2018.03.06.09.29
ある年の連休に、友人を誘って帰省した。その初日に、不意に思い立っての行動だ。
数十年も昔の事だから、そのきっかけとなった悪戯心はもう、時効 (Statute Of limitations) だろう。
日帰りも出来るくらいの距離にも関わらず、めったな事ではかえらない。盆も正月もすどおりのこのぼくだ。その夜は、母親の手料理でしたたかに呑んだ。だから、翌日のぼくは午すぎまで寝ていたのである。
ぼくの客人はその一方、ぼくの両親に誘われて昼食用に買い出しにでかけた。誘う方も誘う方だが、誘われるままに同行する方も同行する方だと、いまにして思う。三者の思惑が奈辺にあったのか、眠りこけているその時のぼくは知らない。勿論、その時に実際、それぞれがどんな行動をしどんな会話をしたのかも知らない。ただ友人は帰宅後、ぼくにこんな事を告げた。
お店でしか喰べられない様な魚が、平気でパック詰め (Tray Package) されて売られているね。
そんなパック詰め (Tray Package) された魚をその日の昼食として、ぼく達は喰べたのである。

歌川芳員 (Utagawa Yoshikazu) 画『小魚の中の鮪の涅槃像 (A Tuna Surrounded By Small Fish Like The Reclining Buddha)』
こんな大昔のエピソードをつらつらと綴ったのは、もしかしてぼくは、上京するまで、鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) を喰った事がないんぢゃないのだろうか、と思ったからである。
今でこそその料理は、いく先々で思いの向くままに喰う肴のひとつではあるけれども、若い頃は滅多に喰わなかったなぁと、そんな薄ぼんやりした記憶を追いかけた、その結果である。
鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) は本来、保存食である。
と、同時に二線級のねたの調理方法である。新鮮でしかも上等の部位は、そのまま刺身 (Sashimi) にするにしくはない。
だとしたら、活きのいい生魚が容易く手にはいるぼくの出身地の様な場所では、あまり必要のない調理方法ではないだろうか。そんな事を考えている。
尤も、上に綴った様な認識の確からしさは保証しかねる。
と謂うのは、𩸽 (Okhotsk Atka Mackerel) と謂う魚を初めて喰ったのも上京後だから、である。学生時代に友人達と呑み歩く際に、いつも登場した肴である。確かに、開き (Dried Fish) にしたあの醤油 (Soy Sauce) 辛い乾いた食感は、呑む酒とあっている。
ぼくの出身地では獲れないのだろうか、出廻っていないのであろうか、そんな疑問が湧いて、帰省したある日、母親に尋ねたのである。
彼女が謂うのには、お父さん嫌いだからねぇ、の一語であった。
𩸽 (Okhotsk Atka Mackerel) の事はさておいて、若い頃に出入りしていた居酒屋 (Izakaya) で、鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) が品書きにあったと謂う記憶もない。活きのいい生魚とは無縁のそんな店でも、鮪の刺身 (Sliced Raw Tuna) は出るのである。しかも当時のぼく達は、こんな店の刺身 (Sashimi) を喰ったらきっと翌日は大変な事になる、七転八倒 (Writhe In Pain) 間違いなしだ、そんな悪態をつきながら、その肴をつついていたのである。
いつかのどこかのタイミングで、鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) が流通するきっかけでもあったのだろうか。
例えば、鰹のたたき (Seared Bonito Slices) とは、鰹 (Bonito) を炙り焼き (Broiled) したモノではあるが、ぼくの幼い頃は、鰹のたたき (Seared Bonito Slices) と謂えば、鰹 (Bonito) を細かく刻んだモノだった。叩く様に刻むからたたき (Seared) と謂う。それがいつしか、炙り焼き (Broiled) である土佐造り (Tosa Cooking) を指して鰹のたたき (Seared Bonito Slices) と謂う様になった。
一体にどこで入れ違ったのだろう。
ただ、ぼくの妖しげな記憶を辿れば、その昔、さるTV番組で土佐造り (Tosa Cooking) と謂う調理法を知ったのが、最初だ。その中で、鰹のたたき (Seared Bonito Slices) と謂う語句も振り回されていて、違和感があったのを憶えている。まさかそれを契機として、呼称が変わった訳ではあるまい。
あるまいが、それと同様の事態が、鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) にもあったのではないか。
否、むしろ、あった方が、ぼくとしては、落ち着くのである。
かつての葱とろ (Minced Tuna Roll) が食品偽装 (Food Fraud) の一手段であった事を思い起こせば尚更だ。
次回は「け」。
附記:
鉄火巻 (Blue Fin Tuna Roll) の中身は鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) ではなかろうか? と謂う疑義はあるかもしれない。
でも、ぼくの記憶しているところ、幼時に喰っていた鉄火巻 (Blue Fin Tuna Roll) は、赤身 (Red Flesh) だった筈なのである。
