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2019.05.21.08.51

ようかいきょだいおんな

ミスター・ビッグ (Mr. Big) の愛称で呼ばれる映画制作者がいる。バート・I・ゴードン (Bert I. Gordon)、その頭文字を捻ってそう呼ばれている訳だが、彼がそう呼ばれるのはそれだけが理由ではない。だからと謂って、尊大な態度で振る舞っていた訳でもないだろうし、大ヒット作を連発していた訳でもないだろう。
彼が制作した映画の大部分が、SF映画 (Science Fiction Film) ないし特撮映画 (Special Effect Film) であり、そのどれもに巨大生物 (Giant Creature) が登場するのである。
矮小な昆虫 (Insect)、非力な小動物、そんな生物達を悉く巨大化してみせた。それ故の、ミスター・ビッグ (Mr. Big)、なのである。

そんな彼が人間の、成人男性を巨大化させた作品がふたつある。映画『戦慄! プルトニウム人間 (The Amazing Colossal Man)』 [バート・I・ゴードン (Bert I. Gordon) 監督作品 1957年制作] とその続編、映画『巨人獣:プルトニウム人間の逆襲 (War Of The Colossal Beast )』 [バート・I・ゴードン (Bert I. Gordon) 監督作品 1958年制作] である。放射能 (Radioactivity) に被爆したあるグレン・マニング中佐 (Lt. Colonel Glenn Manning) [前者ではグレン・ランガン (Glenn Langan) が、後者ではディーン・パーキン (Duncan "Dean" Parkin) が演じた] が身長60フィート [約18メートル] もの巨人 (Giant) と化してしまうのである。
SF映画 (Science Fiction Film) ないし特撮映画 (Special Effect Film) の技術的な面に於いては、みるべきモノは殆どない。しかし、その2作にあるのは、もしもと謂う仮定を生真面目に追求した点なのだ。巨大化してしまった中佐 (Lieutenant Colonel) を巡る周囲の対応の変化、巨大化してしまった事によって起こり得る中佐 (Lieutenant Colonel) の内面の変化、そのふたつの観点がふたつの作品に常につきまとっているのだ。

だから、この2作品の影響を受けた後続の作品は決して少なくない筈だ。
人間が巨大化すると謂う点だけをとりだしてみても、TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』 [1966TBS系列放映] の第22話『変身 (Metamorphosis)』 [脚本:北沢杏子 監督;梶田興治 特技監督:川上景司] もあれば、マンガ『巨人獣 (Kyojin-jyu: Giant Beast)』 [石川球太 (Kyuuta Ishikawa) 作 1969まんが王連載] もある。そしてそのどちらも2作品が呈示したふたつの観点を内包している。と、謂うか、それをより濃縮したかたち、より深化させたかたちでそれぞれの作品世界に反映させている。視点を変えれば、その2作品はそれぞれの作品の、原点であり原典であると主張する事が出来る。

ところで、上にバート・I・ゴードン (Bert I. Gordon) は「人間の、成人男性を巨大化させた」と綴った。
その理由は単純で人間の。成人女性を巨大化させた作品が少なからず存在し、しかもそれらの作品はバート・I・ゴードン (Bert I. Gordon) とは全く無縁な作品群であるからだ。

表題に掲げた映画『妖怪巨大女 (Attack Of The 50 Foot Woman』 [ネイザン・ハーツ (Nathan Hertz) 監督作品 1958年制作] こそがその嚆矢である。
そして、その作品のリメイク作が映画『ダリル・ハンナのジャイアント・ウーマン (Attack Of The 50 Ft. Woman)』 [クリストファー・ゲスト (Christopher Guest) 監督作品 1993年制作] である。
ここまではぼくも観た。
調べてみると、それ以降も陸続として、そのリメイク作品が発表され続けているが、SF映画 (Science Fiction Film) ないし特撮映画 (Special Effect Film) と謂う観点からみれば、全くもって食指が働かない。

