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2019.01.20.08.42

"tank battles : the songs of hanns eisler" by dagmar krause

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前作『サプライ・アンド・デマンド (Supply And Demand : Songs By Brecht / Weill And Eisler)』 [1986年発表] はクルト・ヴァイル (Kurt Weill) の作品集だった。そして本作は、その作曲家と同様、ベルトルト・ブレヒト (Bertolt Brecht) との共同作業で知られる、ハンス・アイスラー (Hanns Eisler) の作品集である。

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と、綴るには綴ったが、クルト・ヴァイル (Kurt Weill) と謂う作曲家の作品は一般常識程度の知識があったとは謂え、ハンス・アイスラー (Hanns Eisler) と謂う作曲家に関しては殆ど、無知に等しいのであった。つまり、この作品を通じて、この作品の歌唱者であるダグマー・クラウゼ (Dagmar Krause) からハンス・アイスラー (Hanns Eisler) を教えてもらたのである。

だからと謂って、その後のぼく、今のぼくがその作曲家とその作品に関して習熟していると謂う訳ではない。今回の拙稿を綴るにあたり、慌てて幾つかの有名曲を聴き漁ったのだが、結局のところ、付け焼きでしかない。否、実際には付け焼き刃にさえなっていないだろう。
本作の作曲者が偶々、ハンス・アイスラー (Hanns Eisler) であった、その程度の認識と情報しか勝ち得ていないのだ。

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では、なにをこの作品から聴いているのだろう、と問えば、ダグマー・クラウゼ (Dagmar Krause) と謂う歌手の歌唱と声を聴いているのであった。
彼女はぼくの前に、スラップ・ハッピー (Slapp Happy) [こちらを参照] と謂うユニットの歌唱者として、そしてそのユニットとヘンリー・カウ (Henry Cow) の合体ユニットでの歌唱者として、顕れたのである。
作品名で謂えば、前者がアルバム『スラップ・ハッピー (Slapp Happy)』 [1974年発表] であり、後者がアルバム『ディスパレイト・ストレイツ (Desperate Straights)』 [1975年発表] である。その2作をぼくが入手したのは、ヴァージン・レコード (Virgin Records) の名作、旧譜の再発であって、その再発2作品が発売された当時、彼女はアート・ベアーズ (Art Bears) の1員であった。
スラップ・ハッピー (Slapp Happy) とヘンリー・カウ (Henry Cow) の共同作業は、先に綴った作品とその次作『 イン・プライズ・オヴ・ラーニング (In Praise Of Learning)』 [1975年発表] でもって終焉し、スラップ・ハッピー (Slapp Happy) は崩壊する。と、同時にヘンリー・カウ (Henry Cow) から分派するかたちでアート・ベアーズ (Art Bears) と謂うバンドが活動を開始するのである。そのバンドのメンバーは、クリス・カトラー (Chris Cutler) とフレッド・フリス (Fred Frith) そして彼女であり、さきのふたりはヘンリー・カウ (Henry Cow) の1員でもある。

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この辺りの詳しい経緯、内部の実情はぼくは巧く理解出来ていない。2つのバンドが解散した後、それぞれの最終作であるヘンリー・カウ (Henry Cow) のアルバム『ウエスタン・カルチャー (Western Culture)』 [1979年発表] とアート・ベアーズ (Art Bears) のアルバム『ザ・ワールド・アズ・イット・イズ・トゥデイ (The World As It Is Today)』 [1981年発表] を聴き、そこから遡るかたちで、彼等の作品群を聴いていった。そして諸作品に圧倒されるがままだったのである。

