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2008.09.16.20.40

やぎゅうじゅうべえみつこ

十兵衛こと柳生みつ子は、最近ではROOTSの"週刊少年ジャンプ40周年タイアップ駅ばりポスター"で、キャン・ギャルとして引っ張り出されているのだけれども、永井豪 (Go Nagai) 原作のマンガ『ハレンチ学園』のヒロインである。否、単に永井豪 (Go Nagai) の一作品のヒロインであるだけでなく、彼の作品に登場する殆どのヒロインの原型であると同時に、所謂"戦うヒロイン"像の原型の一でもあるのだ。

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スカートめくりお医者さんごっこを牧歌的に勤しんでいた、当時の僕たちの世界をそのまま、マンガの世界に移行した様な、長閑なギャグ・マンガだった『ハレンチ学園』が、僕たちの知らない内に世間では非難と批判と悪評のやり玉に挙げられ始めたのは、いつの事だろう?
街中には、悪書追放の名の下に、大きなポスト様の物体が居並び、その中には、悪書と呼ばれる書物が投函される仕組みとなっている。
子供心に無様だと思った。だったら、最初から印刷しなければいいのだ。
そう思って、暇さえあれば、チューインガムの喰べかすだのビスコの空箱だの落として汚れてしまったジャイアント・コーンだのを、こっそりと捨ててやった。
ハレンチ学園』のどこがいけないのだろう?
ハレンチといいたいのならば、同じ作者の『あばしり一家』の方が過激だし、あばしり菊の助の方が、柳生 "十兵衛" みつ子よりもはるかに脱ぎっぷりがよいのだ。
クラスの中でも小賢しいコが言うのには、ヒゲゴジラの本名が"吉永さゆり"だからいけないのだ、と。彼曰く、教育委員会にはサユリストが多いかららしい。
しかし、そんな事を言われたら、大・円谷 (Eiji Tsuburaya) の立場はどうなるのだ。ゴジラ (Godzilla) は決して、おネエ★MANSな言葉を使ったりはしないのだ。

そんな議論にならない様な議論をこのマンガをネタにして戦わしているうちに、戦争が始まった。
ベトナム (Vietnam War) を代表格として、ホンモノはとっくに激戦化して泥沼化している。そうではない。マンガの中で、戦争が始まったのだ。文部省 [当時] PTAの連合軍と我がハレンチ学園とでだ。
僕たち読者を蚊帳の外に置いといて悪書追放とご高説を述べていた御仁達が、今度は主戦場を僕たちの目前である学校に移して、次から次へと愛すべき"ハレンチ"なキャラクター達を殺戮してゆくのだ。
その延々と繰り広げられる殺戮の中にあって、柳生 "十兵衛" みつ子は、己の中に潜むものに気づかされる。牧歌的な光景の中で演じられたスカートめくりお医者さんごっこの様な遊戯とは無縁の存在である、己の血を。
それは、物語の中では、あたかも柳生一族の末裔であるという、彼女のその血がそうしむけている様にも読めるのだけれども、僕が指摘したいのはそういう事ではない。
つまり、永井豪 (Go Nagai) が産んだキャラクターの殆どが己の中に潜めている宿命的なもの、極限状態に置かれる事によって初めて覚醒める、生と愛と性への本能的な欲望である。

その欲望は、混沌と破壊と殺人と血飛沫と悲鳴とが混濁して一体となった映像美の下でしか描写し得ないものだ。
ウソだと思ったら、『ガクエン退屈男』や『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』や『デビルマン (Devilman)』で飽きる事なく繰り返される、その映像美に惑溺してみればよい。その映像の中に発見出来る強烈な闘争本能を裏打ちしているものを凝視してみればよい。

バイオレンス・ジャック (Violence Jack)』だけが、その映像の終焉を迎えた時から物語を興しているのを唯一の例外として。永井豪 (Go Nagai) 作品のその映像美は、"生きる"意味と生への飽くなき渇望を、常に問い続けているのだ。

そして、その映像美の中には、必ず、牧村美樹弓さやか如月ハニーけっこう仮面の様な、柳生 "十兵衛" みつ子の末裔が蠢いているのだ。

血まみれでも、きみはうつくしい

この台詞は、『デビルマン (Devilman)』で、瀕死のシレーヌを救いに来たカイムによるもの。
だがしかし、この台詞はそのまま、柳生 "十兵衛" みつ子を含め、永井豪 (Go Nagai) のヒロイン総てに通底するものだ。

次回は「」。
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