2017.05.16.08.42
その作品を観る度にいつも、最期に遺るのは、雪ん子ことゆき (Yuki aka Yukinko) [演:富永幸子 (Sachiko Tominaga)] の悲痛な叫びだけなのだ。
だから、充足感や満足感にはほど遠く、観た気もしないし、さらに謂えば、あまり観たいとは思わない。もしかしたら、その作品の全39話のうち、最も嫌いな作品なのかもしれない。
TV番組『ウルトラマン
(Ultraman)』 [1966~1967年 TBS系列放映] の第30話『まぼろしの雪山
(Phantom Of The Snow Mountain)』 [脚本:金城哲夫 監督:樋口祐三 特技監督:高野宏一] の事である。
雪の季節、季節としての冬を意識させる作品は、同じく第25話『怪彗星ツイフォン
(Typhon, The Strange Comet)』 [脚本:若槻文三 監督:飯島敏宏 特技監督:高野宏一] があるが、この作品は怪獣達が登場して遭遇し、死闘を繰り広げる場所が日本アルプス (Japanese Alps) である、と謂うだけの事だ。敢えて謂えば、都合5匹もの怪獣が出没する第8話『怪獣無法地帯
(The Wild Monster Zone)』 [脚本:金城哲夫、上原正三 監督:円谷一 特技監督:高野宏一] の雪山版として機能しているのに過ぎない。放映日を観れば、第8話が1966年9月4日の第2学期が始まったばかりの時季で、第25話が翌1967年元日だ。この作品群の主な視聴者層を考慮すれば、その日付に幾匹もの怪獣が登場する物語が放映される理由はなんとなく解る。
では、第30話『まぼろしの雪山
(Phantom Of The Snow Mountain)』 [脚本:金城哲夫 監督:樋口祐三 特技監督:高野宏一] はなんなのか。その放映日は1967年2月5日、真冬の最中で、その時期にその物語が放映されるのには、相応しい。しかし、同じ事の繰り返しになるが、第25話『怪彗星ツイフォン
(Typhon, The Strange Comet)』と比較して論ずる意義は、あまりない。
比べるのは寧ろ、同じく金城哲夫 (Tetsuo Kinjo) が脚本を手がけた第20話『恐怖のルート87
(Terror On Route 87)』 [脚本:金城哲夫 監督:樋口祐三 特技監督:高野宏一] なのである。
物語の実質的な主役に、少年もしくは少女が登場する。そしてその少年もしくは少女は、物語に登場する怪獣と特別な関係にある。怪獣が登場する事によって、科学特捜隊 (Science Special Search Party) やウルトラマン (Ultraman) の活躍が期待されるが、それは実質的な解決足り得ない。少年もしくは少女の退場によって、怪獣も消失するが、それが物語の結末とはなり得ない。本来、解決すべき問題、怪獣が顕現した理由や、怪獣を引導する少年もしくは少女の誕生を促した原因が、一切、手付かずな侭に放置されている。物語はそれを指摘する事だけを任としていて、そのまま幕を閉じるのだ。
『ウルトラマン
(Ultraman)』と謂う全39話の連作をSFと呼ぶのならば、少なくともこの2作のSFは、サイエンス・フィクション (Science Fiction)ではなくてサイエンス・ファンタジー (Science Fantasy) と解釈すべきなのだろう。
さらに、第20話と第30話を比較すれば、それらに内在する細部のどれもが対照的なのだ。
第20話が少年であるのに対し、第30話は少女だ。それだけではない。
第20話に登場する怪獣、高原竜ヒドラ (Plateau Dragon Hydra) の生みの親がムトウアキラ (Akira Muto) [演:榊原秀春 (Hideharu Sakakibara)] である [彼が"生前に"描いた怪獣に高原竜ヒドラ (Plateau Dragon Hydra) はそっくりなのだ] のに対し、第30話に登場する怪獣、伝説怪獣ウー (Legend Monster Woo) は、雪ん子ことゆき (Yuki aka Yukinko) の母親が変異した姿であるらしい。
しかも、科学特捜隊 (Science Special Search Party) やウルトラマン (Ultraman) が活躍する世界観を仮に"現実"として認定した上に、その"現実"に突如として、ムトウアキラ (Akira Muto) や高原竜ヒドラ (Plateau Dragon Hydra) が外部から侵犯した物語を第20話と理解出来るのであるのならば、第30話は逆だ。雪ん子ことゆき (Yuki aka Yukinko) や伝説怪獣ウー (Legend Monster Woo) が徘徊する世界の中に"現実"が投棄されてしまった様に思えるのだ。まるで小説『戦国自衛隊
