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2017.12.12.09.14

りとらのさなぎ

TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』 [1966TBS系列放映] の第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』 [脚本:千束北男 監督:円谷一 特技監督:小泉一 19661月2日放映] は、怪獣番組乃至怪獣映画の基本の殆どがそこにある様に思える。2匹の怪獣の対決、ヒロインの危機、物語の真の主人公たる少年がそこで果たすべき役割、そして [怪獣達にとっての] 悲劇的な結末、列挙していくときりがない。

2匹の怪獣のうち、一方は地底怪獣であり、他方は鳥類 (Bird) 型の飛行怪獣だ。その結果、特撮面に於ける技術的な観点からみれば、着ぐるみと操演が相対峙する事になり、それだけでも見所は多様になる。

そして、物語上での観点からみれば、2匹の怪獣が対決しなければならない理由がきちんと提示されているところも見逃せない。
生物本来がもつ闘争本能と謂うのは、何かを語り尽くしている様で実は何も語っていないのに等しい。
天敵、乃至は一方が他方の食餌であるとするには、その為にそこに登場する怪獣達の生態がきちんと呈示されなければならない。
そして勿論、正邪の対決と煽るのは単なる御都合主義に堕しかねない。怪獣達に、人間同様の倫理観を求め、それをその作品を堪能しようと身構えるヒトビトを説得するのはそんなに容易い話ではない。

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この物語で登場する古文書の存在は、そんな難問を止揚する為の方便である。そこには古代怪獣ゴメス (Ancient Monster Gomess) と原始怪鳥リトラ (Prehistoric Bird Litra) の対決が余すところなく記録されているからだ。この古文書の存在によって、物語は伝奇物語としての色彩を帯びる事になる [上掲画像はこちらより]。
この作品の後に登場するTV番組『ウルトラマン (Ultraman)』 [19661967TBS系列放映] の第19話『悪魔はふたたび (Demons Rise Again)』 [脚本:山田正弘南川竜 監督:野長瀬三摩地 特技監督:高野宏一 19661月2日放映] も、映画『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃 (Godzilla, Mothra And King Ghidorah Giant Monsters All-out Attack)』 [金子修介 (Shusuke Kaneko) 監督作品 2001年制作] も、第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』のヴァリアントと看做す事も可能だ [勿論、第19話『悪魔はふたたび (Demons Rise Again)』と映画『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃 (Godzilla, Mothra And King Ghidorah Giant Monsters All-out Attack)』の間にも同種の物語は幾つも存在しているだろう]。

と、顕彰していけば幾らでも顕彰し倒す事が許されている第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』ではあるが、ひとつだけ、腑に落ちないところがある。
それが表題に掲げたリトラの蛹 (Litra's Pupa) と謂う語句である。

物語の中では、トンネル工事の現場から発掘された謎の物体をジロー (Jiro) [演;村岡順二 (Junji Muraoka)] はこう断定する。リトラの蛹 (Litra's Pupa)、と。
さて、 (Pupa) ならば節足動物 (Arthropod) の生長の1過程なのだが、そこから顕れた原始怪鳥リトラ (Prehistoric Bird Litra) の生物としての特徴は、外形的には、どうみても鳥類 (Bird) のそれである。
だからと謂ってリトラの蛹 (Litra's Pupa) を"リトラの卵 (Litra's Egg)"と読み替えたとしたら、そこで別の疑義が誕生する。孵化したばかりの鳥類 (Bird) はまだ、飛翔能力が備わっていないからだ。
ぢゃあ、原始怪鳥リトラ (Prehistoric Bird Litra) はやっぱり昆虫 (Insect) かなにか、節足動物 (Arthropod) に類似する生物なのだろうかと自問しても、その疑問を解消してくれる説明や考証が物語の中で語られる事はない。

一番、説得力のある辻褄合わせは原始怪鳥リトラ (Prehistoric Bird Litra) は怪獣だから、と謂う事になってしまうが、この説明が実は一番大きな矛盾や疑問を孕ませる事になる。

