2008.09.23.14.48
勿論、江戸川乱歩(Edogawa Ranpo)の傑作小説『孤島の鬼
』の、その内容に関しては書きません。
いつもの様にだらだらしく「ことうのおに(The Ogre Of The Solitary Island)」にという"ことば"について書いてみる事にしましょう。ちなみに、英文表記は、Yahoo!翻訳に依っている事を明記しておきます。
さて、突然ですが、なんといっても「ことうのおに(The Ogre Of The Solitary Island)」というネーミングが素晴らしい。
想像力の翼を拡げて、その「ことうのおに(The Ogre Of The Solitary Island)」に逢いに行くと、そこでは次の様な光景が眼に浮かぶ。
絶海の孤島。あらゆる陸路から孤立したその島嶼は、聳え起つ断崖絶壁に護られて、天然の要塞と化していた。海と陸とを融和させる砂浜など一切がなく、激しく撃ちつける波浪に逆い、忽然として、その島嶼はあった。
島は孤独だった。訪なうものなどなく、荒れ狂う獣すらいない。ただ、渡りの長旅に疲労困憊した鳥々が、途に迷うてこの界隈に辿り着くばかりだった。
否、ただ独りいた。長く伸びた髪と藻屑をより逢わせた様な衣服によって、かろうじてヒトと認められる様な存在。その異様な存在を何の予備知識もなく認めれば、鬼と見紛う。恐ろしげな容貌と、それに見合った狂気を孕んだ瞳を持っていた。...。
こんな妄想は一体どこから生じるのだろうか?(と、敢て妄想を試みた己自身への咎は無視して)
それに起因するであろうものは、きっと次の様なものではないだろうか?
1.土方巽(Tatsumi Hijikata)と、暗黒舞踏(Butoh)と呼ばれる彼のパフォーマンス
2.鹿ヶ谷の陰謀と、その未然の発覚によって俊寛らが流刑させられた鬼界ヶ島[謡曲『俊寛(鬼界嶋)』の舞台でもある]
3.三船敏郎(Toshiro Mifune)とリー・マーヴィン(Lee Marvin)、たったふたりだけによる戦争映画『太平洋の地獄
(Hell In The Pacific)』[ジョン・ブアマン(John Boorman)監督作品]
4.さいとう・たかを作『ゴルゴ13:檻の中の眠り』
他にも他にも、様々なイメージが渾然一体となって、坩堝の中で溶解し抽出させられたのだけれども、代表的なものは上に掲げた様なものだろう。

ところで、春陽堂から発売されている『孤島の鬼
』では、多賀新による銅版画(Etching)作品『追憶』が使用されている。春陽堂での江戸川乱歩(Edogawa Ranpo)作品の表紙は総て多賀新作品で飾られている[『銅版画・江戸川乱歩の世界
』でそのコラボレーション世界を一覧する事が出来る]が、『孤島の鬼
』と『追憶』の組み合わせは実に、いい。
描かれた異形の人物の魅せる、ノスタルジックともとれる視線の行方が、僕の夢想する「ことうのおに(The Ogre Of The Solitary Island)」と交錯しているのだ。
閑話休題。
江戸川乱歩(Edogawa Ranpo)に惑溺したのはいつの事だろう?
ポプラ社の少年探偵団シリーズか?
いやそれよりも前に、小学校の夏休みの気怠い午前中にTV放映された『黒蜥蜴』[深作欣二監督作品]の美輪明宏ぢゃあなかったんだろうか?
それとも、横山光輝が漫画化した『白髪鬼
』だったのだろうか?
