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2019.06.18.08.30

げきがだいすけ

は、マンガ『まんが道 (Manga Michi)』 [作:藤子不二雄A (Fujiko Fujio (A)) 19771982週刊少年キング連載] の前日譚であるマンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi Thujopsis)』 [作:藤子不二雄A (Fujiko Fujio (A)) 19701972週刊少年チャンピオン連載] の登場人物である。正しくは激河大介 (Daisuke Gekiga) と綴る。

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彼がその作品に登場するきっかけは、彼が所有している一冊の単行本、即ちマンガ『新宝島 (New Treasure Island)』 [原作:酒井七馬 (Shichima Sakai) 作画:手塚治虫 (Osamu Tezuka) 1947年刊行] である。
彼は、マンガ家を志すふたりの高校生、即ち、その作品の主人公である満賀道雄 (Michio Maga) と、その親友である才野茂 (Shigeru Saino) に、手塚治虫 (Osamu Tezuka) という新しい才能と彼を中心として興りつつある次世代のマンガの存在を知らしめるのだ。
いや、そればかりではない。激河大介 (Daisuke Gekiga) 自身もマンガ家を志しており、彼は当時のマンガの新しい動向の、その先を目指していると、満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) に意思表示をする。
[上掲画像はこちらから]

そのマンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi Thujopsis)』 に於ける激河大介 (Daisuke Gekiga) と謂う存在は実は大きい。何故ならば、彼を介してその存在を知る事になった新進マンガ家、手塚治虫 (Osamu Tezuka) の仕事場を満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) が訪問する場面で、この物語は終わりを告げるのだ。その物語の全体の行方の鍵となる重要な登場人物、それが激河大介 (Daisuke Gekiga) なのである。

いや、そればかりではない。
満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) にとっては、その物語に於いて初めて登場する、そして唯一のライバルなのである。
本来ならば、満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) 、このふたりがそれぞれに対するライバルとなるべきところではある。そこで切磋琢磨 (To Work Hard And Encourage Each Other) するべきなのだ。しかしその可能性はその物語の冒頭、ふたりが出逢い交流を始めた直後で、その芽の出る可能性はなくなる。何故ならば、満賀道雄 (Michio Maga) は、才野茂 (Shigeru Saino) の、マンガへの情熱と努力に裏付けられたその才能にひれ伏してしまうからなのだ。
謂ってみれば、マンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi Thujopsis)』 とは、伴宙太 (Chuta Ban) の視点でマンガ『巨人の星 (Star Of The Giants)』 [原作:梶原一騎( Ikki Kajiwara) 作画:川崎のぼる (Noboru Kawasaki) 19661971週刊少年マガジン連載] を語る事や、里中智 (Satoru Satonaka) の視点でマンガ『ドカベン (Dokaben)』 [作:水島新司 (Shinji MIzushima) 19721981週刊少年チャンピオン連載] を語る事に等しいのかもしれない。満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) という2人は、そんな位相にある様にぼくには思える。
そして、そんな2人に独立した2人のマンガ家になる事ではなく、2人の共同制作を勧めたのも、激河大介 (Daisuke Gekiga) なのである。

ところで、彼の行動に関しては腑に落ちない点がひとつある。それは、自ら購入した手塚治虫 (Osamu Tezuka) の新作『前世紀 [ロストワールド] (Lost World)』 [作:手塚治虫 (Osamu Tezuka) 1948年刊行] をその内容に一切触れる事もなく、おしげもなく、満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) に無償で提供してしまった部分だ。何故、彼はそんな無意味で無駄な事をしたのだろうか。
と、謂うのはこの書物を喉から掌が出る程、渇望していたのが満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) であり、謂わば、手塚治虫 (Osamu Tezuka) の争奪戦めいた諍いが、彼等の間に勃発しそうな状況だったからである。
提供する事はあるかもしれない、共にマンガ家を志している彼等だ、新しい情報、新しい作品を共有する事は、決して無意義な事ではない。ぼくが腑に落ちないと指摘するのは、激河大介 (Daisuke Gekiga) はその作品にめもくれない点にあるのだ。
彼はその理由を、自身の作風が手塚治虫 (Osamu Tezuka) に影響される可能性を指摘する。それ故に彼は、手塚治虫 (Osamu Tezuka) という才能、手塚治虫 (Osamu Tezuka) という作風を、自らが身を以て体験する、もしくは体感するのを恐れるのである。
しかも、そんなふうに激河大介 (Daisuke Gekiga) はマンガ『前世紀 [ロストワールド] (Lost World)』 を置き土産にする様にして、マンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi Thujopsis)』 と謂う舞台から姿を消すのだ。激河大介 (Daisuke Gekiga) は、手塚治虫 (Osamu Tezuka) 作品を介在にして満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) に出逢い、手塚治虫 (Osamu Tezuka) 作品から決別する事によって満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) と離別する。遺されたふたりは以降、手塚治虫 (Osamu Tezuka) を自らの先達とみすえて、創作活動に勤しむ事になる。

