2018.05.13.10.21
こんな夢をみた。

the poster for the movie "Ponyo
" directed by Hayao Miyazaki
もうでかけねばならない。だが、ひとつ問題がある。物干し台にある洗濯物をとりこまねばならないのだ。
ぼくの棲んでいるアパートは、崖のまうえにあってみはらしがよい。その代わりになにをするにも不便が生じる。洗濯はその際たるモノのひとつだ。
ぼくの部屋から物干し台に行くには、幾つもの部屋を通り抜けなければならず、しかもその部屋のそれぞれには、このアパートの住人達が棲み、暮らしている。だから、どうしても、その往復は日中の限られた時間帯となる。
しかも、ぼくは近所づきあいというものは大の苦手ときている。つまり、その行程は避けたいのだ。
そのため、ぼくはいつも自室からまっすぐ崖下へ降り、そして物干し台へとよじ登るのを、常としている。
今回もそうするしかない。
窓から身を乗り出して、赤茶けた土に脚をおく。あとは黙っていても、身体がずるずると崖下へと滑り落ちて行く。ここまではいい。
その次には、先程滑り落ちた場所から身をずらし、一挙に崖を駆け登っていく。そうしてかろうじて物干し台の手摺につかまるのだ。これだけで相当、体力を消耗する。
物干し台には、このアパートの住人達の洗濯物がいくつも、翻っている。空はくもひとつなく、洗濯日和だ。
ところが、ぼくの洗濯物を手にとると吃驚する。生乾きなのだ。たじろいだ勢いで逡巡してしまうが、恐らく帰宅は数日後になってしまうだろう。
このまま、取り込むしかない。あとは部屋干しだ。
帰りはさっきの行程のまったく逆だ。
だが、片腕には湿った衣類でふさがっていて、さらに消耗させられる。
しかも、不味い事に、一陣の強い風に煽られて、そのまま、生乾きを崖下へと落としてしまう。
落ちた衣類をかき集め、ぼくは自室へと這い上がる。とても打ちのめされた気分だ。
そして、もう少しのところで窓枠に掌がかかるところに、隣の窓から覗いた顔が叫ぶのだ。
「さがしていたのよ。Yさんがききたいことがあるんですって」
叫んだのは、隣の部屋に棲むKという中年女性で、Yとは同じくこのアパートに棲む老婆の事だ。
這々の体で、自室にのぼりきったぼくは、濡れて土のついた衣類を適当に干し、隣室をノックする。
そこにはKとYがいる。
外出する直前で時間がない事を詫びようとしたら、すぐにすむ筈だとむこうは切り出す。
「Mさんっていま、なにをしているのか、解る?」
Mさんというのは、数年前に人気の出た俳優の事だ。おそらくネットで検索すればすむ、それだけの事だ。
だが、不味い時には不味い事が重なるもので、昨夜ぼくは配線を総てばらし、そのままなのだ。それを今、接続しなければならない。しかも、こんな事のために。
普段ならば、ものの数分の作業だが、妙に手間取る。
待ち兼ねたKがこんな事を謂う。
「わたしのスマホでわかるかなぁ。検索? っていうんだっけ。それ、教えて」
配線でこんがらがっているぼくをさらにこんがらがせる。
Kには、口頭でやり方を指示するが、一手間おわる度に、おおきな声で「わからない」とか「終わった」と叫ぶ。その声を聴く度に、ぼくも手順を叫ばなければならない。
そして。
ふと机をみると、そこには一冊の雑誌が開かれていて、そこにMさんがうつっていた。
愛車と思われるバイクにまたがり、満面の笑顔だ。撮影したのは秋の様で、周囲の木立は赤く染まっている。
撮影場所はおそらくあそこだ。Mと同じ名の駅で、そこはその時季、蒸気機関車がはしるのだ。
その写真が撮られた頃、ぼくもその駅を降りた事がある。
そんな事を彼女達に告げたものか、ぼくは悩みはじめる。

