fc2ブログ

2017.08.22.09.24

こーざのすとらべっくおら

ジェフ・ベック (Jeff Beck) はいつだって格好いい。
彼の演奏を支える音楽は時代やメンバーによって随時変わる事はあるが、彼と彼の演奏はいい意味で不動で不変だ。普遍であると謂い換えても良い。
そして、勿論、彼自身の名前を冠したバンド、ジェフ・ベック・グループ (Jeff Beck Group) によるアルバム『ベック・オラ (Cosa Nostra Beck-Ola)』 [1969年発表] でもそれは変わらない。

ジェフ・ベック・グループ (Jeff Beck Group) と謂うバンドはふたつあって通常、第1期 [19681969年存在] と第2期[19701972年存在] に分類される。メンバーも音楽性も勿論、異なる。
そして、それぞれのバンド名義の作品はふたつづつ、計4作品しかない。

第1期のそれは、アルバム『トゥルース (Truth)』 [1968年発表]とアルバム『ベック・オラ (Cosa Nostra Beck-Ola)』 [1969年発表]。どちらも名盤であると謂う認識は一般的だが、2作品が同等に評価されているとは謂い難い。どちらか、なのだ。
第1作『トゥルース (Truth)』 を推す側の主張は、ある意味で統一されている。本作それ自体での評価と謂うよりも、大局的な視座が絶対に加わる。つまり、レッド・ツェッペリン (Led Zeppelin) の登場を促したと謂う視点である。そしてその論拠となるのが、ふたつのバンドがカヴァーした『ユー・シュック・ミー (You Shook Me)』 [オリジナルはマディ・ウォーターズ (Muddy Waters) 1962年発表 アルバム『ユー・シュック・ミー (You Shook Me: The Chess Masters, Vol. 3 : 1958 To 1963)』収録] だ。ジェフ・ベック・グループ (Jeff Beck Group) の『ユー・シュック・ミー (You Shook Me)』と、レッド・ツェッペリン (Led Zeppelin) の『ユー・シュック・ミー (You Shook Me)』 [アルバム『レッド・ツェッペリン I (Led Zeppelin)』 収録 1969年発表] を聴き比べてご覧、と謂う訳なのである。

そこを起点にして語られて始める論を否定する必要はない。至極当然な、真っ当な認識なのではある。

ぢゃあ、『ベック・オラ (Cosa Nostra Beck-Ola)』を名盤と推す側の論拠はどうなのか。
これに関しては、幾つもの視点がそこに臥っている様に、ぼくには思える。

ぼくがこの作品を知ったのは1976年頃だ。
この年、ジェフ・ベック (Jeff Beck) はアルバム『ワイアード (Wired)』を発表している。その日本盤の帯にはこんなキャッチコピーが躍っていた。
もはや、3大ギタリストの呼称は存在しない
ぼくが彼に興味をもったのはそこからだった。

そうして彼の経歴を遡ったその先のひとつに、ジェフ・ベック・グループ (Jeff Beck Group) とその作品『ベック・オラ (Cosa Nostra Beck-Ola)』があったのだ。
そのバンドのメンバーをみるだけで眼が眩む。
ロン・ウッド (Ronnie Wood : b)、ニッキー・ホプキンス (Nicky Hopkins : p, org)、トニー・ニューマン (Tony Newman : dr)、ロッド・スチュワート (Rod Stewart : vo) そしてジェフ・ベック (Jeff Beck : g)。

ロン・ウッド (Ronnie Wood) は当時、脱退したギタリストであるミック・テイラー (Mick Taylor) の後を受けてザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) のメンバーとなり、そのバンドのアルバム『ブラック・アンド・ブルー (Black And Blue)』が発表されたばかりだ。勿論、彼は今でもザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) のメンバーだ。
ニッキー・ホプキンス (Nicky Hopkins) はそのザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) のセッション・プレイヤーとしてその作品にも参加しているし、その後もアルバム『刺青の男 (Tattoo You)』 [1981年発表] まで続く。彼とザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) との関係はアルバム『ビトウィーン・ザ・バトンズ (Between The Buttons)』 [1967年発表] から開始され、その間に発表された幾つもの楽曲の中で、印象的な演奏を幾つも遺している。
トニー・ニューマン (Tony Newman) と謂うドラマーは個人的にはあまりよく知らないのだけれども、その年に公開された映画『トミー (Tommy)』 [ケン・ラッセル (Ken Russell) 監督作品 1975年制作] の中で、楽曲『すてきな旅行 (Amazing Journey)』に参加している [ちなみにニッキー・ホプキンス (Nicky Hopkins) はこのサウンドトラック盤にも参加している]。
ロッド・スチュワート (Rod Stewart) は前年発表のソロ・アルバム『ナイト・オン・ザ・タウン (A Night On The Town)』 [1975年発表] で自身のポジションを確たるモノとしている。誰でもが知っている彼の代表曲『アイム・セクシー (Da Ya Think I'm Sexy?)』 [アルバム『スーパースターはブロンドがお好き (Blondes Have More Fun)』収録 1978年発表] への大飛躍の第1歩を歩み始めたと謂っても良い。つまり、名実ともに彼はスーパースター (Superstar) へと躍進し始めていたのだ。