ところで、マンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi Thujopsis)』 は、その作者、藤子不二雄A (Fujiko Fujio (A)) の自伝でもある。
満賀道雄 (Michio Maga) が藤子不二雄A (Fujiko Fujio (A)) こと安孫子素雄 (Motoo Abiko) [1934年生] であり、才野茂 (Shigeru Saino) が藤子・F・不二雄 (Fujiko F. Fujio) こと藤本弘 (Hiroshi Fujimoto) [1933年生] で、2人は同学年である。それでは、激河大介 (Daisuke Gekiga) とは誰なのか。

激河大介 (Daisuke Gekiga) が主張するマンガの新しい表現は、後に登場する劇画 (Gekiga) を魁けているものだ。
劇画 (Gekiga) と謂う新しい潮流を標榜した辰巳ヨシヒロ (Yoshihiro Tatsumi) の生年は1935年、安孫子素雄 (Motoo Abiko) より1歳年下であり、今や劇画 (Gekiga) の代名詞でもあるさいとう・たかを (Takao Saito) の生年は1936年、安孫子素雄 (Motoo Abiko) より2歳年下である。
だから、もし、この4人が学生時代に同じ地域に暮らしていたら、満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) にとっての激河大介 (Daisuke Gekiga) の様な位置付けないしは存在感を辰巳ヨシヒロ (Yoshihiro Tatsumi) やさいとう・たかを (Takao Saito) は示したかもしれない。
しかし、残念ながら、現実はそうもいかない。
辰巳ヨシヒロ (Yoshihiro Tatsumi) が劇画 (Gekiga) と謂う主張を初めて行った1957年では、ふたりの藤子不二雄 (Fujio Fujiko) はようやく雌伏の時代が終わりを告げようとしたばかりだった。だから、激河大介 (Daisuke Gekiga) の様な激しい主張をまのあたりにみる事はなかっただろう。

だから、ぼくが思うに、激河大介 (Daisuke Gekiga) がマンガ『前世紀 [ロストワールド] (Lost World)』 をみる事もなく満賀道雄 (Michio Maga) と才野茂 (Shigeru Saino) に提供したと謂う逸話は、藤子不二雄A (Fujiko Fujio (A)) の劇画 (Gekiga) に対する認識が込められていると思うのだ。
手塚治虫 (Osamu Tezuka) の登場なしには劇画 (Gekiga) は登場し得かなっただろう。しかし、その影響下に与するのを潔くしなかったが為に、手塚治虫 (Osamu Tezuka) から離れていった。もしくは、手塚治虫 (Osamu Tezuka) とはまったく異なる技法や世界を目指した。恐らく、そんな認識が藤子不二雄A (Fujiko Fujio (A)) にあったのではないか。

何故ならば、繰り返しになるが、こういう事なのだ。
マンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi Thujopsis)』 に初めて登場した激河大介 (Daisuke Gekiga) の掌には、手塚治虫 (Osamu Tezuka) 作品であるマンガ『新宝島 (New Treasure Island)』があった。しかし、そのマンガ家の次作であるマンガ『前世紀 [ロストワールド] (Lost World)』を拒絶してしまうのだ。
マンガ『新宝島 (New Treasure Island)』をもって2人の藤子不二雄 (Fujio Fujiko) と邂逅した激河大介 (Daisuke Gekiga) は、マンガ『前世紀 [ロストワールド] (Lost World)』をもって2人と決別してしまうのである。後に2人が出逢う、幾人もの若きマンガ家達とはそこ、手塚治虫 (Osamu Tezuka) の理解と評価がおおきく違うのである。

次回は「」。

附記:
マンガ『まんが道 あすなろ編 (Manga Michi Thujopsis)』 は、その掲載誌である週刊少年チャンピオン (Weekly Shonen Champion) に於いては、僅か毎号2頁の連載であった。と謂うのは、この作品、その雑誌に於けるマンガ入門講座『チャンピオンマンガ科 (Champion Manga School)』 [著:藤子不二雄 (Fujio Fujiko) 19701972週刊少年チャンピオン連載]』[毎号4頁の連載] の1部を成していたからである。だから、技術編に続く実践編としての位置付けが、その作品にあったのかもしれない。だとすると、その技術編のなかで劇画 (Gekiga) と謂う手法が解説されていたが故の、激河大介 (Daisuke Gekiga) と謂う人物の登場、と謂う可能性もあり得るのかもしれない。技術編である『チャンピオンマンガ科 (Champion Manga School)』は雑誌での連載のみで、単行本化等されていない様なので、その実際を確認するすべはないのだけれども。
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