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2019.07.21.08.43

"Body To Body Job To Job." by SWANS

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ぼくは失望していた。
なかば危惧していただけに、それだけ余計におおきかった。あぁ、やっぱりね。そんなことばはくちをついてはでてくるが、所詮はきやすめだ。なんのすくいにもならない。だれもすくわれない。だれもすくってくれない。
1989年の事である。

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理解にくるしんでいたのはシングル『ラヴ・ウィル・テア・アス・アパート (Love Will Tear Us Apart)』が発表された時点からだ。謂わずとしれたジョイ・ディヴィジョン (Joy Division) のカヴァー [1989年発表。オリジナル・ヴァージョン (Original Version) はこちら] だ。うん、確かに彼等が取り組むには相応しい楽曲だ。だが、必ずしもスワンズ (Swans) でなければならない理由はひとつもない。スワンズ (Swans) の顔であるマイケル・ジラ (Michael Gira) と、ジャーボウ (Jarboe) によるサイド・プロジェクト、スキン (Skin) [このユニットは後にザ・ワールド・オブ・スキン (The World Of Skin) と改称する] 名義で充分ではなかったか。
だが、この曲の発表により、スワンズ (Swans) のメジャー・デヴューと謂う報道も納得がいかざるを得ない。

そのメジャー・デヴュー作のプロデュースはビル・ラズウェル (Bill Laswell) であると謂う。これも納得がいく人選だ。但し彼は、プロデューサーとしての自己の主張が著しく強い人物だから、まかり間違えれば、彼の作品になってしまう可能性もある。スワンズ (Swans) の新作が、彼がイニシチアヴを握るプロジェクト、マテリアル (Material) の第5作になりかねない。
いや、もしかすると、そんな可能性を知った上で、彼等は危険を冒したのかもしれない。

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そんな事を考えながらぼくはその新作『ザ・バーニング・ワールド (The Burning World)』 [1989年発表] を買った。アルバムを飾る花は、ロバート・メイプルソープ (Robert Mapplethorpe) の作品『百合 (Calla Lilly, 1987)』だ。
その結果が、冒頭に綴った文章なのである。

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セカンド・アルバム『コップ (Cop)』 [1984年発表] とその次作『グリード (Greed)』 [1986年発表] は最高だ。それは今もそう断言出来る。
そんなぼくからみれば当時の新作『ザ・バーニング・ワールド (The Burning World)』は最低だ。
失望 (Disappointment) と謂う2文字しかない。
余談ながら、これを絶望 (Despair) と表現出来るのならば、彼等にとっては褒め言葉である。最高と評したぼくからみればその2作品こそが、絶望 (Despair) と謂う語句を物の見事に表現したモノなのだから。
しかもそれは、とても居心地が良いモノだったのである。

そう考えたのはぼくだけではなかったのかもしれない。
過去の未発表音源を纏めた本作が発表されたのだ。アルバムを飾る少年の笑顔は恐らく幼き頃のマイケル・ジラ (Michael Gira) だろう。なかば退色したその笑顔は、如何様にも理解可能だ。

ぼく自身の、本作をめぐる、語るべき物語はここまでだ。
しかしここで拙稿を終えてしまうと、後に遺るのは情けないぼくだけになってしまう。
だから、もうすこし綴り足しておく。

スワンズ (Swans) と謂うバンドを素晴らしいと想えたのは、ある場所でのある体験が発端だ。尤も、その場所がどこであるかは全くもって関係はない。単純に、ぼくが日常接しているモノよりも遥かにおおきな音量で聴く事が出来た。それだけの事でしかない。
ひとことで謂えば、とてつもなく美しいモノに思えたのである。
終止すべきその時を遅延させられている残響が幾重にも聴こえ、本来は暴力的な轟音が肌理のこまかい繊細なモノに思えたのである。
例えて謂えば、闇は墨1色で塗り込められたモノではなくて、ありとあらゆる色と光が重ね塗られて生成しているのだと理解する様なモノなのである。
と、同時にそこで唄われている語句は、一見ネガティブなモノである様にみられながらも、それとはまったくことなる方向をさししめしたモノの様にも思わされたのである。

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この拙稿を綴るにあたり、彼等の全作品をひとわたり聴いてみた。
音楽性は刻一刻として変化している。先に、最高だと断言した第2作『コップ (Cop)』と続く第3作『グリード (Greed)』にはおおきな断絶がある。そのパッケージのヴィジュアルから2部作と謂われている第3作と第4作『ホーリー・マネー (Holy Money)』 [1986年発表] も決して一様ではない。その次の作品である第5作『チルドレン・オブ・ゴッド (Children Of God)』 [1987年発表] には、スキン (Skin) で勝ち得た成果も混入している。
勿論、ぼくにとっての最低である第6作『ザ・バーニング・ワールド (The Burning World)』以降も、常に変化している。

しかし、まったく変わらないモノもある。ひとつは上に綴った美しさだ。その存在を確認出来る作品はどれも素晴らしい。
そしてもうひとつ、マイケル・ジラ (Michael Gira) のヴォーカリゼーションだ。もしかしたら、この声に拮抗できるサウンドの存否が、その作品の成否そのモノであるのかもしれない。ふと、そう思う。
野太く、荒々しいその声の存在感に圧倒されるおとは必要とされていないのだ。

