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2017.11.19.09.28

『FIRST DESERTER 最初の脱走兵』 by 梅津和時 (Kazutoki Umezu)

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この作品を購入した理由は当時、彼に魅かれたからではないのだ。残念ながら。

勿論、梅津和時 (Kazutoki Umezu) と謂うサックス・プレイヤーの存在とその音楽は知っていた。
生活向上委員会大管弦楽団 (Seikatsu Kojo Iinkai Orchestra) も、ドクトル梅津バンド (Doctor Umezu Band) も、そしてRCサクセション (RC Succession) やそのヴォーカリストである忌野清志郎 (Kiyoshiro Imawano) との共演も。折に触れて、聴く機会もあっただろうし、ご丁寧にもぼくに聴かせてくれたヒトビトもいた。
ぼく個人としてはずっと、その程度の彼とのつきあいで満足していたのだろう。

もしかすると、ぼくが梅津和時 (Kazutoki Umezu) に最も接近したのは、彼の音楽ではなくて、彼の文章なのかもしれない。
スイングジャーナル (Swing Journal Magazine) の別冊に『黄金のモダン・ジャズ時代 (Golden Modern Jazz Age)』 [1990年5月増刊号] がある。1950年代 (1950s) から1960年代 (1960s) のジャズ (Jazz) をジャンル別に概観し、それぞれの代表的ミュージシャンと名盤を紹介している。
そこで梅津和時 (Kazutoki Umezu) は『あれからもう20年、三島由紀夫が自決したところに、アイラーが死んだよ、と (Twenry Years Has Already Passed Since When Yukio MIshima performd Hara‐kiri, I Heard That Albert Ayler Passed Away.)』と謂う題名で、アルバート・アイラー (Albert Ayler) に関して綴っているのである。
三島由紀夫 (Yukio Mishima) の死とアルバート・アイラー (Albert Ayler) との出逢いから始まるその文章の中には、ミュージシャンでなければ理解出来ない様な、そのアーティストに関する叙述もあって、とても興味深い。
今では、この別冊ないしそこで綴られたその文章を読むのも困難であろうから、長いけれども、そこから一部抜粋してみる。

「<前略>彼の音色は常に、ひっくり返るポイントとのギリギリのポイントで鳴らされていた。このポイントというのは楽器を吹いている人間でないと分からないものかと思うが、唇のかげんや、息、それに口のなかの広げ方、などの関係で生じてくる。アイラーのポイントは、本当に一番危険な、しかも最も倍音が多く、本当の意味で鳴っている [本文:「鳴っている」に圏点 (Emphasis Marks) あり] ポイントで吹かれている。私なんかの場合、ここより少々、安全なところにポイントを置いているわけで、何故かというと、アイラーのポイントでは音がまったくコントロールできないからなのである<後略>」[上掲書より]

閑話休題 (To Return To Our Subject,)。

本作を入手した理由は恐らく、梅津和時 (Kazutoki Umezu) 自身にあるのではない。
この作品制作に関わったミュージシャンの存在に魅かれたからだ。
マーク・リボー (Marc Ribot)、ウェイン・ホーヴィッツ (Wayne Horvitz)、トム・コラ (Tom Cora) そしてサム・ベネット (Samm Bennett)。
単純にこのメンバーで、梅津和時 (Kazutoki Umezu) を触媒として、どんな音楽を奏でる事が出来るのだろう。そんな関心と興味の結果なのだ。

但し、蛇足である事を承知で綴れば、上に揚げたどのミュージシャンのリーダー作も、ぼくは所有していないのであった。彼等がゲスト・ミュージシャンなり、フィーチャリング・アーティストなりの名義で関わった幾つかの作品があるばかりなのである。
だから単純な話、名にし負う一流ミュージシャンによる壮絶なセッションがこの作品で聴けられれば、ぼくは満足していたに違いない。

でも、この作品は決してその様な作品ではなかった。

勿論、ジャズ (Jazz) と謂う音楽のイディオムに則って、個々のメンバーの演奏、ソロ・パフォーマンスはおおきくフィーチャーされている。
だが、それにも関わらず、作品全体はひとつのモードで統一が謀られている [それとも、それ故に、と表現する方が良いのだろうか]。

