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2008.09.21.15.10

『ブルー・サンズ(FEATURING BUDDY COLLETTE)』 by チコ・ハミルトン・クインテット(CHICO HAMILTON QUINTET)

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この作品を知るきっかけになったのは、やはり一篇の映画。
1958年発表のバート・スターン(Bert Stern) & アラム・アヴァキアン(Aram Avakian)監督作品、映画『真夏の夜のジャズJazz On A Summer's Day)』。

映画は、1958年に開催された『第5回ニューポー・ジャズ・フェスティバル(Newport Jazz Festival)』のドキュメンタリーという形態を執りながらも、本来ならばその主題となるべき、ミュージシャンからもジャズという音楽からも、自由に解き放たれて、映像詩ともいうべき領域を展開する。
音楽は常に鳴り響き、ステージでは何時果てる事もなく名演奏が繰り広げられる。だがしかし、そのフィルムに刻まれているのは、一夏の避暑地ロードアイランド(Rhode Island)で観る事の出来る、様々な人々の、優雅な喜びに満ちた顔々であり、それはそのまま、合衆国の幸福だった時代の記録と記憶とも言える。


数限りない断片、数限りない映像美、そして数限りない美しい音楽の結晶がちりばめられているが、それを繋ぎ止めているのが、ふたつのジャズ・ユニットだ。
クラシックなオープンカーに乗り込んでニューポート(Newport)へと馳せ参じる、名もなきデキシーランド・ジャズ(Dixieland Jazz)・バンド。彼らはジャズ・ジャイアンツ(Jazz Giants)の名演奏の転換部に常に登場し、「聖者の行進 / When The Saints Go Marching In」を演奏する。彼らは常にジャズの祝祭的な象徴であり、その音楽がどこから来たのかを物語っているのだ。
そして、もうひとつのバンドが、このチコ・ハミルトン(Chico Hamilton)・クインテットだ。彼らは三度登場する。一度目は、開放的で牧歌的な幸福に包まれている真昼の演奏に背を向けて、暗い暑苦しい室内で行われる、彼らのリハーサル・シーン。二度目は、夕闇迫るニューポート(Newport)の映像を背景に、彼らの特異な音楽性を産み出すチェロ奏者、ネイサン・ガーシュマン(Nathan Gershman)による「バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007(Suiten Fur Violoncello Solo Suite Nr. 1 G-Dur, BMW 1007)」の演奏。そして、最期に現れるのが、映画そのもののハイライトといっていい彼らのステージ・パフォーマンスだ。
曲は、ここで取り上げたアルバムにも収録されている「ブルー・サンズ(Blue Ssnds)」。


上に紹介した映画からのワンシーンを観れば、一目瞭然。ジャズでありながらも、限りなくジャズから遠い地平にいる演奏である。曲のモードを決定しているのは、エリック・ドルフィーEric Dolphy)のフルート(flute)による哀愁に満ちたメロディだけれども、それをとばぐちに切り開かれるのが、リーダー、チコ・ハミルトン(Chico Hamilton)によるドラム・プレイである。
とは言え、そこで鳴らされるドラムスの音は、肉体的な大音量の豪放磊落さでもなければ、緻密に計算されたテクニカルな変拍子の乱打でもない。マレット(Percussion Mallets)が鳴り続ける。単調と呼ぼうとすればそれも不可能でもない、同一の反復的なビート音が延々と果てる事もなく、鳴り続ける。それが手抜きでも手癖でもなく、凄まじい程の緊張と集中を必要とするプレイである事は、チコ・ハミルトン(Chico Hamilton)の額を流れ伝う褪で解る。否、瞳を閉じてその音だけに身を委ねれば、己の意識が総てマレット(Percussion Mallets)の乱打に惹き付けられてしまう筈だ。

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インコグニート(Incognito)が『Positivity』で、ここで紹介するアルバムのジャケット・デザインをそのまんま流用したのは、ウィリアム・クラクストン(William Claxton)によるデザインへのリスペクトという以上の意味合いがあるのではないだろうか?

