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2018.01.30.09.39

ていてんかんそく

そこに顕れている文字だけを注視して、字義を厳格に解釈すれば、小学校1年生 (The First Grade Of Elementary School) が夏休みの宿題 (Summer Homework) に行う朝顔の観察絵日記 (Observation Diary With Illustrations Of Morning Glory) も立派な定点観測 (Fixed Point Observation) になり得るのかもしれない。
その夏、鉢植えの朝顔 (Morning Glory) は据えられたそこから一切、移動する事なく、宿題を課せられた児童が決まった時間にそれを観測し、その結果を記録すればいい。毎日その日1日を遊び呆けて夕餉の為に帰宅した日没間近に、鉢植えを観察しそれの記録を記載しとしても一向に構わない筈なのだ。
だけれども、そんな夏休みの宿題 (Summer Homework) の朝顔の観察絵日記 (Observation Diary With Illustrations Of Morning Glory) は誰も褒めてもくれない。何故ならば、朝顔 (Morning Glory) はその名のとおり、夏の早朝開花する。そして、その日の午すぎにはしぼんでしまう。
その為に、その時をきちんと記録する事が朝顔の観察絵日記 (Observation Diary With Illustrations Of Morning Glory) のクライマックスとなる。夏の夕暮れに毎日、朝顔 (Morning Glory) の成長を記録し続けても誰も褒めてはくれない。むしろ、彼の朝寝坊が顰蹙を買ってしまう起因にすらなりかねない。
だから、誰しもが、それを定点観測 (Fixed Point Observation) と呼ぶ事を躊躇ってしまう。

と、謂うか、定点観測 (Fixed Point Observation) とは本来が気象用語 (Weather Terms ) なのである。小学校1年生 (The First Grade Of Elementary School) の目線で語れば、百葉箱 (Stevenson Screen) がその為の用具となる。それを用いて、夏休みの宿題 (Summer Homework) として1ヶ月あまり、決まった時刻の気温 (Temperature) 湿度 (Humidity) 気圧 (Atmospheric Pressure) 等を計測し記載し続ければいいだけなのである。

だけれども、ぼく達の心象にある定点観測 (Fixed Point Observation) と、気象用語 (Weather Terms ) 上のそれとは若干にニュアンスが異なっている様に思える。

ぼく達がその言葉を聴いて思い描くのは、例えば、映画『チャップリン・レヴュー (The Chaplin Revue)』 [チャーリー・チャップリン (Charlie Chaplin) 監督作品 1959年制作] の冒頭に登場する映像だ [こちらを参照の事]。
そこではなにもないハリウッド (Hollywood) の原野に次から次へと建物が建設されていく過程が、僅か数十秒で再現されていくのだ。
この映画『チャップリン・レヴュー (The Chaplin Revue)』とは、チャーリー・チャップリン (Charlie Chaplin) が制作した初期の3作品、即ち『犬の生活 (A Dog's Life)』 1918年制作]、『担へ銃 (Shoulder Arms)』 [1918年制作] そして『偽牧師 (The Pilgrim)』 [1923年制作] を再編成したモノであり、その導入部として、その映像が起用されているのである。
ハリウッド (Hollywood) 生成の場面をそこで呈示し、それから彼の初期の映画制作風景へと続く。初期3作品の導入部としては、ありうべき導入部である、と謂えるだろう。
と、同時に、そんな映像を記録していた事自体が驚きでもあり、チャーリー・チャップリン (Charlie Chaplin) と謂う映像作家の先見の明に感嘆もさせられる。但し、ここでぼくが指摘したいのは、往時の制作現場の映像ではない [単なる記録映像の素振りをみせながらも、そのシーンだけで如何にもなチャーリー・チャップリン (Charlie Chaplin) の喜劇として成立している事も着目すべきではあるのだが]。
ぼくが指摘しておきたいのは、なにもない原野にカメラを据えて、建物が建設されていく事を撮影し続けた事なのだ。
やるべき事はただひとつ、カメラの位置をずっと固定して、決まった時刻に数コマ撮影していく。やたらと気の長い話なのだ。

