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2017.12.17.08.37

『醒めた炎 (TOM VERLAINE)』 byトム・ヴァーレイン (TOM VERLAINE)

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承前。

それと同様に、さて、彼の代表作を1枚挙げよと謂われてしまうと、少し悩む。そして、悩んだまま結論はいつまで経っても出ない。

忘れた頃になって彼の新作はいつも届けられ、ふと気づいたふりをしていつのまにかそれを購入している。
そしてそれを貪り続ける様に聴いているのかと謂うと、必ずしもそうではない。あたかも箸休めであるかの様に、聴かなければならない幾つもの作品群の狭間で、ふと立ち止まって聴いている。
彼のソロ作品はいつもそんな具合だ。

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勿論、彼には歴史的名盤として位置付けられるテレヴィジョン (Television) 名義の第1作『マーキー・ムーン (Marquee Moon)』 [1977年発表] はあるし、それに関しては既にここで取り上げた。
でも聴いている頻度と回数で謂えば、その陰にひっそりとして存在している第2作『アドヴェンチャー (Adventure)』 [1978発表] の方が多いのかもしれない。
第1作は、時代のうねりの中で産まれた様な場所にあって、だからこそ誰もが注目もしたし、誰もが評価した。
でも、本来ならば、テレヴィジョン (Television) と謂うバンドはそんなバンドではないのかもしれない。つまりあたかも偶然の産物として、その作品を評価すべきモノなのかもしれない。

と、謂うのは、そのバンドのイニシアティヴを握っていた彼、トム・ヴァーレイン (Tom Verlaine) のその後の活動がそれを証明しているかの様に思えるからだ。

世の中の動きやシーンの動向とは御構いなしだ。
作品の方向性はその都度、赴くがままに舵がとられている筈だが、画期的である事も斬新である事も意図していない。

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彼には歌唱とギター、ふたつの表現手段があって、そのどちらに比重をかけるかは本人のまったくの恣意に委ねられている。
歌詞をじっくりと聴きたければ例えば第3作『ワーズ・フロム・ザ・フロント (Words From The Front)』 [1982年発表] を聴き込めばいいし、アグレッシブなギター・サウンドに酔いしれたければ第5作『フラッシュ・ライト (Flash Light)』 [1987年発表] を聴けばいい。勿論、完全なるギター・インストルメンタル・アルバムである第7作『ワーム・アンド・クール (Warm And Cool)』 [1992年発表] でもいいよね。

と、聴く側の、彼に求めるモノがその都度変われば、当然の様に作品の評価も変わる。冒頭の1文はそれを踏まえての事である。

ぼくが今回、このソロ第1作『醒めた炎 (Tom Verlaine)』 [1979年発表] を選んだのは単純に、聴いているのべ回数がだんとつだったからだ。発表当時、ぼくは高校生であって、音楽に投資できる金額はその後のぼくと比べれば遥かに制限されていた。
単純にそう謂う理由である。

素っ頓狂な、鬼面人を威すかの様なギター・リフから始まる冒頭の曲『グリップ・オブ・ラヴ (The Grip Of Love)』で先ず驚かされる。だが奇を衒ったかの様な表現 [と敢えてここでは書く] はそこまでだ。
むしろ、シンプルでストレートな表現が全体を支配している。そしてその結果、楽曲の細部までぼくの耳に快く響く。
トム・ヴァーレイン (Tom Verlaine) ならではギター・フレーズ、他のミュージシャンではそうは弾かないフレーズの筈なのに、欲しいところに欲しい音が響くのだ。
クリシュと独創が心ゆく儘に融合しているかの様なのだ。

