2018.07.31.11.12
映画『日本沈没
(Tidal Wave)』 [森谷司郎 (Shiro Moritani) 監督作品 1973年制作] が公開されるその前に、その原作小説『日本沈没
(Japan Sinks
)』 [作:小松左京 (Sakyo Komatsu) 1973年発表] は読了していた筈だから、物語の骨子と全体の構成は知っていた筈なのである。
上の文章に「筈」と謂う語句が2度も登場してしまうのは、やっぱり記憶が不確かだからである。
ぼくの記憶に間違いがなければ、ジュブナイル (Juvenile)) から卒業して掌にした"大人向け"の物語の最初期の書籍の1冊である上に、保護者同伴の校則があるのにも関わらずに、3歳下の弟と2人連れで観にいった最初期の映画の1作なのである。
上の文章に英語で謂うところのワン・オヴ (One Of) に該当する形容が2度も登場するのも、そんな大昔の出来事だから、である。当時のぼくは、小学校中学年であったのだ。

表題に掲げたわだつみ (Wadatsumi-No. 1) とは、深海潜水艇 (Deep-submergence Vehicle) である。その物語の主人公のひとり、小野寺俊夫 (Toshio Onodera) [演:藤岡弘 (Hiroshi Fujioka)] が漕艇する。
物語冒頭に於いて、田所雄介博士 (Dr. Yusuke Tadokoro) [演:小林桂樹 (Keiju Kobayashi)] と幸長信彦助教授 (AP Nobuhiko Yukinaga) [演:滝田裕介] を乗せたわだつみ (Wadatsumi-No. 1) は、潜行した日本海溝 (Japan Trench) に於いて、異変を発見する。日本列島 (Japanese Archipelago) が沈降していく物語はこうして始まるのである [上掲画像はこちらから:画面左奥より右手前へ、幸長信彦助教授 (AP Nobuhiko Yukinaga) [演:滝田裕介 (Yusuke Takita)]、小野寺俊夫 (Toshio Onodera) [演:藤岡弘 (Hiroshi Fujioka)] そして田所雄介博士 (Dr. Yusuke Tadokoro) [演:小林桂樹 (Keiju Kobayashi)]]。
映画を観る前に知っていた、文字と言葉の羅列で語られていたその物語は、その映画作品に於いてもそれに準じてそのまま映像化される筈なのである。
にも関わらずに、小学校中学年のぼくは、そうではないモノを期待していた様な気がする。
それは、特撮映画 (Special Effects Movie) と謂う文脈であり、それに応じて、週刊少年マガジン (Weekly Shonen Magazine) のグラビア頁等でも、特集を組まれていたからでもある。
でも、それよりもぼくが期待した理由は他にあった。
わだつみ (Wadatsumi-No. 1) を漕艇する小野寺俊夫 (Toshio Onodera) を藤岡弘 (Hiroshi Fujioka) が演じていたからである。当時の彼は、謂うまでもなく、TV番組『仮面ライダー
(Kamen Rider)』 [1971〜1973年 毎日放送系列放映] での仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) そのヒトなのである。
わだつみ (Wadatsumi-No. 1) を漕艇する小野寺俊夫 (Toshio Onodera) の獅子奮迅の活躍をもって、日本列島 (Japanese Archipelago) の危機が辛くも回避される、まさかそんな事はないだろうが、少なくとも、彼と彼が漕艇する深海潜水艇 (Deep-submergence Vehicle) は、映画の中で語られる物語の中で大活躍するのではないか、そんな期待をぼくは抱いていた様な気がする。
まるで、TV人形劇『サンダーバード (Thunderbirds)』 [1965〜1966年 BBC放映] に登場するサンダーバード1号 (Thunderbird 1) の様に、である。サンダーバード1号 (Thunderbird 1) からサンダーバード6号 (Thunderbird 6) まであるサンダーバード機 (Thunderbirds Machines) に中に於いて、そのサンダーバード1号 (Thunderbird 1) は、真っ先に現場に顕れて、現状の分析と作戦の立案と指示並びに実行を果たす。謂わば、司令塔 (Countrol Tower) なのである。
ところが実際の映画では、わだつみ (Wadatsumi-No. 1) が登場するのは物語冒頭部に於いてであり、小野寺俊夫 (Toshio Onodera) の本来的な活躍もそこに於いてだけである。
