FC2ブログ

2019.10.08.08.49

すぺるばうんど

3日おきぐらいに、アルフレッド・ヒッチコック (Alfred Hitchcock) の監督作品を、彼のフィルモグラフィー (Filmography) に従ってユーチューブ (YouTube) で1作ごとにみている。そこでみれる作品もあれば、みれない作品もある。
字幕も吹き替えもなくぼくの語学能力では、一体、どこまで理解出来ているのだろうかと覚束ない。だからと謂って、2時間前後のその時間、物語が全く解らずに途方にくれてしまうと謂う事はあまりない。
勿論、途方にくれてしまう事が皆無である訳ではない。全然、違う理由でそうなってしまうのだ。それは彼の物語の構築力や映像の構成美なのである。つまり、誰もが知るアルフレッド・ヒッチコック (Alfred Hitchcock) 作品のその魅力、その作品自体が呈示する謎そのもの、そしてその謎の構築の為に費やされる技術に翻弄されているのである。
拙稿の主題は、そんな作品のひとつ、映画『白い恐怖 (Spellbound)』 [1945年制作] である。しかも、その映画のたったひとつのシーンだけを取り上げる。

とは謂うものの、サルバドール・ダリ (Salvador Dalí) がデザインした悪夢のシーン (Dr. Edwardes' Surreal Dream) ではない。

アルフレッド・ヒッチコック (Alfred Hitchcock) 映画のファンにはお馴染みの、そしてお愉しみのシーンであるところの、監督自身がカメオ出演するシーン (The Hitchcock Cameos) でもない。

それは、その映画の主人公ふたり、エドワーズ博士 (Dr. Anthony Edwardes) [演:グレゴリー・ペック (Gregory Peck)] とコンスタンス・ピーターソン (Dr. Constance Petersen) [演:イングリッド・バーグマン (Ingrid Bergman)] のラヴ・シーンである。新たに赴任した病院長である彼の部屋に、彼を上司として仰ぐ勤務医のひとり、彼女が訪ねるのだ。物語は、彼の着任と同時に始まり、まだはじまったばかりではあるが、観客には、彼を彼女が一目惚れしたのであろう、と解釈する事が可能である。つまり、一目惚れのその次の事象へと、彼女自らが駒を進めた、その夜の出来事である。

彼の抱擁を求めた彼女はそれを促すべく、瞳を閉じる。そこにその場面には全く無関係な場面が挿入される。

眼前に扉がある。それが誰の掌が触れるまでもなく、開けられる。すると、その向こうには先程と同じく扉があり、それがまた開けられる。すると、さらにその向こうにも同様に扉があり、開けられる。
映像を観ているぼく達には、次から次へと扉が開けられてい場面に遭遇するのだ(こちらでそのシーンが視聴可能だ)。

images
この挿入映像を解釈するのは然程、難しくはない [上掲画像はこちらから]。
本来ならば、エロティックに描写されるであろうふたりの抱擁を、ソフィスティケートさせたのだ、そんな理解でもなんら不都合はないと思う。

だけれども、もう少し、この映像を丹念にみていこう。
開けられる扉は4枚ある。そして、最初の3枚の扉は、こちら側からその向こう側へと開けられる。しかし、最期の扉だけは向こう側からこちら側へと開けられるのだ。

仮に、扉のこちら側にいるのが彼であり、扉の向こう側にいるのが彼女としよう。
そうすると、彼がひとつひとつ扉を開けていくうちに、最期の扉だけは彼女が開けて、彼を招き入れるとみる事が出来る。
勿論、その真逆の可能性がない訳ではない。彼女の一目惚れから始まった抱擁ならば、こちら側にいる彼女が向こう側にいる彼を訪れると謂う理解も出来るのだ。

ただ、いずれの解釈をしようとも、扉の一方の側のアプローチだけで終わるのではなく、反対側からのアプローチによって、総ての扉が開けられると謂う点を留意しておく必要があると思う。

と、謂うのは、物語の謎は、彼の内心にあり、彼女が彼のそこに肉薄していく過程を観客達は追う事、それが物語の中心になるのである。
そして、それを達成するには、一方の側からのアプローチだけではなくて、その向こう側にいるもうひとりの行為が必須であると、謂いたいのだろう。その伏線として、そのシーンは機能しているのかもしれない。

