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2018.06.05.08.38

らごんのちぶさ

TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』 [1966TBS系列放映]、その第20話『海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon)』 [脚本:山浦弘靖大伴昌司野長瀬三摩地 監督:野長瀬三摩地 特技監督:的場徹] に登場するタイトル・ロール (Title Role)、海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) は雌 (Female) である。そこに立脚する事によって、この物語の殆どは成立している。
そして、この物語にとって大事な点、海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) は卵生 (Oviparity) であり、その点を看過してしまうと、これもまた物語は成立しえない。
しかし、卵生 (Oviparity) である海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) には、その雌性 (Female) ないしは母性 (Maternal) の顕現として、その胸に乳房が与えられているのである。

images
乳房があると謂う事は、そこから出る母乳によって我が児を養うと謂う事になるのであろうか。
[上掲画像は、体型をはっきりと確認できるモノとして選んでみた。]

海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) は、その物語の中では、爬虫類 (Reptile) から進化した生物で、その登場は2億年前だと謂う。
2億年前と謂う設定が、正しいのか否かはここでは忘れてみる。後続のTV番組『ウルトラマン (Ultraman)』 [19661967TBS系列放映] の第19話『悪魔はふたたび (Demons Rise Again)』 [脚本:山田正弘南川竜 監督:野長瀬三摩地 特技監督:高野宏一] での3億5000年前と謂う語句 [3億5千万年前の誤りではないかと思われる] にみられる様に、あまり厳密には規定されていない様なのだから。
だから、ここでは爬虫類 (Reptile) でありながら、乳房があると謂う点に着目してみたいと思う。

現生生物に於いて、卵生 (Oviparity) でありながら、乳房がある、すなわち、母乳でもって養育される爬虫類 (Reptile) は存在しない。
しかしながら、上の条件を満たす哺乳類 (Mammal) ならば存在する。単孔類 (Monotremata)、現生しているのは、鴨嘴 (Platypus) と針土竜 (Short-beaked Echidna) である。
そうすると、どういう事が考えられるだろうか。
哺乳類 (Mammal) も、爬虫類 (Reptile) から派生、進化した生物なのだから。

仮に、海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) をかつて実在した生物、さもなければ、現在もなお、生存している生物であると仮定してみる。
そうすると、考えられるのはふたつだと思う。

そのひとつは、こうだ。
海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) は、現在存在する単孔類 (Monotremata) の先祖とおなじ系統に属している。それが、ある時季に分岐したのだ。その理由は、それぞれが棲み繁殖する環境が異なるからと謂う事が考えられる。海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) は水棲で、他の単孔類 (Monotremata) は皆、陸棲だ。その違いが、両者の生態は勿論、両者の外見上をおおきく異なる事としたのである。

もうひとつは、こうだ。
海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) と、現在存在する単孔類 (Monotremata) の先祖とは系統をまったく異なるものである。その場合、いろいろと考えなければならない点もあるが、海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) は、爬虫類 (Reptile) と謂うその他の特性は維持されたまま、なんらかの原因で、母乳によって養育出来る体質を獲得したと考えられる。その遠因が単孔類 (Monotremata) のそれと同種のモノであるのか、そうでないのかは、考えなければならない。
それはつまり、次の様な事だ。例えば、 (Whale) は海棲でありながら、魚類 (Fish) ではない。哺乳類 (Mammal) である。外観が魚類 (Fish) とよく似ていたとしても、だ。陸棲であった彼等の祖先があるとき、海棲へと進化したのである。その結果、海棲に相応しい体型として魚類 (Fish) とよく似たモノが選ばれたのである。それと同様の事が、全く異なる系統にある海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) と単孔類 (Monotremata) が、卵生 (Oviparity) でありながら、母乳でもって養育する生態へと進化せしめたと考えられなくもないからだ。

こういう事を考え出すと、哺乳類 (Mammal) と爬虫類 (Reptile) との違い、それがたちまちあやふやなモノになってしまう。そもそも、単孔類 (Monotremata) と謂う存在が、それを曖昧なモノにさせている。それなのに、彼等とは全く異なる生態をもつ海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) と謂う存在を前提にしてしまうと、それがさらに極端なモノになるのだ。
ある種の爬虫類 (Reptile) にみられる卵胎生 (Ovoviviparity) や、恐竜恒温説 (Dinosaur Temperature Regulation Under Scrutiny) と謂う、哺乳類 (Mammal) と爬虫類 (Reptile) との差異を曖昧にさせるモノを幾つも思い起こさせるからである。

