2017.09.05.09.26
地球人の姿を見つけると、3メートルもの大バサミをふりたて、50本の足ですばやくおそいかかる凶悪怪物だ。
と、あるのは『世界怪物怪獣大全集 (The Complete Works Of All Of The Monsters In The World)』 [1967年 キネマ旬報社刊] で、ぼくの手許にあるのはその復刻版『大伴昌司コレクション (The Collections Of Shoji Otomo)』 [1996年 キネマ旬報社刊] である。その出版社で大伴昌司 (Shoji Otomo) が監修したみっつの書籍、『世界SF映画大鑑 (The Encyclopedia Of Science Fiction Movies In The World)』 [1969年 キネマ旬報社刊] と『怪奇と恐怖 (Mystery And Terror) 』 [1969年 キネマ旬報社刊] そして『世界怪物怪獣大全集 (The Complete Works Of All Of The Monsters In The World)』 [1967年 キネマ旬報社刊] の復刻をそのまま合本化したモノである。
本稿の主題である金星ガニ (Venusian Crab) は、その『世界怪物怪獣大全集 (The Complete Works Of All Of The Monsters In The World)』のモノクロ・グラビア頁の巻頭を飾り、我が太陽系内惑星 (Innter Space Of Monsters) を出自とする幾つもの生物が紹介されたその後に、幕引きとして再び登場する。その際に掲載された全身像への惹句が、冒頭の文章である。
ちなみに、彼の後には今度は太陽系外生物 (Outer Space Of Monsters) の項となる。
大伴昌司 (Shoji Otomo) が命名し、それを慣例としてぼく達が金星ガニ (Venusian Crab) と呼んでいる生物は映画『金星人地球を征服
(It Conquered The World)』 [ロジャー・コーマン (Roger Corman) 監督作品 1956年制作] に登場する。つまり、彼は金星人 (Venusian) であり、作品内ではゾンター ( Zontar) と自称している。
その映画が我が国で初めて劇場公開されたのは1994年、つまり大伴昌司 (Shoji Otomo) が紹介して以来、長きに渡って本邦未公開であったのだが、ぼく達世代にとっては、とても馴染みのある生物だ。
勿論、その責は偏に大伴昌司 (Shoji Otomo) にある。
先ずはネーミング、そしてその結果としての自著での扱いに於ける比重の大きさ、そして、何はなくともその異形だ。
その生物の何を以ってして大伴昌司 (Shoji Otomo) を魅了したのかは不明ではあるが、大伴昌司 (Shoji Otomo) が魅了されたが故に、ぼく達も魅了されてしまったのだ。
だがしかし、冷静に考えれば、当時の主流であり最先端であるTV番組『ウルトラマン
(Ultraman)』 [1966~1967年 TBS系列放映] に登場した怪獣群とは決してあい入れないものばかりがその生物にある様に思える。その作品でデザインと造形を担当した成田亨 (Toru Narita) と高山良策 (Ryosaku Takayama) のふたりからは決して登場し得ない造形である様に、ぼくには思えるのだ。
但し、その生物の全身像を敢えてある生物の頭部であると看做してしまえば、TV番組『キャプテンウルトラ
(Captain Ultra)』 [1967年 TBS系列放映] の第18話『ゆうれい怪獣キュドラあらわる
(Ghost Monster Kyudora Appears)』 [脚本:長田紀生 監督:富田義治 特殊技術:上村貞夫] に登場したキュドラ (Kyudora) が成立してしまう。
この2者の関係性はあるのかないのか、よく解からない。解らないが、映画『金星人地球を征服
(It Conquered The World)』に登場するかの生物が、人間を支配下の基に置き、思うが儘に操るその構図は、第18話『ゆうれい怪獣キュドラあらわる
