2008.11.16.16.52
映画『櫻の園』
監督:中原俊
原作:吉田秋生
こんな夢を観た。
多分、数十年前のころである。多分、中学生か高校生あたりの時分のエピソードなのだろう。
僕とみっつ年下の弟は、ずっと河川敷で待っている。
眼下には、女子校の校舎が観えて、いくつもの白い校舎、薄碧色の丸い屋根をした体育館、濁った水をたたえた競泳用のプール、薄茶色のテニス・コートが二面、望める。そして、いつもならば、綺麗に曵かれた400mトラックが描かれている筈の運動場には、様々なオヴジェと、それを撤収している、色とりどりの扮装をした女子達の姿が観える。彼女達の学園祭なのである。
この地域では伝統のある中高一貫の女子校である。そこにどうした訳か、僕らの遠い従姉妹が入学出来た。今年の春から通っている。そして、その彼女に僕らは招待されて、最終日の今日、ここまで来たという訳だ。
午過ぎにやって来た僕らは、彼女の案内の下、なんだか訳の解らないものを模擬店で喰わされて、なんだか訳の解らないものを買わされた。
売子たち曰く「今日この日の為に一生懸命造りました」
校舎内を一巡すると従姉妹が、まもなく片付けの時間になって、それが終われば解放されるから、しばらくそとで待っていて欲しい、と言う。
せっかくの申し出だから、待つ事にした。待って三人で早めの夕食でも喰べに行けばよいのだ。最初から家には、晩飯はいらないと言って、出かけてきたのだから。
それが冒頭のシーンである。
最初から予期されていた事だけれども、時間は遅々として進まない。
伝統のある女子校と言うが、この河川敷下に移転したのは、昨年の事である。辺りには、なんにもない。刈入れを待つばかりの稲穂が河からの風を受けて揺れている。女子高生御用達の喫茶店も甘味処もないし、近隣の洟垂らし目当ての駄菓子屋もない。勿論、ゲーセンもマンガ喫茶もネット・カフェもない。そんなものが乱立して彼女達を誘惑するには、あと数十年は待たなければならないだろう。
「来ないな」
「来ないね」
「終らねぇなぁ」
「終わらないねぇ」
そんな、鸚鵡返しのトートロジーを繰り返すのも、いい加減飽きてきたら、向こうからようやく、従姉妹が奔って来る。
息を切らせながら全力疾走してきた彼女はこう言うのだ。
「待ったぁ? クラスの片付けは終わったから、これから園長先生にご挨拶して終るの。だから、もうちょっとで帰れるから、ここに居てね」
そう言った従姉妹は、僕らの返答も待たずに、真直ぐに元来た路へと、駆け出して往くのである。
"Wait For Me"
from the album
"X-Static
by
Daryl Hall & John Oates
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