尤も、映像の中ではおおきく取り上げられてはいないが、日本海溝 (Japan Trench) の異変を受けて発動したD1計画 (D1 Project) に則って、彼と彼が漕艇する深海潜水艇 (Deep-submergence Vehicle) はその最先端の現場で活躍していた筈である。だがD1計画 (D1 Project) とは調査プロジェクトであり、その活動とその成果によって発動したD2計画 (D2 Project) [日本人の海外避難計画] が物語の中心となる事によってつまり日本列島 (Japanese Archipelago) の沈没が回避不能な事態であると判明して、次第に彼の活躍を描く必要性は喪われてしまう。彼自身もD2計画 (D2 Project) の対象のひとりとして、恋人である阿部玲子 (Reiko Abe) [演:いしだあゆみ (Ayumi Ishida)] と日本列島 (Japanese Archipelago) からの脱出を謀るのである。
[その1組の恋人達の逃避行は、富士山 (Mount Fuji) 噴火によって頓挫してしまう。ふたりは生き別れとなり、物語の中では2度と逢う事はない。恋人を喪ってしまった小野寺俊夫 (Toshio Onodera) は、人命救助即ちD2計画 (D2 Project) の最前線に自己の存在理由 (Raison D'etre) を見出すのだが、それを直接的に映像化したシーンはない。彼の活躍を報道する雑誌にその姿が見いだせるだけだ。仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) でもある藤岡弘 (Hiroshi Fujioka) の本領が発揮されるべき場面ではあるのだが。]
藤岡弘 (Hiroshi Fujioka) がその映画に起用された理由のひとつが、仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) を演じていた事であるのは、否定は出来ない事実ではあるだろう。少なくとも、その映画が想定している観客層の動員には役立つ筈だ。
だが、その映画の中だけを観る限り、藤岡弘 (Hiroshi Fujioka) は仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) としての自身を少しもみせる事はない。むしろ、彼が演じた小野寺俊夫 (Toshio Onodera) の恋人である阿部玲子 (Reiko Abe) との関係性から、仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) からの脱却を謀っている様にもみえる。
その映画の中での、わだつみ (Wadatsumi-No. 1) と謂う深海潜水艇 (Deep-submergence Vehicle) は、その為に用意された装置とみえなくもない。
仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) が愛機サイクロン号 (Cyclone) を降りても、改造人間 (Cyborg) である事は変わりはない。しかし、わだつみ (Wadatsumi-No. 1) から降りた小野寺俊夫 (Toshio Onodera) は一介の人間、この映画の文脈で綴れば、故郷を喪うひとりの日本人 (Japanese) でしかないのである。
次回は「み」。
附記:
ショーン・コネリー (Sean Connery) はいつみてもどこでみてもジェームズ・ボンド (James Bond) である様にみえてしまう。しかも、その役を演じた他のどの俳優よりもジェームズ・ボンド (James Bond) にみえる。一時期はそれを嫌い、そうではない役を演じようと挑戦していた様だが、ある時期に於いて、それを吹っ切ってしまった。しかも、それだけではない。寧ろ、それを果敢に利用しようと演じていないだろうか。
例えば、映画『アンタッチャブル
(The Untouchables)』 [ブライアン・デ・パルマ (Brian De Palma) 監督作品 1987年制作] のジム・マローン (Jim Malone) や、映画『インディ・ジョーンズ / 最後の聖戦
(Indiana Jones And The Last Crusade)』 [スティーヴン・スピルバーグ (Steven Spielberg) 監督作品 1989年制作] のヘンリー (Henry Walton Jones, Senior) は、ジェームズ・ボンド (James Bond) を演じたショーン・コネリー (Sean Connery) を前提とした役回りであって、観るモノも演じるモノも、それを愉しむ様な構造が出来上がっている様に思える。
TV番組『仮面ライダー
(Kamen Rider)』での立花藤兵衛 (Tobei Tachibana) に、小林昭二 (Akiji Kobayashi) が起用されたのは、TV番組『ウルトラマン
(Ultraman)』 [1966〜1967年 TBS系列放映] に於いて、彼が科学特捜隊 (Science Special Search-Party) のキャップことムラマツ・トシオ (Cap. Toshio Muramatsu) を演じていたからである。TV番組『仮面ライダー
(Kamen Rider)』のプロデューサーである平山亨 (Tohru Hirayama) の指名に於いて、である。だが、ふたつの番組を観るぼく達は、同じ俳優が演じているのにも関わらず、立花藤兵衛 (Tobei Tachibana) とキャップことムラマツ・トシオ (Cap. Toshio Muramatsu)を同一視する事はない。TV番組『ウルトラマン