少し、物語から離れてみよう。
古代怪獣ゴメス (Ancient Monster Gomess) の着ぐるみは映画『三大怪獣 地球最大の決戦 (Ghidorah, The Three-Headed Monster)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1964年制作] に登場した怪獣王ゴジラ (Godzilla, King Of The Monsters) の改造である。一方、原始怪鳥リトラ (Prehistoric Bird Litra) もまた同じ映画に登場した空の大怪獣ラドン (Sky Monster Rodan) の操演様の人形だ。
そこだけに着目すれば、第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』は映画『三大怪獣 地球最大の決戦 (Ghidorah, The Three-Headed Monster)』の再演に他ならない。しかし、その映画では怪獣王ゴジラ (Godzilla, King Of The Monsters) と空の大怪獣ラドン (Sky Monster Rodan) の対立はあるものの、両者による総力を尽くしての闘いが登場する前に、2匹の怪獣に新たな敵宇宙超怪獣キングギドラ (King Ghidorah The Three-Headed Monster) が登場する事になる。映画は怪獣王ゴジラ (Godzilla, King Of The Monsters) と空の大怪獣ラドン (Sky Monster Rodan)、それに加えて巨蛾モスラ (Mothra) の3匹と宇宙超怪獣キングギドラ (King Ghidorah The Three-Headed Monster) との闘争を描くのだ。その結果、怪獣王ゴジラ (Godzilla, King Of The Monsters) と空の大怪獣ラドン (Sky Monster Rodan) の関係性乃至対立軸はその存在が希薄になってしまう。その映画の続編として位置付けられる映画『怪獣大戦争 (Invasion Of Astro-Monster)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1965年制作] でも同様だ。怪獣王ゴジラ (Godzilla, King Of The Monsters) と空の大怪獣ラドン (Sky Monster Rodan) はいつのまにか命運を共にする関係が、何ら具体的な説明のない侭に構築されているのだ。

だからこそ、第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』では描かれなかった怪獣王ゴジラ (Godzilla, King Of The Monsters) と空の大怪獣ラドン (Sky Monster Rodan) の死闘を試みた、と謂えなくもない。
でもその場合、古代怪獣ゴメス (Ancient Monster Gomess) =怪獣王ゴジラ (Godzilla, King Of The Monsters) を倒す存在として原始怪鳥リトラ (Prehistoric Bird Litra) =空の大怪獣ラドン (Sky Monster Rodan) を位置付けする事が出来るのだろうか。つまり、第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』を"ゴジラを倒せ! (Defeat Godzilla)"と誤読し得る可能性、怪獣王ゴジラ (Godzilla, King Of The Monsters) を悪の存在と看做し、空の大怪獣ラドン (Sky Monster Rodan) を正義の存在と看做して、ジロー (Jiro) に代表され得る少年達の快哉を得る事が果たして出来るのだろうか、と謂う疑問が起こる。

当時、怪獣王ゴジラ (Godzilla, King Of The Monsters) を絶対悪として位置付け可能な怪獣は2匹いる。
ひとつはキングコング (King Kong) で、映画『キングコング対ゴジラ (King Kong vs. Godzilla)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1962年制作] でそれは描かれている。
もうひとつは巨蛾モスラ (Mothra) で、映画『モスラ対ゴジラ (Mothra vs. Godzilla)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1964年制作] でそれは描かれている。
前者をTV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』にそのまま登場させる事は難しい。権利上の問題、そしてそれによって必要とされる多額な費用が必要とされるからだ。
では、後者では?

だから、ぼくはそれをもって、原始怪鳥リトラ (Prehistoric Bird Litra) は巨蛾モスラ (Mothra) のイメージが仮託されているのではないだろうか、と謂う気がしてならないのだ。謂うまでもなく巨蛾モスラ (Mothra) は (Moth) をモチーフとした怪獣であって、その生態は映画『モスラ (Mothra)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1961年制作] で余すところなく描写されている。
つまりそれ故のリトラの蛹 (Litra's Pupa) と謂う表現が出来したのではないだろうか。
作品製作時の過程に於いて、空の大怪獣ラドン (Sky Monster Rodan) の操演用人形を借り受けられなかったとしたら、その場合、果たして原始怪鳥リトラ (Prehistoric Bird Litra) はどんな姿態をもって、その物語に出現したのだろうか。そう、ぼくは妄想を逞しくしているのである。

次回は「」。

附記 1. :
第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』に登場したもう一方の雄、古代怪獣ゴメス (Ancient Monster Gomess) に関しては既にここで書き散らしてある。

附記 2. :
そこで既に指摘している様に第1話『ゴメスを倒せ! (Defeat Gomess!)』は映画『空の大怪獣ラドン (Rodan)』 [本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1956年制作] で語られた物語の照射が散見される。ふたつの物語の主人公を演じたのは佐原健二 (Kenji Sahara) であり、彼は地底深く怪獣に襲われる事になる。
そして、そこに登場するのがメガヌロン (Ancient Dragonflies Meganulon) なのだ。
と、謂う事は、メガヌロン (Ancient Dragonflies Meganulon) の成長した姿こそが原始怪鳥リトラ (Prehistoric Bird Litra) ではなかろうか、そんな考察も不可能ではない様に思えたりもする。いや、もしかするとその逆、メガヌロン (Ancient Dragonflies Meganulon) が成長すると、古代怪獣ゴメス (Ancient Monster Gomess) となる、とも考えられなくもない。
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