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2018.02.18.09.18

"BONGO FURY" by ZAPPA / BEEFHEART MOTHERS

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アルバム・ジャケットの表面には、作品名はおろかアーティスト表記もないのであった。

1枚の写真で総てが解るだろう、と不遜な主張と捉えるのは簡単だ。実際に、ここに映るふたりの男性がこの作品の主人公であって、それが解れば、そこから聴こえるべき音楽も推測は出来る。

だけれども、それ以上に、過剰な言質をこの写真から読み取れてしまう事も事実なのだ。

ふたりの着衣、ふたりの姿勢、ふたりの手にしているモノ、そしてふたりの表情 [ひとりは顔半分が帽子で隠されてはいるが、隠されている事自体が、この場合、彼の表情だ]。
そこに調和や均衡をみてとるよりは、破綻や対立をみいだす方が遥かに簡単だ。
敢えて言えば、白い壁に同じ様に、本人以上にその存在を主張している、おおきくくろい影だけに着目しても、そこにあるのは尋常ならざる空気、不穏な気配ばかりなのであった。

本作品の主人公であるふたり、フランク・ザッパ (Frank Zappa) とキャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) は高校時代の同級生であって、そこだけに着目してしまえば、こんなただならぬ気配はあるべきではない。
しかし、あるべきではないが、ここにそんな異常なモノがあるのは、ひとつには、『俺たちは金のためだけにやってんだ! (We're Only In It For The Money)』 [1968年発表] からなのかもしれない。
つまり、ふたりの経済上の問題が、本作制作のおおきな動機のひとつになっているからなのである。
もしもそれさえなければ、この様なかたちでこの作品が発表される事はなかったのかもしれないのだ。

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ふたりが共同してひとつの作品制作に向かったのは、これが唯一ではない。
フランク・ザッパ (Frank Zappa) の自身のソロ・アルバム名義の『ホット・ラッツ (Hot Rats)』 [1969年発表] [こちらで紹介済み] と、キャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) の『トラウト・マスク・レプリカ (Trout Mask Replica)』 [1969年発表] がある。
前者には、ゲスト・ヴォーカリストとして、キャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) が参加し、後者はフランク・ザッパ (Frank Zappa) がプロデューサーとして参画した。
同級生時代には両者はもっと繁く音楽的な交流があったのかもしれないが、それを立証出来る音楽作品はない。

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彼等の最初期の、本来ならばデモ音源でしかないふたつの作品フランク・ザッパ (Frank Zappa) の『クカマンガ・イヤーズ (Cucamonga Years The Early Works Of Frank Zappa)』 [19621964年収録] とキャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) の『伝説のA&Mセッション (The Legendary A&M Sessions)』 [1966年収録] を聴く比べると、その音楽性は非常に近しいモノであったかの印象を受ける。
だけれども、その印象をそのまま素直に信じて、ふたりの音楽の共通項をみいだして主張するには非常に躊躇わられる。
それは何故なのだろうか。

恐らく、ふたりの音楽を同等に愛していればいる程、ふたりの音楽の共通項、さもなければ差異を語るのは難しい様な気がする。
フランク・ザッパ (Frank Zappa) は大好きだけれどもキャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) は受け入れがたい、もしくはその逆、フランク・ザッパ (Frank Zappa) は理解不能だがキャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) ならばこの上もなく愛してやまない、そんなファンがいればきっと彼等の方が、もっとよく、解っているのかもしれない。

ぼく自身が、ふたりの音楽を語り得ないのは、単純に、語っても語っても、音楽自体ではなくて、音楽の手法や姿勢をしか語り得ないからなのだった。

フランク・ザッパ (Frank Zappa) 作曲の楽曲に関して、彼がキャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) にどう望んだのかはなんとなく解る。
緻密に構成された譜面を各メンバーに呈示し、それを厳格に再現する事を求める彼はきっと、キャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) に対しては100%のフリー・ハンド乃至は簡単なメロディのみを示しただけの様な気がする。そうでなければ、恐らく、キャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) はその曲を受け入れられないだろう。
本作冒頭の『デブラ・カダブラ (Debra Kadabra)』や本作掉尾を飾る『マフィン・マン (Muffin Man)』等は、キャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) のヴォーカリストとしての存在感を前面に押し出した、謂ってみれば、フランク・ザッパ (Frank Zappa) の楽曲である以前にキャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) の為の楽曲なのである。