働くのはもう少し別の部位にある。つまり、本来、おおきくてゆたかなモノが、さらに巨大になったらどんなに喜ばしいのだろう、と謂う単純にしてかつ素朴な期待、そして如何に、よりおおきく、よりゆたかにみせてくれるのだろうと謂う関心と興味ばかりが刺激されるのである。
と、みてもいない作品の事をいくら綴ったとしてもあまり良い事はない。ぼくが体験した2作品に限って、ここでは文を続けてみよう。

映画『妖怪巨大女 (Attack Of The 50 Foot Woman』 はバート・I・ゴードン (Bert I. Gordon) の2作品の改変ないし翻案の素振りを示してはいるモノの、それはあくまでも素振りであるだけなのだ。共通しているのは、巨大化すると謂う1点のみであり、巨大化する原因も巨大化した結果に起こる事態も、全く異なる。
巨大化してしまった女性ナンシー・ファウラー・アーチャー (Nancy Fowler Archer) [演:アリソン・ヘイズ (Allison Hayes)] にとっては、50フィート [約15メートル] もの肉体を得たところでその内心には全く影響を受けていない。昨夜の悪夢が今朝の日常である様に、自身の愛する男性との痴話喧嘩がそのまま続いているのである。そして、巨大化した点をもって、この喧嘩にけりをつけてしまおうとするのだ。

と、綴ると全く観るに値しない作品、そんな印象を与えかねない。
勿論、そう受け取ってもらっても一向に構わない。バート・I・ゴードン (Bert I. Gordon) の2作品とはおおきな断絶があり、その断絶をもって、この作品やそれに続くいくつものリメイク作品を堪能すればいいだけなのだ。そして、そのリメイク群はその断絶をもってして独自の、ある種の映画史が形成されるのである。

だがしかし、とここでぼくは大慌てで付け加える。
バート・I・ゴードン (Bert I. Gordon) の正続2作品の、そのクライマックスには高圧電流 (High Tension Current) の送電線 (Transmission Line) とそれを支える鉄塔 (Steel Tower) がおおきな役割を演じるのだ。
そして、その舞台装置は映画『妖怪巨大女 (Attack Of The 50 Foot Woman』に於いても、同様の役割を果たす。
これをぼく達はどう理解すればいいのだろう。
もしかすると、その作品にあるべきSF映画 (Science Fiction Film) ないし特撮映画 (Special Effect Film) の矜持をここで披露しようとでも謂うのだろうか。
映画『ゴジラ (Godzilla )』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1954年制作] に於けるその舞台装置の役割をここで再検討してもいい。
たとえ被爆し巨大化したとは謂え、生身の人間は太古の爬虫類 (Dinosaur) よりは遥かに脆弱なのだ、とでも謂う様な。

尚、映画『ダリル・ハンナのジャイアント・ウーマン (Attack Of The 50 Ft. Woman)』に於いても、その舞台装置は登場している。

下に掲載するのはその映画が公開された年に撮影された写真作品である。

images
"USA. NY. Messena. 1958. St. Lawrence Channel. Powerlines." photo by Erich Hartmann

次回は「」。

附記 1.:
TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』 [19661967TBS系列放映] の第33話『禁じられた言葉 (The Forbidden Words)』 [脚本:金城哲夫 監督:鈴木俊継 特技監督:高野宏一] に登場する巨大フジ隊員 (Giant Member Fuji) [演:桜井浩子 (Hiroko Sakurai)] は、いずれの系列にも属していない。
敢えて謂えば、その巨大化に於いて異星人 (Alien) が関与している点をもってすれば映画『妖怪巨大女 (Attack Of The 50 Foot Woman』の系譜に連なるのだろうか。

附記 2.:
マンガ『巨人獣 (Kyojin-jyu: Giant Beast)』にも巨大化した女性、マリ子 (Mariko) が登場する。彼女もまた、いずれの系列にも属していない。彼女は妊娠しており、それが物語の悲劇的な結末へのおおきな伏線となっているのではないか。

附記 3.:
第22話『変身 (Metamorphosis)』と第33話『禁じられた言葉 (The Forbidden Words)』にはその舞台装置は登場しない。
マンガ『巨人獣 (Kyojin-jyu: Giant Beast)』では、少し違ったかたちでその舞台装置は、上記作品と同様の役割を果たしている。
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