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2018.05.15.08.40

たくまりゅう

マンガ『バイオレンスジャック (Violence Jack)』 [作:永井豪 (Go Nagai) 19731974週刊少年マガジン連載] の冒頭はなにかに似ている。
それはマンガ『デビルマン (Devilman)』 [作:永井豪 (Go Nagai) 19721973週刊少年マガジン連載] での冒頭である。
同じ作者の作品。掲載誌も同じ。しかも、後者の連載終了を受けて前者の連載が開始されているのである。

マンガ『バイオレンスジャック (Violence Jack)』は次の様にして語り始められる。
荒廃した大地を流離う、謎の巨人の描写と謂う短い導入部の後に、破壊された荒野に数人の少年達が登場する。この記事の題名に掲げた逞馬竜 (Ryu Takuma) とは、その少年達のリーダーなのである。
その日得られた僅かな釣果を巡る一騒動の後に、帰宅へと向かう彼等を待ち受けているのは、その釣果を横取りしせしめようとする大人達だ。
ぼくの指摘しているのは、ここの部分の事である。

マンガ『デビルマン (Devilman)』では、こうだ。
1組の男女学生の、朝の登校場面である。ふたりは幼馴染で、男子は女子の家庭に同居している。そのふたりの仲睦まじさをあげつらう様に、不良学生達が絡むのである。
謂うまでもなく、ふたりとは不動明 (Akira Fudo) と牧村美樹 (Miki Makimura) であり、不良学生達のひとりとはドス六 (Dosu-Roku) である。後に彼等の学校で起きるある事件の後に、ドス六 (Dosu-Roku) は不動明 (Akira Fudo) の輩下となる。

似ているのはそれだけではない。

不動明 (Akira Fudo) はこの冒頭の事件で再会する旧友の飛鳥了 (Ryo Asuka) と過ごす一夜によって、悪魔 (Demons) の肉体を手に入れると同時に、それまでひよわで軟弱だった肉体と精神にも変化がもたらされる。

それと同様の事件が、逞馬竜 (Ryu Takuma) にも起きていたのだ。
その作品では、わずかばかりの釣果を巡る争いから一転、逞馬竜 (Ryu Takuma) の回想シーンとなる。その1年前の出来事だ。
それが、マンガ『バイオレンスジャック (Violence Jack)』の舞台、関東平野 (Kanto Plain) が形成される発端、関東地獄地震 (Kanto Hell Quake) なのである。そこで描かれる阿鼻叫喚 (Pandemonium) の地獄図から生き遺る事によって、女系家族で甘やかされて育った少年は、否応もなく心身共に鍛え上げられてきたのだ。

そして、その長い回想シーンが語られた後に再び、物語は冒頭へと帰着する。
ちなみに、マンガ『デビルマン (Devilman)』に於いては、その翌日の出来事、不動明 (Akira Fudo) と牧村美樹 (Miki Makimura) の登校シーンが再演される。そこへ、報復と謂わんばかりにドス六 (Dosu-Roku) までもが再登場するのだ。

images
マンガ『デビルマン (Devilman)』では、不動明 (Akira Fudo) と牧村美樹 (Miki Makimura) のふたりは、その窮地を飛鳥了 (Ryo Asuka) の登場によって救われる事になる。
それと同じ様に、マンガ『バイオレンスジャック (Violence Jack)』では、逞馬竜 (Ryu Takuma) を救うのが、バイオレンスジャック (Violence Jack) なのである [上掲画像はそのシーンの英語版]。

と、なるとふたつのマンガ作品に於いて、不動明 (Akira Fudo) = 逞馬竜 (Ryu Takuma) と謂う等式と飛鳥了 (Ryo Asuka) = バイオレンスジャック (Violence Jack) と謂う等式、このふたつが成立するのであろうか。
飛鳥了 (Ryo Asuka) の懇請によって不動明 (Akira Fudo) が悪魔 (Demons) の肉体を得、その後にその作品で描かれる死闘を思えば、逞馬竜 (Ryu Takuma) も否応もなくバイオレンスジャック (Violence Jack) の闘いの場に引き出された事は、ある意味でふたつの等式を成立させている様にも思える。
誘惑するモノ、飛鳥了 (Ryo Asuka) = バイオレンスジャック (Violence Jack) と、誘惑されるモノ、不動明 (Akira Fudo) = 逞馬竜 (Ryu Takuma)、なのである。