ではその逆はどうなのか。

キャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) 主導の楽曲に対してフランク・ザッパ (Frank Zappa) はどの様な対応をしたのだろうか。
キャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) のポエトリー・リーディングをメインに据えた収録曲『角刈りのサム (Sam With The Showing Scalp Flat Top)』『マン・ウィズ・ザ・ウーマン・ヘッド (Man With The Woman Head)』は一体、どの様なかたちで作曲と編曲、そして演奏と収録がなされていったのだろうか。
一番簡単な方法はきっと、キャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) の朗読を先に収録し、それを基にして演奏をダビングすると謂うモノなのだろうが、そんな手法を採用する事をふたりは納得がいくのだろうか。それに第一、この2曲はライヴ音源なのだから。
即興演奏には否定的なフランク・ザッパ (Frank Zappa) がどこまで、キャプテン・ビーフハート (Captain Beefheart) の意図を汲んだのかと考え出してしまうと ...。

ジャケットに顕れているだろうふたりの感情を読み取ろうとして、ぼくはそんな事ばかりをつい、考えてしまう。

ものづくし (click in the world!) 184. :"BONGO FURY" by ZAPPA / BEEFHEART MOTHERS


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"BONGO FURY" by ZAPPA / BEEFHEART MOTHERS

LIVE IN CONCERT AT ARMADILLO WORLD HEADQUARTERS AUSTIN, TEXAS MAY 20th & 21st, 1975
Plus Selected Studio Wonderment
(C) (P) 1989 Barking Pumpkin Records
CD Manufactured and Marketed by RYKODISC under exclusive license.

1. DEBRA KADABRA 3:54
2. CAROLINA HARDCORE ECSTASY 5:59
3. SAM WITH THE SHOWING SCALP FLAT TOP* 3:21
4. POOFTER'S FROTH WYOMING PLANS AHEAD* 2:32
5. 200 YEARS OLD 4:32
6. CUCAMONGA 2:24
7. ADVANCE ROMANCE* 11:17
8. MAN WITH THE WOMAN HEAD* 1:28
9. MUFFIN MAN* 5:32

MUSIC SUPPLIED BY :
FRANK ZAPPA - lead guitar, vocals ; CAPTAIN BEEFHEART - harp, vocals, shopping bags ; GEORGE DUKE - keyboards, vocals ; NAPOLEON MURPHY BROCK - sax, vocals ; BRUCE FOWLER - trombone, fantastic dancing ; TOM FOWLER - bass, also dancing ; DENNY WALLEY - slide guitar, vocals ; TERRY BOZZIO - drums, moisture ; CHESTER THOMPSON - drums (on 200 Years Old and Cucamonga)

* Recorded live at ARMADILLO WORLD HEADQUARTERS, Austin, Texas May 20th & 21st, 1975

Remote recording by THE RECORD PLANT, L.A. : Overdubs and mixing at THE RECORD PLANT, L.A.
200 Years Old, Cucamonga and Muffin Man intros were recorded in January and February, 1974 at THE RECORD PLANT, L.A.
Engineered by KERRY McNAB, MIKE BRAUNSTEIN, KELLY KOTERA, MIKE STONE, DAVEY MOIRE, and FRANK HUBACH

Photography by JOHN WILLIAMS, Design : CAL SCHENKEL

Special thanks to the kitchen staff at THE ARMADILLO, especially JAN BEEMAN

All selection written by Frank Zappa except Sam With The Showing Scalp Flat Top and Man With The Woman Head written by Don Van Vllet
All section (C) 1975 Munchkin music, ASCAP except Sam With The Showing Scalp Flat Top and Man The Woman Head (C) 1973 Beefheart Music, BMI

PRODUCED BY FRANK ZAPPA
DIGITALLY REMASTERED 1987 UMPK
Engineer : BOB STONE
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