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最期にひとつだけ綴らなければならないとしたら、本作の収録楽曲のひとつである『キングダム・カム (Kingdom Come)』について、だ。
デヴィッド・ボウイ ( David Bowie) がカヴァーしてアルバム『スケアリー・モンスターズ (Scary Monsters)』 [1980年発表] に収録した [こちらで試聴可]。以来、この曲こそがソロ・パフォマーとしてのトム・ヴァーレイン (Tom Verlaine) の代表曲として位置付けされているが、そうぢゃあないよね?
いい曲ではあるが、最上と呼ぶのには抵抗がある。
あくまでもアルバム『スケアリー・モンスターズ (Scary Monsters)』のコンセプトに則っての選曲であって、その作品が発表された1980年を象徴する楽曲でもなければ、この曲を産み出したシーンを抽出可能とする楽曲でもない。
当時も今も、変な選曲眼だなぁとぼくは思うばかりで、もっと彼らしい曲 [ここで謂う彼は選曲した側と選曲された側両方を指す] はあってしかるべきなのだ。

だからと謂って、デヴィッド・ボウイ ( David Bowie) が演奏すべき最良のトム・ヴァーレイン (Tom Verlaine) の楽曲はなんなのか。ぼくはいつも謂い澱んでしまう。
そしてこの記事は冒頭に再びかえるのだ。

ものづくし (click in the world!) 182. :
『醒めた炎 (TOM VERLAINE)』 byトム・ヴァーレイン (TOM VERLAINE)


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醒めた炎 (Tom Verlaine)』 by トム・ヴァーレイン (TOM VERLAINE)

Side 1
1. グリップ・オブ・ラヴ (3:56)
THE GRIP OF LOVE
FRED SMITH - BASS, GUITAR
JAY DEE DAUGHERTY - DRUMS

2. 夢からの贈り物 (3:46)
SOUVENIR FROM A DREAM
FRED SMITH - BASS
ALLAN SCHWARTZBERG - DRUMS

3. キングダム・カム (3:45)
KINGDOM COME
FRED SMITH - BASS, PERCUSSION, VOCALS
ALLAN SCHWARTZBERG - DRUMS, PERCUSSION

4. ミスター・ビンゴ (3:55)
MR. BINGO
FRED SMITH - BASS
JAY DEE DAUGHERTY - DRUMS

5. ヨンキ・タイム (3:50)
YONKI TIME
FRED SMITH - BASS, PERCUSSION, VOCALS
JAY DEE DAUGHERTY - DRUMS, PERCUSSION, VOCALS

side 2
1. 閃光 (3:48)
FLASH LIGHTNING
FRED SMITH - BASS
JAY DEE DAUGHERTY - DRUMS

2. レッド・リーヴス (2:47)
RED LEAVES
FRED SMITH - BASS
JAY DEE DAUGHERTY - DRUMS
DEERFRANCE - VOCALS

3. ラスト・ナイト (4:43)
LAST NIGHT
FRED SMITH - BASS
TOM THOMPSON - DRUMS
MARK ABEL - TWELVE STRING
BRUCE BRODY - PIANO

4. 傷心 (6:03)
BREAKIN' MY HEART
FRED SMITH - BASS
JAY DEE DAUGHERTY - DRUMS
RICKY WILSON - GUITAR

ALL TITLES, TOM VERLAINE - GUITAR & VOCALS
ENGINEERING - MICHAEL EWASKO, BLUE ROCK STUDIO, N.Y.
(ADDITIONAL ENGINEERING ON "LAST NIGHT," JOHN JANSEN)
MASTERED BY GEORGE MARINO AT STEALING SOUND, NEW YORK
ART DIRECTION AND DESIGN - JOHNNY LEE
FRONT AND BACK COVER PHOTOGRAPHY - JOEL BRODSKY
INNNER PHOTO : ELVIRA MEYERS

(P) & (C) 1979 ELEKTRA / ASYLUM RECORDS A DIVISION OF WARNER COMMUNICATIONS INC.

ぼくが所有している国内盤LPには、森脇美貴夫 (Mikio Moriwaki) [1979. 07.24.付] とミュージック・ライフ / 伊藤みのる (Minoru Ito from Music Life Magazine) の解説が掲載されている。
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