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2019.09.24.11.17

ろーどらんなー

と、謂う件名で、ボ・ディドリー (Bo Diddley) の楽曲『ロードランナー (Road Runner)』 [アルバム『ボ・ディドリー・イン・ザ・スポットライト (Bo Diddley In The Spotlight)』 収録 1960年発表] について綴ってもいい訳なのだが、ここで主題となるのは鳥、大道走 (Greater Roadrunner) をアニメ化させたキャラクター、ロード・ランナー (The Road Runner) についてである。
ちなみにその楽曲にぼくが出逢ったのは、ザ・フー (The Who) によるカヴァー『ロードランナー (Road Runner)』 [アルバム『フーズ・ネクスト (Who's Next)』収録 1971年発表]、映画『キッズ・アー・オールライト (The Kids Are Alright)』 [ジェフ・スタイン (Jeff Stein) 監督作品 1979年制作] の挿入曲のひとつとして、である。

アニメ・キャラクターのロード・ランナー (The Road Runner) は、アニメ番組『ルーニー・テューンズ (Looney Tunes)』 [19301969ワーナー・ブラザース (Warner Bros.) 制作] の1シリーズ『ワイリー・コヨーテとロード・ランナー (Wile E. Coyote And The Road Runner)』 [1949年開始] の主人公達、1匹と1羽の、1羽の方である。1匹の方は、ワイリー・コヨーテ (Wile E. Coyote) だ。
この1匹と1羽で、追うモノと追われるモノの短い物語が、その番組内では何度となく、永遠に繰り返される訳である。アニメ番組『トムとジェリー (Tom And Jerry)』 [1940年開始 ハンナ・バーベラ・プロダクション (Hanna-Barbera) 制作] に代表される様な、スラップスティック・アニメ (Slapstick Cartoon) のひとつと看做しても良い。

だが、シリーズ『ワイリー・コヨーテとロード・ランナー (Wile E. Coyote And The Road Runner)』は、追うモノと追われるモノとを主題とした他のアニメ作品とはいささか異なる点がある。
例えば、同じアニメ番組のもうひとつのシリーズ『シルベスター・キャットとトゥイーティー (The Sylvester And Tweety Show)』 [1976年開始] と比べてみても良い。

シリーズ『シルベスター・キャットとトゥイーティー (The Sylvester And Tweety Show)』は、追うモノ則ちシルベスター・キャット (Sylvester The Cat) と追われるモノ則ちトゥイーティー (Tweety Bird) との智慧比べと謂った様相を呈示している。前者が後者をご馳走と看做し、その捕獲とその結果として、後者を食餌として食事を試みる。然し乍ら、いつも絶対にそれはあり得ない。後者が巧みに前者の欲望から逃れてしまうからだ。何故ならば、後者は絶えず前者の存在を意識し、後者を出し抜く事でもって己の生存を確かにしようとしているからだ。そして勿論、智慧も智識も後者の方が前者を遥かに上回っているのである。

だが、ワイリー・コヨーテ (Wile E. Coyote) とロード・ランナー (The Road Runner) には智慧比べといった様相は殆どない。前者は後者を捕獲する為に、いつも必ず、巧妙な罠を発案するが、いつでも絶対にそれは失敗する。そして殆どが前者の自滅と謂う様相を呈している。のみならず、後者は前者の罠の存在すら意識する事もなく、そしてもしかしたら、前者自体の存在すら自覚していないのかもしれない。後者は己のいきたいところへとただひたすらに疾駆するだけなのである。

ところで、このシリーズ『ワイリー・コヨーテとロード・ランナー (Wile E. Coyote And The Road Runner)』は、映画『続・激突! / カージャック (The Sugarland Express)』 [スティーヴン・スピルバーグ (Steven Spielberg) 監督作品 1974年制作] のなかの、あるシーンに登場する。それについて考えてみようと謂うのが、拙稿の主旨である。

