2017.01.15.09.56
"ENCHANTED CARESS" by ILLUSION

教科書的な物謂いをすれば、ヤードバーズ (The Yardbirds) とルネッサンス (Renaissance) のミッシング・リンク (Transitional Fossil) を繋ぐバンドの、しかもそのまぼろしの第3作と謂う事になる。
本来ならば、そのふたつのバンドを丁寧に紹介した上で、このバンドのこの作品に触れるべきなのだろうが、申し訳ない事にぼくは、ルネッサンス (Renaissance) と謂うバンドに関しては門外漢なのだった。
そんなぼくの視点からみると、キース・レルフ (Keith Relf) と謂うヴォーカリストの不運にばかりに気取られてしまう。
ヤードバーズ (The Yardbirds) は、所謂3大ギタリスト (The Guitar Gods Top Three)、エリック・クラプトン (Eric Clapton)、ジェフ・ベック (Jeff Beck) そしてジミー・ペイジ (Jimmy Page) を輩出したバンドで、その音楽的な基盤としたものは当時の殆どのバンドがそうである様に、黒人音楽 (Black Music) だ。
では、輩出されたギタリスト (Guitarist) がバンド在籍時から常に注視されていたのならば、その遺りのメンバーへの評価はどうなのかと謂うと、決して高いモノではない。
エリック・クラプトン (Eric Clapton) やピーター・グリーン (Peter Green) やミック・テイラー (Mick Taylor) が在籍したジョン・メイオール・アンド・ザ・ブルースブレイカーズ (John Mayall And The Bluesbreakers) や、ピーター・グリーン (Peter Green) やジェレミー・スペンサー (Jeremy Spencer) やボブ・ウェルチ (Bob Welch) がそこから旅立ったフリートウッド・マック (Fleetwood Mac) とは、そこが違うのだ。
勿論、ヤードバーズ (The Yardbirds) はブリティッシュ・インヴェイジョン (British Invasion) [1963~1967年] と謂う熱波によって英国から米国へと大きくはばたったバンドのひとつだから、所謂アイドル的な人気がなかった訳ではない。でも、それをもって彼等を評価するには逆に、3大ギタリスト (The Guitar Gods Top Three) の存在が大きすぎるのだ。
そんなバンドからルネッサンス (Renaissance) と謂うバンドが登場するのには、随分とおおきな飛躍が必要に思える。
ある意味で正反対な方向性とも謂うべきモノだ。
一方が、黒人音楽 (Black Music) のマニアックな指向とその [当時にあっての] 現代的な解釈とさらなる発展を試みたバンドと看做す事が出来るのであるのならば、もう一方は、白人の音楽ないしは欧州の音楽の現代的な展開を志していると看做す事も出来る。
すなわち、それぞれの根底にあるモノが違うのだ。
ただ、ヤードバーズ (The Yardbirds) 時代の楽曲に於いても、『ターン・イントゥ・アース (Turn Into Earth)』や『エヴァー・シンス・ザ・ワールド・ビギャン (Ever Since The World Began)』 [共にアルバム『ロジャー・ジ・エンジニア (Roger The Engineer)
例えばもっと知名度のある楽曲で謂うのならば、彼らのシングル・ナンバー『スティル・アイム・サッド (Still I'm Sad)』 [1965年発表 アルバム『ハヴィング・ア・レイヴ・アップ (Having a Rave Up With The Yardbirds)』 等に収録 ジェフ・ベック (Jeff Beck) 在籍時代] の、レインボー (Rainbow) のカヴァー・ヴァージョンを聴くと、そこに潜んでいる欧州的な色彩をその楽曲に発見出来る。
[第1作『銀嶺の覇者 (Ritchie Blackmore's Rainbow)
だから、ぼく達の認識以上に、ヤードバーズ (The Yardbirds) 〜ルネッサンス (Renaissance) は地続きなのだ。
そして、その全く異なると思われるふたつのバンドの結節点にいるとされているのがキース・レルフ (Keith Relf) と謂う人物なのである。
但し、キース・レルフ (Keith Relf) 自身は、ルネッサンス (Renaissance) の初期2作品、『ルネッサンス (Renaissance)』 [1969年発表] と『イリュージョン (Illusion)
イリュージョン (Illusion) に関しては、ヤードバーズ (The Yardbirds) の元ドラマー、ジム・マッカーティー (Jim McCarty) の方が大きく関与し、寧ろ彼のバンドと看做すべきなのかもしれない。彼はヴォーカルやギターを担当しているのだ。
[ジム・マッカーティー (Jim McCarty) は、ヤードバーズ (The Yardbirds) 解散後はキース・レルフ (Keith Relf) と行動を共にしていて、ルネッサンス (Renaissance) 初期2作品に参加している。]
そしてイリュージョン (Illusion) と謂うバンドは、ルネッサンス (Renaissance) 以上に、ルーツ・ミュージック (Roots Music) 〜トラッド・フォーク (Traditional Folk Song) への回帰を強くアピールしている様に思える。
ちなみに、『スティル・アイム・サッド (Still I'm Sad)』の作者はポール・サミュエル=スミス (Paul Samwell-Smith) とジム・マッカーティー (Jim McCarty) であって、ジム・マッカーティー (Jim McCarty) の本来的な意味での音楽的資質の在処も見え隠れしている。


本作品は本来、1979年に制作された彼等の第3作。それが何らかの理由で頓挫し、1990年になって初めて世に顕れた。ぼくの手許にあるのはそれである。上掲画像左が当初予定されていたジャケットであるらしく、現在では上掲右画像のジャケットに差し替えられて発売されている。
バンドはキース・レルフ (Keith Relf) の妹、ジェーン・レルフ (Jane Relf) をヴォーカリストに据えて1977年に結成され、第1作『アウト・オヴ・ザ・ミスト (Out Of The Mist)
キース・レルフ (Keith Relf) は1976年に亡くなっており、本作品収録の楽曲『オール・ザ・フォーリング・エンジェルス (All The Falling Angels)』が彼が遺作であると謂う。
ものづくし(click in the world!)171. :"ENCHANTED CARESS" by ILLUSION

"ENCHANTED CARESS
PREVIOUSLY UNRELEASED RECORDINGS
FEATURING YARDBIRDS / RENAISSANCE MEMBERS JIM McCARTY,
KEITH RELF, JANE RELF, LOUI CENNAMO & COMPANY
1. Nights in Paris
2. Walking Space
3. The Man Who Loved the Trees
4. Getting Into Love Again
5. As Long As We're Together
6. Slaughter on Tenth Avenue
7. Living Above Your Head
8. Crossed lines
9. You Are The One
10. All The Falling Angels
All songs written and produced by Jim McCarty except #6 written by R Rodgers and #10 written and produced by Keith Relf. Keith Relf appears #10 only.
All songs except #6 Copyright Control 1989
Engineered by Joe Gillingham.
Remastered by Stewart Medland / Steve Hillman / Marty Flynn.
Executive Producers J McCarty, R Mackay.
Art Direction by Steve Hooker
Typesetting and Paste-up by Studio Reprographics, Southend
P + C Promised Land Records 1990
上記クレジットだけでは不足なので、こちらの頁を参照して、参加メンバーのクレジットを捕捉しておく。
Acoustic Guitar, Vocals, Percussion - Jim McCarty
Bass - Louis Cennamo
Drums - Eddie McNeil
Guitar - John Knightsbridge
Keyboards - John Hawken
Vocals - Jane Relf (tracks : 1 to 9)
Vocals - Keith Relf (track 10)
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