2008.06.10.20.42
「ミスター・ムーンライト(Mr. Moonlight)」は、ロイ・リー・ジョンソン(Roy Lee Johnson)作詞作曲によるもので、自身の所属バンドドクター・フィールグッド & ジ・インターンズ(Dr.Feelgood & The Interns)で発表されたもの。
1964年に、ザ・ビートルズ(The Beatles)は、この曲を彼らの四枚目のアルバム『ビートルズ '65(Beatles for Sale)
』で発表する。
リード・ヴォーカルはジョン・レノン(John Lennon)が担当し、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)のハモンド・オルガン(Hammond Organ)、ジョージ・ハリソン(George Harrisonのアフリカン・ドラム(African Drums)とリンゴ・スター(Ringo Starr)のコンガ(Conga)をフィーチャリングしている。
彼らにとっては、デヴュー前のハンブルグ時代(The Beatles In Hamburg)から演りなれた曲で、なんで今頃?と問えば、まぁ、タイトなスケジュールでオリジナルな新曲が間にあわなかったから。"ザ・ビートルズ(The Beatles)大売り出し(for sale)"というシニカルな原題の『ビートルズ '65(Beatles for Sale)
』というアルバム収録曲全14曲中6曲をカヴァーが占めるのは、そんな理由です。そして、その6/14の中の一曲が「ミスター・ムーンライト(Mr. Moonlight)」というわけ。
と、まぁ、欧米のザ・ビートルズ(The Beatles)・ファンには以上の様な位置づけがされて、あとは個人個人の好き好きで評価が定まる作品、と言えるでしょう。
曲冒頭のジョン・レノン(John Lennon)のシャウトがこの曲を名演足らしめているとか、逆に、それだけがこの曲の総てだよ、とかね。
しかし、日本のザ・ビートルズ(The Beatles)・ファンにとって特別な地位に、この曲はある。
彼らの初来日(そして最期の来日)公演(The Beatles Live In Japan)となった1966年の、報道番組の中で、非常に印象深い使われ方をされたからだ。
上で紹介したYoutube画像の02.20.あたりからこの曲は始まる。
台風4号による飛行便の遅延。闇の羽田空港(Haneda Airport)。鶴丸のJAL機。濡れている滑走路。タラップを駆け降りる四人の姿。法被姿の四人の笑顔。用意されたリムジン(Limousine)に駆け込む四人。警察車輛に誘導される彼ら。無人の首都高(Shuto Expressway)。朝陽が昇る首都高(Shuto Expressway)。彼らの宿泊地で彼らを出迎える人々の群々。
このわずか1分間の描写の中で、ジョン・レノン(John Lennon)のシャウトが響き渡る。
ミスター・ムーンライト(Mr. Moonlight)。
彼らの初期のヒット曲でありパブリック・イメージである「抱きしめたい(I Want To Hold Your Hand)」でも「シー・ラブズ・ユー(She Loves You)」でもなく、かといって彼らの最新ヒット・ナンバーの「恋を抱きしめよう(We Can Work It Out)」でも「ペイパーバック・ライター(Paperback Writer)」でもない。さらに言えば、日本人好みの(そして僕の嫌いな)「イエスタデイ(Yesterday)」でも「ミッシェル(Michelle)」でもない。
この曲を選んだ人物は、どういう意図でもって、二年も前に発売されたアルバムの埋草の様な位置づけのこの曲を取り上げたのだろうか?
ザ・ビートルズ(The Beatles)の来日公演と言えば、彼らと同道した[同道と言っても、彼らはホテルと武道館(Nippon Budokan)の往復の毎日だったから、彼らのバック・ステージやプライヴェート・フォトの撮影を許されたというべきか?]浅井慎平による写真集『ビートルズ東京 100時間のロマン』が秀逸で(でもそれは権利関係の問題??で絶版で)、何故か、そこに収められたモードと相通じるものを、この「ミスター・ムーンライト(Mr. Moonlight)」に感じる。
それは危うさ。
ビートルマニア(The Beatlemania)と呼ばれる熱狂を産み出したアイドルであると同時に、ハイ・クォリティな楽曲を創造するアーティストでもあって、さらに、母国に膨大な経済効果を与える輸出産業"音楽"を案出した、という様々な側面を持つ彼ら。しかし、その主人公である四人は、たかだか20代そこそこのイギリス人青年にしかすぎないという事実。
そんな四人を偶然間近にあい対する事が出来た戸惑いにも似た感情が、抽出されているのではないか?
