーヴィッツ (Wayne Horvitz), フレッド・フリス (Fred Frith), ジョーイ・バロン (Joey Baron) そしてスペシャル・ゲスト (Special Guest) の山塚アイ (Yamatsuka Eye ) [本作入手以降、彼等の参加作品が作品購入の起因となる]。当時は、ジョン・ゾーン (John Zorn) と山塚アイ (Yamatsuka Eye ) とフレッド・フリス (Fred Frith)、そしてアルバム『スパイ・ヴァーサス・スパイ (Spy Vs Spy : The Music Of Ornette Coleman)』 参加メンバーのジョーイ・バロン (Joey Baron) しかしらない。しかもフレッド・フリス (Fred Frith) はギターではなくベースを演奏している。
そこでひるむ。だが、しげしげと収録曲目名に注視すると、みしった楽曲名が幾つかある。それらがカヴァー曲である事は疑いない。
そして、ぼくはそれをもってそのままレジに直行する。

作品を聴いてしばらくは混乱していた。ぼくにとっての前作になる『スパイ・ヴァーサス・スパイ (Spy Vs Spy : The Music Of Ornette Coleman)』 よりは、つかみどころがない。間口が広すぎるのだ。なんでもある。そして、どれもほんの一瞬できりかわる。
未編集の映像作品のラッシュ (Rush Film) をずっと観ている様にも思える。よーいスタート、はいカット、オッケー。それの連続。だから、断片ばかりが顕れるだけで、そこから物語を構築する事も出来ない。
ある大都市の光景と思えなくもないが、時間軸は決してひとつではない。朝が来て昼が過ぎ夜が訪れる訳にはいかないのだ。
山塚アイ (Yamatsuka Eye ) が参加している作品群が一番、理解しやすいが、それは当時、そんな作品群ばかりを聴いていたからだろう。
前作『スパイ・ヴァーサス・スパイ (Spy Vs Spy : The Music Of Ornette Coleman)』との関連で謂えば、オーネット・コールマン (Ornette Coleman) 作の『ロンリー・ウーマン (Lonely Woman)』 [アルバム『ジャズ来るべきもの(The Shape Of Jazz To Come)』 [1959年発表] がカヴァーされているが、前作とは全く異なるアプローチだ。彼の代表曲のひとつである『ロンリー・ウーマン (Lonely Woman)』が、スリリングなスパイ映画の挿入曲の様な体裁でもって顕れる。

本作の、そして今回こそジョン・ゾーン (John Zorn) 名義だが後に、ネイキッド・シティ (Naked City) と名乗るそのユニットの代表曲は、おそらく『ニュー・ヨーク・フラット・トップ・ボックス (N.Y. Flat Top Box)』だろう。43秒と謂う短い楽曲の中で、カントリー・アンド・ウェスタン (Country And Western) の基調の狭間で幾つも幾つも異なる世界観を呈示する手法を聴かせるのが、未体験者に、彼と彼の音楽を知らしめるには最も速く、最も簡単だ。
だけど、決してそれだけではない。そして、それだけではないモノが無造作に無秩序に本作品に放置されている。
後に発表されるネイキッド・シティ (Naked City) の諸作は、その無造作無秩序のなかから、ある1点ないしは数点を抽出したモノの様に、今では思える。
だからといって、名刺がわりとも言えないし、原型とも呼べない。
だからぼくに謂えるのは、ネイキッド・シティ (Naked City) のある作品を入手して堪能した後に、他のその作品を入手したら吃驚してしまうかもしれない、と謂う事だ。
そんな場合になってしまったら、本作にたちかえってみると良い。そうすると、他のその作品で試みられているモノは、既に本作で呈示されている。
単なる思いつきや奇行奇策としてそんなアプローチは決して行っていないのだ。ネイキッド・シティ (Naked City) の全体像を鷲掴みにして提出したのが、きっと本作なのだ。

本作に収録されている全26曲のうち、7曲はカヴァー作品である。本作の理解の一助になるかもしれないので、その出典を明記しておく。

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2. 『ザ・シシリアン・クラン (The Sicilian Clan)』 [オリジナル・ヴァージョンはこちら]
作曲:エンニオ・モリコーネ (Ennio Morricone)
映画『シシリアン (Le clan des Siciliens)』 [アンリ・ヴェルヌイユ (Henri Verneuil) 監督作品 1969年制作]より。

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5. 『ア・ショット・イン・ザ・ダーク (A Shot In The Dark)』 [オリジナル・ヴァージョンはこちら]
作曲:ヘンリー・マンシーニ (Henry Mancini)
映画『暗闇でドッキリ (A Shot In The Dark )』 [ブレイク・エドワーズ (Blake Edwards) 監督作品 1964年制作]より。

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8. 『アイ・ウォント・トゥ・リヴ (I Want To Live)』 [オリジナル・ヴァージョンはこちら]
作曲:ジョニー・マンデル (Johnny Mandel)
映画『私は死にたくない (I Want To Live!)』 ロバート・ワイズ (Robert Wise) 監督作品 1958年制作] より。