サルバドール・ダリ (Salvador Dalí) の描く悪夢のシーン (Dr. Edwardes' Surreal Dream) は、その途上でふたりが踏み込んでしまう光景なのである。

ところで、ぼくはこの映画を観る遥か以前に、そのシーンだけはみていたのである [もしかしたら、その件はどこかで既に触れているのかもしれない]。
どういう文脈で、どういう理由で、そのシーンが登場したのかはまったく覚えていない。そして、その際には、そのシーンに関する情報は皆無だった。但し、それはブラウン管の中である事は事実、間違いはない。あるTV番組の一部を成しているのか、それとも、ある楽曲のプロモーション・ヴィデオ等での引用なのかもしれない、そのあたりが記憶にないのである。
どちらにしても観た映像は、ある男がある女を抱擁しようとした途端に、次から次へと開く扉が映し出されるシーンだけなのである。それ以外の情報、出典、引用理由は勿論の事、その男女が、グレゴリー・ペック (Gregory Peck) とイングリッド・バーグマン (Ingrid Bergman) であるとも知れなかったのだ。

ただ、その時、思ったのは、ドアーズ (The Doors) と謂うバンドの事なのである。もしかしたら、バンド名の由来はこのシーンから? と。

勿論、ドアーズ (The Doors) と謂うバンド名の由来は自明で、別のところにある。そのシーンを観た際も当然に既知であって、不意に浮かんだ疑問もその刹那、ぼく自身が否定したのである。そんなわけはないって。

そのバンド名の由来は、オルダス・ハクスリー (Aldous Huxley) の主著『知覚の扉 ( The Doors Of Perception)』 [1954年発表] からの引用である。
尤も、それ自体は、ウィリアム・ブレイク (William Blake) の詩『天国と地獄の結婚 (The Marriage Of Heaven And Hell)』 (1793年発表] からの引用なのである。「もし知覚の扉が浄化されるならば、全ての物は人間にとってありのままに現れ、無限に見える (If The Doors Of Perception Were Cleansed, Everything Would Appear To Man As It Truly Is, Infinite.)」と謂う。
ウィリアム・ブレイク (William Blake) 〜オルダス・ハクスリー (Aldous Huxley) 〜ドアーズ (The Doors) と謂う系図なのである。そこにはアルフレッド・ヒッチコック (Alfred Hitchcock) もグレゴリー・ペック (Gregory Peck) もイングリッド・バーグマン (Ingrid Bergman) も連なってはいない。

連なってはいないが時系列に添えば、映画『白い恐怖 (Spellbound)』 が制作された後に著作『知覚の扉 ( The Doors Of Perception)』が発表されたのだ。ドアーズ (The Doors) の登場はさらにその後だ。
ドアーズ (The Doors) のヴォーカリストであるジム・モリソン (Jim Morrison) とキーボディストであるレイ・マンザレク (Ray Manzarek) はカリフォルニア大学ロサンゼルス校 (University Of California, Los Angeles) の映画学科 (Film School) に在学していた。そのふたりがその映画を知らない訳ではない。
だから、可能性はあるだろう、とひっそりとだけれども公然と囁きたい気持ちがぼくのなかにある。

何故ならば、著書『知覚の扉 ( The Doors Of Perception)』 や詩『知覚の扉 ( The Doors Of Perception)』 を引っ張り出して彼等の音楽を語るよりも、映画『白い恐怖 (Spellbound)』のそのシーンを示した方が、遥かに理解されやすいのではないか、とぼくが思っているからなのである。

例えば、通常ならばベーシストを加えた5人編成となるべきところを敢えて、その演奏者不在の、4人編成としている点だ。
念をおすと、その映画で開かれるのは、4枚の扉なのである。

次回は「」。

附記:
映画『白い恐怖 (Spellbound)』での、アルフレッド・ヒッチコック (Alfred Hitchcock) のカメオ出演するシーン (The Hitchcock Cameos) は、エンパイア・ホテル (The Empire Hotel) のエレベーター乗客のそのひとり、としてのモノである。
関連記事

theme : ふと感じること - genre :

i know it and take it | comments : 0 | trackbacks : 0 | pagetop

<<previous entry | <home> | next entry>>

comments for this entry

only can see the webmaster :

tackbacks for this entry

trackback url

https://tai4oyo.blog.fc2.com/tb.php/2888-1a1c2fde

for fc2 blog users

trackback url for fc2 blog users is here