例えば、先に紹介したYoutube画像に続いて登場する、E.H.エリックによるインタヴュー・シーンでは、音声と映像が同期していない。四人のパブリックな表層と内省的な肉声とのズレ(もしくはその逆の)を感じさせようとする、意図的な演出を感じてしまうのだけれども。
だが、それは、彼ら四人が感じた日本とは、全く異なるものだ。
彼らが感じた日本は、ツアー終了後に発表された彼らのアルバム・タイトルに記されている。
『リボルバー(Revolver)
』
彼らを終始取り囲んでいた、日本の警官が必携していた拳銃ミネベア M60 “ニューナンブ” 回転式拳銃の事だ。
次回は「と」。
1964年に、ザ・ビートルズ(The Beatles)は、この曲を彼らの四枚目のアルバム『ビートルズ '65(Beatles for Sale)
リード・ヴォーカルはジョン・レノン(John Lennon)が担当し、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)のハモンド・オルガン(Hammond Organ)、ジョージ・ハリソン(George Harrisonのアフリカン・ドラム(African Drums)とリンゴ・スター(Ringo Starr)のコンガ(Conga)をフィーチャリングしている。
彼らにとっては、デヴュー前のハンブルグ時代(The Beatles In Hamburg)から演りなれた曲で、なんで今頃?と問えば、まぁ、タイトなスケジュールでオリジナルな新曲が間にあわなかったから。"ザ・ビートルズ(The Beatles)大売り出し(for sale)"というシニカルな原題の『ビートルズ '65(Beatles for Sale)
と、まぁ、欧米のザ・ビートルズ(The Beatles)・ファンには以上の様な位置づけがされて、あとは個人個人の好き好きで評価が定まる作品、と言えるでしょう。
曲冒頭のジョン・レノン(John Lennon)のシャウトがこの曲を名演足らしめているとか、逆に、それだけがこの曲の総てだよ、とかね。
しかし、日本のザ・ビートルズ(The Beatles)・ファンにとって特別な地位に、この曲はある。
彼らの初来日(そして最期の来日)公演(The Beatles Live In Japan)となった1966年の、報道番組の中で、非常に印象深い使われ方をされたからだ。
上で紹介したYoutube画像の02.20.あたりからこの曲は始まる。
台風4号による飛行便の遅延。闇の羽田空港(Haneda Airport)。鶴丸のJAL機。濡れている滑走路。タラップを駆け降りる四人の姿。法被姿の四人の笑顔。用意されたリムジン(Limousine)に駆け込む四人。警察車輛に誘導される彼ら。無人の首都高(Shuto Expressway)。朝陽が昇る首都高(Shuto Expressway)。彼らの宿泊地で彼らを出迎える人々の群々。
このわずか1分間の描写の中で、ジョン・レノン(John Lennon)のシャウトが響き渡る。
ミスター・ムーンライト(Mr. Moonlight)。
彼らの初期のヒット曲でありパブリック・イメージである「抱きしめたい(I Want To Hold Your Hand)」でも「シー・ラブズ・ユー(She Loves You)」でもなく、かといって彼らの最新ヒット・ナンバーの「恋を抱きしめよう(We Can Work It Out)」でも「ペイパーバック・ライター(Paperback Writer)」でもない。さらに言えば、日本人好みの(そして僕の嫌いな)「イエスタデイ(Yesterday)」でも「ミッシェル(Michelle)」でもない。
この曲を選んだ人物は、どういう意図でもって、二年も前に発売されたアルバムの埋草の様な位置づけのこの曲を取り上げたのだろうか?
ザ・ビートルズ(The Beatles)の来日公演と言えば、彼らと同道した[同道と言っても、彼らはホテルと武道館(Nippon Budokan)の往復の毎日だったから、彼らのバック・ステージやプライヴェート・フォトの撮影を許されたというべきか?]浅井慎平による写真集『ビートルズ東京 100時間のロマン』が秀逸で(でもそれは権利関係の問題??で絶版で)、何故か、そこに収められたモードと相通じるものを、この「ミスター・ムーンライト(Mr. Moonlight)」に感じる。
それは危うさ。
ビートルマニア(The Beatlemania)と呼ばれる熱狂を産み出したアイドルであると同時に、ハイ・クォリティな楽曲を創造するアーティストでもあって、さらに、母国に膨大な経済効果を与える輸出産業"音楽"を案出した、という様々な側面を持つ彼ら。しかし、その主人公である四人は、たかだか20代そこそこのイギリス人青年にしかすぎないという事実。
そんな四人を偶然間近にあい対する事が出来た戸惑いにも似た感情が、抽出されているのではないか?
例えば、先に紹介したYoutube画像に続いて登場する、E.H.エリックによるインタヴュー・シーンでは、音声と映像が同期していない。四人のパブリックな表層と内省的な肉声とのズレ(もしくはその逆の)を感じさせようとする、意図的な演出を感じてしまうのだけれども。
だが、それは、彼ら四人が感じた日本とは、全く異なるものだ。
彼らが感じた日本は、ツアー終了後に発表された彼らのアルバム・タイトルに記されている。
『リボルバー(Revolver)
彼らを終始取り囲んでいた、日本の警官が必携していた拳銃ミネベア M60 “ニューナンブ” 回転式拳銃の事だ。
次回は「と」。
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