(G.I. Samurai)』 [作:半村良 (Ryo Hanmura) 1971年発表] の様に、科学特捜隊 (Science Special Search Party) やウルトラマン (Ultraman)が、過去の日本の、そこに根深く内在する問題に遭遇してしまった様な印象さえ抱くのだ。
第30話が描き出そうとしている問題を、その作品の脚本家である金城哲夫 (Tetsuo Kinjo) の出自や体験に照らし合わせて語るのは、そう難しい問題ではない。
でもそれはまるで、TV番組『ウルトラセブン
(Ultra Seven)』 [1967~1968年 TBS系列放映] の第25話『零下140度の対決
(Showdown At 140 Degrees Below Zero)』 脚本:金城哲夫 監督:満田かずほ 特技監督:高野宏一] を騙る様なモノなのだ。その作品で描かれる雪の恐怖、冬の恐怖をそのままウルトラセブン (Ultra Seven) の弱点と比して、沖縄県 (Okinawa Prefecture) 出身の脚本家、金城哲夫 (Tetsuo Kinjo) ならではの発想とそこから誕生せしめた作話術と看做す様なモノなのである。

と、謂う訳で、いまのぼくは、TV番組『怪奇大作戦 (Operation : Mystery!)』 [1968~1969年 TBS系列放映] の最終話『ゆきおんな
(Yukionna)』 [脚本:藤川桂介 監督:飯島敏宏 特技監督:佐川和夫] の事を考えている。
もしも、伝説怪獣ウー (Legend Monster Woo) が白毛の姿ではなくて、巨大な母親のまぼろしとして登場したら、どうなのだろうか、と [上掲画像はこちらから]。
次回は「よ」。
だから、充足感や満足感にはほど遠く、観た気もしないし、さらに謂えば、あまり観たいとは思わない。もしかしたら、その作品の全39話のうち、最も嫌いな作品なのかもしれない。
TV番組『ウルトラマン
雪の季節、季節としての冬を意識させる作品は、同じく第25話『怪彗星ツイフォン
では、第30話『まぼろしの雪山
比べるのは寧ろ、同じく金城哲夫 (Tetsuo Kinjo) が脚本を手がけた第20話『恐怖のルート87
物語の実質的な主役に、少年もしくは少女が登場する。そしてその少年もしくは少女は、物語に登場する怪獣と特別な関係にある。怪獣が登場する事によって、科学特捜隊 (Science Special Search Party) やウルトラマン (Ultraman) の活躍が期待されるが、それは実質的な解決足り得ない。少年もしくは少女の退場によって、怪獣も消失するが、それが物語の結末とはなり得ない。本来、解決すべき問題、怪獣が顕現した理由や、怪獣を引導する少年もしくは少女の誕生を促した原因が、一切、手付かずな侭に放置されている。物語はそれを指摘する事だけを任としていて、そのまま幕を閉じるのだ。
『ウルトラマン
さらに、第20話と第30話を比較すれば、それらに内在する細部のどれもが対照的なのだ。
第20話が少年であるのに対し、第30話は少女だ。それだけではない。
第20話に登場する怪獣、高原竜ヒドラ (Plateau Dragon Hydra) の生みの親がムトウアキラ (Akira Muto) [演:榊原秀春 (Hideharu Sakakibara)] である [彼が"生前に"描いた怪獣に高原竜ヒドラ (Plateau Dragon Hydra) はそっくりなのだ] のに対し、第30話に登場する怪獣、伝説怪獣ウー (Legend Monster Woo) は、雪ん子ことゆき (Yuki aka Yukinko) の母親が変異した姿であるらしい。
しかも、科学特捜隊 (Science Special Search Party) やウルトラマン (Ultraman) が活躍する世界観を仮に"現実"として認定した上に、その"現実"に突如として、ムトウアキラ (Akira Muto) や高原竜ヒドラ (Plateau Dragon Hydra) が外部から侵犯した物語を第20話と理解出来るのであるのならば、第30話は逆だ。雪ん子ことゆき (Yuki aka Yukinko) や伝説怪獣ウー (Legend Monster Woo) が徘徊する世界の中に"現実"が投棄されてしまった様に思えるのだ。まるで小説『戦国自衛隊
第30話が描き出そうとしている問題を、その作品の脚本家である金城哲夫 (Tetsuo Kinjo) の出自や体験に照らし合わせて語るのは、そう難しい問題ではない。
でもそれはまるで、TV番組『ウルトラセブン

と、謂う訳で、いまのぼくは、TV番組『怪奇大作戦 (Operation : Mystery!)』 [1968~1969年 TBS系列放映] の最終話『ゆきおんな
もしも、伝説怪獣ウー (Legend Monster Woo) が白毛の姿ではなくて、巨大な母親のまぼろしとして登場したら、どうなのだろうか、と [上掲画像はこちらから]。
次回は「よ」。
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