映画『続・激突! / カージャック (The Sugarland Express)』 はスティーヴン・スピルバーグ (Steven Spielberg) 初の劇場作品である。その前に制作されて劇場で公開された映画『激突 (Duel)』 [スティーヴン・スピルバーグ (Steven Spielberg) 監督作品 1971年制作] は、本来はテレビ映画として制作されたモノである。ついでに書き加えておくと、あたかも正篇・続篇のニュアンスを含んだ邦題ではあるが、両者に物語としての継続性はない。

映画『続・激突! / カージャック (The Sugarland Express)』 は幼い夫婦 [ルー・ジーン・ポプリン (Lou Jean Poplin) [演:ゴールディ・ホーン (Goldie Hawn)] とクロヴィス・マイケル・ポプリン (Clovis Michael Poplin) [演:ウィリアム・アザートン (William Atherton)]] が実子を奪還する為に、幾つかの犯罪を犯しながらも、その子の許へと向かう物語である。その渦中、則ち逃亡劇の最中、ドライブイン・シアター (Drive-in Theater) に逃げ込み、つかのまの休息と睡眠を確保しようとした彼等に向けて上映されているのが、シリーズ『ワイリー・コヨーテとロード・ランナー (Wile E. Coyote And The Road Runner)』の1篇なのである。
捜索者の眼を逃れる為に、車内に潜り込む様に身を潜めているクロヴィス・マイケル・ポプリン (Clovis Michael Poplin) の視界に、ワイリー・コヨーテ (Wile E. Coyote) とロード・ランナー (The Road Runner)、追うモノと追われるモノの物語が繰り広げられているのだ。

このシーンは、それまで疾走、否、暴走の限りを尽くしていた夫婦が初めてその速度を緩めるシーンである。そこにはそれまでと異なる様々な感情が交錯し浮沈する。ちなみに前作『激突 (Duel)』にはその様なシーンは皆無である。速度が緩まるそのシーン、ガソリンスタンド (Gas Station) でのそれは、思わぬ危機的状況が露見し、寧ろ恐怖が倍増する様な挿話となっている。

話を戻す。

images
そのシーンではその映像は直接映し出されずに、音声のみが響く。その画面を見上げるクロヴィス・マイケル・ポプリン (Clovis Michael Poplin) が車窓越しに映し出され、そこに僅かにその映像が反映しているのみである [上掲画像はこちらから]。

上映されているシリーズ『ワイリー・コヨーテとロード・ランナー (Wile E. Coyote And The Road Runner)』はカートゥーン (Cartoon)、笑う為の物語だ。そして、それをこのシーンに引用しているこの映画は、破天荒な夫婦の活動に快哉を叫ぶ為のモノである。にも関わらずに、このシーンだけは妙におもくのしかかるのだ。

夫婦は逃亡者だ。犯罪者でもある。いつ逮捕されるかも解らないし、ここは米国だ。射殺されないとは決して断言は出来ない。否、問答無用で撃ち殺される可能性の方が遥かに高い。
だから、2人の眼は、追うモノをモノともせずに、疾走するロード・ランナー (The Road Runner) を憧憬のまなざしでもってみまもっているのだろうかと、ふと思う。

そこで納得すればいいモノを、ぼくはなんとなく納得が出来ていない。
だから、こんな風に考えてみた。

彼等は、自身をロード・ランナー (The Road Runner) としてではなく、その逆、ワイリー・コヨーテ (Wile E. Coyote) としてみていないだろうか。
事態が彼等の思う様に展開し、2人が我が子にまみえた時の事を、である。
その子が両親を歓迎する事なく、彼等から逃れようとしないだろうか、と。
仮にそうでなくとも、ワイリー・コヨーテ (Wile E. Coyote) が永遠にロード・ランナー (The Road Runner) を捕獲出来ない様に、我が子が彼等の許へと決して帰らないのではないだろうか、と。

次回は「」。

附記:
映画『人類危機一髪! 巨大怪鳥の爪 (The Giant Claw)』 [フレッド・F・シアーズ (Fred F. Sears) 監督作品 1957年制作] に登場する怪鳥は、ロード・ランナー (The Road Runner) を多分に意識していないだろうか? 但し、その怪鳥は疾駆せず飛翔するのだが。
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