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その後、スラップ・ハッピー (Slapp Happy) を含め解散したみっつのバンド乃至ユニットの残党達が発表する諸作を通じて、ダグマー・クラウゼ (Dagmar Krause) の歌唱と声を堪能していった記憶がある。例えば、クリス・カトラー (Chris Cutler)、リンゼイ・クーパー (Lindsay Cooper)、ジーナ・パーキンス (Zeena Parkins) そして彼女による、ニューズ・フロム・ベイブル (News From Babel) の2作品、第1作『サイレンス・アンド・サイレンス / ワーク・ レジュームド・オン・ザ・タワー (Sirens And Silences / Work Resumed On The Tower )』 [1985年発表] と第2作『レターズ・ホーム (Letters Home )』 [1985年発表] 等だ。
それらの作品、否、それ以前のみっつのバンドのなかで彼女が果たした役割は、実のところ、ぼくには解っていない。
幾つもの作品、どの作品を聴いても、彼女は歌唱者としてそこに顕れるばかりで、うたをうたう、それ以前にもそれ以上にも、そこで彼女がなにをおこなったのか、なにをもたらしたのか、よく解っていないのだ。
作曲者乃至制作者が呈示するモノを如何に表現するのか、そして表現出来るのか、それが彼女の主題である様な気がしてならない。

と、綴ると、彼女の音楽家としての能力を極めて限定的もしくは否定的に眺めている様に読めてしまうだろうが、ぼくが主張したいのは寧ろ、その逆だ。
歌唱者としての能力と技術ばかりが、ことさらにおおきくみえる、と謂う意味なのだ。そして、それを裏づけるモノは果たして一体なんなのか、それが謎として遺されているのである。

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例えば、ハル・ウィルナー (Hal Willner) のプロデュース作品である『クルト・ワイルの世界~星空に迷い込んだ男 (Lost In The Stars : The Music Of Kurt Weill)』 [1985年発表] を聴いてみよう。彼が招集した様々なジャンル、様々な音楽性をもったミュージシャン達が、クルト・ヴァイル (Kurt Weill) の作品を演奏している。
殆どの演奏が、課題であるクルト・ヴァイル (Kurt Weill) の楽曲を、自己の側にひきこんだかたちで行われている。半世紀以上も前に作曲された楽曲である、しかもそれらの楽曲の幾つもが既に数多くの歌手や演奏家によって表現されている。つまり、誰もがよく知るスタンダード・ナンバーなのである。だから、現在唄われるべき音楽として、今自分自身が唄うべき歌として、つまり、その楽曲を素材として自身の音楽性をそこで主張しているのである。
別に悪い事ではない。その作品に向かうぼくも、それを望んでいるのだから。
だけれども、ダグマー・クラウゼ (Dagmar Krause) が唄う楽曲『スラバヤ・ジョニー (Surabaya Johnny)』はすこし違う地平にある様な気がする。その曲にあるナニカ、根源的なモノと謂うべきなのだろうか、そこに肉薄しようと試みている様に、ぼくの耳殻に響くのだ。
だから単純に、感動する。しかも、曲それ自体に対して、である。

だから、本作は、ハンス・アイスラー (Hanns Eisler) の音楽を理解するのに最大のテキストなのだろうと思う一方で、逆にそれが不満でもあり不安でもある。
ひとつには、この作品での歌唱をひとつの判断基準としていいのだろうか、と謂う贅沢な悩みだ。

そしてもうひとつは、さらに贅沢な悩みがある。
歌唱者ではない、そこからさらに踏み込んだダグマー・クラウゼ (Dagmar Krause) の魅力と能力について、なのだ。

ものづくし (click in the world!) 195. : "tank battles : the songs of hanns eisler" by dagmar krause


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"tank battles : the songs of hanns eisler" by dagmar krause

1. Song Of The Whitewash (1.58)
2. (I Read About) Tank Battles (1.24)
3. You Have To Pay (1.37)
4. Chanson Allemande (1.13)
5. Ballad Of the Sackslingers (3.16)
6. Mother Beimlein (1.11)
7. The Perhaps Song (1.44)
8. Ballade von der Belebenden Wirkung des Geldes (4.22)
9. Mankind (0.54)
10. Bettellied (1.21)
11. Song Of A German Mother (2.26)
12. Change The World - It Needs It (1.59)
13. Bankenlied (2.52)
14. Legende von der Entstehung des Buches Taoteking (6.31)
15. Ballad Of (Bourgeois) Welfare (2.45)
16. Mother's Hands (1.55)
17. Berlin 1919 (2.24)
18. And I Shall Never See Again (1.48)
19. Genevieve : Ostern ist ein Ball sur Seine (1.00)
20. The Wise Woman And the Soldier (3.33)
21. Failure In Loving (1.02)
22. Und Endlich Stirbt (1.07)
23. The Rat Men - Nightmare (1.11)
24. The Homecoming (1.26)
25. The Trenches (3.33)
26. To A Little Radio (1.00)

