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2008.08.31.15.55

これもまた悪い夢の続き 15.


for The Movie
"All You Need Is Cash"
by
The Rutles.
You can hear the soundtracks
"The Rutles"
for the movie.


こんな夢を観た。

「ようこそ、茶番劇へ」
ステージに立つその男はそう言った。
「何年も前に解散した僕たちは、今、こうして再び、共にステージにいます。さて、皆さん、僕たちがここにいる理由は既にご存知の事だと想います」
彼の発言が終わるや否や、演奏が始った。

そのバンドが解散して既に十数年が経過していた。このバンドでの成功を足がかりに新たな音楽的な成功を築くものもいれば、つまらない犯罪に手を出して徒に無駄な人生を選んでしまったものもいた。
十数名もの男女の、十数年もの時間が過ぎれば、そんなものなのかもしれない。

一枚のスタジオ・レコーディング・アルバムだけが、彼らがかつて存在していた証だった。あとは、彼らの音楽を直に体験した人々の、数限りない証言。彼らと彼らの音楽が真価を発揮するのは、ライヴの場においてだった。
だから、噂が噂を呼び、伝説が伝説を産み出すが、その真偽の程は誰も解らない。彼らの音楽を体験したものとそれを信ずるものだけが、それらを熱く語り続けていた。

そんな彼らが再結成をするという。全盛期のメンバーが集い、アルバムをレコーディングし、一晩限りのライヴを行う。
彼らの信奉者は沸き立つが、業界的には、冷ややかだった。

「まぁ、カネだろうね」
内部事情に詳しい彼は、そう言い放っていた。
「みんな、年をとった。経済的に潤っているのは数名だ。音楽だけでは喰ってけないし、だからと言って、今更、他の仕事は無理だろう」

そんな事は皆,百も承知だった。誰が言い出したのか、誰が仕込んだのか、その経緯は不明だが、音楽的なものよりも総てが経済が先行して、ありとあらゆる物事が決定され、準備され、実行されていった。

「ようこそ、茶番劇へ」
つまり、そんな経緯を経ての、バンド・リーダーによる、ステージ上での発言だったのだ。

僕と彼女は、アリーナ席後方で観ていた。音楽は申し分のないものだった。
かつて発表された彼らの唯一のアルバムから、曲順を違えずにそのまま演奏していた。
音楽的な事、なかでも、メンバー間の技術的な差異は当初危惧されていたが、それは杞憂だった。長い音楽活動で技術や表現力に変化が観られるもの、音楽活動に空白があるもの、時の経過を経て、メンバーそれぞれに得たものも喪ったものも、或る筈なのだ。特に、ヴォーカリストの音域の変化は心配されていた。しかし、それら総て、一切が杞憂だったのだ。

そのアルバムでのラスト・ナンバーの演奏が終り、再びリーダーがマイクを握った。
「...ありがとう。ここで少し休憩します...」

席を離れ、ドリンク・バーへと向かおうとする僕たちの前を、ある男が遮った。
「どうだい。最高だろう。今晩だけなんてもったいないぜ」
彼の頬は紅潮していたが、それは音楽だけのものによるのではないだろう。酒の匂いがする。
「僕は全盛期をしらないからな。彼らのコアなファンはどうなんだろう?」
面倒くさい方向に話が転がってしまうと解っていても、つい、嫌みをいってしまう、それが僕の悪い癖だ。
「彼らだって大満足さ。奴らの追っかけだった俺がこんなに昂奮しているんだぜ」
「そうか、君も今回の仕掛人のひとりだったんだ。メンバーもその気になってくれれればいいよね」
彼はもう少し、熱弁を振るいたがった様だったが、僕たちが話している途中、席を外していた彼女がグラスを持ってきてくれた。
「すまん。今日は連れがいるんだ。また,電話するよ」
と、言い捨てて僕たちは逃げてしまった。

「どうだった?」
バーから戻ってきた彼女に問いかける。但し、僕が知りたいのは彼女の感想ではなくて、席からロヴィーを経てバーとの往復の間に感じた、観客達の反応だ。
「へん」
「へんって?」
「みんな違う。どうしたらいいのか、解らないみたい。やたらと昂奮しているヒトもいれば、怯えているヒトもいるし...」
「怯えている?」
「そう。あれは怯えているとしか言えない。それもひとりふたりぢゃあないの」
もう少し、彼女の発言の真実をつかみたかったが、既に休憩時間終了のアナウンスが流れ始めている。僕たちも、席へと向かう。

ステージ中央にリーダーが歩んだ。
「...茶番劇はまだまだ続きます。...これから今日の為に用意した新曲を演ります」


from The Movie
"Let It Be"
by
The Beatles.
You can hear the soundtracks
"Let It Be"
for the movie.

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