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2018.04.15.09.37

『クリフォード・ブラウン & マックス・ローチ・アット・ベイズン・ストリート (CLIFFORD BROWN AND MAX ROACH AT BASIN STREET)』 by クリフォード・ブラウン & マックス・ローチ・アット・ベイズン・ストリート (CLIFFORD BROWN AND MAX ROACH)

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この双頭ユニットの作品はどれをとっても名盤である。と、謂うのは巷間、よく聴かれる評価であって、ぼくもそれを否定する理由はない。実際に、主だった作品は手許にあって、それらの作品からとっかえひっかえ聴いているのが日常だ。
同年代の作品群で謂えば、マイルス・デイヴィス (Miles Davis) のマラソン・セッション (The Legendary Prestige Quintet Sessions) [19565月11日及び195610月26日録音] の成果である4作品 [『クッキン (Cookin')』 [リラクシン (Relaxin')』 [ワーキン (Workin')』 [スティーミン (Steamin')』 [1961年発表] ] とよく似ている。
では、あらためて、その中からどれか1枚をと問われたら、一体、どれを選べばいいのだろうか。

今回、ぼくがこの作品を取り上げたのは、彼等の作品の中で本作品が最も素晴らしい作品だから、と謂う理由では実はないのだ。
なんだか、凄くひっかかるところがあって、それが気になって仕方がない。だけれども、それは作品自体の優劣や巧拙とは、全く別の場所にある。作品を聴くのに、音楽に向かうのに、それは一向に差し支えない問題なのだ。

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そのひとつは、ドラマーであるマックス・ローチ (Max Roach) をフィーチャーしたアート・ワークである。
この双頭ユニットの作品は、『クリフォード・ブラウン = マックス・ローチ (Clifford Brown And Max Roach)』 [1954年発表] でその"双頭"であるトランペッターとドラマーのツー・ショットで飾り、『ブラウン・ローチ・インコーポレイテッド (Brown And Roach Incorporated)』 [1955年発表] ではメンバー5人を均等に配したスタジオでの光景、そして、『緋色の研究 ( A Study In Scarlet)』 [作:アーサー・コナン・ドイル (Arthur Conan Doyle) 1887年発表] ならぬ『スタディ・イン・ブラウン (Study In Brown)』 [1955年発表] ではその名前が冠してある様にトランペッター、クリフォード・ブラウン (Clifford Brown) に焦点を当てている。だから、順当に考えていけば、トランペッターに次ぐ位置として、"双頭"の片割れ、ドラマー、マックス・ローチ (Max Roach) に焦点があたる本作は、極めて順当なアプローチと謂えるだろう。
だが、そのドラマーを撮影したその写真自体が奇妙なのだ。
撮影者の観る角度から謂えば、きっと申し分のない絶景ではあるのだろうが、そして観る側にしても滅多に目撃する事が出来ない光景ではあるのだが、音楽作品を封入する商品の容器としては、かなり冒険的な試みの様に思えて仕方がない。
一見すると、極めて閉塞的な印象をそこに抱いてしまう。
おおきく写し出されているのは、ドラマーではなくて、ドラム (Drum Kit) と謂う楽器である。スネア・ドラム (Snare Drum) とクラッシュ・シンバル (Crash Cymbal) とハイハット (Hi-hat) の僅かな間隙に、それを操る演奏者が覗いているのだ。しかも、背景となっているステージ後方にある暗幕も、クラッシュ・シンバル (Crash Cymbal) やハイハット (Hi-hat) と同系色な為に、ドラマーはそれよりも後方に埋没している様にみえる。
その結果、本作品が発表された同年に、不幸な事故 [19566月26日] によってクリフォード・ブラウン (Clifford Brown) とピアニスト、リッチー・パウエル (Richie Powell) が喪われてしまった事が妙に、おおきく暗示されている様にもみえてしまうのである。
[と、同時に、その不幸な事故がもし仮になかったとすれば、本作品に続くこの双頭ユニットの作品群のヴィジュアル・イメージは一体、どうなったのだろうか、とも想う。遺りの個々のメンバーに焦点をあてていったのであろうか。]

そして、気になることのひとつが、"双頭"ではない、遺りのメンバーに関してだ。
これまでこのユニットのサックス・プレイヤーの座を占めていたハロルド・ランド (Harold Land) が降板し、本作品にはソニー・ロリンズ (Sonny Rollins) が参加している。だけれども、そのソニー・ロリンズ (Sonny Rollins) の存在感があまり感じられない。ソニー・ロリンズ (Sonny Rollins) は一体、本作に、このユニットに、なにをもたらしたのだろうか。
冒頭に「どれをとっても名盤」と綴ったが、それはそのまま、サックス・プレイヤーはハロルド・ランド (Harold Land) であろうとソニー・ロリンズ (Sonny Rollins) であろうと、その質は大差がないと謂う事も出来る。極論だが、ハロルド・ランド (Harold Land) とソニー・ロリンズ (Sonny Rollins) はこのユニットに限っては等価なのだ。
勿論、不幸な事故さえ起きなければ、ソニー・ロリンズ (Sonny Rollins) の存在感、彼自身の音楽性が発揮されて、新しい展開があったのかもしれない。
逆に、不幸な事故によって喪われてしまったピアニストの存在感は本作には大きく遺されている。収録曲全7曲のうち、3曲も自作を提供しているのだ。だから、この点に於いても、"たら"や"れば"と謂う語句が脳裏に浮かんでしまうのだ。

