2016.07.19.13.11
キッス (Kiss) の通算第5作『地獄の軍団 (Destroyer)
』 [1976年発表] は、彼等の代表曲が多く収録されている一方で、およそ彼等らしくない作品ではある。
そして、そんな鬼っ子の様な作品が完成した一因は、前作『地獄の狂獣 キッス・ライヴ (ALIVE!)
』 [1975年発表] での全米に及ぶ大成功と、それを踏まえて起用した本作のプロデューサー、ボブ・エズリン (Bob Ezrin) にある。
ここで取り上げる彼等の楽曲『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』 [作:ポール・スタンレー (Paul Stanley)、ボブ・エズリン (Bob Ezrin)、キム・フォウリー (Kim Fowley] は本作品の最終楽曲。ポール・スタンレー (Paul Stanley) が歌唱している。

ちなみにこの楽曲『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』を、4人編成時代のニルヴァーナ (Nirvana) [と謂う事は彼等の極めて初期の時代だ] が、トリビュート・アルバム『ハード・トゥ・ビリーヴ (Hard To Believe : A Kiss Covers Compilation)』 [1990年発表] においてカヴァーしている。ジェイソン・エヴァーマン (Jason Everman) が参加している4人編成時代のニルヴァーナ (Nirvana) の音源は、これとボックス・セット『ウィズ・ザ・ライツ・アウト (With The Lights Out)
』 [2004年発表] 収録の『ダイヴ (Dive)』 [1988年収録 作:チャド・チャニング (Chad Channing)、カート・コバーン (Kurt Cobain)、クリス・ノヴォセリック (Chris Novoselic)] しかないらしい。
閑話休題 (Get Back On Topic)。
尤も現在ではその後にインストゥルメンタル・ナンバー『ロック・アンド・ロール・パーティー (Rock And Roll Party)』 [作:ジーン・シモンズ (Gene Simmons)、ポール・スタンレー (Paul Stanley)、ボブ・エズリン (Bob Ezrin)] が続くのだが、作品発表当時は、その部分は『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』の最終部として看做されていた。
1分余りのその楽曲の実態は、本作収録曲である『地獄の遺産 (Great Expectations)』 [作:ジーン・シモンズ (Gene Simmons)、ボブ・エズリン (Bob Ezrin)] の印象的な女性コーラスと、ライブ会場でのポール・スタンレー (Paul Stanley) のMCをコラージュしたものだ。彼の発話の全体像は把握出来ないが少なくとも、楽曲名である「ロック・アンド・ロール・パーティー (Rock And Roll Party)」と謂う語句は聴き取る事は出来るだろう。
何故、そんなインストゥルメンタル・ナンバーがアルバムの最終曲として位置付けられているのか、と謂うのはそのまま『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』と謂う楽曲の、本作品に担わされた位置付けを考えるのに等しい。
『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』の前曲は『ベス (Beth)』 [作:ピーター・クリス (Peter Criss)、スタン・ペンリッジ (Stan Penridge)、ボブ・エズリン (Bob Ezrin)]、オーケストラ (Orchestra) 演奏によるピーター・クリス (Peter Criss) が歌唱するナンバーだ。本作品はおろかキッス (Kiss) 史上に於いても、およそらしからぬ楽曲である一方で、ファン達に愛されてやまない楽曲だ。ある意味で、本作品の一面を象徴する様な楽曲である。
普通のアーティストならば『ベス (Beth)』の様な楽曲で幕を引くかもしれない。
だがそれでは、これまで培ってきたキッス (Kiss) と謂うバンドの一切を否定する事にもなりえない。
と、考える事が出来るのであるのならば、『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』と謂う楽曲は『ベス (Beth)』の余韻を引き受けて、いや違う、『ベス (Beth)』の抒情を断ち切って、作品の最終楽曲としての役割を任せる事が出来るかもしれない。
と、謂う様な作品構成は、決して珍しい話ではない。少なくとも1970年代 (1970s) 前半に活躍したロック・バンドの作品にはよくみられた構成だ。