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彼等のライヴ・パフォーマンスを収録したヴィデオ作品『キング・オブ・インデペンデンス (Kings Of Independence)』 [1987年発表] がある。ニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズ (Nick Cave And The Bad Seeds) とクライム・アンド・ザ・シティ・ソリューション (Crime And The City Solution)、そしてスワンズ (Swans)、この3バンドの演奏が収められている。
1987年のライヴ映像でこの年、先の2バンドは同年公開の映画『ベルリン・天使の詩 (Der Himmel über Berlin)』 [ヴィム・ヴェンダース (Wim Wenders) 監督作品 1987年制作] に出演している。しかも、ニック・ケイヴ・アンド・ザ・バッド・シーズ (Nick Cave And The Bad Seeds) は、その映画で語られている物語のクライマックスをも、演出する位置にある。だから、とりもなおさず、その映像作品は、彼等の演奏を収録してある事をもってセールス・ポイントとしている筈だ。
しかし、ライヴ・パフォーマンスとしては、その映像を観るモノは純粋にスワンズ (Swans) に圧倒されるのだ。
ステージ中央に仁王立ちとなり、あせみどろとなって前屈を繰り返すマイケル・ジラ (Michael Gira) のパフォーマンスに、だ。それははてしもなく永遠に続くかの様にも、それ以外の行動を一切許されていないかの様にもみえる。そんなものくろおしさばかりをみせつけられるのである。
スワンズ (Swans) の全作を聴いているあいだずっと想い出していたのは、その映像での彼等、否、マイケル・ジラ (Michael Gira) である。
業と謂う語句がすぐに浮かぶが、それだけに翻弄されてはいないなにかがある。否、そんな宗教的な蹂躙とはまったく無縁なのが、スワンズ (Swans) のサウンドだ。智的とも謂える。
そしてもしかしたらそれは巧妙にたくまれた罠なのかもしれない。

以下余談。
スワンズ (Swans) はその出身がニューヨーク (New York City) であるのにも関わらずに、地縁的な係累を感じる事が何故か、出来ない。
その初期には、ロリ・モシマン (Roli Mosimann) やサーストン・ムーア (Thurston Moore) 等、錚々たる人物達が在籍していたのにも関わらずに、である。
バンド脱退後、幾つものアグレッシブな作品を手掛け、プロデューサーとして評価の高い前者や、ソニック・ユース (Sonic Youth) のリーダーたる後者の存在も、スワンズ (Swans) ならではの人脈形成には影響を与えていない様にみえるのだ。
その有様は、ソニック・ユース (Sonic Youth) がニューヨーク (New York City) のシーン、否、ロック・ミュージック (Rock 'N Roll Music) の総てに経脈を根付かせているのと対極にある様にもおもえる。
そう謂えば、スワンズ (Swans) が初めて紹介された頃、彼等のサウンドはドーム (Dome) のそれをもって語られていた。ここで謂うドーム (Dome) とは、解散したワイヤー (Wire) の1/2、グレアム・ルイス (Graham Lewis) とブルース・ギルバート (Bruce Gilbert) のプロジェクトの事である。
如何に隔絶した位置に彼等が存在していたのか、その証左となるのかもしれない。

ものづくし (click in the world!) 201. :"Body To Body Job To Job." by SWANS


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"Body To Body Job To Job." by SWANS

... A collection of 16 track recordings, previously unavailable 24 track studio recordings, live cassette recordings, and sound loops from the year 1982-1985.

1) I'LL CRY FOR YOU
2) RED SHEET
3) LOOP 33
4) YOUR GAME
5) SEAL IT OVER
6) WHORE
7) WE'LL HANG FOR THAT
8) HALF LIFE
9) LOOP 21
10) GET OUT
11) JOB
12) LOOP 1
13) MOTHER, MY BODY DISGUSTS ME
14) COP
15) ONLY I CAN HEAR, ONLY I CAN TOUCH
16) THUG

2), 7), 15) Recorded by Catherine and Nicholas Ceresole at CBGB, N.Y.C. 10) Recorded by Catherine and Nicholas Ceresole at the Sin Club, N.Y.C. 6), 8), 11), 14), 16) Recorded 16 track CBGB, N.Y.C.., by John Erskine.

1), 3), 5), 9), 12), 13) Recorded 24 track Omnipotent Studios,N.Y.C.

The following performed live or on record with Swans at one time or another in the years 1982-1985 : Norman Westberg, M. Gira, Harry Crosby, Jonathan Kane, Ted Persons, Ronald Gonzales, Ivan Nahem, Algis Kizys, Jarboe, Bob Pezzola, Jonathan Prosser.

This compilation produced and remastered by M. Gira at B. Monster Studios, N.Y.C.
Enginner : Bryce Goggin.

Cover Design : M. Gira. Layout : Patricia Mooney

Words : M. Gira. Music : Gira / SWANS.

SWANS, 11984. Photo : Ranaldo
Photo : WIm Van Der Hulst

All songs published by Young God Publishing (ASCAP) except 6), 8), 11), 14), 16) published by Dimehardt Ltd.

(P) 1991 Young God Records
(C) 1991 Young God Records
Manufactured and distributed in the U.K. by Revolver. Made in England.
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