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2019.10.20.08.35

『ブルガリアン・ヴォイス II [ブルガリアの声の神秘] (Volume 2)』 by ブルガリアン・ヴォイス (LE MYSTERE DES VOIX BULGARES)


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この作品の前作『神秘の声 (Le Mystere des Voix Bulgares)』 [1986年発売] がこうしたかたちで発売された経緯をきかなければ、ぼくはこれらの作品を聴こうとはしなかったかもしれない。

尤も、前作を発端として、これらの作品の唱法は名を知られ、巷に溢れる事になったから、それらを通じてブルガリアン・ヴォイス (Bulgarian Voices) へと遡る事はあっただろう。だが、仮にそんな事態があり得たとすると、この唱法の認識は随分と異なったモノになったかもしれない。

ぼくが知っているその経緯は次の様なモノである。
あるテープをピーター・マーフィー (Peter Murphy) が聴く。それを気に入った彼が、アイボ・ワッツ・ラッセル (Ivo Watts-Russell) に聴かせる。そしてそれを気に入った彼がその作品の発売へと踏み切る。

アイボ・ワッツ・ラッセル (Ivo Watts-Russell) とは、インディペンデント・レーベル、フォーエーディー (4AD) のオーナーである。ピーター・マーフィー (Peter Murphy) はかつて自身が在籍していたバンド、バウハウス (Bauhaus) の1員として、その活動初期、そこから作品を発表していたのだ。

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このふたりの当時の関係は、ビジネス上の、と謂うよりも、旧知の間柄と看做して良いのではないだろうか。
フォーエーディー (4AD) の視点でみれば、バウハウス (Bauhaus) はそのレーベルの枠内に収める事が出来なかった。ビジネス的にも、音楽性に於いても、である。況してや、バンド解散後、ソロ・アーティストとして活動しているピーター・マーフィー (Peter Murphy) は尚更、そこから異なる地平を目指していた [上掲画像は彼の第1作『凍てついた世界へ (Should The World Fail To Fall Apart)』 [1986年発売] ]。

ぼくがこの逸話を気にかけるのは当時、ふたりの交流がいまだに続いている点である事と、その作品発売の経緯が、そんな個人的なモノから出発した点だ。

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その作品は、フォーエーディー (4AD) ならではの美意識、つまり、デザイン・チーム、23エンヴェロップ (23 Envelope) によって装幀されて、そのレーヴェルから発売された。1986年の事である。本作はその第2作、1988年発売のセカンド・アルバムなのである。

フォーエーディー (4AD) から発売された結果、ある種のブランド・イメージが確立された。ブルガリアン・ヴォイス (Bulgarian Voices) が民族音楽であると看做されている限り、決してその世界が届かぬ層へと到達する。つまり、ぼくの様な人種へと、だ。
そして、フォーエーディー (4AD) を語る文脈にならって、その作品を聴き、その作品を評価する。
でも、その実際はどうなのだろう?

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少なくとも、フォーエーディー (4AD) は岐路に立っていたのではないだろうか。1983年、フォーエーディー (4AD) オールスターズとも看做せるプロジェクト、ディス・モータル・コイル (This Mortal Coil) の成功によって、レーベルの音楽性と評価は盤石のモノとなっていた。だがその一方で、それらを裏切りかねない新人バンドの発掘にも勤しむのだ。レーベル初の米国バンド、スローイング・ミュージズ (Throwing Muses )が第1作『スローイング・ミュージズ (Throwing Muses)』をそこから発表するのは、1986年の事である。彼女達に続いてピクシーズ (Pixies)が第1作『サーファー・ローザ (Surfer Rosa)』をそこから発表するのは、1988年の事である。
その間に、1987年には、レーベル最大のヒット曲と目されるマーズ (M/A/R/R/S) の楽曲『パンプ・アップ・ザ・ヴォリューム (Pump Up The Volume)』が発売されるのだ。
その渦中で、ブルガリアン・ヴォイス (Bulgarian Voices) の諸作品が発売されたのである。つまり、外形的には、スローイング・ミュージズ (Throwing Muses ) やそれに続くピクシーズ (Pixies)、そしてマーズ (M/A/R/R/S) と同様の、レーベルの新たなる冒険と挑戦と看做すべき作品群ではないだろうか。