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そんな考えても仕様もない事柄を脳裏に浮かべながら、本作収録の楽曲のひとつ『慕情 (Love Is A Many-Splendored Thing)』を困惑して聴いているのが普段のぼくだ。
本作品発表の前年に公開された映画『慕情 (Love Is A Many-Splendored Thing)』 [ヘンリー・キング (Henry King) 監督作品 1955年制作] の主題曲で、その映画ともども大ヒットした楽曲なのだが、果たして彼等がここで"敢えて"取り上げるべき楽曲だったのかなぁと、いつも想う。
それはぼくが『クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス (Clifford Brown With Strings)』 [1955年発表] を苦手としているからかもしれない。

ところで、クリフォード・ブラウン (Clifford Brown) についてはこんな事を考えている。

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音楽と謂うモノを意識的に聴き始めてしばらくすると、ジャズ (Jazz) と謂う音楽があって、そこには幾人もの偉大な音楽家がいる事が解る。
それは、某ミュージシャンのフェイヴァリットな人物であったり、ある名作に多大な影響を与えたそれに先行する音楽を産み出した人物であったり、つまりはそんなかたちでその名を知る人物達だ。
勿論、それは音楽に限っての事ではない。映像作品や、大きく謂えば、先鋭的な表現や新しい潮流の場合もあるだろう。
マックス・ローチ (Max Roach) はそんな人物群のひとりだったのかもしれない。彼の代表作のひとつである『ウィ・インシスト (We Insist! - Freedom Now Suite)』 [1960年発表] がその事例として挙げられるだろう。
でも、そんな彼等の中に、クリフォード・ブラウン (Clifford Brown) の名前を発見する事はなかった。
彼の存在を知るのはもっとその後、ジャズ (Jazz) と謂うモノを積極的に聴き始めてからの事である。
なにを謂いたいのかと謂うと、ジャズ (Jazz) と謂う文脈を離れてクリフォード・ブラウン (Clifford Brown) は存在しないと謂う事なのである。逆に謂えば、彼はジャズ (Jazz) の保守本流にあって、そこから微動だにしないのだ。
ちなみに同じトランペッターであるマイルス・デイヴィス (Miles Davis) は、その文脈から離れた場所にいる [と謂う事は、ジャズ (Jazz) に於いて、彼は傍流と謂う事になるのであろうか?]。そんな事例は幾つも挙げられるが、クリフォード・ブラウン (Clifford Brown) と同時代であれば、映画『死刑台のエレベーター (Ascenseur pour l'echafaud)』 [ルイ・マル (Louis Malle) 監督作品 1958年制作] での音楽が挙げられるだろう。
勿論これは、クリフォード・ブラウン (Clifford Brown) が、不幸な事故によって、極めて限られた活動期間しかなかったと謂う事実がその原因のひとつではあるのだろうけれども。

ものづくし (click in the world!) 186. :
『クリフォード・ブラウン & マックス・ローチ・アット・ベイズン・ストリート (CLIFFORD BROWN AND MAX ROACH AT BASIN STREET)』
by クリフォード・ブラウン & マックス・ローチ・アット・ベイズン・ストリート (CLIFFORD BROWN AND MAX ROACH)


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クリフォード・ブラウン & マックス・ローチ・アット・ベイズン・ストリート (CLIFFORD BROWN AND MAX ROACH AT BASIN STREET)』 by クリフォード・ブラウン & マックス・ローチ・アット・ベイズン・ストリート (CLIFFORD BROWN AND MAX ROACH)

S. ロリンズが加わったブラウン = ローチ・クインテットの代表作。

名手、ソニー・ロリンズが加わった、クリフォード・ブラウン = マックス・ローチ・クインテットの、後期代表作。<慕情><四月の思い出>など全7曲でくりひろげる息もつかせぬ名演の連続。[解説:青木啓]

1. 恋とはどんなものでしょう 7:39
 WHAT IS THIS THING CALLED LOVE Cole Porter (Harms, Inc. - ASCAP)
2. 慕情 4:17
 LOVE IS A MANY SPLENDORED THING Webster - Fain (Miller Music - ASCAP)
3. 四月の思い出 9:19
 I'LL REMEMBER APRIL Raye - DePaul - Johnston (Leeds - ASCAP)
4. パウエルズ・プランセス 3:31
 POWELL'S PRANCES Powell (Calvin Music Co. - BMI)
5. タイム 5:09
 TIME Powell (Calvin Music Co. - BMI)
6. ザ・シーン・イズ・クリーン 6:09
 THE SCENE IS CLEAN Tadd Dameron (Bregman, Vocco & Conn - ASCAP)
7. ガートルーズ・バウンス 4:12
 GERTRUDE'S BOUNCE Powell (Calvin Music Co. - BMI)

クリフォード・ブラウン & マックス・ローチ・クインテット
CLIFFORD BROWN AND MAX ROACH QUITET

クリフォード・ブラウン tp
CLIFFORD BROWN : trumpet
ソニー・ロリンズ ts
SONNY ROLLINS : tenor saxophone
ジョージ・モロウ b
GEORGE MORROW : bass
リッチー・パウエル p
RICHIE POWELL : piano
マックス・ローチ : ds
MAX ROACH : ds

total time 40:16

Recorded in New York, February 16, 1956 (1. 2.) February 17, 1956 (3. 5. 6.) January 4, 1956 4. 7.)

(P) 1956

ぼくが所有している国内盤CDには、ダン・モーガンスターン> (Dan Morgenstern) による『演奏解説』、油井正一 (Shoichi Yui) による『クリフォード・ブラウン物語 (5) ~僚友マックス・ローチ(そのII)』 [1971年記]、及び"A Complete Discography Of Clifford Brown On EmArcy Compiled by Kiyoshi Koyama With Special Thanks to Jorgen Grunnet Jepsen"が掲載されている。

猶、こちらの頁から以下のクレジットが判明している。
Photography By - Chuck Stewart
Producer - Bob Shad
Recorded at Capitol Studios, New York City.
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