だが『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』と謂う楽曲が、本作品で担っている役割は、もうひとつある。
この曲の主題は、バンド・マンとその恋人、もしくは恋人に仮託されたファンとの関係性、バンド・マンから恋人乃至ファンへの問いかけとなっている。
そして、この主題は『地獄の遺産 (Great Expectations)』とも共通するモノで、しかもそこでの主張は、『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』とは相反するモノなのである。
ジーン・シモンズ (Gene Simmons) の歌唱するその楽曲も『ベス (Beth)』同様、音楽的には彼等らしくない作品だ。アコースティックな風合い、背景には女性コーラスも響く。作品発表時、グラム・ロック (Glam Rock) 時代のデヴィッド・ボウイ (David Bowie) を引き合いに出して語られていた様な記憶がある。
『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』と謂う楽曲が、キッス (Kiss) 本来の持ち味を最大限に発揮している一方で、歌詞に於いては、恋人乃至ファンを突き放した、極端な表現をすれば、批判非難をしているとも解釈できる。
いやそうではない。
あれは愛情の裏返しと謂うものだ。
そう解釈出来てしまうのは、その曲に続く『ロック・アンド・ロール・パーティー (Rock And Roll Party)』に於いて、『地獄の遺産 (Great Expectations)』での女声コーラスが再演されるからだ。
『地獄の遺産 (Great Expectations)』でジーン・シモンズ (Gene Simmons) によって発露された感情が、ポール・スタンレー (Paul Stanley) によって唄われる『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』での激情とが、虚実相伴って、ライブ会場での彼の叫び「ロック・アンド・ロール・パーティー (Rock And Roll Party)」へと収斂していくからだ。
つまりそれがそのまま、キッス (Kiss) から恋人乃至ファンへのメッセージともなる。
しかも、この楽曲が収録された作品『地獄の軍団 (Destroyer)
』は、大成功を遂げたライヴ・アルバム『地獄の狂獣 キッス・ライヴ (ALIVE!)
』の次に発売された作品なのだ。
そして、そう仕組む事が出来たのは、とにもかくにも、プロデューサーであるボブ・エズリン (Bob Ezrin) の賜物 (Result Of His Efforts) なのである。
次回は「み」。
そして、そんな鬼っ子の様な作品が完成した一因は、前作『地獄の狂獣 キッス・ライヴ (ALIVE!)
ここで取り上げる彼等の楽曲『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』 [作:ポール・スタンレー (Paul Stanley)、ボブ・エズリン (Bob Ezrin)、キム・フォウリー (Kim Fowley] は本作品の最終楽曲。ポール・スタンレー (Paul Stanley) が歌唱している。

ちなみにこの楽曲『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』を、4人編成時代のニルヴァーナ (Nirvana) [と謂う事は彼等の極めて初期の時代だ] が、トリビュート・アルバム『ハード・トゥ・ビリーヴ (Hard To Believe : A Kiss Covers Compilation)』 [1990年発表] においてカヴァーしている。ジェイソン・エヴァーマン (Jason Everman) が参加している4人編成時代のニルヴァーナ (Nirvana) の音源は、これとボックス・セット『ウィズ・ザ・ライツ・アウト (With The Lights Out)
閑話休題 (Get Back On Topic)。
尤も現在ではその後にインストゥルメンタル・ナンバー『ロック・アンド・ロール・パーティー (Rock And Roll Party)』 [作:ジーン・シモンズ (Gene Simmons)、ポール・スタンレー (Paul Stanley)、ボブ・エズリン (Bob Ezrin)] が続くのだが、作品発表当時は、その部分は『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』の最終部として看做されていた。
