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2008.07.13.00.15

『ファイアー・アンド・ウォーター(FIRE AND WATER)』 by フリー(FREE)

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ドラムスが、シンプルなビートを刻む。シンプルと言えば、これ以上シンプルにするのも難しく、しかしそれ以上に、印象深い独特の重みを持った音だ。
この単純にしてかつヘヴィーなビートが形造った空間を浮遊する様に、ベースがオクターブの上弦下弦を描き始める...。

フリー(Free)の代表曲『ミスター・ビッグ(Mr.Big)』である。

作曲者のクレジットを観れば、メンバー四人の名前が列挙されており、恐らく、スタジオ内でのセッションから、半ば偶発的に、産み出されたと想われる。それを裏付けるかの様な、この曲のオープニングだ。

リズム・セクションが縁取る、どっしりとした空間に、やや、不安げな佇まいで介入してくるヴォーカル。ギターが鳴り響くのは、もっと後だ。
終始、楽曲の構造を形成するのはベース・パートで、ギターは介添えでしかない。ソロ・パートになっても、リード・メロディを奏でるのは最初がベース。そして、最期の最期になって、ギター・ソロの見せ場がやってくる。
わずか6分弱の曲で、バンドの特性をきちんと描ききっている。

1970年に発表されたフリー(Free)のサード・アルバム。
バンドにとって最大の(あえて言えば唯一の)ヒット曲「オール・ライト・ナウ(All Right Now)」を収録したアルバム。だけれども、個人的には、この曲は、あんまり彼ららしくないなぁと想う。バンド解散後に、ポール・ロジャース(Paul Rodgers)とサイモン・カーク(Simon Kirke)が結成したバッド・カンパニー(Bad Company)への伏線でしかない楽曲と言ったら、言い過ぎだろうか? それくらい、骨太な乾いたアメリカナイズされた楽曲である(だから、まぁ、ワールド・ワイドなヒットに結びついたのだけれども)。

それよりも、「ミスター・ビッグ(Mr.Big)」が収録されている事の方が大事。この曲名から己のバンド名にしたミスター・ビッグ(Mr.Big)も同感してくれると想う。

ヴォーカル、ギター、ベースそしてドラムス。最低限にして最大の効果を与えるには、それぞれのパートの過剰な部分と不足する部分を、それぞれが補いあえる、信頼と共感と野心が必要だ(他にもある筈だけれども、今はもう、想い出せないし、想い出したくもない)。
それがバンド。
ロック・バンドのあるべき姿だと想う。

そのバンドというクリエイティヴ集団の、理想の形態のひとつがこのフリー(Free)である。しかしながら、その脆さ危うさをバンド結成時に既に内在させて、それをそのまま露呈させて解散してしまったのも、彼らである。

彼らの場合の脆さ危うさとは、音楽的な成長度と不釣り合いな程、人間的に成熟していなかった点。つまりは、若すぎたという事である。
本作制作時点で、最年長のサイモン・カーク(Simon Kirke : Dr)が21歳ポール・ロジャース(Paul Rodgers : Vo)同じく21歳ポール・コゾフ(Paul Kossoff : G)20歳、そしてアンディー・フレーザー(Andy Fraser : B)はなんと18歳
そんな若造が四人も集まって「オウ・アイ・ウェプト(Oh I Wept)」なんて、渋~いブルース・ナンバーなんか創っちゃあダメだ。ロバート・ジョンソン(Robert Johnson)みたいに、悪魔に魂を売っちまった様なもんだ。

かくいうわたしも、このアルバムに出逢ったのは、15の秋でしたが...。

本作を発表した翌年には、バンドとしては空中分解して、いくつかのスタジオ・アルバムと前後して、ライヴ・アルバム『フリー・ライヴ(Free Live!)』(これも名盤だけれども)や、名は同じものの実態は全く異なるバンドによる最終作『ハートブレイカー(Heartbreaker)』(これも名盤だけれども)が続く。

そして、ポール・ロジャース(Paul Rodgers)とサイモン・カーク(Simon Kirke)は新バンド、バッド・カンパニー(Bad Company)で大ブレイクし、ポール・コゾフ(Paul Kossoff)はツアー中の飛行機内で早世し、何故か、独りアンディー・フレーザー(Andy Fraser)は低迷し続ける。
その後を描けなかったポール・コゾフ(Paul Kossoff)はともかく、アンディー・フレーザー(Andy Fraser)が、フリー(Free)を超える成功を収められないのは、大きな謎。
それがバンドという魔物なのか?

ところで、この作品のクレジットを改めてしげしげと眺めていると、幾つもの疑問にぶつかる。
エンジニアとしてクレジットされているロイ・ベイカー(Roy Baker)は、後のロイ・トーマス・ベイカー(Roy Thomas Baker)ぢゃあないだろうな!?
とか。
カメラマンとしてクレジットされているHIroshiなる人物は誰だろう? 今は亡き『ミュージック・ライフ(Music Life)』誌の名物カメラマン長谷部宏の事ぢゃあないだろうな?
とか。
裏ジャケットを飾る牧歌的なイラストレーションを描いたのが、あのパメラ・コールマン・スミス(Pamela Colman Smith)である!!
とかに、びっくりしてしまう。彼女は、斯界では超有名なライダー版タロット(Rider Waite Tarot)のイラストを描いた人物だ。彼らの音楽性との"結びつきのなさ"に驚かされてしまうのだ。

やっぱり、悪魔に魂を...!?

ものづくし(click in the world!)70.:
『ファイアー・アンド・ウォーター(FIRE AND WATER)』
by フリー(FREE)


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ファイアー・アンド・ウォーター(Fire and Water)』 by フリー(Free)

SIDE : 1
1.ファイアー・アンド・ウォーター
 FIRE AND WATER Fraser / Rodgers
2.オウ・アイ・ウェプト
 OH I WEPT Rodgers / Kossoff
3.リメンバー
 REMEMBER Fraser / Rodgers
4.ヘヴィー・ロード
 HEAVY LOAD Fraser / Rodgers

SIDE : 2
1.ミスター・ビッグ
 MR.BIG Fraser / Rodgers / Kossoff / Kirke
2.ドント・セイ・ユー・ラヴ・ミー
 DON'T SAY YOU LOVE ME Fraser / Rodgers
3.オール・ライト・ナウ
 ALL RIGHT NOW(Long version) Fraser / Rodgers

●歌と演奏
 フリー
●プロデュース
 フリー & ジョン・ケリー
●メンバー
ポール・ロジャース
 リード・ヴォーカル
ポール・コゾフ
 リード・ギター
アンディー・フレーザー
 ベースギター
サイモン・カーク
 ドラムス

Recorded at Trident and Island Studios
Engineer / Roy Baker
Cover Design / Mike Sida
Photography / Hiroshi / Richard Polak
Drawing / Pamela Colman Smith
All songs published by Blue Mountain Music
Sleeve printed and made by MacNeill Press Ltd

PRODUCED BY FREE & JOHN KELLY

解説及び年表(HISTORY OF FREE)作成
立川直樹

アイランド原盤
(P) 1970 Island Records Ltd.
東芝EMI株式会社

僕の持っている国内盤LPは『ROCK GREATEST 1500』シリーズとして発売されていました。
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