数十年も昔の事だから、そのきっかけとなった悪戯心はもう、時効 (Statute Of limitations) だろう。
日帰りも出来るくらいの距離にも関わらず、めったな事ではかえらない。盆も正月もすどおりのこのぼくだ。その夜は、母親の手料理でしたたかに呑んだ。だから、翌日のぼくは午すぎまで寝ていたのである。
ぼくの客人はその一方、ぼくの両親に誘われて昼食用に買い出しにでかけた。誘う方も誘う方だが、誘われるままに同行する方も同行する方だと、いまにして思う。三者の思惑が奈辺にあったのか、眠りこけているその時のぼくは知らない。勿論、その時に実際、それぞれがどんな行動をしどんな会話をしたのかも知らない。ただ友人は帰宅後、ぼくにこんな事を告げた。
お店でしか喰べられない様な魚が、平気でパック詰め (Tray Package) されて売られているね。
そんなパック詰め (Tray Package) された魚をその日の昼食として、ぼく達は喰べたのである。

歌川芳員 (Utagawa Yoshikazu) 画『小魚の中の鮪の涅槃像 (A Tuna Surrounded By Small Fish Like The Reclining Buddha)』
こんな大昔のエピソードをつらつらと綴ったのは、もしかしてぼくは、上京するまで、鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) を喰った事がないんぢゃないのだろうか、と思ったからである。
今でこそその料理は、いく先々で思いの向くままに喰う肴のひとつではあるけれども、若い頃は滅多に喰わなかったなぁと、そんな薄ぼんやりした記憶を追いかけた、その結果である。
鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) は本来、保存食である。
と、同時に二線級のねたの調理方法である。新鮮でしかも上等の部位は、そのまま刺身 (Sashimi) にするにしくはない。
だとしたら、活きのいい生魚が容易く手にはいるぼくの出身地の様な場所では、あまり必要のない調理方法ではないだろうか。そんな事を考えている。
尤も、上に綴った様な認識の確からしさは保証しかねる。
と謂うのは、𩸽 (Okhotsk Atka Mackerel) と謂う魚を初めて喰ったのも上京後だから、である。学生時代に友人達と呑み歩く際に、いつも登場した肴である。確かに、開き (Dried Fish) にしたあの醤油 (Soy Sauce) 辛い乾いた食感は、呑む酒とあっている。
ぼくの出身地では獲れないのだろうか、出廻っていないのであろうか、そんな疑問が湧いて、帰省したある日、母親に尋ねたのである。
彼女が謂うのには、お父さん嫌いだからねぇ、の一語であった。
𩸽 (Okhotsk Atka Mackerel) の事はさておいて、若い頃に出入りしていた居酒屋 (Izakaya) で、鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) が品書きにあったと謂う記憶もない。活きのいい生魚とは無縁のそんな店でも、鮪の刺身 (Sliced Raw Tuna) は出るのである。しかも当時のぼく達は、こんな店の刺身 (Sashimi) を喰ったらきっと翌日は大変な事になる、七転八倒 (Writhe In Pain) 間違いなしだ、そんな悪態をつきながら、その肴をつついていたのである。
いつかのどこかのタイミングで、鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) が流通するきっかけでもあったのだろうか。
例えば、鰹のたたき (Seared Bonito Slices) とは、鰹 (Bonito) を炙り焼き (Broiled) したモノではあるが、ぼくの幼い頃は、鰹のたたき (Seared Bonito Slices) と謂えば、鰹 (Bonito) を細かく刻んだモノだった。叩く様に刻むからたたき (Seared) と謂う。それがいつしか、炙り焼き (Broiled) である土佐造り (Tosa Cooking) を指して鰹のたたき (Seared Bonito Slices) と謂う様になった。
一体にどこで入れ違ったのだろう。
ただ、ぼくの妖しげな記憶を辿れば、その昔、さるTV番組で土佐造り (Tosa Cooking) と謂う調理法を知ったのが、最初だ。その中で、鰹のたたき (Seared Bonito Slices) と謂う語句も振り回されていて、違和感があったのを憶えている。まさかそれを契機として、呼称が変わった訳ではあるまい。
あるまいが、それと同様の事態が、鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) にもあったのではないか。
否、むしろ、あった方が、ぼくとしては、落ち着くのである。
かつての葱とろ (Minced Tuna Roll) が食品偽装 (Food Fraud) の一手段であった事を思い起こせば尚更だ。
次回は「け」。
附記:
鉄火巻 (Blue Fin Tuna Roll) の中身は鮪の漬け (Tuna Fish Pickled In Soy Sauce) ではなかろうか? と謂う疑義はあるかもしれない。
でも、ぼくの記憶しているところ、幼時に喰っていた鉄火巻 (Blue Fin Tuna Roll) は、赤身 (Red Flesh) だった筈なのである。
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