(Ultraman)』の前番組『ウルトラQ
(Ultra Q)』 [1966年 TBS系列放映] の第19話『2020年の挑戦
(Challenge From The Year 2020)』 [脚本:金城哲夫、千束北男 監督:飯島敏宏 特技監督:有川貞昌] に於いて、小林昭二 (Akiji Kobayashi) は天野二等空佐 (Lieutenant Colonel Amano) を演じているが、そこでの役割とキャップことムラマツ・トシオ (Cap. Toshio Muramatsu) とを同一視する事も困難なのだ。
敢えて言及するが、ショーン・コネリー (Sean Connery) と小林昭二 (Akiji Kobayashi) の、俳優としての優劣を記したいのではない。単に、ふたつの方法がある、と謂う事だけなのだ。
仮面ライダー2号一文字隼人 (Hayato Ichimonji ala Kamen Rider 2) を演じた佐々木剛 (Takeshi Sasaki ) は、TV番組『お荷物小荷物 (Onimotsu Konimotsu)』 [1970〜1971年 朝日放送系列放映] において、小心者の5男、滝沢信 (Shin Takizawa) を演じている最中に、自身が仮面ライダー2号一文字隼人 (Hayato Ichimonji ala Kamen Rider 2) を演じている事に言及するばかりかその変身シーンをも披露するのである。
上の文章に「筈」と謂う語句が2度も登場してしまうのは、やっぱり記憶が不確かだからである。
ぼくの記憶に間違いがなければ、ジュブナイル (Juvenile)) から卒業して掌にした"大人向け"の物語の最初期の書籍の1冊である上に、保護者同伴の校則があるのにも関わらずに、3歳下の弟と2人連れで観にいった最初期の映画の1作なのである。
上の文章に英語で謂うところのワン・オヴ (One Of) に該当する形容が2度も登場するのも、そんな大昔の出来事だから、である。当時のぼくは、小学校中学年であったのだ。

表題に掲げたわだつみ (Wadatsumi-No. 1) とは、深海潜水艇 (Deep-submergence Vehicle) である。その物語の主人公のひとり、小野寺俊夫 (Toshio Onodera) [演:藤岡弘 (Hiroshi Fujioka)] が漕艇する。
物語冒頭に於いて、田所雄介博士 (Dr. Yusuke Tadokoro) [演:小林桂樹 (Keiju Kobayashi)] と幸長信彦助教授 (AP Nobuhiko Yukinaga) [演:滝田裕介] を乗せたわだつみ (Wadatsumi-No. 1) は、潜行した日本海溝 (Japan Trench) に於いて、異変を発見する。日本列島 (Japanese Archipelago) が沈降していく物語はこうして始まるのである [上掲画像はこちらから:画面左奥より右手前へ、幸長信彦助教授 (AP Nobuhiko Yukinaga) [演:滝田裕介 (Yusuke Takita)]、小野寺俊夫 (Toshio Onodera) [演:藤岡弘 (Hiroshi Fujioka)] そして田所雄介博士 (Dr. Yusuke Tadokoro) [演:小林桂樹 (Keiju Kobayashi)]]。
映画を観る前に知っていた、文字と言葉の羅列で語られていたその物語は、その映画作品に於いてもそれに準じてそのまま映像化される筈なのである。
にも関わらずに、小学校中学年のぼくは、そうではないモノを期待していた様な気がする。
それは、特撮映画 (Special Effects Movie) と謂う文脈であり、それに応じて、週刊少年マガジン (Weekly Shonen Magazine) のグラビア頁等でも、特集を組まれていたからでもある。
でも、それよりもぼくが期待した理由は他にあった。
わだつみ (Wadatsumi-No. 1) を漕艇する小野寺俊夫 (Toshio Onodera) を藤岡弘 (Hiroshi Fujioka) が演じていたからである。当時の彼は、謂うまでもなく、TV番組『仮面ライダー
わだつみ (Wadatsumi-No. 1) を漕艇する小野寺俊夫 (Toshio Onodera) の獅子奮迅の活躍をもって、日本列島 (Japanese Archipelago) の危機が辛くも回避される、まさかそんな事はないだろうが、少なくとも、彼と彼が漕艇する深海潜水艇 (Deep-submergence Vehicle) は、映画の中で語られる物語の中で大活躍するのではないか、そんな期待をぼくは抱いていた様な気がする。
まるで、TV人形劇『サンダーバード (Thunderbirds)』 [1965〜1966年 BBC放映] に登場するサンダーバード1号 (Thunderbird 1) の様に、である。サンダーバード1号 (Thunderbird 1) からサンダーバード6号 (Thunderbird 6) まであるサンダーバード機 (Thunderbirds Machines) に中に於いて、そのサンダーバード1号 (Thunderbird 1) は、真っ先に現場に顕れて、現状の分析と作戦の立案と指示並びに実行を果たす。謂わば、司令塔 (Countrol Tower) なのである。