(Ghost Monster Kyudora Appears)』 での物語の構図とよく似ている。
このふたつの作品に関してはこれ以上の事は解らない。
映画『金星人地球を征服
(It Conquered The World)』に登場するその生物の造形が現行のモノとなったのは、主演女優ビバリー・ガーランド (Beverly Garland) がその責を追う。
その作品の中で彼女が演じるクレア・アンダーソン (Claire Anderson) は果敢にも、1対1の対決を試みるのだ。当時の映画にあって、ヒロインの殆どは泣き叫び助けを求めるばかりの筈なのに、この設定は珍しい。
そして彼女は、その撮影現場での待機中、既に完成していた自身の敵を戯れに蹴り倒していたらしいのだ。こんな奴なんか、わたしにかかればイチコロよ、とでも謂わんばかりに。
当時のそれは、金星 (Venus) の重力では生物の体長が低い筈と謂う考証の許、かなりちいさかったらしい [残念ながらその際の造形は未公開である様だ]。
考証に寄ったがために、造形から恐怖が払拭されたのでは物語として成立しない。結果、侵略者は現行のモノに急遽改められたのである。

クレア・アンダーソン (Claire Anderson) [演:ビバリー・ガーランド (Beverly Garland)] と金星ガニ (Venusian Crab) ことゾンター (Zontar) [上掲画像はこちらより]。
ちなみに劇中、この様な映像を見受ける事が可能な物語展開はない。
物語は親友であるふたりの博士が登場し、地球に飛来した宇宙人との交渉の過程に於いて、ふたりに確執も生じ、それぞれの妻もその渦中に呑まれて非業の死を遂げる。
こうやって綴ると、上質な人間ドラマがそこで語られている様にも思える。
上で既に綴った様に、ヒロインもこの作品ならではの活躍の場が与えられている。
ただ残念ながら、そのドラマを支えるべきサイエンス・フィクションの部分が脆弱なのだ。さもなければ、空想の翼を拡げてどこまでも飛翔すべき部分と、人間の根源的な業とでも呼べる様なモノを探求すべく深く探るべき部分とが乖離してしまっていると、謂うべきか。
但し、他の無数の作品群の中にあっては、物語としては練れている部類に入るせいか、リメイク作品『SF金星怪人ゾンターの襲撃 (Zontar, The Thing From Venus)』 [ラリー・ブキャナン (Larry Buchanan) 監督作品 1966年制作] が存在している [ぼく自身は未見]。
主役のふたりの博士は、リー・ヴァン・クリーフ (Lee Van Cleef) とピーター・グレイブス (Peter Graves) が演じている。前者は後にマカロニ・ウェスタン (Spaghetti Western) でなくてはならない役を幾つも演じ、後者はTV番組『スパイ大作戦
(Mission : Impossible)』 [1966~1973年 CBS放映] で主役のジム・フェルプス (James Phelps) を演じ続けた。
次回は「に」。
と、あるのは『世界怪物怪獣大全集 (The Complete Works Of All Of The Monsters In The World)』 [1967年 キネマ旬報社刊] で、ぼくの手許にあるのはその復刻版『大伴昌司コレクション (The Collections Of Shoji Otomo)』 [1996年 キネマ旬報社刊] である。その出版社で大伴昌司 (Shoji Otomo) が監修したみっつの書籍、『世界SF映画大鑑 (The Encyclopedia Of Science Fiction Movies In The World)』 [1969年 キネマ旬報社刊] と『怪奇と恐怖 (Mystery And Terror) 』 [1969年 キネマ旬報社刊] そして『世界怪物怪獣大全集 (The Complete Works Of All Of The Monsters In The World)』 [1967年 キネマ旬報社刊] の復刻をそのまま合本化したモノである。
