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2018.11.18.08.55

『死者 (SHISHA)』 by イル・ボーン (ILL BONE)

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このCDの最終楽曲として追加収録されている楽曲『ナンバーレスランド (Numberlessland)』がすきなのだ。

その曲は、本作品を発売したトランス・レコード (Trans Records) のオムニバス盤『エヌ・ジー (Ng)』 [1986年発表] に収録されて発表された。その、最終楽曲である。
ぼくはこの盤によって、ルインズ (Ruins) もボアダムス (Boredoms) も知ったのである。

当時のシーンの中での異端ばかりが集ったかの様な印象を抱かせられるトランス・レコード (Trans Records) の、そのオムニバス盤のなかでもその曲は、一際、異彩を放っていた。だからなのかもしれない。
ひたひたとせまってくる様なビートに乗せられて発せられる最初の1句に驚かされる。
「パリはお天気ですか? 東京は? (How Is The Weather, In Paris? Aso, In Tokyo?)」
その静かな佇まいにも関わらず、いきなり、胸ぐらをつかまれた様な印象なのだ。

ひとことで謂えば、それは抒情である。
しかし通常、その語句から想起さえられるモノとは、まったく異なる。

高村智恵子 (Chieko Takamura) の有名な台詞「東京に空が無い (There's No Sky In Tokyo)」 [ 詩『あどけない話 (Talking Like A Child)」 詩集『智恵子抄 (Portrait Of Chieko)』 [高村光太郎 (Kotaro Takamura) 作 1941年発表] 収録] をぼくは憶い出してしまってもいる。勿論、この比喩が妥当か否かは解らない。
ただ、謂いたいのはこういう事だ。
ぼくは彼女の心象に同意しているのではない。彼女が「東京に空が無い (There's No Sky In Tokyo)」と謂った、その空のしたにぼくはいて、その空をぼくはみているのだ。彼女が否定した筈の空そしてそののしたにあるモノ、それらの存在を当為のモノとして、所与のモノとして、その台詞をこの曲が示している様に思えるのである。

1984年に発表された4曲収録のEP『死者 (Shisha)』に、そんな楽曲を追加収録して1992年に発売したのが本CDである。
楽曲『ナンバーレスランド (Numberlessland)』の世界観を想定して遺りの4曲にむかうと、すこし違和感を感じた。
1992年当時のぼくには、その世界感が少し過剰な情緒に満たされていると思った様だ。

しかし、ここにこの駄文を綴る前提で、数年ぶりに聴き返すと、思いの他に格好良い。
ぼくの方にようやく、この作品を受け入れる土壌が形成されたのかもしれない。CDを入手しての26年間に、彼等の世界観の規範となるモノをべつのかたちで受容してきたのだろう。

イル・ボーン (Ill Bone) と謂うバンド名は、韓国語 (Korean Language) で日本人 (japanese) と謂う意味をなす語句を捻って、病んだ骨 (Ill Bone) とのダブル・ミーニングとして名付けられたと謂う。
その韓国語 (Korean Language) をぼくは、小説『青春の門 筑豊編 (The Gate Of Youth Par One)』 [五木寛之 (Hiroyuki Itsuki) 作 1970年発表] で知っていた。読んだのは彼等を知る数年前、中学生の頃である。その作品で、その語句は侮蔑的な意味合いを込められて登場したと記憶している。
そこでの印象に引き摺られて、ぼくには病んだ骨 (Ill Bone) と謂う語句までもが、極めて政治的なモノの様に響く。ぼくが中学生だった頃、いや、もっとそれ以前から、公害病 (Four Big Pollution Diseases Of Japan) と謂う語句が報道を賑わしていたからである。
つまり、朝鮮半島 (Korean Peninsula) と謂う他所からみた日本人 (Japanese) の病んだ骨 (Ill Bone) と謂う訳だ。

バンドのネーミングにそんなイメージをもってしまったが故の、違和感だったのだと今は思う。
では、今は?
カン (Can) がもし、この国を土壌として誕生したらきっと、こんなバンドになったのだろう、と不遜にも思えてしまう。
聴くべきはビートなのである。少なくとも、今は。

最後に本CDの、ヴィジュアル・イメージについて触れなければならない。

画面左側に佇む制服制帽の少年は、丸尾末広 (Suehiro Maruo) が描く少年達を思わせる。さもなくば、そのマンガ家におおきく影響を与えたであろう、映画『田園に死す (Pastoral : To Die In The Country)』 [寺山修司 (Shuji Terayama) 監督作品 1974年制作] の主人公、私 (Me) [演:菅貫太郎 (Kantaro Suga)] だ。
だが、その少年の背景として映り込んでいるモノには、そんな印象の基では、違和感を抱くに違いない。見世物小屋 (Freak Show) や恐山 (Mount Osore) ならば、得心するところなのだが、そこに連なっているのは戦車 (Tank) の一群なのである。乏しい知識を総動員すれば、その一団はM4中戦車:通称シャーマン (M4 Sherman) の様にみえる。第二次世界大戦 (World War II) での米国 (The United States) の主力である。

しかも、少年の制服にある名札に書かれてあるのは、ハングル (Hangul) なのだ。
先に挙げた映画の舞台となっている、独特の風土とはまったく縁もゆかりもないのである。

ここでバンド名の由来を再び憶い出してもいいのかもしれない。

しかし、なのである。
少年の首筋あたりに映り込んでいるのは、掲示板か何かの様で、画面右隅には、柵らしきモノもある。
この写真が撮影されたのは、戦場 (Battlefield) でも米軍駐留基地 (USFK : United States Forces Korea) でもない様にも思える。博物館かどこか、仮に軍事施設の一隅だとしても、ここに居並ぶ戦車群 (Tanks) は動かざる、展示物のひとつなのである。

そこまでみえてしまうと、この画像から取捨選択し得るモノの多様性、多義性へとおもいを巡らさざるを得ないのであった。

ものづくし (click in the world!) 193. : 『死者 (SHISHA)』 by イル・ボーン (ILL BONE)


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死者 (SHISHA)』 by Ill Bone (Ill Bone)

80年代インディーズ名盤中の名盤が7年ぶりにCD復活! 限定500プレス

1. ベイルート / Beirut
2. アメリカ / America
3. 死者 / Shisha
4. ネイション・ブルース / Nation Bluce
5. ナンバーレスランド / Numberlessland*

All Tracks, Composed & Performed by Ill Bone

中田潤 / Jun NAKATA
石黒浩孝 / Hirotaka ISHIGURO
石川佳代子 / Kayoko ISHIKAWA
箕輪扇太郎 / Sentaro MINOWA
弓削聡 / Satoshi YUGE

藤井暁 / Satoru FUJII
北村昌士 / Masashi KITAMURA
Direction TRANCE / SSE Corp

ORIGINAL RECORDING 1984 (*1986)
(C) & (P) SSE COMMUNICATIONS 1992

SSE80006CD
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