ところが実際の映画では、わだつみ (Wadatsumi-No. 1) が登場するのは物語冒頭部に於いてであり、小野寺俊夫 (Toshio Onodera) の本来的な活躍もそこに於いてだけである。
尤も、映像の中ではおおきく取り上げられてはいないが、日本海溝 (Japan Trench) の異変を受けて発動したD1計画 (D1 Project) に則って、彼と彼が漕艇する深海潜水艇 (Deep-submergence Vehicle) はその最先端の現場で活躍していた筈である。だがD1計画 (D1 Project) とは調査プロジェクトであり、その活動とその成果によって発動したD2計画 (D2 Project) [日本人の海外避難計画] が物語の中心となる事によってつまり日本列島 (Japanese Archipelago) の沈没が回避不能な事態であると判明して、次第に彼の活躍を描く必要性は喪われてしまう。彼自身もD2計画 (D2 Project) の対象のひとりとして、恋人である阿部玲子 (Reiko Abe) [演:いしだあゆみ (Ayumi Ishida)] と日本列島 (Japanese Archipelago) からの脱出を謀るのである。
[その1組の恋人達の逃避行は、富士山 (Mount Fuji) 噴火によって頓挫してしまう。ふたりは生き別れとなり、物語の中では2度と逢う事はない。恋人を喪ってしまった小野寺俊夫 (Toshio Onodera) は、人命救助即ちD2計画 (D2 Project) の最前線に自己の存在理由 (Raison D'etre) を見出すのだが、それを直接的に映像化したシーンはない。彼の活躍を報道する雑誌にその姿が見いだせるだけだ。仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) でもある藤岡弘 (Hiroshi Fujioka) の本領が発揮されるべき場面ではあるのだが。]
藤岡弘 (Hiroshi Fujioka) がその映画に起用された理由のひとつが、仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) を演じていた事であるのは、否定は出来ない事実ではあるだろう。少なくとも、その映画が想定している観客層の動員には役立つ筈だ。
だが、その映画の中だけを観る限り、藤岡弘 (Hiroshi Fujioka) は仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) としての自身を少しもみせる事はない。むしろ、彼が演じた小野寺俊夫 (Toshio Onodera) の恋人である阿部玲子 (Reiko Abe) との関係性から、仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) からの脱却を謀っている様にもみえる。
その映画の中での、わだつみ (Wadatsumi-No. 1) と謂う深海潜水艇 (Deep-submergence Vehicle) は、その為に用意された装置とみえなくもない。
仮面ライダー1号本郷猛 (Takeshi Hongo aka Kamen Rider 1) が愛機サイクロン号 (Cyclone) を降りても、改造人間 (Cyborg) である事は変わりはない。しかし、わだつみ (Wadatsumi-No. 1) から降りた小野寺俊夫 (Toshio Onodera) は一介の人間、この映画の文脈で綴れば、故郷を喪うひとりの日本人 (Japanese) でしかないのである。
次回は「み」。
附記:
ショーン・コネリー (Sean Connery) はいつみてもどこでみてもジェームズ・ボンド (James Bond) である様にみえてしまう。しかも、その役を演じた他のどの俳優よりもジェームズ・ボンド (James Bond) にみえる。一時期はそれを嫌い、そうではない役を演じようと挑戦していた様だが、ある時期に於いて、それを吹っ切ってしまった。しかも、それだけではない。寧ろ、それを果敢に利用しようと演じていないだろうか。
例えば、映画『アンタッチャブル
TV番組『仮面ライダー
敢えて言及するが、ショーン・コネリー (Sean Connery) と小林昭二 (Akiji Kobayashi) の、俳優としての優劣を記したいのではない。単に、ふたつの方法がある、と謂う事だけなのだ。
仮面ライダー2号一文字隼人 (Hayato Ichimonji ala Kamen Rider 2) を演じた佐々木剛 (Takeshi Sasaki ) は、TV番組『お荷物小荷物 (Onimotsu Konimotsu)』 [1970〜1971年 朝日放送系列放映] において、小心者の5男、滝沢信 (Shin Takizawa) を演じている最中に、自身が仮面ライダー2号一文字隼人 (Hayato Ichimonji ala Kamen Rider 2) を演じている事に言及するばかりかその変身シーンをも披露するのである。
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