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2019.02.19.08.38

とまとはれいぞうこのなか

アニメ番組『サザエさん (Sazae-san)』 [原作:長谷川町子 (Machiko Hasegawa) 1969年より フジテレビ系列にて放映] ならば、その発端は茶箪笥 (Cupboard) だ。夕食後の一家団欒の一助にとでも考えたのであろう、磯野家 (The Isonos) のそこにおやつ (Afternoon Snack) がしまわれている。そこの母親である磯野舟 (Fune isono) もしくはその長子であるところのフグ田サザエ (Sazae Fuguta) が用意したのだろう。しかし、ふとみるとある筈のそれがない。さては ...。

そこから物語は如何様にも展開し得る。
犯人であるところの磯野カツオ (Katsuo Isono) が、事件の第一発見者 (The First Person To Find) であると同時に探偵役 (Detective) のフグ田サザエ (Sazae Fuguta) に捕縛されて、一家のあるじである磯野波平 (Namihei Isono) に大目玉を喰らう ...。
さもなければ、最重要の容疑者 (Suspect) として告発された磯野カツオ (Katsuo Isono) は実は無罪の濡れ衣であって、真犯人はべつのところにいる。そこで冤罪 (False Charge) を被った磯野カツオ (Katsuo Isono) からこう発せられるのだ。「ひどいや姉さん (You're Being Cruel, My Sister!)」と。

こうやって、茶箪笥 (Cupboard) とおやつ (Afternoon Snack) を巡る物語の可能性を探るだけで、幾つもの挿話の可能性が拡がると同時に、そのどれもが、いつかどこかで観た様な気がしてくる。

もしかしたら、このアニメ番組は、幾人もの登場人物と幾つもある物語の舞台と幾つもある大道具や小道具そして幾つもある決め台詞の、その順列 (Sequence Without Repetition) 組み合わせ (Combination) で出来ているだけの事かもしれない。

その様はある種のカードゲーム (Card Game) にも擬せられるだろう。
冒頭に挙げた挿話で謂えば、「茶箪笥 (Cupboard)」、「おやつ (Afternoon Snack)」、「磯野カツオ (Katsuo Isono)」、「フグ田サザエ (Sazae Fuguta)」そして「磯野波平 (Namihei Isono)」で構成されている、と謂う訳だ。この5枚のカード(Card) に加えて、例えば「タマ (Tama, The Cat)」をきったらどうなるのか、「波野ノリスケ (Norisuke Namino)」をきったらどうなるのか、「三郎さん (Saburo-San)」をきったらどうなるのか。手持ちのカード (Card) とそのきる手順が、その作品に関わる脚本家 (Scriptwriter) の、手腕なのである、きっと。

と、ここまでさも解った様な素振りで綴ってきたが、ここまではこの拙稿には一切、関係はない。
これから綴るべきは、磯野家 (The Isonos) の物語ではなくて、ぼくの少年期、ぼくの実家での模様なのである。

磯野家 (The Isonos) とは異なり、ぼくの実家ではついぞ、茶箪笥 (Cupboard) におやつ (Afternoon Snack) があった試しはなかった。ぼくの両親は当時、共働きで、ぼくが下校した際は、誰もいない。当時のぼくは、所謂、鍵っ子 (Latchkey Kid) と呼ばれる様な存在であった。おやつ (Afternoon Snack) に関しても、あらかじめ手渡されていたお小遣い (Pocket Money) の中から、自分で賄い自分で贖うのである。だから、磯野家 (The Isonos) の様な騒動は、我が家とは無縁であったのだ。

おやつ (Afternoon Snack) はない、と綴ったが例外として、そこにある限り、いつでもすきなだけ喰えるモノがあった。

ひとつは蜜柑 (Citrus Unshiu) である。
その旬が到来する頃には毎年、遠い親戚から送られてくる。あふれんばかりにクラフト製 (Made By Kraft Paper) の米袋 (Rice Bag) に入って、だ。その遠い親戚は、蜜柑 (Citrus Unshiu) 農家だったのである。
気の利いた家庭ならば、炬燵の上の編み籠に十数個の蜜柑 (Citrus Unshiu) が盛られているべきが、我が家に限ってはそんな情緒は発揮されない。部屋の片隅にどぉんと、米袋 (Rice Bag) が置かれてあってそこから、個々人が勝手にとって喰うのである。
しかも、なかば強制的に、なのである。上に、すきなだけと綴ったが実際はそうではない。それがそこにある以上、喰わなければ怒られる様な代物なのである。
と、謂うのは、その果実は日持ちがいいモノだとは謂え、限度はある。その季節は真冬とは謂え、室内は暖房のおかげで暖かい。と、謂う事は ....。 と、謂う事なのである。

