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2018.03.13.08.49

けろにあ

は、怖い。不気味だ。
だが、その恐怖感がどこから来ているのかが、よく解らない。
だからこそ、恐ろしいのだと謂う事は簡単ではあるが、それで良しとするのも躊躇われる。と、謂うのも、怖くて不気味な場面は、たったひとつしかないからだ。

吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) は、TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』 [19661967TBS系列放映] の第31話『来たのは誰だ (Who Goes There?)』 [脚本:海堂太郎 監督:樋口祐三 特技監督:高野宏一] に登場する。
その挿話の、ぼくが怖くて不気味だと謂う場面は、突然各地に繁茂し始めた植物の謎の解明に励む二宮博士 (Dr. Ninomiya) [演:中山昭二 (Shoji Nakayama)] の研究室に登場した際のモノだ。

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薄暗い室内にふたつの眼光が輝き、その下にある大きく裂けた赤い口蓋は生々しい。そして、彼に慄く二宮博士 (Dr. Ninomiya) に向かって、眼孔から怪光線を放つのだ [画像はこちらから]。

物語は以降、巨大化した吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) とウルトラマン (Ultraman) との死闘へと展開する。そして何故か、あの場面を貫いていた不気味さは微塵もなくなるのである。それは暗闇から青空の下へと舞台を移したから、だけが理由とは思えない。
思えないが、これだけは謂える。吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) と謂う存在が恐ろしいのではないのだ。人間と同じ身の丈の、スーツ姿の彼だからこそ、恐ろしいのである。

だが、その姿の吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) が怖いと断言してしまうと語弊はある。
と、謂うのはその場面の直前に、同じ服装の吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) は既に登場しているからである。

ある人物の不審さに気づき、その正体を探りにきたフジ・アキコ隊員 (Akiko Fuji) [演:桜井浩子 (Hiroko Sakurai)] を背後から襲うのである。

でも、その際にぼく達が抱くのは、怖れや慄きよりも、驚きの方が強い。
あまりに突然な事態故に、吃驚するのが精一杯の感情なのである。

冷静に作劇上の展開を追っていけば、この物語には当初、ふたつの謎が登場する。
謎の人物と謎の植物だ。
そのふたつの謎が交錯し、その謎の正体が一挙に瓦解したその時こそ、吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) による二宮博士 (Dr. Ninomiya) 襲撃の場面なのである。物語の緊張感が一挙に昂まってその瞬間に、物語を凝視めるぼく達は恐怖に襲われる、と謂う訳なのである。

だけれども、そんな理解でいいのかなぁ? とぼくは思う。
それで、その恐怖を語り尽くした事になるのであろうか。

ひとつ指摘する事が可能なのは、ぼくの記憶に誤りがなければ、実際に番組を観た際は、上に掲載した画像よりも遥かに暗かったと謂う事だ。
特にぼくの場合は、番組放送当時、白黒テレビ (Monochrome TV) で観ていたのだから、より深い闇がその場面を覆い尽くしていた筈なのである [とは謂え、後にカラー映像で再体験しても、やっぱり怖かったと謂う事実はある]。
そんなあたりにも、吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) が怖くて不気味であると謂う印象を強く遺さしめているのであろうか。

猶、敬愛する怪獣ブログ (Kaiju Blog) のこの頁で、植物に由来する怪獣だから恐ろしいのであろう、と謂う趣旨の見解をみる事が出来るが、ぼくとしてはそれを採るのは憚れる。
と、謂うのは植物出自の怪獣は、同じTV番組『ウルトラマン (Ultraman)』でも第5話『ミロガンダの秘密 (Secret Of The Miloganda)』 [脚本:藤川桂介 監督:飯島敏宏 特技監督:的場徹] に怪奇植物グリーンモンス (Bizarre Plant Greenmons) が登場しているからだ。そこで語られる怪異譚と、吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) のそれとは異質である様にぼくには思える。

敢えて謂えば、怪奇植物グリーンモンス (Bizarre Plant Greenmons) が歩行する植物 (A Walking Plant) であるのに対し、吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) は智慧ある植物 (A Thinking Planet) であって、その違いがふたつの物語とそこに登場する怪異の違いとなって顕れている様な気がしてならない。

前者は映画『人類SOS! (The Day Of The Triffids)』 [スティーヴ・セクリー (Steve Sekely)、フレディ・フランシス (Freddie Francis) 監督作品 1962年制作] の系列に属し、後者は映画『遊星よりの物体X (The Thing From Another World)』 [クリスチャン・ネイビー (Christian Nyby) 監督作品 1951年制作] の系列に属す。

ちなみに、TV番組『仮面ライダー (Kamen Rider)』 [19711972毎日放送系列放映] にも第4話『人喰いサラセニアン (The Man-Eating Sarracenian)』 [脚本:市川森一島田真之 監督:折田至 技斗:高橋一俊] 登場のサラセニアン (Sarracenian) 以降、植物由来の怪人が幾度となく登場するが、彼等は人間に植物としての機能を付与した改造人間である点を厳密に考慮すれば、怪奇植物グリーンモンス (Bizarre Plant Greenmons) とも吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) ともまた違った系列として看做すべきなのかもしれない。

映画『悪魔の植物人間 (The Mutations)』 [ジャック・カーディフ (Jack Cardiff) 監督作品 1974年制作] はこの系譜に属するのだろう。

次回は「」。

附記 1. :
吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) と謂う名称が与えられているのにも関わらずに、彼がヒトを襲い吸血するシーンは皆無なのである。彼に襲われたふたりの被害者、フジ・アキコ隊員 (Akiko Fuji) も二宮博士 (Dr. Ninomiya) も、事件解決の時には無事な姿で顕れている。
TV番組『ウルトラセブン (Ultraseven)』 [19671968TBS系列放映] の第2話『緑の恐怖 (The Green Terror)』 [脚本:金城哲夫 監督:野長瀬三摩地 特技監督:高野宏一] に登場した生物X ワイアール星人 (Alien Waiell) こそ、吸血行為は行わないが彼の被害者もまた植物人間化してしまう点を考慮すれば、ある意味で、吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) が物語上に於いて呈示出来なかった吸血鬼的体質を備えていると、謂えなくもない。勿論、生物X ワイアール星人 (Alien Waiell) もまた、智慧ある植物 (A Thinking Planet) であり、その点に於いても、吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) の直系と謂えなくもない。

附記 2. :
吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) の人間体を演じた桐野洋雄 (Nadao Kirino) の相貌から懐かしめる違和感が、多分に吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) の恐怖を煽っている様にも思える。
彼が演じたゴトウ隊員 (Goto) と謂う人物は、一見するとハヤタ・シン隊員 (Shin Hayata) [演:黒部進 (Susumu Kurobe)] にも似ている様にもみえてしまう。ウルトラマン (Ultraman) でもある彼に常につきまとう違和感、不審感をデォルメさせるとゴトウ隊員 (Goto) こと吸血植物ケロニア (Blood Sucking Plant Keronia) が生成可能なのではないだろうか。
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