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9. 『ロンリー・ウーマン (Lonely Woman)』 [オリジナル・ヴァージョンはこちら]
前述の通り、オーネット・コールマン (Ornette Coleman) のアルバム『ジャズ来るべきもの(The Shape Of Jazz To Come)』 [1959年発表] 収録。
この曲だけ映画関連作品ではない。

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18. 『チャイナタウン (Chinatown)』 [オリジナル・ヴァージョンはこちら]
作曲:ジェリー・ゴールドスミス (Jerry Goldsmith)
映画『チャイナタウン (Chinatown)』 [ロマン・ポランスキー (Roman Polanski)監督作品 1974年制作]より。

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22. 『ジェームス・ボンドのテーマ (The James Bond Theme)』[オリジナル・ヴァージョンはこちら]
作曲:モンティ・ノーマン (Monty Norman) 編曲:ジョン・バリー (John Barry) [2001年、長年の裁判を経て確定]
映画『007は殺しの番号 (Dr. No)』 [テレンス・ヤング (Terence Young) 監督作品 1962年制作] より。

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24. 『コンテンプト (Contempt)』 [オリジナル・ヴァージョンはこちら]
作曲:ジョルジュ・ドルリュー (George Delerue)
映画『軽蔑 (Le Mepris)』 [ジャン=リュック・ゴダール (Jean-Luc Godard) 監督作品 1963年制作]より。

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最期に蛇足として、ネイキッド・シティ (Naked City) と謂う語句は、映画『裸の町 (The Naked City)』 [ジュールス・ダッシン (Jules Dassin) 監督作品 音楽:ミクロス・ローザ (Miklos Rozsa)、フランク・スキナー(Frank Skinner) 1948年制作] とテレビ番組『裸の町 (Naked City)』 [作:スターリング・シリファント (Stirling Silliphant) 19581963ABCにて放映] とがあるが、ここで謂う「裸の街 (The Naked City)」とは、本作品のジャケット写真に起用された、ウィージー (Weegee) の写真集『ネイキッド・シティ (Naked City)』 [1945年刊行] からの引用であろう。

ものづくし (click in the world!) 206. :"NAKED CITY" by JOHN ZORN


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"NAKED CITY" by JOHN ZORN

1 BATAMN 1:58 2 THE SICILIAN CLAN 3:27 Ennio Morricone 3 YOU WILL BE SHOT 1:29 4 LATIN QUARTER 4: 05 5 A SHOT IN THE DARK 3:09 Henry Mancini 6 REANIMATOR 1 34 7 SNAGGLEPUSS 2:14 8 I WANT TO LIVE 2:08 Johnny Mandel 9 LONELEY WOMAN 2:38 Ornette Coleman 10 IGNEOUS EJACULATION :20 11 BLOOD DUSTER :13 12 HAMMERHEAD :08 13 DEMON SANCTUARY : 38 14 OBEAH MAN :17 UJAKU :27 16 FUCK THE FACTS :11 17 SPEEDBALL :37 18 CHINATOWN 4:23 Jerry Goldsmith 19 PUNK CHINA DOLL 3:01 20 N.Y. FLAT TOP BOX :43 21 SAIGON PICKUP 4:46 22 THE JAMES BOND THEME 3:02 John Barry 23 DEN OF SINS 1:08 24 CONTEMPT 2:49 George Delerue 25 GRAVEYARD SHIFT 3:25 26 INSIDE STARLIGHT 4:10

JOHN ZORN alto sax | BILL FRISELL guitar | WAYNE HORVITZ keyboards | FRED FRITH bass | JOEY BARON drums | special guest : YAMATSUKA EYE vocals
all compositions by JOHN ZORN | unless otherwise noted | all arengements by JOHN ZORN / NAKED CITY | recorded and mixed by ROGER MOUTENOT | mastering by BOB LUDWIG | front cover photograph WEEGEE CORPSE WITH REVOLVER CA. 1940 / Photo courtesy of the Weegee Collection, curator : Wilma Wilcox | illustrations MARUO SUEHIRO | design TANAKA TOMOYO | photo-type setting TAKAHASHI YUKIHIRO | produced by JOHN ZORN / NAKED CITY | executive producer BOB HURWITZ
special thanks to MIWA KAORU, EYE and YOSHIMI chan (BOREDOMS), PILL (LIP CREAM), RUINS, N.Y. ANTIKNOCK, MICK and SHANE (NAPALM DEATH), BILL (CARCASS),MARTIN (EARACHE), EXTREME NOISE TERROR, ANDY, TED and GABE (BLIND IDIOT GOD),TOM PAINE (LIVE SKULL), CRIG and SHARON (GOD IS MY CO-PILOT), MARK BEYER, MARUO SUEHIRO, TANAKA TOMOYO, ALBERT LEE, DAVID BITHER, KNITTING FACTORY, MANNY (LUNCH FOR YOUR EARS), , THE JAPANESE - US - UK HARD CORE TRIANGLE. and all the people who bought our T-shirts and came to our fucking gigs.

(P) and (C) 11989 ELEKTRA ENTERTAINMENT for the United States and WEA International
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