Guest Musicians
Michael Blair (percussion / marimba) ;
Danny Thompson (double bas) ;
Alex Balanescu (viola) ;
John Harie (soprano saxophone) ;
John Tilbury (piano) ;
Lindsay Cooper (basson) ;

Ensemble
Andrew Dodge Leader (accordion / harmonium / piano / dx7 / backing vocals) ;
Graeme Taylor (banjo / guitars) ;
Sarah Homer (clarinet / bass clarinet / contrabass clarinet) ;
Ian Mitchell (clarinet / bass clarinet) ;
Steve Sterling (french horn) ;
John Leonard (bassoon) ;
Bruce Nockles (trumpet / piccolo trumpet / cornet) ;
Ashley Slater (tuba / trombone / bass trombone) ;
Steve Berry (double bass) ; (on The Rat Men)
Phil Edwards (saxophone) ;
Gertrude Thoma (backing vocals).

Recorded at West 3 Studios, London
Mixed at the Fallout Shelter, London
Musical arrangements by Greg Cohen
Produced by Greg Cohen
Production assistance by Dagmar Krause and Bob Ward
Engineered by Richard Digby-Smith
Mixed by Martin Rex
All songs published by DVFM / Fenton Music / Copyright Control
Photo by Island Art
Dedicated to Heinrich & Magdalene Krause

liner note by John Tilbury

(P) 1988 Islands Records Limited
(C) 1988 Islands Records Limited

ぼくが所有している輸入盤CDには、上記のクレジットが記載されてはいるが、作者クレジットがどこにもない。作品の性質上、作曲者は全曲、ハンス・アイスラー (Hanns Eisler) ではあるが、作詞者名が明記されていないのだ。
そこで、こちらを参照して、作詞者と英詞対訳者名を下に記す事にする。

1. Song Of The Whitewash
Text by Bertolt Brecht, Translated by N. Gould-Verschoyle
2. (I Read About) Tank Battles
Text by Bertolt Brecht, Translated by John Willett
3. You Have To Pay
Text by Walter Mehring, Translated by Jim Woodland, Malcolm Green
4. Chanson Allemande
Text by Berthold Viertel, Translated by Andrew Dodge
5. Ballad Of the Sackslingers
Text by Julian Arendt, Translated by Dagmar Krause, Jim Woodland
6. Mother Beimlein
Text by Bertolt Brecht, Translated by Lesley Lendrum
7. The Perhaps Song
Text by Bertolt Brecht, Translated by Bettina Jonic, Katherine Helm
8. Ballade von der Belebenden Wirkung des Geldes
Text by Bertolt Brecht
9. Mankind
Text by Hanns Eisler, Translated by Dagmar Krause, Jim Woodland
10. Bettellied
Text by Bertolt Brecht
11. Song Of A German Mother
Text by Bertolt Brecht, Translated by Eric Bentley
12. Change The World - It Needs It
Text by Bertolt Brecht, Translated by Eric Bentley
13. Bankenlied
Text by Siegmar Mehring
14. Legende von der Entstehung des Buches Taoteking
Text by Bertolt Brecht
15. Ballad Of (Bourgeois) Welfare
Text by Kurt Tucholsky, Translated by Jim Woodland
16. Mother's Hands
Text by Kurt Tucholsky, Translated by Malcolm Green
17. Berlin 1919
Text by Anonymous, Translated by Eric Bentley
18. And I Shall Never See Again
Text by Bertolt Brecht, Translated by Eric Bentley
19. Genevieve : Ostern ist ein Ball sur Seine
Text by Bertolt Brecht
20. The Wise Woman And the Soldier
Text by Bertolt Brecht, Translated by Eric Bentley
21. Failure In Loving
Text by Heinrich Heine, Translated by Eric Bentley
22. Und Endlich Stirbt
Text by Peter Altenberg
23. The Rat Men - Nightmare
Text by Hanns Eisler
24. The Homecoming
Text by Bertolt Brecht, Translated by Eric Bentley
25. The Trenches
Text by Kurt Tucholsky
26. To A Little Radio
Text by Bertolt Brecht
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