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2019.08.13.11.02

きゅうせいき

なる語句で検索すると、有象無象 (Rabble) のモノ達がたちまち登場する。雲霞の如く (In Swarms)、と謂うのはインターネット (Internet) での検索に於いては如何なる語句であろうと当然至極ではあるが、その様はあたかも魑魅 (Chimi) 魍魎 (Moryou) の如くでもある。
ちなみに、その語句は正しくは吸精鬼 (Vampire : Vigor-sucking Daemon) [以下吸精鬼 (Vampire) と略す] と綴る。

ところで、ぼくに用があるのは、そんな吸精鬼 (Vampire) 達ではない。
ここで綴るのは、マンガ『夢幻紳士 怪奇篇 (Mugen Shinshi - Kaikihen : A Gentleman Mugen Horror Version)』 [高橋葉介 (Yosuke Takahashi) 作 19841991メディウム連載] の1挿話『吸血鬼 (Vampire)』 [1984年掲載] に登場するモノである。
その作品の主人公、夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) は、ある人物を称して吸血鬼 (Vampire : Bloodsucking Daemon) [以下:吸血鬼 (Vampire) と略す] ならぬ吸精鬼 (Vampire) と呼ぶのである。

その作品に於いて、彼が吸精鬼 (Vampire) としての本領を発揮する事は、実はない。その可能性が示唆されているだけである。
彼がその挿話に登場する際は、枯死した植物に向けて両の掌をかざしているだけであるからだ。もしも、その叙景がもう少し前から描写されていたのならば、美しい樹々がみるみるうちに枯れ果てていく様をぼく達は観る事が出来たかもしれない。

そして、その後に登場するのは、夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) の証言、その男に直接、語りかけるある人物の肖像とその行跡である。無論、ある人物こそがその男の事なのである。
だから、ぼく達は夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) の証言を信用するからこそ、彼を吸精鬼 (Vampire) と認めうるだけで、それを保障したり担保したりするモノは一切にない。

勿論、その直後に彼は自らの出自、その正体を明かさんと試みるが、逆に夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) にそれは阻まれ、自滅してしまう。
この物語の主人公は、彼との対決前に、ある怪しげな老婆 (The Witch) より、こぶしほどのおおきさの水晶珠 (Crystal Ball) を入手しているのである。
吸精鬼 (Vampire) と目されるその男の精根 (Vigor) は一切、その水晶珠 (Crystal Ball) に吸収されてしまうのだ。

だから、作品のみかたよみかたによっては、その水晶珠 (Crystal Ball) こそが吸精鬼 (Vampire)、つまりタイトルロールである「吸血鬼 (Vampire)」であると認じる事が許されるのかもしれない。

老婆 (The Witch) から夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) に手渡された水晶珠 (Crystal Ball) は、彼からある少女の許へと移るのだ。その少女こそが、探偵 (Detective) である夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) の依頼主であり、あの男の被害者のひとり、彼の亡き妻の、妹であるのだ。

吸血鬼 (Vampire)』と謂う挿話は、それを収めた作品の「怪奇編 (Horror Version)」と謂う語句に拘泥すれば、夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) とあの男との直接対決の叙景がクライマックスであると看做される。
みるからに怖ろしい、その男の豹変を味わえるからだ。

しかし、この挿話の白眉 (The Finest) は、その対決の終了後なのである。
事件解決の後の、主人公と少女との出逢い、その叙景である。そこに、その物語の主人公、夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) の真骨頂、彼の本領をみてとる事が出来るのである。

その作品を収めた単行本には、作者高橋葉介 (Yosuke Takahashi) による各作品の自註が掲載されている。
彼は他の作品のそれに於いて、映画『ツィゴイネルワイゼン (Zigeunerweisen)』 [鈴木清順 (Seijun Suzuki) 監督作品 1980年制作] の花火 (Fireworks) のシーンに関して言及しているモノがある。その物語の主要登場人物達が一堂に会して、花火 (Fireworks) を見物しているモノの、彼等を魅了している筈の花火 (Fireworks) が一切、映像に出現しない、そのシーンである。

挿話『吸血鬼 (Vampire)』の、ぼくが白眉 (The Finest) と指摘する叙景もまた、その映画の花火 (Fireworks) のシーンの様なモノなのである。
その場面には一切、吸血鬼 (Vampire) も吸精鬼 (Vampire) も登場しない。
ただ、夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) が少女を誘惑し、と同時に、その少女を侮辱するだけなのである。

だが、ここに於いて読者は初めて気づかされるのかもしれない。
夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) こそが、吸血鬼 (Vampire) ならぬ吸精鬼 (Vampire) である、と。

その挿話の最期の場面、立ち去る少女を不敵な面持ちで見送る夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) をそう看做しても良いのかもしれない。
宿命の女 (Femme fatale) と謂うモノが存するのならば、宿命の男 (Homme fatale) もいてもいい。そして、夢幻魔実也 (Mamiya Mugen) こそが、それなのだ、と。

images
上掲画像はこちらから。

次回も「」。
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