ブルガリアン・ヴォイス (Bulgarian Voices) は、フォーエーディー (4AD) の文脈、つまり、フォーエーディー (4AD) を語る際に登場する形容や常套句をもって紹介され、そして語られてきた。それは決して間違ってはいない。この唱法は、そのレーベル所属のアーティスト達の諸作品とあい通じるモノはある。
だけれども、ぼくが聴いているのは、そこからはみだした部分、それらのことばでは語る事が出来ない要素の様な気がする。稚戯にも似たおさない言動、未整理で猥雑な表情、そんなモノばかりに耳を奪われるのだ。
そして、ぼくが聴きたいのもそこなのである。
それは喩えて謂えば、三味線 (Shamisen) に潜まされているさわり (Sawari) の様なモノだ。濁っている上に歪んでいるかもしれない、それが美しいとぼくの耳がとらえるのである。

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フォーエーディー (4AD) からこれらの作品が世に出なかったのならば、ブルガリアン・ヴォイス (Bulgarian Voices) はどんな受容がなされたのだろう。
映画『アキラ (Akira)』 [大友克洋 (Katsuhiro Otomo) 監督作品 1988年制作] の音楽を担当した芸能山城組 (Geinoh Yamashirogumi) は、あの様な音楽を構築しなかったかもしれないし、構築する事自体を許されなかったかもしれない。もし仮に、いまここで聴けるその作品を提示しても、極めて奇異なモノと評価されたかもしれない [フォーエーディー (4AD) からブルガリアン・ヴォイス (Bulgarian Voices) が紹介されなくとも、芸能山城組 (Geinoh Yamashirogumi) はその唱法をおのれのモノとしていただろう。ぼくが指摘したいのは彼等が、ではなくて、彼等を聴くぼく達の態度の事だ:上掲画像はその映画ポスター [左] とそこからの派生音楽作品『交響組曲アキラ (Symphonic Suite Akira)』 [1988年発表]]。

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そして、恐ろしく寡作となってしまったケイト・ブッシュ (Kate Bush) が第6作『センシュアル・ワールド (The Sensual World)』 [1989年発表] の、後にシングルカットされる楽曲『ディーパー・アンダースタンディング (Deeper Understanding)』 [2011年発売] 他2曲に於いて、トリオ・ブルガルカ (Trio Bulgarka)を起用した事を、ぼく達は驚きもしなかったのも、フォーエーディー (4AD) 作品があったからだ。至極当然、否、遅きに失しているとも謂いたい風情がないでもなかった [それだけ時流とは異なる時間軸に彼女がいると謂う証左でもあるのだが]。

本作が発売された当時、ぼくはすこし戸惑った。と、謂うのはそれを聴く前、そのヴィジュアルに関して、である。ジャケット上部に羊飼いの少女の写真がある。それがフォーエーディー (4AD) 即ち、23エンヴェロップ (23 Envelope) 作品にそぐわない様に思えたからだ。
それ程に、ブルガリアン・ヴォイス (Bulgarian Voices) のイメージは、彼等の存在に左右されている。
民族衣装をまとった女性達、ブルガリアン・ヴォイス (Bulgarian Voices) の合唱団の実際の容姿とはまったく異なった印象が、ぼくのなかに形成されてしまっているのである。

ものづくし (click in the world!) 204. :
『ブルガリアン・ヴォイス II [ブルガリアの声の神秘] (Volume 2)』 by ブルガリアン・ヴォイス (LE MYSTERE DES VOIX BULGARES)


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ブルガリアン・ヴォイス II [ブルガリアの声の神秘] (Volume 2)』 by ブルガリアン・ヴォイス (LE MYSTERE DES VOIX BULGARES)

