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2008.11.09.00.21

これもまた悪い夢の続き 17.


"The Audience At Woodstock Waits For The Rain To End."
from the movie
"Woodstock"
directed by
Michael Wadleigh

こんな夢を観た。

就職して数ヶ月が過ぎた、或る日の事である。その年の酷暑が推し量られる様な、初夏を通り越して梅雨のまっただ中の様に、その日は朝からじめじめと蒸し暑かった。
午過ぎに入った大学時代の旧友Sからの知らせを受けて、いつまでたっても片付かない仕事を放り投げて、いつまでたっても沈もうとしない夕陽を浴びながら、駅へと向かった。
改札入口には、ビニール傘が並べられて、売り子達はにやにやしながら雨が降り出すのを待ち構えている。その隣から匂うのは、焼き上がったばかりのパンだ。駅に居るモノは皆、誰かを待ち構えているが、先を急ぐ人々の視線は宙を彷徨うばかりだ。

地下三階あたりに相当するホームに辿り着いた僕は、隣のホームに滑り込んで来た列車の窓々が、夥しい水滴を浮かべているのに気がつく。
雨だ、雨が降り出しているのだ。傘どころか僅かな金額が入った財布しか持っていない僕は自然と、憂鬱になる。
そして、ポケットに入っていた地図を取り出す。ファックスで送られてきた手書きの地図を観る限り、最寄り駅から随分と歩かねばならない様だ。

やっと到着した直通の急行に乗り込んで、ため息をひとつ着く。地下構内を疾走する列車の騒音の遥か向こうで、車掌の案内が聴こえる。
「この列車は、**駅構内で発生した人身事故の為に、各駅停車となります。お客まには大変ご迷惑を....」
それはいつもの事である。死さえも大急ぎで僕たちを追い越して逝く。

各停車へと成り下がった、僕の急行直通便が地下構内を抜け出ると、既にそこは薄墨を零した様な闇だった。雨が激しく叩きつける。叩きつけられた雨は、ティアドロップ状の水滴となって、真一文字に水平線を描く。何本も何本も。

降りる駅にようやく着いて僕は、途方に暮れる。雨はさらに激しさを増している。傘はない。まるで誰かの歌の様だ。

仕方がないから、手書きの地図を取り出して、指示された方角へと歩みを進める。想っている以上に、雨脚は激しく、一分もしないうちに、僕はずぶ濡れとなっていく。そして、夜の闇はさらに広がって逝く。

最初は小走りに、雨を避け避け、ヒトケのないアーケード電話ボックスや木陰を捜しながら右往左往していたけれども、次第にどうでもよくなる。身体に貼付いて身動きすらままならなくさせようとしているシャツやズボンと格闘しながら歩いていたら、彼らに出会った。

カラフルに塗り分けられた地図を片手にした、チューリップ・ハットを被ったその一団も、途に迷っている様だった。
「××××は、どこですか?」
僕の知らない地名だった。仕方がないので、駅まで向かえば、その途中に交番へ辿り着くであろうと教えてやった。だが、そこもかなり遠い。

彼らと別れて歩いていると、夕刊を配り終えた新聞配達員とすれ違った。お互いにご苦労な事だなと、独りごちていたら、その自転車が向きを変えてこちらへ向って来る。
「久しぶりだな、お前も呼び出されたのか? もうしばらくは、やつは帰って来ないだろう」

Kだった。
彼の話を要約するとこうだった。

<ここでK自身の話と、Sの近況が説明される筈なのだが、観た夢の中では切断されている。場面は、突然にSのアパートになる。>

ずぶ濡れになった衣服を着替えさせてもらい、人心地ついて今、己がいる場所を見渡してみる。
真っ白い壁と真っ白い床の真ん中にガラス・テーブルがひとつ。そのテーブルに覆いかぶさる様に、雑然と文庫本やらオープンリール・テープやらCDやらが積み上げられている。時代考証がめちゃめちゃだ。細長い部屋の奥にある筈の窓は、大きな液晶画面が塞いでいる。
ふと己の脚許を観ると、白い粒状のものが散乱している。手に取ってみると、ごはんつぶだった。
白い壁と観えたのは、コンビニで売られている様なおむすびが、うずたかく積み上げられているものだった。その一部の包装が破損して、僕の脚許にあるがままに任せられているのである。

嫌な匂いがした。


"White Room"
performed by
Hugh Cornwell
and
Robert Williams
for their album
"Nosferatu"
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