ついでの様に書き加えておけば、ロン・ウッド (Ronnie Wood) とロッド・スチュワート (Rod Stewart) はジェフ・ベック・グループ (Jeff Beck Group) の後にフェイセズ (Faces) [19691975年存在] に参加し、4枚のアルバムを遺している。

さらについでに書き足しておけば、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) のミック・テイラー (Mick Taylor) 脱退劇の後を受けて行われた通称グレイト・ギタリスト・ハント (Great Guitarists Hunt) と呼ばれる騒動に関しては、ジェフ・ベック (Jeff Beck) も1枚噛んでいる。彼もそのバンドの新メンバーの候補として挙げられ、実際にセッションまで行われたらしい。

と、謂う様に、既に存在しないバンドのメンバー達の動向が、微妙なかたちを持ってシーン全体の動きに連動している様な時代、それが1976年だったのである。

だから、そのバンドのリーダーだったギタリストの原点としてその作品を聴く事以上に、その他のメンバー達のそれとしても、ぼくには聴こえていたのだ。
ロン・ウッド (Ronnie Wood) も、ニッキー・ホプキンス (Nicky Hopkins) も、ロッド・スチュワート (Rod Stewart) も、あの頃の方が相当に格好いい。ぼくにはそう聴こえてしまったのだ。

その当時ですら、陳腐なスタンダード・ナンバーとしか聴こえなかったエルヴィス・プレスリー (Elvis Presley) の楽曲『恋にしびれて (All Shook Up)』 [1957年発表 アルバム『エルヴィス・オン・ステージ Vol.3 (Elvis In Person At The International Hotel, Las Vegas, Nevada)』収録] と楽曲『監獄ロック (Jailhouse Rock)』 [1957年発表 アルバム『監獄ロック (Jailhouse Rock)』収録] を、彼等の演奏による楽曲『オール・シュック・アップ (All Shook Up)』と楽曲『監獄ロック (Jailhouse Rock)』を聴き比べると、断然に後者の方が凄まじい。
ロッド・スチュワート (Rod Stewart) に於いて考えてみると、おそらく彼の中では現在の『ザ・グレイト・アメリカン・ソングブック (The Great American Songbook)』シリーズと意識に於いてはそう差はないのだろう。だけれども、それとは一線も二線もひく事が可能な程の隔絶感がそこにある。それを可能としたのは、おそらく、他のメンバーの意識と力量なのだろう。

images
本作品のジャケットデザインに起用されているのはルネ・マグリット (Rene Magritte) による『リスニング・ルーム (La Chambre d'ecoute (The Listening Room))』 [1958年の作品、1952年の同名作品ではなくて]。
この作品への起用の理由は全然に解らないのだけれども、決して熟していない点、にも関わらずにとてつもなく巨大な点、そしてそれ故に、後代へと確実な種子を遺せる可能性への疑義、と謂う点を本作品にみいだせれば、決して、単純に奇を衒った起用ではないのだなぁと、今のぼくは得心している。

次回は「」。

附記:
アルバム名にある「コーザ・ノストラ (La Cosa Nostra)」とはシシリアン・マフィア (Sicilian Mafia) の意。ぼくはこの語句を映画『バラキ (The Valachi Papers)』 [テレンス・ヤング (Terence Young)監督作品 1972年制作] で、と謂うよりもその映画を特集した少年漫画誌のグラビア・ページで知ったのだ。映画『ゴッドファーザー (The Godfather)』 [フランシス・フォード・コッポラ (Francis Ford Coppola) 監督作品 1972年制作] の成功以降、シシリアン・マフィア (Sicilian Mafia) の世界を描く創作物は幾つも登場し、映画『バラキ (The Valachi Papers)』はその独特の世界をつぶさに映画の中で再現していたのだ。
当初、アルバムにはその語句単独で起用される筈が、流石にレコード会社的には躊躇われたらしい。その結果「ベック・オラ (Beck-Ola)」と謂う語句が併記され、しかもそちらが単独の作品名である様に扱われている。ちなみに「ベック・オラ (Beck-Ola)」とは当時、メンバー間でイタリア語もどきの呼称が流行っていてそれに準拠したらしい。
最も、バンドの中は内紛続きでバンドは本作品発表直後の全米ツアー中に空中分解する。その有様を指して「コーザ・ノストラ (La Cosa Nostra)」と呼ぶのであるのならば、あまりに皮肉めいた名称だ。
関連記事

theme : ふと感じること - genre :

i know it and take it | comments : 0 | trackbacks : 0 | pagetop

<<previous entry | <home> | next entry>>

comments for this entry

only can see the webmaster :

tackbacks for this entry

trackback url

https://tai4oyo.blog.fc2.com/tb.php/2355-13dbe991

for fc2 blog users

trackback url for fc2 blog users is here