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2019.06.04.08.59

おろかものめ

と、謂って断罪するのはオロカメン (Orokamen) である。マンガ『デロリンマン (Derorinman)』 [作:ジョージ秋山 (George Akiyama) 19691970週刊少年ジャンプ連載 1975~1976週刊少年マガジン連載] に登場する。
彼は常に、その物語の主人公デロリンマン (Derorinman) を注視しており、彼の愚考や愚行に対して、厳しい言葉を投ずるのである。
そんな彼の存在があってはじめて、この作品は成立しているのかもしれない。

と、謂うのは、その物語の主人公の思考や行動は、必ずしも彼ならではの独自性に存しているとは謂えないからだ。勿論、彼が誕生したその秘話は、この物語の動機であり、それがあってこそデロリンマン (Derorinman) は、考えそして行動する。
しかし、その作品の作者の、それよりも旧い作品を観ると、デロリンマン (Derorinman) の行動は、それらのそれぞれでの作品での主人公達と然程の差異はない。
例えば、マンガ『パットマンX (Patman X)』 [作:ジョージ秋山 (George Akiyama) 19671968週刊少年マガジン連載] だ。その作品の主人公は、正義の主人公として活動しようと奮闘する少年であり、彼の思考と行動はデロリンマン (Derorinman) と殆ど同じだ。そして、思考と行動の落差、その実行力や実現性の差異が明らかになった時点で、笑いとなるのだ。ここまでは、デロリンマン (Derorinman) とパットマンX (Patman X) は同病相憐れむ仲 (Brothers In Suffering Are Mutually Sympathetic) なのである。

[このふたつの作品の中間に発表されたマンガ『ほらふきドンドン (Horafuki Dondon)』 [作:ジョージ秋山 (George Akiyama) 19691970週刊少年マガジン連載] では、主人公のドンドンこと丼鈍心 (Dondon aka Junshin Donburi) は自身が語る法螺 (Bragging) のなかだけの世界に生きている。彼の語る法螺 (Bragging) の中に於いては、彼は自身の思いのままの活躍が出来る。これは現実面に疲弊したパットマンX (Patman X) とデロリンマン (Derorinman) が歩むべきもうひとつの選択肢なのかもしれない。法螺 (Bragging)、即ち空想の世界に生きる事だ。しかし、素を糾せば、その場所が自身の空想の世界であれ、自身の思惑を自身の行動によって呈示しようという発想の根元にあるモノは、その作品の主人公ドンドンこと丼鈍心 (Dondon aka Donshin Donburi) も同根であると看做す事が出来る。つまり、空想の世界に生きている点は、3者は共通なのだ。パットマンX (Patman X) やデロリンマン (Derorinman) は、自身の空想の世界ではおのれが欲しいままにしているのだから。ただ、この2者はそれをそのまま現実のものにしようと苦心するのである。もしも、丼鈍心 (Dondon aka Junshin Donburi) の様に、自身の空想の世界に留まっていれば、ふたりはもっと安住出来る筈なのである。例え、周囲から法螺吹き (Braggart) と蔑まされたとしても、だ。]

ところが、そんな物語にオロカメン (Orokamen) と謂う人物が介入するのである。
そこが、マンガ『パットマンX (Patman X)』 [やマンガ『ほらふきドンドン (Horafuki Dondon)』] と、マンガ『デロリンマン (Derorinman)』とのおおきなちがいである。

彼は遥か彼方からデロリンマン (Derorinman) をみおろし、「オロカモノメ! (You Fool!)」のひとことのみを発する。
敵対している訳ではない、監視している訳でもない、勿論、そこには好意は皆無だ。
ただ、みているだけなのである。そして厳しい評価をくだす。
しかも、彼の仮面からはあたかも滂沱の涙 (Tears Streamed Endlessly Down His Cheeks) が溢れている様な描写がある。はっせられたことばは厳しく鋭いモノであるのにも関わらずに、だ。
彼はそこでなにをみ、なにを感じ、そして一体、なにを求めているのだろうか。

彼の立ち位置は、マンガ『アシュラ (Ashura)』 [作:ジョージ秋山 (George Akiyama) 作 19701971週刊少年マガジン連載] に登場する法師 (Monk) の存在によく似ている。彼はその作品の主人公アシュラ (Ashura) をみまもりつづけているのだから。
彼の思考様式や行動様式を評価するのは、さほど、難しくはない。彼のよってたつもの、つまり、宗教や信仰にその原点があるのだろうと理解しておけば良いのだ。総ては彼が唱える「南無阿弥陀仏 (Namu Amida Butsu)」に帰着すると謂っても良い。