人の声がここまで美しい響きを持つのだろうか!!
ブルガリア民謡の神髄を洗練された女性コーラスで収録した特別企画。
ディスク・セリエ制作による「ブルガリアの声の神秘 [原題]」の続編。

1. 笛音
 Kaval Sviri arr. Peter Liomdev Ensemble TRAKIA, Plovdiv 1982.
2. 病 [娘よ、起きてくれ]
 Stani Mi, Maytcho comp. Krasimir Kyurkdjiyski Choeur RTB, Sofia 1983.
 Solo : Nadejda Chwoineva
3. ティ・リ・ド
 Di-Li-Do arr. Kyrill Stefanov Ensemble PIRIN, Blagoevgrad 1970.
4. 嫁娶 [ギョーロの結婚]
 More Zajeni Se Ghiouro arr. K. Kyurkdjiyski Choeur RTB, Sofia 1984.
5. 白絹の衣
 Tche Da Ti Kupim Bela Seitsa arr. K. Kyurkdjiyski Choeur RTB, Sofia 1984.
6. 女狐 [子供達はもういない]
 Ovdoviala Lissitchkata arr. trad. Orchestra Yvan Kirev, 1957.
 Solo : Verka Siderova / Tinka Pescheva
7. 月読 [つきよみ]
 Messetchinko Lio arr. Krasimir Kyurkdjiyski Choeur RTB, Sofia 1975.
 Solo : Nadejda Chwoineva
8. ルーシュカ
 Ei Mori Roujke arr. Kyrill Stefanov Ensemble PIRIN, Blagoevgrad 1970.
 Solo : Vasilka Karadalieva
9. ドラガンと夜啼鶯
 Dragana I Slavei arr. Philip Koutev Choeur Philip Koutev, 1973.
 Solo : N. Karadjova / St. Petkova / Y. Taneva / S. Nikolova
10. アトマジュはストラヒールに告げる
 Atmadja Duma Strachilu arr. Krasimir Kyurkdjiyski Choeur RTB, Sofia 1978.
 Solo : Kalinka Valcheva
11. 2つのトゥルラシ地方の唄
 Dve Tourlaski Pesen arr. Nik Kaufman
 Quatuor vocal : Kalinka Valcheva / Vasilka Andonova / Paulina Gortscheva / Stoyanka Boneva 1985.
12. トドルカ
 Trenke, Todorke arr. K. Kyurkdjiyski Choeur RTB, Sofia 1982.
13. 子のない若妻
 Bezrodna Nevesta arr. Nik Kaufman Choeur RTB. Sofia 1979.
 Solo : Radka Aleksova
14. 告白 [ロドペの哀歌]
 Izpoved arr. K. Kyurkdjiyski Choeur RTB, Sofia 1976.
15. ギョーレ・ドス
 Ghiore Dos arr. Stefan Moutafchiev Choeur RTB, Sofia 1982.
16. ミルカ、眠っているのなら
 Spis Li, Milke Le comp. Gueorgui Mintchev Choeur RTB, Sofia 1973.
 (extrait de "Starobulgarski Chroniky" Oratorio)

liner-notes : Marcel Cellier (Translated from the French by Catherine Gaitte)

Art Direction, Design and Typography : Vaughan Oliver at 23 Envelope
"Shepherdess" Photography : Catherine Cellier
Illustrations : Gill Sampson
Field Photography : Simon Larbalestier

LE MYSTERE DES VOIX BULGARES Volume 2 LIisenced from Disques Cellier

(P) & (C) 1988 4AD

ぼくが所有している国内盤CDには、成澤玲子 (Reiko Narusawa) の解説『声であれ、楽器であれ、精緻なアンサンブルは織物にたとえられる』と、濱田滋郎 (Jiro Hamada) の解説と曲目紹介『ひときわ特異な光を放つ「青星」のような<ブルガリアン・ヴォイス>』が添付されている。
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