だがその一方で、逞馬竜 (Ryu Takuma) 自身も、バイオレンスジャック (Violence Jack) をスラムキング (Slum King) との闘いへ赴かせんと思案した事も、事実なのだ。
つまり、その時点に於いて、不動明 (Akira Fudo) = バイオレンスジャック (Violence Jack) と謂う等式と飛鳥了 (Ryo Asuka) = 逞馬竜 (Ryu Takuma) と謂う等式が成立しているのである。
そこでは、誘惑するモノ、飛鳥了 (Ryo Asuka) = 逞馬竜 (Ryu Takuma) と、誘惑されるモノ、不動明 (Akira Fudo) = バイオレンスジャック (Violence Jack)、なのである。
しかも、このふたつの等式が成立しているちょうどその時、その作品に於ける新たな登場人物、人犬 (Limbless Mute) のひとりとして飛鳥了 (Ryo Asuka) とおなじ風貌をもった人物が登場する。その結果として、飛鳥了 (Ryo Asuka) = 人犬 (Limbless Mute) の登場が、逞馬竜 (Ryu Takuma) の企みを瓦解させてしまう。誘惑するモノ、飛鳥了 (Ryo Asuka) = 逞馬竜 (Ryu Takuma) と、誘惑されるモノ、不動明 (Akira Fudo) = バイオレンスジャック (Violence Jack) が雲散霧消 (Go Up In Smoke) してしまうのだ。

但し、これだけは謂える。
その時まで、バイオレンスジャック (Violence Jack) と逞馬竜 (Ryu Takuma)、ふたりの人物の関係性は揺らいでいるのである [勿論、そんな揺らぎを前提として語られ尽くされる物語も数多くある]。
タイトル・ロールであるバイオレンスジャック (Violence Jack) が、その作品に於いて揺るぎなき主人公であると仮定してみれば、逞馬竜 (Ryu Takuma) と謂う登場人物のあり方が、まだその時点では揺らいでいるのである。あたかもこれから勃発する大地震 (Great Earthquake) の前震 (Foreshock) であるかの様に。

と、謂う事はその時点では、ふたつのマンガ作品を巡る関係性は未だ成立していなかったとも謂えるのではないだろうか。
余談として綴れば、ふたつの作品は、マンガ『バイオレンスジャック (Violence Jack)』の最終部分に於いてようやく、邂逅する。そして、飛鳥了 (Ryo Asuka) = 人犬 (Limbless Mute) が本領を発揮するのは、その時なのである。

逞馬竜 (Ryu Takuma) はこの後、スラムキング (Slum King) 配下の、外道会 (Gedokai) やドラゴン (The Dragon ) との闘いを経て、関東平野 (Kanto Plain) に於ける自己の地位を確固たるモノとする。つまり、その作品に於いて、登場人物としてのアイデンティティー (Identity) をそこで漸く得るのだ。
彼を実質上の主人公とするふたつの物語、『東京滅亡編 (Tokyo Metsubo Hen)』と『関東スラム街編 (Kanto Slum-gai Hen)』は、そんな物語だ。
そして、その結果として彼はマンガ『バイオレンスジャック (Violence Jack)』と謂う、ながい物語の舞台から一旦、退かざるを得ないのだ。

『東京滅亡編 (Tokyo Metsubo Hen)』と『関東スラム街編 (Kanto Slum-gai Hen)』が、逞馬竜 (Ryu Takuma) の、自己の喪失とその再獲得の物語と看做し得るのならば、マンガ『バイオレンスジャック (Violence Jack)』に登場する幾人もの登場人物達にもまた、逞馬竜 (Ryu Takuma) と同じ様な喪失と再獲得の物語が描かれているとする事も出来るのではないか。
その作品に、その作者がかつて他の作品の為に産み出した幾人ものキャラクター達が新たな装いを以って、登場しているのはその証左なのかもしれない。
そうやって考えると、マンガ『バイオレンスジャック (Violence Jack)』に描かれる関東平野 (Kanto Plain) と謂う土地は、同じ作者によるマンガ『キッカイくん (Kikkai-kun)』 [作:永井豪 (Go Nagai) 19691970週刊少年マガジン連載] の再演に過ぎないと謂う事にもなってしまう [こちらを参照の事]。

次回は「」。

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