演奏者自身による自由度の高い演奏を重要視するジャズにあって、1950年代に沸き起こったウエスト・コースト・ジャズ(West Caust Jazz)は編曲面を重視するスタイルだった。その中心となり起爆剤のひとつとなった、ジェリー・マリガン(Gerry Mulligan)のオリジナル・カルテットに在籍していたのが、チコ・ハミルトン(Chico Hamilton)と当時はピアニストだったフレッド・カッツ(Fred Katz)。
そのふたりが中心となって結成されたのが、このクインテットである。
結成にあたり、ジャズ・チェロ(Jazz Cello)の可能性を追求したいというフレッド・カッツ(Fred Katz)の意向に沿う様な形で、チェロ(cello)~ギター(guitar)~リード楽器(flute, clarinet, tenor and alto)~ベース(bass)~ドラムス(drums)という、この様な特異な編成となった。
その結果、クラシックに於ける室内楽の様な典雅な趣のある、編曲重視の演奏を収録した作品を数々発表するが.そこはチコ・ハミルトン(Chico Hamilton)。彼の産み出すビートはずしりと重い。
本作品『ブルー・サンズ(FEATURING BUDDY COLLETTE)』は、アナログ盤で言うところのA面(1.~5.)がスタジオ・レコーディング、B面(6.~10.)がライヴ・レコーディング、緻密さと繊細さを要求された前者と、勢いと迫力を要求された後者の対比を堪能出来る。
また、このカルテットを足がかりにエリック・ドルフィーEric Dolphy)は、その飛翔の為の助走を開始するが、そこから先の話はまた別の話となる。

ものづくし(click in the world!)72.:『ブルー・サンズ(FEATURING BUDDY COLLETTE)』
by チコ・ハミルトン・クインテット(CHICO HAMILTON QUINTET)


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ブルー・サンズ(FEATURING BUDDY COLLETTE)』 by チコ・ハミルトン・クインテット(CHICO HAMILTON QUINTET)

SIDE I
The following selections were recorded Tuesday afternoon, August 23, 1955 at Radio Recorders, Val Valentine recording engineer. Two Western Electric 640 AA microphones were used, one over all and one placed near the cello. We used an Altec 21C to record the bass; the guitar was picked up directly through the mixing board. -R. B.

1.ナイス・デイ
 A NICE DAY(2'52")
 (Buddy Collette original) ASCAP.

2.マイ・ファニー・ヴァレンタイン
 MY FUNNY VALENTAINE(4'15")
 (Rodgers and Hart) ASCAP.

3.ブルー・サンズ
 BLUE SANDS(6'28")
 (Buddy Collette original) ASCAP.

4.ザ・セイジ
 THE SAGE(3'33")
 (Fred Katz original) ASCAP.

5.モーニング・アフター
 THE MORNING AFTER(2'07")
 (compositon by Chico Hamilton; arrangement by Jim Hall) ASCAP.

SIDE II
The following selections were recorded on a Thursday evening, August 4, 1955, at Harry Rubin's Strollers, a nightclub in Long Beach, California, the home of disc jockey Sleepy Stein's very popular jazz program. We used two Western Electric 640 AA microphones, one overall and one placed near the cello.The bass was picked up by an Altec 21C strapped to the instrument. (this is a a high fidelity recording. For best results use the new R.I.A.A. high frequency roll-off characteristic with a 500 cycle crossover.) -R. B.

6.アイ・ウォント・トゥ・ビー・ハッピー
 I WANT TO BE HAPPY(2'15")
 (Youmans & Caesar; arrangement by Chico Hamilton) ASCAP.

7.スペクタキュラー
 SPECTACULAR(5'19")
 (Jim Hall original) ASCAP.

8.フリー・フォーム
 FREE FORM(5'05")
 (Improvisation)

9.ウォーキング・カーソン・ブルース
 WALKING CARSON BLUES(6'16")
 (traditional; arrangement by Carson Smith)

10.バディ・ブー
 BUDDY BOO(5'23")
 (Buddy Collette original) BMI.

バディ・コレット(fl, as,ts,cl)
BUDDY COLLETTE(flute, clarinet, tenor and alto)

ジム・ホール(guitar)
JIM HALL(guitar)

フレッド・カッツ(cello)
FRED KATZ(cello)

カーソン・スミス(b)
CARSON SMITH(bass)

チコ・ハミルトン(ds)
CHICO HAMILTON(drums)

1955年8月録音 6.~10.ライブ録音

original liner-notes by FRANK KELLEY, West Coast Representative Metronome Magazine

A Richard Bock Production
Photpgraphs and Cover Design are by William Claxton

PACIFIC JAZZ ENTERPRISES,INC.,
copyright 1955 by Pacific jazz Records
HIGH FIDELITY LONG PLAYING PJ - 1209
(Also Available on EP4-39 and EP4-4-40)

僕の持っているCDは東芝EMI株式会社から発売された『We Love Jazz』シリーズのもので、解説を久保田高志が執筆してます。
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