そんな定点観測 (Fixed Point Observation) は、例えば、藤子・F・不二雄 (Fujiko・F・Fujio) の短編マンガ『ある日…… (Aruhi ... : Someday ... )』 1982マンガ奇想天外掲載] にも登場する。
そこでは4人のアマチュア映画監督が集い、それぞれが制作した8ミリ映画 (8mm Film) の品評会を行うのである。その2人目に登場した監督が呈示した作品が、自身の棲んでいる地域が開発されていく模様を10年間撮影し続けた定点観測 (Fixed Point Observation) の作品なのである。
ちなみに、最初の監督の作品は、マラソン・ランナーに扮した自身が世界中を駆け巡る作品であって、2人目の定点観測 (Fixed Point Observation) の作品に続いて示される3人目の監督の作品は、映画『スター・ウォーズ (Star Wars : Episode IV A New Hope)』 [ジョージ・ルーカス (George Lucas) 監督作品 1977年制作] のパロディ (Parody)・アニメーション (Animation) だ。
この短編マンガが描く物語の深意に潜むモノは、それら3作品を一蹴の下で否定する4人目の監督によって呈示されるのだが、この駄文で着目すべきは、彼のメッセージではない。
最初の作品は、映像作品が呈示する空間の無限さを示しているのだ。その作品の監督でもある主人公はカメラがはいり得る世界中のどこまでも赴く事が可能であり、そしてそこを走破してしまう。映像作品は世界中のどこであっても、撮影の為の現場に成し得るとその8ミリ映画 (8mm Film) は主張しているのである。
だからそれに続いて呈示される定点観測 (Fixed Point Observation) の作品は、映像と時間との関係に言及した作品であると解読する事も出来る。視点を変えれば、10年と謂う長い時間をほんの数分に濃縮してみせる定点観測 (Fixed Point Observation) は、映像作品は空間ばかりではない、時間をも支配可能であると、読めなくもない。
つまり、この時点即ちふたつの8ミリ映画 (8mm Film) だけで、映像の可能性と謂うモノが無限であると謂う宣言と理解する事も不可能ではないのだ。
と、なると、みっつめの映画『スター・ウォーズ (Star Wars : Episode IV A New Hope)』のパロディ (Parody)・アニメーション (Animation) を、どう評価すべきなのであろうか。人類未踏の地をも描き得ると理解する事も出来るだろうし、アニメーション (Animation) と謂う技法 [ふたつめの作品も広義のアニメーション (Animation) 作品だ] への言及ととれなくもない。否、それともパロディ (Parody) と謂う表現手法にこそ注視すべきなのであろうか。さらに考えれば、そこに物語の語り部としての映像と謂う視点もなくはない。
と、いろんな事が考えられるがどれとして結論めいたモノがそこにあるのではない。だが、少なくとも、映像と謂う表現が含み得る可能性を少なくともこのみっつの作品で抽出せしめようと謂う意図が、この短編マンガの作者にはあったのではないだろうか。
いづれにしても、そこではそれらすべてが第4の監督の「くだらない (That's Stupid)」の一言で排除されてしまうのではあるのだが。

images
定点観測 (Fixed Point Observation) と謂う手法そのものを物語の根底に据えた作品はまだある。まだある、と謂うよりもぼくが知っているのは、と換言すべきではあるのだが、それは映画『タイム・マシン 80万年後の世界へ (The Time Machine)』 [原作:ハーバート・ジョージ・ウェルズ (Herbert George Wells) ジョージ・パル (George Pal) 監督作品 1960年制作] である (上掲画像はこちらから)。
この映画に登場するタイムマシン (Time Machine) は、マンガ『ドラえもん (Doraemon)』 [藤子・F・不二雄 (Fujiko・F・Fujio) 19691996小学館の学習雑誌等連載] に登場するタイムマシン (Time Machine) とは少し違う。後者が好きな時代の好きな場所に移動出来るのとは異なり前者は、時間移動は可能ではあるが空間移動は一切出来ないのである。その機械が置かれた場所の、過去乃至は未来を行き来出来るだけ、なのである。つまり、据え置き式で、通常備わっている筈の、車輌としての駆動力が一切、設置されていないのである。
そして、いないが為に、時間を移動すると謂う行為をまざまざと観客に理解させる事に徹底した映画でもあるのだ。本作品で視覚効果担当 (Visual Effects) のジーン・ウォレン (Gene Warren) とティム・バー (Tim Baar) がアカデミー特殊効果賞 (Academy Award for Best Visual Effects) を受賞した所以である。今の視点で謂えば、難しい事は一切していない。単純にこれまで述べてきた様な定点観測 (Fixed Point Observation) の手法をより徹底的に、そして解りやすく、さらに謂えば、美しく表現しただけに過ぎない。
ついでに書いておけば、空間移動が一切出来ないタイムマシン (Time Machine) と謂う設定は、物語上にも効果的に機能している。物語の終焉で、這々の体で西暦80万2701年の世界から帰還した主人公のとった行動が、静かな感動を呼ぶのは、そのタイムマシン (Time Machine) が一切、動けなかったから、つまり本稿の文脈に従ってみれば、定点観測 (Fixed Point Observation) に徹していたればこそ、なのである。

次回は「」。
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