2016.07.31.11.37
こんな夢をみた。

the poster for the movie "Zootopia
" directed by Byron Howard and Rich Moore
月に1度の企画会議である。半年程後に発売する商品の、全容や予算、販促案や売上目標を、各部部長が社長を含めた取締役達にプレゼンテーションをする。
実際に、企画を発案しそれを進行する部下、つまり実際に現場に携わる者達の、同席は許されない。
だから、会議前日は発案者が必死になってその案を、自身の上司に徹底的に教え込む。なぜならば、そこで決定された事項は余程の事がない限り、覆らないからだ。
予算も評価も総ては、部長のプレゼンテーション能力に委ねるしかないのである。
実際に陣頭に立って企画を推し進める立案者からみれば、まどろっこしい、歯がゆいシステムではある。しかし、部長が矢面に立つことによって、現場の社員が護られている部分がない訳ではない。
一長一短がそこにある。
しかしそれは、それぞれがそれぞれを理解できていない。
現場は常に焦れったく、部長は常に面倒くさい、そう思っている。
現場から生え抜きのものならば過去の体験から、それぞれの立場と感情を解りそうなものなのだが、すっかりそれを忘れている。それに第一、この会社には天下りのものばかりで、現場を知らないものが多いのだ。
つまり、それだからこそ、部長の部長による部長のための企画会議が毎月、開催されるのだ。
社の上層部がこの会議に担わせているものは、各部部長の部下への、人心の把握以外の何物でもない。
会議室に三々五々、部長達が入室し始めた時分の事だ。
自席についた上司と、プレゼン資料の最終確認をしている際に、彼が突然、こんな事をつぶやく。
「1部とバッテイングしているようだ」
「ほらみろ、やつの手許にあるポスターを。うちのと同じではないか」
くびを延ばして、1部部長の肩越しから覗き込めば確かに、うちの用意した洋画作品とおなじ狐のアニメ・キャラがいる。
「そうみたいですね。でも部長、1部は音楽作品が専門ですよ。サントラじゃあないのですか」
「そのサントラも含めて関連商品一切、販売権を入手している。昨日そうブリーフィングがあったではないか」
「(つまらないことは憶えているんだな)そういえばそうですね。3課の新人ですか。この企画は」
「だから、どうすればいいんだ」
会議の時間が差し迫って焦るばかりの部長だ。怒号じみた声になっている。こんな心理状況では、碌な事が起きない。
「そうですね。通例、プレゼンは先方が先でしょう。それを聞いた上で、判断するしかないのではないですか? 仮にうちが先行できれば何の問題もない事だし」
そう謂ってぼくは、考えられる限りの対応策を伝授する。
相当、腹芸が必要なものばかりだが、それを実際に行うのは彼だ。
上手にその場を誘導して事態を回収してもらわなければならない。
この場は、1部よりも優位な立場に立てればいい。
ただ奴が最も気にしているのは面子だ。そればかりを優先されては元も子もない。
時間だ。ぼくは退席しなければならない。
そうして廊下を歩きながら考えているのは、この件でとっちめるべき相手数人の事だった。
社内の、内部にも外部にも、しかも何人もいる。

映画『社葬
(Shaso : A Company-sponsored Funeral)』[舛田利雄 (Toshio Masuda) 監督作品 ポスター]

the poster for the movie "Zootopia
月に1度の企画会議である。半年程後に発売する商品の、全容や予算、販促案や売上目標を、各部部長が社長を含めた取締役達にプレゼンテーションをする。
実際に、企画を発案しそれを進行する部下、つまり実際に現場に携わる者達の、同席は許されない。
だから、会議前日は発案者が必死になってその案を、自身の上司に徹底的に教え込む。なぜならば、そこで決定された事項は余程の事がない限り、覆らないからだ。
予算も評価も総ては、部長のプレゼンテーション能力に委ねるしかないのである。
実際に陣頭に立って企画を推し進める立案者からみれば、まどろっこしい、歯がゆいシステムではある。しかし、部長が矢面に立つことによって、現場の社員が護られている部分がない訳ではない。
一長一短がそこにある。
しかしそれは、それぞれがそれぞれを理解できていない。
現場は常に焦れったく、部長は常に面倒くさい、そう思っている。
現場から生え抜きのものならば過去の体験から、それぞれの立場と感情を解りそうなものなのだが、すっかりそれを忘れている。それに第一、この会社には天下りのものばかりで、現場を知らないものが多いのだ。
つまり、それだからこそ、部長の部長による部長のための企画会議が毎月、開催されるのだ。
社の上層部がこの会議に担わせているものは、各部部長の部下への、人心の把握以外の何物でもない。
会議室に三々五々、部長達が入室し始めた時分の事だ。
自席についた上司と、プレゼン資料の最終確認をしている際に、彼が突然、こんな事をつぶやく。
「1部とバッテイングしているようだ」
「ほらみろ、やつの手許にあるポスターを。うちのと同じではないか」
くびを延ばして、1部部長の肩越しから覗き込めば確かに、うちの用意した洋画作品とおなじ狐のアニメ・キャラがいる。
「そうみたいですね。でも部長、1部は音楽作品が専門ですよ。サントラじゃあないのですか」
「そのサントラも含めて関連商品一切、販売権を入手している。昨日そうブリーフィングがあったではないか」
「(つまらないことは憶えているんだな)そういえばそうですね。3課の新人ですか。この企画は」
「だから、どうすればいいんだ」
会議の時間が差し迫って焦るばかりの部長だ。怒号じみた声になっている。こんな心理状況では、碌な事が起きない。
「そうですね。通例、プレゼンは先方が先でしょう。それを聞いた上で、判断するしかないのではないですか? 仮にうちが先行できれば何の問題もない事だし」
そう謂ってぼくは、考えられる限りの対応策を伝授する。
相当、腹芸が必要なものばかりだが、それを実際に行うのは彼だ。
上手にその場を誘導して事態を回収してもらわなければならない。
この場は、1部よりも優位な立場に立てればいい。
ただ奴が最も気にしているのは面子だ。そればかりを優先されては元も子もない。
時間だ。ぼくは退席しなければならない。
そうして廊下を歩きながら考えているのは、この件でとっちめるべき相手数人の事だった。
社内の、内部にも外部にも、しかも何人もいる。

映画『社葬
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