1分余りのその楽曲の実態は、本作収録曲である『地獄の遺産 (Great Expectations)』 [作:ジーン・シモンズ (Gene Simmons)、ボブ・エズリン (Bob Ezrin)] の印象的な女性コーラスと、ライブ会場でのポール・スタンレー (Paul Stanley) のMCをコラージュしたものだ。彼の発話の全体像は把握出来ないが少なくとも、楽曲名である「ロック・アンド・ロール・パーティー (Rock And Roll Party)」と謂う語句は聴き取る事は出来るだろう。
何故、そんなインストゥルメンタル・ナンバーがアルバムの最終曲として位置付けられているのか、と謂うのはそのまま『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』と謂う楽曲の、本作品に担わされた位置付けを考えるのに等しい。
『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』の前曲は『ベス (Beth)』 [作:ピーター・クリス (Peter Criss)、スタン・ペンリッジ (Stan Penridge)、ボブ・エズリン (Bob Ezrin)]、オーケストラ (Orchestra) 演奏によるピーター・クリス (Peter Criss) が歌唱するナンバーだ。本作品はおろかキッス (Kiss) 史上に於いても、およそらしからぬ楽曲である一方で、ファン達に愛されてやまない楽曲だ。ある意味で、本作品の一面を象徴する様な楽曲である。
普通のアーティストならば『ベス (Beth)』の様な楽曲で幕を引くかもしれない。
だがそれでは、これまで培ってきたキッス (Kiss) と謂うバンドの一切を否定する事にもなりえない。
と、考える事が出来るのであるのならば、『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』と謂う楽曲は『ベス (Beth)』の余韻を引き受けて、いや違う、『ベス (Beth)』の抒情を断ち切って、作品の最終楽曲としての役割を任せる事が出来るかもしれない。
と、謂う様な作品構成は、決して珍しい話ではない。少なくとも1970年代 (1970s) 前半に活躍したロック・バンドの作品にはよくみられた構成だ。
だが『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』と謂う楽曲が、本作品で担っている役割は、もうひとつある。
この曲の主題は、バンド・マンとその恋人、もしくは恋人に仮託されたファンとの関係性、バンド・マンから恋人乃至ファンへの問いかけとなっている。
そして、この主題は『地獄の遺産 (Great Expectations)』とも共通するモノで、しかもそこでの主張は、『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』とは相反するモノなのである。
ジーン・シモンズ (Gene Simmons) の歌唱するその楽曲も『ベス (Beth)』同様、音楽的には彼等らしくない作品だ。アコースティックな風合い、背景には女性コーラスも響く。作品発表時、グラム・ロック (Glam Rock) 時代のデヴィッド・ボウイ (David Bowie) を引き合いに出して語られていた様な記憶がある。
『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』と謂う楽曲が、キッス (Kiss) 本来の持ち味を最大限に発揮している一方で、歌詞に於いては、恋人乃至ファンを突き放した、極端な表現をすれば、批判非難をしているとも解釈できる。
いやそうではない。
あれは愛情の裏返しと謂うものだ。
そう解釈出来てしまうのは、その曲に続く『ロック・アンド・ロール・パーティー (Rock And Roll Party)』に於いて、『地獄の遺産 (Great Expectations)』での女声コーラスが再演されるからだ。
『地獄の遺産 (Great Expectations)』でジーン・シモンズ (Gene Simmons) によって発露された感情が、ポール・スタンレー (Paul Stanley) によって唄われる『ドゥ・ユー・ラヴ・ミー (Do You Love Me)』での激情とが、虚実相伴って、ライブ会場での彼の叫び「ロック・アンド・ロール・パーティー (Rock And Roll Party)」へと収斂していくからだ。
つまりそれがそのまま、キッス (Kiss) から恋人乃至ファンへのメッセージともなる。
しかも、この楽曲が収録された作品『地獄の軍団 (Destroyer)
そして、そう仕組む事が出来たのは、とにもかくにも、プロデューサーであるボブ・エズリン (Bob Ezrin) の賜物 (Result Of His Efforts) なのである。
次回は「み」。
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