水棲人 (Men Living In The Water) と謂う、現生人類 (Homo Sapiens) とは全く異なった進化、そしてその結果、築き上げたであろう社会や文化を妄想するのはとても愉しい行為である。しかし、半魚人 (Merman) と謂う語句、人魚 (Mermaid) と謂う語句、だけでもって水棲人 (Men Living In The Water) を呼び顕そうとすると、そこに与えられた文字の印象から、彼等の生態や進化の過程だけでも、少なくともふたつの可能性が芽生えてくる。
ひとつは彼等が魚類 (Fish) から進化した生物であり、ひとつは現生人類 (Homo Sapiens) の祖先の一部が生環境の場を水中に据えた結果である。前者ならばおそらく卵生 (Oviparity) である可能性は否定できないが、後者ならば胎生 (Viviparity) 以外の可能性を考えるのは難しくなってしまう。

ちなみに、海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) の、創造上の先行する生物、すなわち、その元ネタであるところの、映画『大アマゾンの半魚人 (Creature From The Black Lagoon)』 [ジャック・アーノルド (Jack Arnold) 監督作品 1954年制作] に登場したギルマン (Gill-man) は、両生類 (Amphibian) だと謂う。その後にその映画のヒットに乗じてふたつの続編 [映画『半魚人の逆襲 (Revenge Of The Creature)』 [ジャック・アーノルド (Jack Arnold) 監督作品 1955年制作] と映画『半魚人我らの中を往く (The Creature Walks Among Us)』 [ジョン・シャーウッド (John Sherwood) 監督作品 1956年制作]] が制作されたが、それらでその発生 (Biogenesis) や生殖 (Reproduction) が詳らかにされる事はなかった様だ。

それでは人魚 (Mermaid) は一体?

次回は「」。

附記 1. :
TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』、その第4話『大爆発五秒前 (Five Seconds Before The Explosion)』 [脚本:南川竜 監督:野長瀬三摩地 特技監督:高野宏一] に登場する海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) は雄 (Male) である。
そうならざるを得なかったのは、第20話『海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon)』において海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) を演じていた古谷敏 (Bin Furuya) がウルトラマン (Ultraman) を演じていたから、と謂うのがおおきな理由だ。古谷敏 (Bin Furuya) のしなやかな長身が雌 (Female) の海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) を演じせしめたと同様に、ウルトラマン (Ultraman) と謂うヒーローが彼の体躯を欲していたのである。
その結果、ウルトラマン (Ultraman) との対比や体格差を明確にする為にも、海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) は異なる肉体をもった個体、すなわち雄 (Male) として登場せざるをえない。
だからと謂う訳ではないが、TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』には、雌性 (Femal) もしくは母性 (Maternal) を顕現する挿話も怪獣も、ただの1挿話、ただの1匹しか登場しない。第30話『まぼろしの雪山 (Phantom Of The Snow Mountains)』 [脚本:金城哲夫 監督:樋口祐三 特技監督:高野宏一] に登場した伝説怪獣ウー (Legend Monster Woo) である。彼女は、全身を純白の長毛で覆い隠しているのである。

附記 2. :
リアルタイムで第20話『海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon)』を観たぼくにとっては、誰もが寝静まった深夜の港町を徘徊する海底原人ラゴン (The Undersea Humanoid Ragon) の映像は、恐ろしく怖かった。彼の名前をみたりきいたりする度にその映像を想い起こして震え慄いていた。その前話である第19話『2020年の挑戦 (Challenge From The Year 2020)』 [脚本:金城哲夫千束北男 監督:飯島敏宏 特技監督:有川貞昌] に登場する、誘拐怪人ケムール人 (Kidnapping Phantom Kemur Man) 登場のシーンに匹敵する姿だ [誘拐怪人ケムール人 (Kidnapping Phantom Kemur Man) を演じていたのも古谷敏 (Bin Furuya) だ]。
ある意味で、どちらのシーンも夜の闇のふかさを、おさないぼくに示していたのかもしれない。
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