しかし、オロカメン (Orokamen) には法師 (Monk) に於ける様な、人物像が生成されるべき背景と謂うモノが一切、登場しない、描写されていないのだ。

だから、読者は彼をどう評価して良いのか解らず、作品内に彼が登場するや否や、混乱するばかりなのである。

彼を批判するのは、簡単な事なのかもしれない。「それならおまえがやってみろ (Do It Yourself)」この一言で充分だろう。彼はみているだけで、一切、行動をしないからだ。しかし、何故かそんな簡単な一言でさえ躊躇わされるのだ。何故ならば、その言葉はそっくりそのまま、読者自身にもかえってくるのだから。
おまえも、デロリンマン (Derorinman) のようなことすらできないだろう、と。

そして、こんな事を考え出した途端に、笑うべきモノが霧散してしまうのだ。本来ならば、主人公の思考や行動を笑っていれば良い局面に彼が登場する事によって、その笑いが禁じられてしまうのである。

笑いが禁じられた事によって、読者はどこへも行き場がない場所で放置される。
マンガ『デロリンマン (Derorinman)』とは、そういう作品なのである。

だから、オロカメン (Orokamen) はぼくにとってのトラウマ (Psychological Trauma) だが、デロリンマン (Derorinman) は決してそうでうはないのだ。
ぼくの背後にあって常にぼくを凝視し、ぼくの考えや行いを見透かしている人物がいる。いや、そうではない。ぼくこそがだれかの背後にたって、その人物を絶えずながめている、そんな認識なのである。

と、ぼくはここで拙稿を終えても良いのだが、その作品はそこからあらぬ方向へと舵をきる。
オロカメン (Orokamen) はいつしか、自身の主義主張を声高に語り始め、そして遂におのれの正体が明かされる時が来る。物語はそこで終わるのだ [そしてぼくはこのおわりかたにはまったくなっとくがいかないのである]。

images
上掲画像は、オロカメン (Orokamen) をモチーフとした筋肉少女帯 (Kinniku Shojo Tai) のシングル『踊るダメ人間 ((Dancing Feckless Man)}』 [1971年発表 アルバム『断罪! 断罪! また断罪!! (Condemnation! Condemnation! Condemnation Again!!)』収録] である。この楽曲を収録したアルバムにも、オロカメン (Orokamen) はパッケージに登場している。
昔話をすれば、この作品の発表当時、同世代であるのにも関わらず、ぼくの周囲ではオロカメン (Orokamen) の認知度が低いのに愕然とした。つまり、これは誰? それはなに? と謂うモノばかりであったのである。

次回は「」。

附記 1. :
相原コージ (Koji Aihara) や喜国雅彦 (Masahiko Kikuni) の四コママンガ作品 (Four-Panel Cartoon) には、物語のオチとして登場人物が滂沱の涙 (Tears Streamed Endlessly Down His Cheeks) を流す表現が登場する。その起源をオロカメン (Orokamen) にとっても良いのでは? とぼくは考えている。勿論、あの涙はマンガ『巨人の星 (Star Of The Giants)』 [原作:梶原一騎( Ikki Kajiwara) 作画:川崎のぼる (Noboru Kawasaki) 19661971週刊少年マガジン連載] のパロディ (Parody) だよと主張する向きもあるだろうが。

附記 2. :
マンガ『浮浪雲 (Haguregumo)』 [作:ジョージ秋山 (George Akiyama) 19732017ビッグコミックオリジナル連載] には、おおきなコマの中にその作品の登場人物達のひとりの顔面が真正面から描かれ、そこに涙があふれかえっている場面が時に登場する。これはオロカメン (Orokamen) のそれとは全く逆のモノではないか、とぼくは思う。何故ならば、彼等のながす涙は殆どの場合、回心や会得、悔悟や改悛の表現であり、その場面はそこで語られている物語の解決を意味するモノだからだ。オロカメン (Orokamen) のそれは、それとはまったく逆のモノ、そこにあるべき謎を深めこそすれ、なにひとつ具体的なことを語ってはいない。
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