本稿の主題である金星ガニ (Venusian Crab) は、その『世界怪物怪獣大全集 (The Complete Works Of All Of The Monsters In The World)』のモノクロ・グラビア頁の巻頭を飾り、我が太陽系内惑星 (Innter Space Of Monsters) を出自とする幾つもの生物が紹介されたその後に、幕引きとして再び登場する。その際に掲載された全身像への惹句が、冒頭の文章である。
ちなみに、彼の後には今度は太陽系外生物 (Outer Space Of Monsters) の項となる。
大伴昌司 (Shoji Otomo) が命名し、それを慣例としてぼく達が金星ガニ (Venusian Crab) と呼んでいる生物は映画『金星人地球を征服
その映画が我が国で初めて劇場公開されたのは1994年、つまり大伴昌司 (Shoji Otomo) が紹介して以来、長きに渡って本邦未公開であったのだが、ぼく達世代にとっては、とても馴染みのある生物だ。
勿論、その責は偏に大伴昌司 (Shoji Otomo) にある。
先ずはネーミング、そしてその結果としての自著での扱いに於ける比重の大きさ、そして、何はなくともその異形だ。
その生物の何を以ってして大伴昌司 (Shoji Otomo) を魅了したのかは不明ではあるが、大伴昌司 (Shoji Otomo) が魅了されたが故に、ぼく達も魅了されてしまったのだ。
だがしかし、冷静に考えれば、当時の主流であり最先端であるTV番組『ウルトラマン
但し、その生物の全身像を敢えてある生物の頭部であると看做してしまえば、TV番組『キャプテンウルトラ
この2者の関係性はあるのかないのか、よく解からない。解らないが、映画『金星人地球を征服
このふたつの作品に関してはこれ以上の事は解らない。
映画『金星人地球を征服
その作品の中で彼女が演じるクレア・アンダーソン (Claire Anderson) は果敢にも、1対1の対決を試みるのだ。当時の映画にあって、ヒロインの殆どは泣き叫び助けを求めるばかりの筈なのに、この設定は珍しい。
そして彼女は、その撮影現場での待機中、既に完成していた自身の敵を戯れに蹴り倒していたらしいのだ。こんな奴なんか、わたしにかかればイチコロよ、とでも謂わんばかりに。
当時のそれは、金星 (Venus) の重力では生物の体長が低い筈と謂う考証の許、かなりちいさかったらしい [残念ながらその際の造形は未公開である様だ]。
考証に寄ったがために、造形から恐怖が払拭されたのでは物語として成立しない。結果、侵略者は現行のモノに急遽改められたのである。

クレア・アンダーソン (Claire Anderson) [演:ビバリー・ガーランド (Beverly Garland)] と金星ガニ (Venusian Crab) ことゾンター (Zontar) [上掲画像はこちらより]。
ちなみに劇中、この様な映像を見受ける事が可能な物語展開はない。
物語は親友であるふたりの博士が登場し、地球に飛来した宇宙人との交渉の過程に於いて、ふたりに確執も生じ、それぞれの妻もその渦中に呑まれて非業の死を遂げる。
こうやって綴ると、上質な人間ドラマがそこで語られている様にも思える。
上で既に綴った様に、ヒロインもこの作品ならではの活躍の場が与えられている。
ただ残念ながら、そのドラマを支えるべきサイエンス・フィクションの部分が脆弱なのだ。さもなければ、空想の翼を拡げてどこまでも飛翔すべき部分と、人間の根源的な業とでも呼べる様なモノを探求すべく深く探るべき部分とが乖離してしまっていると、謂うべきか。
但し、他の無数の作品群の中にあっては、物語としては練れている部類に入るせいか、リメイク作品『SF金星怪人ゾンターの襲撃 (Zontar, The Thing From Venus)』 [ラリー・ブキャナン (Larry Buchanan) 監督作品 1966年制作] が存在している [ぼく自身は未見]。
主役のふたりの博士は、リー・ヴァン・クリーフ (Lee Van Cleef) とピーター・グレイブス (Peter Graves) が演じている。前者は後にマカロニ・ウェスタン (Spaghetti Western) でなくてはならない役を幾つも演じ、後者はTV番組『スパイ大作戦
次回は「に」。
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