the poster for the movie "The Polar Express
" directed by Robert Zemeckis

the poster for the movie "Ponyo
もうでかけねばならない。だが、ひとつ問題がある。物干し台にある洗濯物をとりこまねばならないのだ。
ぼくの棲んでいるアパートは、崖のまうえにあってみはらしがよい。その代わりになにをするにも不便が生じる。洗濯はその際たるモノのひとつだ。
ぼくの部屋から物干し台に行くには、幾つもの部屋を通り抜けなければならず、しかもその部屋のそれぞれには、このアパートの住人達が棲み、暮らしている。だから、どうしても、その往復は日中の限られた時間帯となる。
しかも、ぼくは近所づきあいというものは大の苦手ときている。つまり、その行程は避けたいのだ。
そのため、ぼくはいつも自室からまっすぐ崖下へ降り、そして物干し台へとよじ登るのを、常としている。
今回もそうするしかない。
窓から身を乗り出して、赤茶けた土に脚をおく。あとは黙っていても、身体がずるずると崖下へと滑り落ちて行く。ここまではいい。
その次には、先程滑り落ちた場所から身をずらし、一挙に崖を駆け登っていく。そうしてかろうじて物干し台の手摺につかまるのだ。これだけで相当、体力を消耗する。
物干し台には、このアパートの住人達の洗濯物がいくつも、翻っている。空はくもひとつなく、洗濯日和だ。
ところが、ぼくの洗濯物を手にとると吃驚する。生乾きなのだ。たじろいだ勢いで逡巡してしまうが、恐らく帰宅は数日後になってしまうだろう。
このまま、取り込むしかない。あとは部屋干しだ。
帰りはさっきの行程のまったく逆だ。
だが、片腕には湿った衣類でふさがっていて、さらに消耗させられる。
しかも、不味い事に、一陣の強い風に煽られて、そのまま、生乾きを崖下へと落としてしまう。
落ちた衣類をかき集め、ぼくは自室へと這い上がる。とても打ちのめされた気分だ。
そして、もう少しのところで窓枠に掌がかかるところに、隣の窓から覗いた顔が叫ぶのだ。
「さがしていたのよ。Yさんがききたいことがあるんですって」
叫んだのは、隣の部屋に棲むKという中年女性で、Yとは同じくこのアパートに棲む老婆の事だ。
這々の体で、自室にのぼりきったぼくは、濡れて土のついた衣類を適当に干し、隣室をノックする。
そこにはKとYがいる。
外出する直前で時間がない事を詫びようとしたら、すぐにすむ筈だとむこうは切り出す。
「Mさんっていま、なにをしているのか、解る?」
Mさんというのは、数年前に人気の出た俳優の事だ。おそらくネットで検索すればすむ、それだけの事だ。
だが、不味い時には不味い事が重なるもので、昨夜ぼくは配線を総てばらし、そのままなのだ。それを今、接続しなければならない。しかも、こんな事のために。
普段ならば、ものの数分の作業だが、妙に手間取る。
待ち兼ねたKがこんな事を謂う。
「わたしのスマホでわかるかなぁ。検索? っていうんだっけ。それ、教えて」
配線でこんがらがっているぼくをさらにこんがらがせる。
Kには、口頭でやり方を指示するが、一手間おわる度に、おおきな声で「わからない」とか「終わった」と叫ぶ。その声を聴く度に、ぼくも手順を叫ばなければならない。
そして。
ふと机をみると、そこには一冊の雑誌が開かれていて、そこにMさんがうつっていた。
愛車と思われるバイクにまたがり、満面の笑顔だ。撮影したのは秋の様で、周囲の木立は赤く染まっている。
撮影場所はおそらくあそこだ。Mと同じ名の駅で、そこはその時季、蒸気機関車がはしるのだ。
その写真が撮られた頃、ぼくもその駅を降りた事がある。
そんな事を彼女達に告げたものか、ぼくは悩みはじめる。

the poster for the movie "The Polar Express
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