本作品発表当時、音楽シーンの一部、先鋭的な部分に於いて、越境 (Crossing The Frontier Into) が主題となっていた。それは地理的な意味に於いても、人脈的な意味に於いても、そして勿論、音楽のジャンルやそこから発生する [もしくはその逆の、それを醸造する為の] 思想に於いても、と謂う意味だ。
とても解りやすい例を挙げれば、フレッド・フリス (Fred Frith) の活動とそれを映像化した映画『ステップ・アクロス・ザ・ボーダー (Step Across The Border』 [ニコラス・フンベルト (Nicolas Humbert)、ヴェルナー・ペンツェル (Werner Penzel) 監督作品 1990年制作] である。
しかも、その越境 (Crossing The Frontier Into) とは音楽を演奏する側だけの主題ではない。音楽を聴く側であるぼく達自身にも、それは課せられていたのである。

梅津和時 (Kazutoki Umezu) 自身は勿論、本作に参加したミュージシャン達にもそれは根底にあった筈で、それ故の本作への人選でもあるのだろう。

だけれども、この作品には、通常の越境 (Crossing The Frontier Into) と謂う概念とは少し、違った文脈がある様に思える。
と、謂うのはぼくの中にある越境 (Crossing The Frontier Into) と謂う語句は、もっと遠くへ、とか、もっと広く、とか、そんなニュアンスが多分に含まれているからなのだ。未知や未見、未体験と謂う言葉も浮かぶ。

でも、この作品にあるのはそれよりも、郷愁や望郷と謂うイメージが常につきまとう。
本作品のどこにも、ありとあらゆるジャンルの音楽の断片が随所に登場する。しかも、その断片はどれも鋭く、輪郭のくっきりとしたサウンドでもって顕れる。
だが、それらはどれも、かつていつかどこかでぼく達が体験 / 体感したモノであった様に響くのだ。
新たな行為、斬新な表現と謂うよりも、かつて自身のなかにあったモノの、再発見や再評価へと舵が切られている様に思える。

尤もそう思えてしまうのは、ぼくが本作品の表題に惹かれているせいなのかもしれない。
脱走兵 (Deserters) が目指すのは新天地であるよりも、故郷や故国、かつての自身にとって安寧と平和が保証された場所である筈なのだから。

そしてそんな音楽への梅津和時 (Kazutoki Umezu) の思いが、この作品にセッション・アルバムではない統一感と、そんな作品を生じせしめた彼の統率力を表出しているのではないか。

ものづくし (click in the world!) 181. :
『FIRST DESERTER 最初の脱走兵』 by 梅津和時 (Kazutoki Umezu)


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FIRST DESERTER 最初の脱走兵』 by 梅津和時

AROUND JAZZ - そしてさらなる逃走

1. TOUR WITHOUT PASSPORT
2. USED GO-GO
3. GET AWAY WITH MURDER
4. んっかっか
5. 珍島アリラン
6. いつだっていいかげん
7. SEPTEMBER FIRST
8. AROUND JAZZ
9. タイスキ
10. 私のような人
11. EN DRESS
12. VETNAMESE GOSPEL
13. USED USED GO-GO

ALL COMPOSED BY KAZUTOKI UMEDU
EXCEPT 1. 5. 8

Musicians :
KAZUTOKI UMEDU - soprano saxophone, saxcello, alto saxophone, baritone saxophone, clarinet, bassclarinet, penny whistle, kojok, kehn
MARC RIBOT - guitars & alto trumpet
WAYNE HORVITZ - piano, organ, keyboards, kehn
TOM CORA - cello, kehn
SAMM BENNETT - drums, percussion, samples, loops, kehn

Produced by KAZUTOKI UMEDU
Recorded at GOK SOUND 1995.6.27 - 29, 7.6-8
Mixed at GOK SOUND 1995.7.9. - 11
Recorded and Mixed by YOSHIAKI KONDO
Mastered at KOJIMA RECORDING STUDIO
Mastered by YUKIO KOJIMA
Photographs MASASHI KUWAMOTO
Design KUNIHISA KUWAMOTO
Editorials AKIO TAKAZAWA, TAKASHI YABUMOTO
Artists Management YOKO TADA
Exective Produced by KAZUYOSHI KAMIYA

Special Thanks to
JIRO SHINAGAWA, EMI KOBAYASHI
HIROMACHI SUZUKI (PIT INN MUSIC), HIROSHI ASADA
HIROSHI NEMOTO, PIT INN (SHINJUKU)
META COMPANY LIMITED

Information off note
(C) 1995 Manufactured by off note Distributed by Meta Company Limited

附記:清水俊彦 (Toshihiko Shimizu) の解説『AROUND JAZZ - そしてさらなる迷走』が添付されている。
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