それらは、とてもソフィスティケイテッドされていたけれども、徐々に致死量に至るその毒を身に纏って暮す『ラッパチーニの娘(Rappaccini's Daughter)』[作:ナサニエル・ホーソーン(Nathaniel Hawthorne) 訳:岡本綺堂]のヒロインの様に、僕たちは江戸川乱歩(Edogawa Ranpo)作品の蠱毒を浴びて、それがなければ生きていけない様な身体になってしまった。
と、書くと大袈裟な気もするけれども、一概にそれを否定出来ないのは、ジュヴナイルの解説文では、明智小五郎のデヴュー作『D坂の殺人事件
』はこう紹介されていたからなのだ。
「おとなになってからよんでみてください」
だから、読んだのさ。
"おとな"になる前に。
初期の短編群から始って、『陰獣
』『黄金仮面
』『黒蜥蜴
』そしてこの『孤島の鬼
』。
読み進めるに従って、「パノラマ島奇談
」の幻眩感にも、少年探偵団シリーズに時折現れる幼稚な夢幻感にも、相通じるイノセントな狂気を感じ取る。そして、この物語はどっこかで読んだ事があるなぁと想い出し想い出し読んでいたら、ある少女漫画の一シーンと全く同じ光景に出逢ったのだ。
それは、今ネット検索して初めて解ったのだけれども、高階良子の『ドクターGの島
』だった。しかも、原作『孤島の鬼
』と謳っている。
あぁ、こんなことならば筋肉少女帯の「から笑う孤島の鬼」[『筋肉少女帯 ナゴムコレクション
』収録]の解説文まがいから書き始めればよかったよ。
次回は「に」。
いつもの様にだらだらしく「ことうのおに(The Ogre Of The Solitary Island)」にという"ことば"について書いてみる事にしましょう。ちなみに、英文表記は、Yahoo!翻訳に依っている事を明記しておきます。
さて、突然ですが、なんといっても「ことうのおに(The Ogre Of The Solitary Island)」というネーミングが素晴らしい。
想像力の翼を拡げて、その「ことうのおに(The Ogre Of The Solitary Island)」に逢いに行くと、そこでは次の様な光景が眼に浮かぶ。
絶海の孤島。あらゆる陸路から孤立したその島嶼は、聳え起つ断崖絶壁に護られて、天然の要塞と化していた。海と陸とを融和させる砂浜など一切がなく、激しく撃ちつける波浪に逆い、忽然として、その島嶼はあった。
島は孤独だった。訪なうものなどなく、荒れ狂う獣すらいない。ただ、渡りの長旅に疲労困憊した鳥々が、途に迷うてこの界隈に辿り着くばかりだった。
否、ただ独りいた。長く伸びた髪と藻屑をより逢わせた様な衣服によって、かろうじてヒトと認められる様な存在。その異様な存在を何の予備知識もなく認めれば、鬼と見紛う。恐ろしげな容貌と、それに見合った狂気を孕んだ瞳を持っていた。...。
こんな妄想は一体どこから生じるのだろうか?(と、敢て妄想を試みた己自身への咎は無視して)
それに起因するであろうものは、きっと次の様なものではないだろうか?
1.土方巽(Tatsumi Hijikata)と、暗黒舞踏(Butoh)と呼ばれる彼のパフォーマンス
2.鹿ヶ谷の陰謀と、その未然の発覚によって俊寛らが流刑させられた鬼界ヶ島[謡曲『俊寛(鬼界嶋)』の舞台でもある]
3.三船敏郎(Toshiro Mifune)とリー・マーヴィン(Lee Marvin)、たったふたりだけによる戦争映画『太平洋の地獄
4.さいとう・たかを作『ゴルゴ13:檻の中の眠り』
他にも他にも、様々なイメージが渾然一体となって、坩堝の中で溶解し抽出させられたのだけれども、代表的なものは上に掲げた様なものだろう。

ところで、春陽堂から発売されている『孤島の鬼
描かれた異形の人物の魅せる、ノスタルジックともとれる視線の行方が、僕の夢想する「ことうのおに(The Ogre Of The Solitary Island)」と交錯しているのだ。
閑話休題。
江戸川乱歩(Edogawa Ranpo)に惑溺したのはいつの事だろう?
ポプラ社の少年探偵団シリーズか?
いやそれよりも前に、小学校の夏休みの気怠い午前中にTV放映された『黒蜥蜴』[深作欣二監督作品]の美輪明宏ぢゃあなかったんだろうか?
それとも、横山光輝が漫画化した『白髪鬼
それらは、とてもソフィスティケイテッドされていたけれども、徐々に致死量に至るその毒を身に纏って暮す『ラッパチーニの娘(Rappaccini's Daughter)』[作:ナサニエル・ホーソーン(Nathaniel Hawthorne) 訳:岡本綺堂]のヒロインの様に、僕たちは江戸川乱歩(Edogawa Ranpo)作品の蠱毒を浴びて、それがなければ生きていけない様な身体になってしまった。
と、書くと大袈裟な気もするけれども、一概にそれを否定出来ないのは、ジュヴナイルの解説文では、明智小五郎のデヴュー作『D坂の殺人事件
「おとなになってからよんでみてください」
だから、読んだのさ。
"おとな"になる前に。
初期の短編群から始って、『陰獣
読み進めるに従って、「パノラマ島奇談
それは、今ネット検索して初めて解ったのだけれども、高階良子の『ドクターGの島
あぁ、こんなことならば筋肉少女帯の「から笑う孤島の鬼」[『筋肉少女帯 ナゴムコレクション
次回は「に」。
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