だが、それも毎年の事とは謂え、1年のうちの限られた時季での事なのである。
蜜柑 (Citrus Unshiu) とは異なり、もうひとつは、通年、つまり、文字通りに、いついかなるときでも、なのである。
それが、この拙稿の題名にある蕃茄 (Tomato) なのである。

蕃茄 (Tomato) は、冷蔵庫 (Refrigerator) のなかで、冷やされている。そして、それはいつ喰ってもいい。
だから、下校して帰宅した直後のぼくには、いつしか、冷蔵庫 (Refrigerator) をあける習慣がついてしまった。なんらかの用事、別件で、冷蔵庫 (Refrigerator) のまえを通るたびに、そこを開ける。そして、物色してしまうのだ。その様を発見されて母親に何度、笑われた事か。彼女はいつも謂う、「なにもないわよ」と。
だが、彼女のその発言とはうらはらに、そこに蕃茄 (Tomato) の存在を認めてしまうと、それだけは自由放任 (Laissez-faire) なのだ。そのときに、むしゃぶりついても、小腹のすいたある時間に喰らっても、誰も文句は謂わない。もし仮に文句が出るとしたら、それを喰ったが為に、夕食に差し障り、つまり、その喰べ残しが出た場合であろうが、育ち盛りのぼくにはそんな事は一度たりとなかったのだ。

冷蔵庫 (Refrigerator) をあける。そこに蕃茄 (Tomato) がある。白いプラスティック製のトレイ (White Plastic Tray) に、ふたつかみっつ、サランラップ (Saran) で梱包されている、スーパー (Supermarket) で買ってきたそのままの状態だ。それを取り出し、サランラップ (Saran) を破る、そこにすこしの快感がある。そこから、美味しそうなモノをひとつ取り出して、喰う。よく熟している方が美味しいが、青々として固いのモノも時と場合によってはご馳走だ。そのまま、むしゃぶりついてもいいし、ヘタをとり、数切れにスライスしてもいい。どちらにしても食塩 (Salt) は必須である。
そんなふうにして、下校直後、もしくは、夜食代わりにして、喰ってばかりいた。

ところで、どうして、蕃茄 (Tomato) だけが治外法権 (Extraterritoriality) の無罪放免 (Acquitted) の存在だったのか。
そのこたえのひとつは、ある日、知る事になる。

ある夕食時の事である。
その時の主菜は、肉料理もしくは揚げ物であった筈である。家族ひとりひとりの席には、メインを乗せた白い皿が置かれてある。皿の上には、そのメインの他にある副菜は、小山となった千切りキャベツ (Thinly Shredded Cabbage) だけだ。なにか寂しい。なぜか物足りない。
母親にその旨を問う。彼女のこたえはこうだった。
「だって、用意しておいた蕃茄 (Tomato)、みんな喰べちゃったぢゃない」

images
速水御舟 (Gyoshu Hayami) 画『赤絵の鉢にトマト (Tomatos In A Bowl Red Painting On Ceramics)』 1921年の作。

次回は「」。

附記 1. :
当時、ぼく達が棲んでいたのは市営団地 (Municipal Complex) で、狭い。玄関を開けると、正面には子供部屋であるところの4畳半への入口が控えている。そして、玄関左側にはキッチンがあり、その奥に風呂場とトイレがある。そして、キッチンのレイアウト上、冷蔵庫 (Refrigerator) は玄関を入ってすぐ左にある。
だから尚更の事、帰宅と冷蔵庫 (Refrigerator) ふたつにワンセットの関係が構築される上に、ぼくの部屋からトイレに行くたびに、冷蔵庫 (Refrigerator) の前を通る仕組みとなっている。

附記 2.:
ぼくが包丁 (Kitchen Knife) と謂う道具を初めて使う様になったのは、この蕃茄 (Tomato) を喰う為のモノだった様に憶えている。その調理用具の使い方を憶えたての頃は、丁寧に蕃茄 (Tomato) を等分に斬って、綺麗に小鉢に盛りつけ、その上に食塩 (Salt) をふりかけて食していた様な気がする。
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