2008.09.14.21.44

"Неизвестная / Neizvestnaya"
by
Ivan Nikolaevich Kramskoy
こんな夢を観た。
持ち帰らなければならない荷物の多さに辟易した結果、スティーリー・ダン(Steely Dan)の新作を買うのを諦めて、渋谷駅の改札に駆けこもうとしたら、ふと馴染みの気配を感じる。
振り返ってみたら、あのひとだった。もう随分になるなぁと想って、彼女の歩み行く先を見やると、どうやら男性同伴の様だ。やっぱりそうゆう展開になるんだぁっと諦めながら、己の往く途へと戻ろうとすると、僕の名前を呼ぶ声がする。
あのひとだった。にこやかに微笑んでいるが、先程の連れは、もう観えない。
「お久しぶり」と、声をかけて近づいて、当たり障りのない話でさぐりを入れようとしたら、先を越された。
「今日の用事は、さっき終わったばかり。あなたもでしょ?」
そうゆう理由で、彼女と僕は、中華街が見渡せるホテルの一室にいる。ここは渋谷で、現実には、そこには中華街てなものは存在しない。
窓際のテーブルには、一本のボトルとみっつのグラス。
それはつまり、彼女と僕と、その娘のぶん。
長い茶髪を無造作にツインテールに結わえて、陽に灼けた顔からは、紅い唇と白い歯が輝く。その細い身躯は、黒いジャンプ・スーツで包まれて、胸元のジッパーはぎりぎりの辺りでかろうじて止まっていて、これはまた別の意味で、眩しい。
「だから、誰なんだろう?」
「あなたの連れぢゃあないのよね、勿論、わたしのでも」
「(笑)」
邪な考えが沸き上がる度に、必死になってかき消している僕がいる。
窓の外では、さっきから爆竹の音と、クラクションが鳴り止まない。
なんか真面目に考えるのが馬鹿馬鹿しくなって、酔っぱらってしまおうと想い、ボトルに手を伸ばす。その娘は、独り、持参のペットボトルで喉を潤している。
お互いにとって、邪魔な存在なのに、その娘を追い出してしまおうとか、ヒトを呼ぼうとか、積極的な対策を講じようとしないのは、何故だろう。酔って、マボロシでも観ているんぢゃあないかとも疑ってみるが、その娘は、なにも僕にだけしか観えない存在ではない。彼女にも観えるし、僕らの行く先々で、常に三人前のテーブルが用意される。
この部屋もトリプルだし。
一体、いつからつきまとわれているんだろうと、ロック・グラスをくるくるさせながら、その娘の一挙手一投足を凝視めていた矢先に、ノックする音がする。
我に返る。ノックなんて、生易しいものではない。ヤクザの殴り込みか借金の取り立てかなんか、非常にヤバい状況の時に聴こえるやつだ。けたたましく、乱暴にドアが連打される。
「はぁ~い」
暢気な返事をしながら、その娘が扉を開ける。
一瞬、扉が閉まるものの、すぐに開け放たれて、スキンヘッズでサングラスな強面で屈強な集団が押し入ってくる。
「テマかけたな。ここの支払いは済ませた。これで良しとしてくれ」
そう言って、その中のひとりが、何かを僕に握らせる。
握った掌を開いたら、ゴールド・カードだった。見ず知らずの名前が書かれている。
スキンヘッズでサングラスは、僕のそんな仕草を認めると、にやりとした。
「ぢゃあ、もらってゆくぜ」
そう言い放って、その娘を引っ掴んで、入った時と同様のけたたましさで出て行った。
呆気にとられた僕たちに、しばらくすると、また、大きな爆竹音とクラクションとそして、先程のスキンヘッズでサングラスのものと思しき怒号が聴こえた。
"Have you got a 27B-6?"
from the movie
"Brazil
directed by
Terry Gilliam
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